
ミリタリーウォッチを、基本から。13の名門ブランドと知るその歴史
なぜ男たちは、ミリタリーウォッチに惹かれるのか? 陸、海、空、そして戦場という極めて過酷な環境下で磨き上げられた性能は、圧倒的な説得力を持って男心に響くのだ。
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メンズウォッチの永世定番。ミリタリーウォッチは僕らの基礎教養だ
世の男たちがミリタリーウォッチを求めるのは、DNAに刻まれた本能ゆえかもしれない。戦場において、正確な時刻の把握は、作戦遂行上不可欠なだけでなく、ときには兵士の生存をも左右する。そんな過酷な環境によって培われた頑丈さや機能性、無駄のないデザインを併せ持つ腕時計は、優れた道具を求める男の本能を刺激するのだ。
事実、ラグジュアリースポーツやダイバーズ、レーシング時計などウォッチトレンドが時代とともに移り変わろうとも、ミリタリーウォッチは超然として“永世定番”の地位を保ち続けている。そして腕時計をファッションアイテムとして捉える人であっても、はたまた腕時計の歴史とスペックを愛する時計玄人であっても、同じように彼らの心を惹きつけてやまないのだ。
価値がプライスだけでは決まらない点もまた、ミリタリーウォッチの奥深い面白みの1つ。たとえ1万円程度のロープライスモデルでも、数十万円台のハイエンドモデルに引けを取らない歴史的な価値や、語れるうんちくを備えているものが少なくないのだ。腕時計のビギナーからコレクターまで、幅広い腕時計ファンに愛される理由もここにある。本記事では「歴史」「機能」「ブランド」という3つの要素を柱に、ミリタリーウォッチの奥深い魅力を検証していこう。
1900年代の時計史にも直結。ミリタリーウォッチとは、何モノか?
「ミリタリーウォッチ」という腕時計は戦場で生まれ、磨き上げられてきた。19世紀末、世界各地の戦場では、“時間”の重要性が一段と高まっていた。兵器の進化とともに複雑化していく作戦を効率良く遂行するためには、部隊が正確な時間を把握し、規則正しく行動する必要がある。そのため、将校たちは懐中時計を使って時刻を確認していたが、そのうちよりスピーディに確認するべく、腕に懐中時計をくくりつける者が現れ始めた。そんな兵士たちの要望に応えるべく製作されたのが、今日の腕時計の原型。一説によれば、腕時計が普及したきっかけは20世紀初頭の第一次世界大戦時とされている。
20世紀に入ると、ミリタリーウォッチは徐々に兵士たちの間に普及していく。とはいえ、腕時計自体がまだ高価なものであったため、各国の軍はまず、士官やパイロット、潜水部隊といった時間を把握する必要性が高い兵士たちから支給を開始した。なかでも有名なのが、スイスの『オリス』が開発した「ビッグクラウン」。パイロット向けに作られたこのモデルは、分厚いグローブを装着ままでも操作しやすい大型のリューズが特徴だった。時計ブランドがこうした高機能モデルを開発する一方で、軍は低コストモデルの生産を要請。こうして一般の兵士に支給できる腕時計も生産されるようになっていった。
一般兵士に向けた腕時計で有名なのが、第一次世界大戦に『タイメックス』が開発した「ミジェット」。アメリカ軍の要請によって誕生したこのモデルは、大ぶりのオニオンリューズに細身のラグを持つミリタリーウォッチの元祖ともいえる1本だった。その後の第二次世界大戦では、『ハミルトン』が「ハックウォッチ」と呼ばれる手巻き式の腕時計を100万本以上生産する。こうした一般兵士向けの量産型ウォッチと、特殊部隊が用いるような高機能モデル、ミリタリーウォッチの系統はこうして二分されていった。
1969年に起こった「クォーツショック」も、ミリタリーウォッチの歴史に影響を与えた出来事だ。この年、『セイコー』が既存の機械式時計の精度を凌ぎ、かつ驚異的な低コストを実現したクォーツ時計の開発に成功。クォーツ時計の登場によって一般市民にも急速に腕時計が浸透した。結果、軍が兵士に腕時計を官給する意味こそ薄れたものの、ミリタリーウォッチは高い機能性と視認性が評価され、絶大な人気を誇るジャンルへ成長を遂げていったのだ。
ミリタリーウォッチにおいて重視したい、3つのポイントを知っておこう
世の中には数々の個性的なミリタリーウォッチが存在するが、いくつかの共通点が存在する。ひと目で時刻がわかる高い視認性と無駄のないタフなデザイン、そして語れるバックグラウンド。この3つを兼ね備えたモデルこそが、本物志向のミリタリーウォッチの可能性を秘めているといえる。
