
レッド・ウィングがやっぱり好きだ。アメカジの定番が、今こそ気になります
アメリカンワークブーツのスタンダード『レッド・ウィング』。ブランドの歴史や魅力について読み解きつつ、押さえておいて損のない5種類の定番モデルをご紹介します。
ブーツ&アメカジが復調の現在。改めて『レッド・ウィング』の魅力をおさらい
ハイブランドとストリートの邂逅によるブームも落ち着きを見せ、ふたたびアメリカンカジュアルが復権しつつあるファッションシーン。加えて、スニーカーに次ぐ足元として、ブーツにも脚光が集まっています。アメリカンカジュアル×ブーツという今の流れは、まさに『レッド・ウィング』にとって追い風とも呼べる状況。今のうちに『レッド・ウィング』の魅力についておさらいしておきましょう。
110年以上を誇る『レッド・ウィング』の歴史を振り返る
1975年に刊行された『Made in USA Catalog』でその存在が広く知られるようになり、80年代のアイビーブーム、そして90年代の渋カジブームにいたるまで、男らしくもタフなアメリカの匂いを日本に届けてきた『レッド・ウィング』。その歴史は1905年、アメリカ中西部のミネソタ州レッドウィングシティで創業者のチャールズ・ベックマン氏と14人の仲間とともに産声を上げたことに始まります。当時のアメリカは西部開拓時代真っ盛りであり、木こりが履くためのロガーブーツをはじめとしたタフなワークブーツの需要が急増中。そんななか、1912年に「チーフライン」と呼ばれるワークブーツをヒットさせたことで、急速にその規模を拡大させていきました。
MADE IN USAへのこだわりこそ『レッド・ウィング』の魅力
そして現在では多くのアメリカンブランドが海外生産へと舵を切る中で、頑なに創業地であるミネソタ州での生産にこだわり抜いているのも『レッド・ウィング』の魅力。創業から現在にいたるまで一族経営を貫いており、親子三代で『レッド・ウィング』の工場に勤める職人がヴィンテージの製造機械を駆使して作るブーツは、いずれもあくまで堅く、重厚感に富んだタフなアメリプロダクトそのもの。創業当時からの歴史を感じさせるモノ作りと、100年を超える時代を経ても古びることのないスタイルは、まさにアメリカンカジュアルの象徴といえます。
そして、もう1つの特徴がエス・ビー・フット社というタンナーを子会社に持っている点。つまり『レッド・ウィング』はレザーの生産から製品の仕上げまで自社で一貫して行うことができる、世界的に見ても極めて希少なブーツメーカーなんです。自社でタンナーを所有していることは、ブーツに適した革の入手が年々難しくなる中でも『レッド・ウィング』が比較的リーズナブルに質の高い製品を作れる秘密の1つ。これが、頑なにミズーリ州での生産にこだわっている理由でもあります。
初めてでもこれで安心。『レッド・ウィング』を選ぶときの注意点
『レッド・ウィング』のブーツを表現するために“一生モノ”という言葉がよく使われますが、ハードな環境で長年使用されることを想定しているため、他のブーツとは異なる特徴をいくつか有しています。ここでは『レッド・ウィング』ならではの特徴を説明しつつ、ブーツ選びの際に気をつけたいポイントを掘り下げましょう。
▼ポイント1:迷ったらジャストサイズが鉄則。履き込んだ後も想定した、サイズ選びを
『レッド・ウィング』の多くはソール交換が可能で、効率的に製造ができるグッドイヤーウェルト製法で生産が行われています。同製法では中底内部に練りコルクを詰め物として充填し、履き込むうちにコルクが足型に合わせて沈み込んでいくのが特徴。その沈み込みが『レッド・ウィング』ならではのフィット感を実現するんです。ブーツの場合はわざとハーフサイズ大きめで履く人も多いでしょうが、『レッド・ウィング』の場合は比較的コルクの沈み込み量が大きいため、履き込むうちにユルくなりすぎることも……。『レッド・ウィング』の場合はジャストサイズを基本にしつつ、大きめのサイズで履きたいのであればインソールを入れたり、分厚めのブーツソックスとともに履いたりなど対策を取るのが良いでしょう。
▼ポイント2:タンナーを有しているがゆえの利点。履く目的に合った素材を知る
前述のように、米軍にも防水レザーを供給しているタンナーを子会社に持つ『レッド・ウィング』では、同社とともにブーツ用の専用レザーの開発を行っています。そのため『レッド・ウィング』では使用される革には1つずつ名前がつけられており、その特徴が詳しく解説されています。その中から、代表的なレザーをいくつかご紹介しましょう。
