
フリースの王道といえばパタゴニア。その名品と洒落者の着こなしを網羅
フリースを本物志向で選びたい年齢になると、必ず辿り着くのが本家本元の『パタゴニア』。ダウンに変わる選択肢がほしい今だからこそ、改めてその名品に注目してみては?
フリースといえば、やっぱり『パタゴニア』がハズせません
引き続き人気が継続しているアウトドアMIXスタイル。食傷気味に感じている人もいるであろうダウンジャケットに代わる選択肢として、フリースジャケットが注目を浴びています。しかし、久しぶりに袖を通すのであれば、やはり違いのわかる大人も納得できるブランドを選びたいところ。
そこで筆頭株として浮上してくれるのが『パタゴニア』です。詳しくは後述しますが、何を隠そう同社は、1980年代にフリースを世界で初めて開発した“生みの親”として知られるブランド。フリースと向き合ってきた実績において、他社の追随を許しません。それゆえに、製品ラインアップにはマスターピースと呼んでも過言ではない秀作が揃い踏みしています。そんなフリースにおけるパイオニアの名作をおさらいしつつ、それぞれの持ち味をタウンユースで享受するヒントをご紹介しましょう。
『パタゴニア』のフリースが、正統といわれるワケとは
『パタゴニア』がフリースの生みの親と呼ばれる理由を読み解くために、フリース誕生前夜からご紹介しましょう。ウールの弱点を解消した保温素材を追い求めていた同社は、1977年に繊維メーカーのモルデンミルズ社(現在のポーラテック社)と一緒にポリエステル製パイル素材を開発しました。
これがウールのように濡れると重くなったり保温力が低下したりもしない画期的な素材であったため、当時のクライマーたちが諸手を上げて大絶賛! ただ、毛玉ができやすい、染色が映えないといった欠点もありました。これらをモルデンミルズ社とのタッグで解消した高機能パイル素材の完成形が、1985年にリリースされた「シンチラ」です。これが後に、フリースの名で親しまれるようになったもの。しかし、軽量かつイージーケアな革新的な保温素材であったにもかかわらず、同社はあえて特許を取得しませんでした。そんな経緯もあり、アウトドア業界に限らず、ファッションにおいてもフリースが愛されるようになってきたのです。そして本家本元のである同社はマスターピースと呼ぶにふさわしい名作を次々とリリースし、現在に至ります。
『パタゴニア』のフリース。4つの名品と、着こなしサンプル
『パタゴニア』のフリースには、マイナーチェンジを繰り返しながら継続的にリリースされている定番モデルが存在する一方、従来にない使用感やスタイルを享受できるモデルも不定期に投入されています。それらの評判が良ければ、定番モデルに昇格していくわけです。ここでは、こうした過程を経て愛される存在となった4型の名品をピックアップ。アウトドアMIXコーデで街使いする際に役立つヒントもご紹介します。
▼フリース1:まず押さえたい“元祖”。「シンチラスナップT」って知ってる?