ポイント1
あくまで軍モノだからこそ。視認性をはじめとした、スペックに着目
ミリタリーウォッチがギアとして高く評価される理由。その1つが視認性の高さだ。シンプルなデザインに大ぶりなアラビアインデックスや見やすいデイト表示など、兵士がひと目で時刻を確認できるよう設計されている。モデルによっては、スーパーミノルバが塗布されたインデックスや24時間表記のアワーサークルなども搭載され、悪天候化や夜間でも容易に時刻を確認することができる。こと瞬時に時刻を把握する必要のあるパイロットウォッチには、視認性が極限まで高められたモデルが多く見られる。
ポイント2
腕元でタフさを主張する“ならでは”なルックスに酔いしれる
装飾性が度外視され、必要な機能だけが追求された結果、生み出されるタフなデザインはミリタリーウォッチの唯一無二の魅力。サンドブラストなどマットな仕上げが施された文字盤やケースはドレスウォッチには見られないラギッドなオーラを放ち、ナイロン製のNATOベルトやシリコンストラップはスポーティなイメージを演出する。また、パイロットウォッチの名門として知られる『ジン』や『ブライトリング』のミリタリーモデルが放つ“金属の塊”のような武骨な存在感もミリタリーウォッチの持ち味だ。戦場で磨き上げられた機能美を持つ腕時計は、スタイリングに男らしいスパイスをきかせる格好のアクセサリーになるだろう。
ポイント3
目には見えない価値。ミリタリーウォッチとしての歴史と背景を重視
語れる背景や歴史。視認性やデザインよりも、この点をもっとも重視するミリタリーウォッチ愛好家は少なくない。例えば、『IWC』の現在のフラッグシップモデルである「パイロットウォッチ マーク 18」。このモデルのオリジンは1940年代、技術力の高い腕時計ブランドを有していなかった英国が永世中立国・スイスの同ブランドに生産を依頼して誕生した腕時計にある。英国空軍に正式採用されたそのモデルは、コックピット内の振動や圧力、温度変化、強力な磁場に耐えることができ、“耐磁時計の世界基準”と謳われた。他にも300mまで潜ることができる耐圧性能を備え、アメリカ海軍の特殊潜水部隊に使われた『ハミルトン』の「カーキネイビー」など、骨太な背景を持つモデルが多数存在する。目には見えない要素ではあるものの、腕時計を眺め、歴史的なエピソードに思いを馳せる愉悦はミリタリーウォッチのオーナーの特権だ。
まさに“鉄板”揃い。ミリタリーウォッチを語るに欠かせない13のブランド
本物のミリタリーウォッチがいかなるものかがわかったところで、次はこのジャンルを語るうえで欠かせないブランドとモデルをご紹介しよう。いずれも、流行りの“ミリタリー風”とは一線を画す、時計史に名を刻むマスターピースだ。
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ミリタリーウォッチの人気ランキング
これから紹介する商品を、ひと足お先に人気順で披露。アイテム名をクリックすると記事内の掲載箇所に移動します。
ブランド1
『タイメックス』
1854年に創業したアメリカの国民的時計ブランドは、20世紀初頭に軍のミリタリーウォッチを手がけた歴史を持つ。ブランドの代表作に数えられる「オリジナル・キャンパー」はベトナム戦争で供給された軍用時計がモチーフで、低コストながら、堅牢性や視認性の高さ、電池交換不要の手巻き式ディスポーサブル式(使い捨て式)が特徴だ。およそ4半世紀ぶりの復刻となるクォーツモデルは、36mm径と約18gという軽量かつコンパクトなサイズながら、無駄のないデザインが独特の存在感を放つ。サイズ:36mm、樹脂ケース、クォーツ。
ブランド2
『ハミルトン』
20世紀初頭にはアメリカ軍の公式ウォッチサプライヤーを務めた『ハミルトン』。同ブランドが有するミリタリーウォッチの代表作は、1940年代にアメリカ軍に支給されたモデルをルーツとする「カーキ フィールド メカニカル」だ。通称「ハックウォッチ」と呼ばれる理由はリューズを引くと秒針が止まるストップセコンド機能。戦場では、兵士たちが「ハック!」の号令で時刻を合わせ、作戦に臨んだという。マットな38mmケース、NATOストラップ、スーパーミノルバが塗布された針など、その姿はミリタリーウォッチのお手本だ。サイズ:38mm、SSケース、手巻き。
ブランド3
『ブライトリング』