レザー1
オロ・ラセット
主に「アイリッシュセッター」に使用されている『レッド・ウィング』を代表的するレザー。セコイアのタンニンを使ってなめされたオイルドレザーであり、1950年代の黄色味の強い色から90年代頃の赤に近い茶色まで、バリエーションに富んだカラーを有しています。現在は1950年代当時の黄色味の強いカラーを再現したゴールド・ラセット・セコイア、1990年代半ばの赤みの強いカラーを日本向けに生産するオロラセット・ポーテージ、90年代に80年代ごろの茶系カラーを再現したオロイジナル、生産をするうちに色味が薄くなったオロイジナルを元に戻したオロレガシーと、一口にオロ・ラセットといってもさまざまなバリエーションが存在しています。
レザー2
ホーソーン・アビレーン
90年代に渋カジの名店「バックドロップ」がこの革を使用してエンジニアブーツを別注し、大人気を博したことでもお馴染み。一般的なスエードは銀面(革の表側の繊維面)が存在しない薄く漉き込んだ革で作ることが多いのですが、『レッド・ウィング』ではラフアウト(銀面のある革で、表裏を逆に使うこと)仕様でスエードに仕立てており、分厚く毛足も長くワイルドな印象を備えています。
レザー3
ブラック・クロンダイク
「PT83」や「PT91」のエンジニアブーツに見られる“茶芯”(履き込むうちに革内部の茶色が現れてくる黒の革)を現代に再現したタンニンなめしのスムースレザー。日本市場からの強い要望によって、2011年に誕生したレザーです。
レザー4
ブラック・シャパラル
なめしの際にガラスに張り付けることで、表面をフラットに仕上げた加工革。ラッカーで表面を保護することで、美しい光沢を生み出しています。主に「ポストマン」シリーズで多用され、強いツヤ感とイージーなメンテナンス性、雨にも強いといった特徴を備えています。
レザー5
フェザーストーン
牛1頭からわずか5%しか取れない最高品質のテキサス産カウハイドを使いつつ、木製ドラムの中でワックスとアニリン染料を染み込ませることでワークとドレスの両方の風格を生み出しています。クロムエクセルレザーのしなやかさを有しつつ、ワークブーツならではのタフネスを実現した革はまさに『レッド・ウィング』らしさ溢れる逸品。2007年誕生と、ブランドの歴史と比較すると新しい素材ですが、オロ・ラセットと並ぶブランドを象徴する素材として位置づけられています。
どれを選ぶ? 『レッド・ウィング』で最初に押さえておきたい定番5モデル
知るほどに「1足は持っておかねば……」と思わされるのが『レッド・ウィング』。さて、ここでは最初の1足に選ぶならコレ! と自信を持っておすすめできる代表的な5つのブーツをご紹介します。
1足目
#877 アイリッシュセッター
「アイリッシュセッター」自体はいわずと知れたブランドの代表作ですが、こちらは50年代に誕生した名作「#877」を店舗限定の取り扱いで復刻したもの。当時と同じ犬タグやボックスのデザインはもとより、現行モデルでは使われていない生産機械を使用するために、定年退職した職人をふたたび呼び集めてメンテナンスしたという気合いの入れようです。アッパーのレザーのカラーも、50年代当時のオロ・ラセットを再現したゴールド・ラセット・セコイアを使用しています。玄人向けに見えますが、これから『レッド・ウィング』にどっぷりハマりたい、というあなたにもおすすめしたい1足です。
ピューリタンミシンで施された2か所縫いの履き口や、2色使いの縫製糸、80年代頃まで採用されていた外羽根のカンヌキ止め補強など、縫製も徹底的に再現しているのはお見事。新品ながらヴィンテージの『レッド・ウィング』と比肩するオーラを放っています。
2足目
#9411ベックマン
創業当時から存在していた、創業者の名前を冠した6インチ丈のレースアップブーツをベースに再現したモデル。上質なフェザーストーンレザーをアッパーに使用し、ワークブーツでありながらドレスの雰囲気も備えた大人の足元に似合う名作として『レッド・ウィング』の中でもトップセラーを記録しているモデルです。
「ベックマン」のソールはこれまでイタリアとメキシコで製造されていましたが、現在は米国内で自社製造されています。製造をアジアなどに移すメーカーも多い中で、思わず「わかっている!」とアメカジファンが膝を打つエピソードでしょう。ソール底面前部の素材には従来品よりも劣化しづらいラバーを採用。合わせて品番も#9016から#9416へ変更となっています。
3足目
#101ポストマン
