デキる大人におすすめ。オーダースーツ入門<前編>
オーダースーツと聞くと、ちょっと敷居が高い……と思う方が多いのでは。そんな初心者の方向けに、オーダースーツができるまでの全行程を大公開!これは見る価値ありです。
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オーダースーツとは?
「オーダースーツ」と聞くと、「値段が高そう」とか「何をどうオーダーすればいいのかわからない」と思われる方が多いと思います。たしかに銀座の老舗のテーラーは、メニューのない寿司屋に入ったようなもんですよね。値段も敷居も高く、若いサラリーマンが足を踏み入れるのはドキドキものです。
しかし最近は気軽にスーツがオーダーできるお店も増えてきました。みなさんが既製品のスーツを買う専門店で、オーダーを受けているからです。これは一般的に「パターンオーダー」とか「セミオーダー」と呼ばれるもので、お好みの生地を選んだら、すでに定型化されている型紙をベースに各部のサイズ調整をして工場で効率的に仕立てるものです。
最も敷居が高いのは「フルオーダー」とか「ビスポーク」と呼ばれるもので、こちらは熟練のテーラーがお客様の体の各部を細かく採寸して型紙から作ります。縫製も多くの場合、職人が手作業で縫い上げます。「パターンオーダー」より「フルオーダー」のほうが、より細かいところまで調整できますが、その分スーツの知識が必要です。
「肩傾斜を少し低くとったら袖付けはビルトアップさせて、スロートタブにアクションプリーツ、ポケットはフラップ&パッチのベローズにして、マルティンガーラをお願いします」なんて謎の呪文を唱えなくてはなりません。「メンカタメカラメアブラオオメヤサイマシマシニンニクチョモランマ」より難しいです。
一般的なスーツはモデルのようにスラリとした体型の人が着ることを想定して作られていますので、サッカー部で太ももが太かったり、帰宅部でぽっちゃり体型だったり、逆に痩せ型で何を着てもブカブカだったり、そんな方に既製品のスーツがぴったりフィットすることはまれです。
普通体型でないことを自覚されていたら、自分の体型に合わせてオーダーしたほうが明らかにフィッティングのよいスーツが出来上がります。既製品がフィットする方でも「気に入った色柄が見つからない!」という場合、オーダー用の生地見本から選んで自分だけの一着を仕立てることができますよ。
では、さっそくお店に出かけてみましょう。
今回お伺いしたのは、『オンリー』渋谷店
『オンリー』はもともと京都の仕立て屋さんが発祥のスーツブランドです。既製品のスーツを19,000円(税抜)と28,000円(税抜)の2種類から選べる、いわゆる「2プライススーツ」を初めて手掛けたブランドで、全国に約40店舗を展開しています。現在、テーラーメイド「早割」キャンペーンを開催中。
お店で迎えてくれたのは店長の丸山さん。若く見えますが30代です。胸ポケットについているスマイルマークは、スタッフの印だそうです。なるほど、スーツ姿で店頭で商品を見ていたら、ほかのお客さんから「これのMサイズあります?」って聞かれたことありますもん、私。
「あのぉ、スーツのオーダーをしたいのですが」と恐る恐る聞いてみると、丸山さんがにこやかに「テーラーメイドですね、こちらへどうぞ!」と案内してくれました。『オンリー』ではパターンオーダーのことを「テーラーメイド」と呼んでいます。
ステップ1:まずはスーツの生地の色柄を決めましょう!