1936年に英国空軍の公式サプライヤーを務め、1942年には米軍への納入を開始した歴史を持つ『ブライトリング』。大量生産可能な軍用時計というコンセプトのもとに開発された「コルト」はバーインデックスのシンプルな3針スタイル。ベゼルのライタータブはグローブを装着したままでも操作しやすいよう設計されている。こちらの「コルト オートマティック 44」は自動巻きだが、他に手の届きやすい価格帯のクォーツモデルも用意されており、『ブライトリング』の入門機としてもおすすめだ。サイズ:44mm、SSケース、自動巻き。
ブランド4
『ブローバ』
世界初の音叉時計や“ムーンウォッチ”など、数々のエポックメイキングなモデルを輩出した『ブローバ』もまたアメリカ軍に正式採用された歴史を持つ。こちらは第二次世界大戦中の1944年に製造された伝説のミリタリーウォッチをモチーフにした「ブローバ ミリタリー」。3層構造になったダイヤルと3つのリューズが特徴で、2時位置のリューズで外周ダイヤル(分表示)を、4時位置のリューズで内周ダイヤル(時間表示)を回転させ、そこに針を合わせることで経過時間を計測することができる。サイズ:42mm、SSケース、自動巻き。
ブランド5
『グリシン』
ベトナム戦争時、アメリカ軍のパイロットの間で人気を博したスイスブランド。当時、軍に正式採用されていなかったため、パイロットたちは『グリシン』の時計を自費で購入して持参したというから、信頼の高さが窺える。パイロットウォッチのほかに、ダイバーズウォッチの人気も高く、こちらの「コンバットサブ」は、24時間表示と大型リューズが特徴のミリタリーモデル。耐水圧200m。サイズ:42mm、SSケース、自動巻き。
ブランド6
『オリス』
第二次世界大戦時に米国空軍に支給された「ビッグクラウン」は、19世紀初頭にスイスで創業した『オリス』が開発したパイロットウォッチ。アイコンともいうべき大型のリューズは、氷点下にもなるコクピット内で分厚いグローブを着けたまま操縦できるよう配慮されたものだ。また、センター針で文字盤外周の数字を指して日付を表すポインターデイトも『オリス』独自の機構。ワインレッドのダイヤルが上品な「ビッグクラウン ポインターデイト」はその二大機構を併せ持つ大定番だ。サイズ:40mm、SSケース、自動巻き。
ブランド7
『パネライ』
今日ラグジュアリーウォッチとして不動の地位を確立したイタリア生まれの『パネライ』は、かつては軍用時計で名を馳せたブランド。第一次世界大戦時に国防省の要請で防水時計の開発に着手し、蛍光物質を使用したダイバーズウォッチを完成させた。イタリア海軍特殊潜水部隊にも使用されたそんな名作の系譜を継ぐのが、「ラジオミール ブラックシール ロゴ」。このブランドらしい大型のケースに加え、蓄光塗料のルミノールと独自のサンドイッチ文字盤によって強く発光するインデックスが存在感たっぷり。サイズ:45mm、SSケース、手巻き式。
ブランド8
『IWC』
第二次世界大戦時、英国空軍に供給した「マーク シリーズ」で知られる『IWC』。こちらの「パイロットウォッチ オートマティック スピットファイア」は、1940年代に製造された「マーク11 ナビゲーションウォッチ」のデザインを継承した1本。ヴィンテージな顔つきながら、シリコン製パーツが使用された72時間パワーリザーブの自動巻きムーブメントや耐磁性インナーケースと機能性は進化を遂げている。サイズ:39mm、SSケース、自動巻き。
ブランド9
『ロンジン』
チャールズ・A・リンドバーグ氏をはじめ、空の偉大な冒険家たちに愛されたスイスの名門は、第二次世界大戦のころ、フランス海軍の求めに応じて軍用時計を製作した歴史を持っている。そのモデルを再現した「ヘリテージ ミリタリー」は頑丈な肉厚のベゼルや視認性の高い大型針、シンプルな文字盤デザインが質実剛健なオーラを放つ。ヴィンテージを思わせる日に焼けたような文字盤の色合いもポイントだ。サイズ:38.5mm、SSケース、自動巻き。
ブランド10
『ルミノックス』
“明るい夜”という名を持つ『ルミノックス』は、1989年米国ニュージャージー州生まれ。その代名詞といえば、米国海軍の特殊部隊・ネイビーシールズに採用されたミリタリーモデルだ。逆回転防止ベゼルをはじめ、天然ラバーストラップ、200m防水機能、頑丈かつ軽量なケース、そして25年間効果が持続する自己発光システムを備えたインデックス&針などまさに軍用ダイバーズのエリート。こちらは視認性がブラッシュアップされた日本限定の「レッドハンド シリーズ」の「Ref.3001」。サイズ:43mm、カーボノックスケース、クォーツ。