1954年に米国郵政公社の配達人のために作った「#101」ポストマン。芝生を荒らさないように、フラットで長時間の歩行でも疲れにくいクッション性を備えたソールが特長的です。アッパーに使用しているのは、磨かなくてもツヤを保ち、雨の浸入も防ぐブラック・シャパラル。シンプルかつフォーマルさも備わったモデルのため、ジーンズと合わせてきれいめにカジュアルアップしたり、ジャケットスタイルをドレスダウンしたりする際のキーアイテムとしても活躍してくれます。
なお、シューズ側面に取り付けられている“SR/USA”のタグは、郵便配達員を守るために米国郵政公社が実施している試験に合格した靴にのみ付けることが許されています。言い換えれば、ポストマンを模した革靴は数あれど『レッド・ウィング』こそが本物、といえる証しでもあるんです。
4足目
#2268 エンジニア
20世紀前半に鉄道機関士向けのワークブーツとして開発された「#2268」エンジニア。機械類に引っかかったり巻き込まれたりしないようにシューレースを廃し、パンツの裾をブーツインするべくシャフトとストラップの設計が行われています。1950年代以降はバイカーたちからも愛され、その男らしいルックスから90年代の渋カジやハードアメカジブームのころはマストハブなブーツであったのもご承知の通りです。
ソールはオリジナルパターンのネオプレン・コードソール。その名の通りひも状のナイロンがゴムの中に混ぜ込まれており、それによりオイリーな路面でも高いグリップ性を発揮してくれるソールに仕上がっています。古くは1920年代のグロ・コードソールに由来する由緒あるソールであり、サイドから見たときに覗くナイロン繊維もクラシックさを強調してくれます。
5足目
#8133スーパーソール
筆者が個人的にアメカジ復活の狼煙はこのブーツから上がるのではないか、と期待しているのが「スーパーソール」。もともと米国内のワークブーツとして販売するためにグッドイヤーウェルト製法とインジェクション製法を組み合わせたスーパーソール製法で仕立てられたモックトゥブーツで、これは防水性が高く軽量で生産性に優れた製法でした。現在40代の読者諸兄においてはご存じの通り、80年代から90年代にかけて日本で紹介されたころは「これは『レッド・ウィング』じゃない!」という手厳しい声も上がったものです。しかし、今改めて見ると非常に新鮮。むしろストリートやモードなど、トレンド感のあるスタイリングに『レッド・ウィング』を取り入れるなら「スーパーソール」がフィットするのではないでしょうか。
ウェルトを縫い付けた後で金型に挟み、ソール用樹脂を射出成型して作り上げるのが「スーパーソール」の特徴。アメカジど真ん中のブーツではないがゆえに、さまざまなコーディネートの中にアメリカの風味をプラスするアイテムとして活躍できそうです。ステッチやハトメを除くとオールブラックでまとまっているのも、現代的な洒落感に拍車をかけます。
『レッド・ウィング』は経年変化も魅力。一生モノとして愛するためのお手入れ方法
履き込むほどに表情を変え、しかも自分の足の形にフィットして履き心地が改善されていくのも『レッド・ウィング』の魅力。以下では愛するブーツを長く履き続けるために必要なお手入れとグッズについて、簡単にご説明します。
ブーツの手入れにはオイルやクリーム、ワックスといったコンディショナーが欠かせません。しかし、各社から販売されているそれらのアイテムのうち、どれが良いのか目移りしてしまうこともあるでしょう。幸い『レッド・ウィング』では純正のケア用品がリリースされているため、迷ったときはとりあえず純正品を買っておけばOK。この「オールナチュラル・レザーコンディショナー」は、ミンクオイル(油脂分)に蜜蝋・松ヤニ(ワックス分)といった100%天然素材をブレンドしたメーカー純正の保革オイル。比較的水分少なめで油脂分が多めなので、分厚い『レッド・ウィング』のアッパーにしっかり浸透しつつしなやかさを加えてくれます。
スムースレザーはもちろん、特に起毛革を長く履き続けたいなら取り入れてほしいのが撥水スプレー。履き下ろす前にブーツにひと吹きしておけば水の浸透を防ぎつつ、汚れも弾いてくれるため、クリーンな状態を長い期間にわたってキープすることが可能です。こちらの「レザープロテクター」は、シリコンやフッ素を使用していないレザーにやさしい撥水・保護スプレー。雨の日に履く前はもちろん、普段からときどきスプレーをかけてあげるのがおすすめです。

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