最初に生地の見本をたくさん見せてくれました。いろいろな生地を名刺ぐらいのサイズに切り出した見本帳で、これを「生地バンチ」と呼びます。
生地には色の濃さや柄の有無など、いろいろな種類があります。似たような色柄でもそれぞれ微妙に違っていて、まったく同じものは2つとありません。
定番色でもバリエーションは無限です。例えばネイビーと一口にいっても、ダークネイビー、ミッドナイトネイビー、ブルーネイビーなど、ニュアンスの違う色が揃っています。グレーでもチャコールグレー、ミディアムグレー、ライトグレーとトーンがさまざまに。
エントリープライスは38,000円(税抜)ですが、ブランド生地やシルク、カシミヤなど、高級素材のものは別料金となります。だんだんどれを選べばいいのか、わからなくなってきたような……(笑)
生地見本が小さくて、イメージがわかないのでは……? 「もう少し大きい生地見本もありますよ」と持ってきてくれたのが、大判の生地見本です。これを肩に掛けたり、胸元にあてたりして、自分の顔色や肌の色とマッチするものを選びましょう。
本当にわからなくなったら、どれが似合うか聞いてみましょう。「こちらの明るい色のほうが若く見ますね。こちらの濃い色のほうが貫禄が出せます。あ、こちらの濃い色のほうは、ちょっとお値段高くなっちゃいますね。ご予算と相談されるなら、こちらのお色でもよいのでは」といったようにアドバイスをしてくれます。
生地決めに悩んでいる間に、オーダーシートが用意されます。ここに選んだ生地やこれから採寸する各部の寸法、その他のディテール仕様をが書き込んでいきます。
ようやく生地が決まりました。派手な色柄ではなくベーシックな紺無地を選びました。同じような紺無地のスーツは店頭にいくつもあるのですが、最終的に選んだのは『オンリー』おすすめの「最強の無地」シリーズの濃紺無地。これなら会社はもちろん冠婚葬祭、子供の入園式や卒園式にも着ていけそうです。
ステップ2:生地が決まったらいよいよフィッティング
まず丸山さんが持ってきたのは、なんとベルト。いや、ベルトならしてますけど……?
こちらは、ウエストサイズがピタリとわかるベルトでした。『オンリー』ではウエストサイズをベースにスーツのサイズを計測します。そのため、今はいているパンツにベルトを通してウエストのサイズを計測し、そのサイズに合うサンプルのパンツをはいて各部の採寸をしていきます。
ウエストサイズは2cm刻みで表示されています。82ですね。
82サイズのサンプルのパンツをはいて、裾丈を調整してもらいます。裾丈は「ワンクッション」とか「スリークッション」とかいったものがありますが、最近は「ノークッション」が一般的です。靴の甲に触れるぐらいのジャスト丈か、ちょっとくるぶしが覗くぐらいの短め丈もアリになっていますので、自分のオフィスのドレスコードと相談して決めましょう。よくわからなければジャスト丈にするのがよいでしょう。
シルエットに関しては、最近は細身が人気です。でもあまり細すぎると、ファッションスーツになってしまいますのでほどほどに。最近は、ビジネススーツのパンツは裾幅18~19cmぐらいが好まれます。『オンリー』でも裾幅補正を行っているので相談してみてください。
裾を折り返すダブルを選ぶなら、4㎝幅がいいでしょう。3.5㎝とか5.5㎝とかこだわる方もいらっしゃいますが、裾幅18~19㎝のパンツには、4㎝ぐらいがちょうどいいのです。
お店で貸してもらったこの靴、サンダルのようなドレスシューズのような? これはスニーカーなどでお店に来てしまったお客様に、鏡で見たときスーツ姿がイメージしやすいように履いてもらうための靴だそうです。
たしかにスニーカーでパンツの裾丈を採寸するのでは、イメージがわきませんよね。スーツをオーダーするときは、自宅から「オーダーしたスーツに合わせたいと思っている靴」を履いていくとイメージがわきやすくなりますよ。
お次は、いよいよジャケットを着て採寸調整します。
こちらもサイズごとにサンプルが用意されています。これを「サンプルゲージ」と呼びます。ウエストサイズが82でしたので、82サイズのジャケットを着用しますが、ウエストのわりに肩幅が広かったり、おなか周りがメタボってる方にはサイズアップしたものを用意してくれます。そのあたりの見極めはさすがプロ!