ブランド11
『カシオ G-ショック』
あらゆる環境下での使用に耐える『Gショック』が、ミリタリーウォッチとしての顔も有していることはご存じだろうか。90年代初頭に勃発した湾岸戦争時には多くの多国籍軍の兵士たちに使用され、1994年の映画『スピード』では主人公のSWAT隊員に使用されたことでも話題に。また、2014年公開の「アメリカンスナイパー」でもネイビーシールズの狙撃手である主人公の腕には「Gショック」が装着されていた。戦場ではさまざまなモデルが使用されているが、オリジンというべき「DW-5600E-1」は今なお根強い人気を誇る1本。サイズ:48.9×42.8mm、樹脂ケース。
ブランド12
『MWC』
「ミリタリー・ウォッチ・カンパニー」という名を持つスイスブランドは1974年の設立以降、各国の特殊部隊への納入実績を積み重ねてきたミリタリーウォッチの申し子。こちらは1940年代に米国空軍で使用されていた軍用時計「A-11」を再現した1本だ。ロゴさえも省略されたシンプルな文字盤や大ぶりのアラビアンインデックス、太い時分針が高い視認性を確保する。そんな質実剛健な姿を忠実に再現しつつも、日本製ムーブメントやステンレス製ケースなど機能面は現代的にアップデートされている。サイズ:38mm、SSケース、自動巻き。
ブランド13
『ラコ』
バウハウスの流れを汲むドイツのパイロットウォッチには、優れた視認性を誇る名作が少なくない。1925年にドイツで創業した『ラコ』の「チューリッヒ」もその1つ。文字盤の上下をすばやく認識できるよう印字された12位置の三角形など、パイロットウォッチの基本設計を踏襲したデザインは機能美を感じさせる。こちらの「チューリッヒ.2.D40」はケース径40mm、厚さ9mmのケースが採用されたもの。定番モデルよりも小ぶりで薄型のため、服の袖が引っ掛かりにくく、手首が細い人にもおすすめ。サイズ:40mm、SSケース、クォーツ。
この記事の掲載アイテム一覧(全13商品)
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『タイメックス』 オリジナル・キャンパー
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『ハミルトン』 カーキ フィールド メカニカル
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『ブライトリング』 コルト オートマティック 44
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『ブローバ』 ブローバ ミリタリー
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『グリシン』 コンバットサブ ゴールデンアイ
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『オリス』 ビッグクラウン ポインターデイト
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『パネライ』 ラジオミール ブラックシール ロゴ
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『IWC』 パイロットウォッチ オートマティック スピットファイア
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『ロンジン』 ヘリテージ ミリタリー
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『ルミノックス』 レッドハンド シリーズ Ref.3001
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『カシオ G-ショック』 DW-5600E-1
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『MWC』 A-11
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『ラコ』 チューリッヒ.2.D40
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