フリースという革新的な保温素材を世界に知らしめた製品といえば、こちらの「シンチラスナップT」です。何しろ、同社がモルデンミルズ社と開発した「シンチラ」をお披露目した1985年に、初採用製品として華々しいデビューを飾ったアイテムなのですから。ジップより壊れにくく、開閉もしやすいスナップボタンを備えたプルオーバー型ボディが特徴で、1989年に追加された左胸のスナップポケットとともに本作を象徴する意匠となっています。また、同社は1993年にアウトドア企業として初めて回収したペットボトルから繊維を作って製品に用いるリサイクルシステムを導入。その翌年から、他のフリース製品同様に本作もリサイクル・ポリエステルだけで作られています。
着こなし1
タートルインナーのチラ見せで、レイヤード巧者に一瞬で変身
スナップボタンを開いた首元から、タートルネックカットソーをチラッと覗かせたこちらのコーデ。フルジップの服でも同様のレイヤードは可能ですが、スナップボタンの愛らしさもありアウトドア感強めのレイヤードを印象付けられます。『パタゴニア』らしいニュアンスカラーを選んでいるため、ベージュチノとのシンプルな合わせも絵になります。フリース自体の保温力向上も見込めるので、真似する価値は大いにアリです。
着こなし2
フリースのボタン全留めで、クリーンな装いにも対応可能
こちらのコーデのようにスナップボタンをしっかり留めてしまえば、首元が詰まってグッと大人っぽい印象に。オフ白のタックパンツと合わせ、都会的な休日スタイルに持っていくのも朝飯前です。フラップポケットがボディと同色になった黒フリースを選ぶことで、モノトーンに徹した配色にしているのもアウトドアっぽさの払拭に成功している要因でしょう。
着こなし3
総柄フリースを味方につけて、個性派コーデに誘導
シーズンごとにリリースされる派手柄も、「シンチラスナップT」のお楽しみの1つ。このコーデのような多色使いの柄なら、いつもはいている太チノのコーデに1点投下するだけでキャラの立った着こなしを狙えます。スニーカーでフリースの多色使いを拾ってあげると足元にも関連性が生まれ、柄の悪目立ちを防ぐことが可能。
▼フリース2:『パタゴニア』といえば、「レトロXジャケット」はマストハブ
1993年に誕生した「レトロXジャケット」が名作と呼ばれる所以は、中間層に防風フィルムをラミネートすることで、フリースの弱点である防風性の低さを解消しているからに他なりません。それでいて8mm厚のボアフリースを採用したボディはその名の通りレトロ感があり、気負わず気取らず普段使いできるのも愛されている理由です。体に触れる面はメッシュ状なので蒸れを低減でき、アクティブ派にはうれしい抗菌防臭加工が施されているのも魅力。
着こなし4
スウェットパンツのトップスに羽織るだけで、ワンマイルコーデに説得力を
人気再燃中のスウェットパンツですが、トップス選びを間違うとただの“部屋着おじさん”になりがちです。ですが、「レトロXジャケット」をバサッと羽織ってしまえば大丈夫。ボアフリースのほっこり感はスウェットパンツと相性が良く、それでいて誰もが知っている普遍的な名品ならではの存在感のおかげで、絵になるアウトドアMIXスタイルに仕上がります。フリースの胸ポケットの配色をパンツやスニーカーとリンクさせ、最小限の色数でコーデを構成しているのもこなれて見えるポイントに。
着こなし5
きれいめコーデを狙うなら、バンドカラーシャツをイン
1つ前のコーデと同じ配色の「レトロXジャケット」ですが、清潔感ある配色ゆえに落ち感がきれいなワイドパンツに合わせてもカジュアルに振れ過ぎることはありません。ボタンを上まで留めて着込なしたバンドカラーシャツにより、クリーンな印象の着こなしにも無理なく自然に落とし込めます。ちなみにこのコーデの場合も、ネイビーとアイボリーだけでコーデを構成したことがアウトドアウェアっぽさを打ち消す効果を発揮しています。
着こなし6
ボアのボリューム感を生かし、ブラックコーデにメリハリを
ボアフリース特有のボリューム感はワイドパンツとの親和性が高め。このコーデのように上下を黒で揃えてあげると、素材感で個性を出しつつセットアップとはまた違うまとまり感のあるコーデに仕上がります。インナーは無地でも良いですが、こちらのように同色ボーダー柄のボートネックカットソーを差し込むことで黒コーデの重さを打ち消して爽やかさを加味できます。