ジャケットを羽織ったら、前合わせ(袷)の具合をチェック。基本は「ボタンを掛けたときに、握りこぶしがひとつ入るぐらい」ですが、最近は「手のひらがすべりこむぐらい」を好まれる方も多いです。
前合わせを決めたら、まち針を打ちます。まち針には鈴がつけられていて、チリンチリンと鳴るようになっています。針先を刺してしまわないように注意を引くためと、紛失防止のためですね。
続いて、うしろへ回って肩の納まり具合を確認します。う~ん、ちょっと肩幅が合わないみたい。82サイズだとジャケット肩幅が広すぎるようです。
はい、ここで丸山さんが、サンプルゲージの背中にとりつけられているジッパーを上げました。これで肩幅と後ろ身頃の幅が2cm狭くなって、1サイズダウンするんです。最近の若い人は胸板が薄くて細いので、ジャケットがパンツより1サイズ小さいこともよくあります。このジッパー付きのサンプルゲージは、『オンリー』オリジナルだそうです。
袖丈を見てもらいましょう。一般的にはシャツの袖が1.5~2cmのぞくのがジャストサイズといわれます。「いや、俺はもっと長い袖がいい」とか「もっと短くしたいな」など、希望があればいってもいいですよ。
ちなみに親指の先端から9~10cmというのが『オンリー』が、最もスーツが美しく見ると考える独自のサイズスペックです。
先ほど、スーツに合わせたい靴をはいてくことを申し上げましたが、ここでもオーダーしたスーツに合わせたいと思っているシャツを着ていきましょう。
え、どのシャツを合わせたいかわからない? では一番お気に入りのシャツを着ていきましょう。袖丈の調整だけでなく、衿型などに着る人の好みが表れるので、スーツをオーダーする際にも参考になるんです。
反対側の袖もきちんと採寸します。「先ほど測った片側に合わせればいいのでは?」ではダメなんです。人間の体は左右対称という人は珍しく、腕の長さや肩の傾斜の角度は微妙に異なっています。左右の袖丈をきちんと採寸しないテーラーは信用なりませんぞ。
次にジャケットの裾丈を決めるのですが、うしろ裾についているこれは何でしょう? はてメジャーのようですが?
丸山さんが丸いところを手にとって引き出します。たしかにメジャーのようです。
ジャケットの裾から床までの距離を図るメジャーでした。なぜ裾から床までの距離を測るかというと、『オンリー』が考える「スーツの最も美しい着丈」は、ジャケットの着丈(上襟から裾まで)の位置が、裾から床までと同じ長さに設定しているからです。ジャケットの長さは、上襟から床までのちょうど半分にあるべきということなんですね。
ちなみに最近は「ハーフヒップ」と呼ばれる、やや短めの着丈が人気です。お尻の下部分がちょっとのぞくぐらいが適当なので、ここは「今っぽい着丈にしてください」とお任せすることにしましょう。
「長めの裾にしたいんだけど」という方には、別布の裾をジップで取り付けます。2cm幅なので、1cm長くしたいという方は、取り付けた裾を半分に折ってまち針を打っておきます。
ここは、着る人の趣味や体型によっても左右されるところなので、丸山さんに「基本はどうなんでしょう?」「でもって、今の流行りは?」「僕にはどういうのが似合うと思います?」と質問攻めにしちゃってください。きっと、喜んで答えてくれます。
これでスーツの採寸が完了しました。ここまでで半分です。
どこをどう“詰め”て、どこをどう“出す”のかサイズ調整の機微は、冒頭のオーダーシートに細かく記載してあります。でも、まだシートの空欄が多いようです。
はい、スーツオーダーはここまででようやく半分。生地を選んでからは時間にして15~20分ぐらいでしょうか。フィッティングが済んだので、これから細部のさまざまなことを決めていきます。
各部の仕様の組み合わせ方で、自分だけの一着を作るのもオーダースーツの醍醐味ですので、もうしばらくお付き合いください。
photo_Katsunori Suzuki
続きはこちら! 「デキる大人におすすめ。オーダースーツ入門<後編>」
後編ではオーダスーツならではの醍醐味である”ディテール選び”についてとことん解説してきます!
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