▼フリース3: 毛足の長さがキモなんです。「レトロパイルジャケット」
「レトロX」が誕生する以前の1988~90年にかけてリリースされ、その後、復活を果たした“お兄さん”的な位置付けなのが「レトロパイルジャケット」です。「レトロX」よりも毛足が長いボアフリースを採用してモフモフ感に拍車がかけられているため、どこかかわいらしい印象も。防風フィルムやメッシュを用いていない分、着心地もやわらかに仕上がっています。
着こなし7
ミリタリーパンツのイカつさ緩和に、ボアのやさしさを活用
毛足の長さゆえに感じさせる「レトロパイルジャケット」のやさしげな印象は、カーゴパンツの武骨さを中和するうえで威力を発揮してくれます。こちらのコーデのようにフロントジップ部分のネイビーをパンツで拾ってあげれば、男らしさと爽やかさの両得を叶えることが可能。
着こなし8
渋色のカーディガン感覚で羽織って、大人らしさを増量
モコモコとした毛足の長さゆえに、落ち着きある見た目に仕上がるのも同アイテムの魅力。その長所を生かすなら、温かみのあるブラウンを選んでカーデ使いするのもアリでしょう。そのうえでセンタークリースのあるきれいめなパンツに合わせてあげれば、アウトドアMIXを大人らしい印象に引き寄せるのも簡単です。フリース自体は前開きでゆるりと着ることで、カーディガンのようなリラックス感を醸せます。
着こなし9
上下黒の重たさを、モコモコなボアで払拭
こちらは、上下黒コーデのキメている感を打ち消すうえでも「レトロパイルジャケット」のかわいらしい風合いが役立つという好サンプル。これでアウターがダック地やダウンだとストリートっぽい印象が強くなりますが、毛足の長いボアだからこそこの力の抜けた雰囲気が出せます。インナーに選んだ白パーカーのスポーツプリントも、爽やかさを付与するうえで効果的なアクセントに。
▼フリース4:『パタゴニア』の新定番。「ロス・ガトス・クルー」
2018年のデビュー当初に完売続出の人気を博し、定番の仲間入りを果たしたのが「ロス・ガトス・クルー」です。ハイパイルフリースと呼ばれるフカフカとしたやわらかな風合いのボディは、高い保温性が期待できる一方、やさしい着心地の虜になるリピーターも多く、新色が出るたびに買い足してしまうという人も。また、同社のフリースとしては新顔に位置付けられる製品ゆえに性能面もしっかりアップデート済みです。吸湿発散性に優れているので動いた際の蒸れを低減でき、耐水性撥水加工により傘で雨が付着してもウェア内まで浸透しません。
着こなし10
特有の風合いでモノトーンコーデに抜け感を付与
丸首のプルオーバーながら、スウェットでもニットでもない独特のリラックス感を醸せるのが「ロス・ガトス・クルー」の持ち味。フレア感のあるスラックスという旬のパンツを主役にした装いのハズしにもうってつけです。襟ぐりが詰まっていないので、このコーデのようにインナーを首元からチラ見えさせながら着用することも。このように着れば、モノトーンコーデの抜け感作りも簡単ですね。
着こなし11
モックネックのチラ見せで首周りの見どころを演出
「ロス・ガトス・クルー」の程良くユルめな襟ぐりは、モックネックインナーとも好相性。首が詰まり過ぎないので、重ね着しても首周りの締め付けなく快適に過ごせます。そこにワイドジーンズを合わせる今どきのスタイリングにもすんなり溶け込む一方、ハイパイルフリースが放つリラックス感のおかげで周囲との違いを簡単に印象付けられます。
着こなし12
軍パンの骨太さを、プルオーバーならではのリラックス感で程良く中和
ファティーグパンツに対してスウェットシャツ感覚で合わせるラギッド路線のスタイリングも、ご覧の通り。プルオーバーならではの落ち感ある自然なシルエット、やわらかなフリース地が、男気を押し出し過ぎないちょうどいい塩梅のアメカジを醸します。なお、この手のプルオーバーには襟ぐりからインナーをチラ見せさせるのが定石。しかし、単品でもサマになるのは「ロス・ガトス・クルー」の完成度ゆえでしょう。
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