謎を解明。ゴアテックスの基礎知識からお手入れまで
誰もが見聞きしたことがあるであろう“ゴアテックス”。機能的な魅力はもちろん、素材やお手入れ方法まで、意外と知らないゴアテックスのアレコレを幅広く紹介します。
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気づけばいつもすぐそばに。頼れるゴアテックスは大人の味方
アウトドアに親しい方はもちろん、衣類に機能性を求める大人の多くが見聞きしたことがあるであろう“ゴアテックス”。コチラの記事でも紹介しましたが、その機能性の高さたるやあっぱれですよね。
参考記事:スタンスミス×ゴアテックス=最強説
手前味噌になりますが、執筆者は“ぽちゃ男”でお馴染みの私、編集フカザワです。
参考記事:ぽちゃ男のトレーニング奮闘記
いやはや、人気のスタンスミスにゴアテックスというスペシャルコラボだっただけに、やはり大反響。素直に喜びを噛みしめつつ、自宅にて素敵な晩酌タイムを過ごしていましたよ。で、飲み過ぎて酔いが回ったせいか、5人の私が脳内トーキングを繰り広げたワケです。
私1「ゴアテックスってやっぱりスゴい」
私2「何がスゴいって、防水透湿よ」
私3「ホントよ。水を防いで水蒸気を通すって、革命でしょ」
私4「だよね。でもさ、それって実際本当なのかな?」
私5「あと、ゴアテックスって結局何なの?」
全員「確かに!!」
……、と気になりすぎて本家本元への取材を敢行しちゃいました。「ゴアテックスとは?」という超基礎事項はもちろん、ゴアテックスにまつわる疑問を一挙解説します。
気になって仕方がないから直撃。いざゴアテックスの本家本元へ
ゴアテックスのアレコレを聞くべく私がうかがったのが、東京・港区の日本ゴア株式会社。そして、無知すぎる私にゴアテックスのことを包み隠さず詳しく教えてくださったのが、同社の市塚夏子さんです。
取材協力:市塚夏子さん
日本ゴア株式会社にてゴアテックス製品など数々のアイテムに関するマーケティングを行う。
ゴアテックスって、何ですか?
■本日はよろしくお願いいたします。あっあのですね、無知すぎて本当に恐縮ですが、本日はよろしくお願いいたします!(編集フカザワ)
「よろしくお願いします」(市塚さん)
■さっそくですが、ゴアテックスとは何ですか? 素材というか生地というか、“ゴアテックスそのもの”を拝見したことがないので、何とも……。
「確かに、ゴアテックスは生地でもあり、生地でもないというのが正しいところ。よく使われている“ゴアテックス製品”という言葉は、ゴアテックスファブリクスを使用した商品という意味で、ゴアテックスそのものではないんですよ。で、ゴアテックスを理解するためにはじめに見ていただきたいのがコチラです」
■……? 何ですかコレは?? 触ってみると若干スルスルっとした感覚ですね。紙ではないけど、ゴムのように伸びるわけでもない……。
「コチラはゴアテックス製品に使用されるフッ素系樹脂の膜です。ゴアテックスメンブレンというもので、この膜がゴアテックス製品の“核”になるんです」
■……???? はい? 大変恐縮ですが、私は根っからの文系小僧なので理解が遅く……。
「大丈夫ですよ(笑)。ここで理解されてしまっては、お越しいただいた意味もないですし、まだ何も伝えられていませんから(笑)」
編集フカザワの前に提示された1枚の膜。このゴアテックスメンブレンこそが、私たちがよく知るゴアテックス製品のキモであることは、市塚さんの説明通り。
しかし、「だから何だ」「膜状になってはいるけど、原料は何?」と思う方も多いでしょう。そんな素朴な疑問を素直に聞くのが私の役目。さっそく原料や特徴について質問したところ、市塚さんから“あるモノ”が差し出されたのです。
■……???? 石、ですよね?
「はい。コチラの“蛍石(ほたるいし)”が、ゴアテックスメンブレンの原料です」
■まさか、私たちがよく知るゴアテックスのもとが石だったとは。なるほど、コチラの蛍石をすりつぶしてコネコネすると、先ほどのゴアテックスメンブレンになるわけですね。ほら、ホットケーキみたいにコネコネして伸ばした感じの……。あっ、私はすこぶるホットケーキが……。
「フカザワさん、フカザワさん。全然違います(笑)」
■へ?
「すりつぶして伸ばしているわけじゃないんですよ(笑)。ちゃんといくつかの工程があってはじめてゴアテックスメンブレンが出来上がるんです」
■でっ、ですよね~?
「はい(笑)。蛍石を砕いて伸ばしただけですと、ゴアテックス最大の長所である“防水透湿”という機能を持たせることが難しくなってしまいますから」
■市塚さん、その“防水透湿”なんですが、どの程度までその言葉が“言葉どおり”なのかを確かめさせていただきたいんです。
「もちろんです。今日は“防水透湿”がひと目で分かる実験を行ってみましょう」
ゴアテックスの強み。“防水透湿”ってどういうこと?
ゴアテックスメンブレンの“防水透湿”を確かめるべく、2つのコップが用意されました。そして、その上には2種類の膜がかけられています。
■さっそく実験ですね!
「はい。コチラの実験を見ていただいたうえで、改めて“防水透湿”とは何かをご説明した方が理解も早いはずですよ」
■楽しみです!
一方にはビニール素材の膜が、もう一方にはゴアテックスファブリクスがかぶせられたコップが。まず、熱湯をビニール素材の膜を張ったコップへと流してもらいます。
コポコポ……。
はい、何だか水晶のようにきれいになりました。編集フカザワは「きれい、きれい!」と興奮しましたが、今思い返すとお恥ずかしい。しかし、そんなリアクションは放っておきましょう。
大切なことは以下の2点。
1、水が漏れていない
2、コップのガラスが曇っていない
つまり水も水蒸気も通していないという状態です。では、もう一方のゴアテックスファブリクスの膜を張ったコップにも熱湯を注いでもらいましょう。
するどい方はお気づきかと思いますが、先ほどのビニール素材の結果とは大きく異なっていますよね? つまり、“水は漏れていないが、曇っている”状態になっているということ。より詳細をお伝えするならば、
水は通さず、水蒸気を通過させている
ということです。熱湯を注ぎ、熱を持った水蒸気がコップの内側に付着することで曇っているワケですね。「これが、防水透湿の機能を証明する実験です」と、市塚さん。感動のあまり、編集フカザワが泣きそうになったことはお伝えするまでもないでしょう。
■見比べてみると違いますね。雨に強く、蒸れにくいとは体感していましたが、今の実験のようなことがゴアテックス製品の特徴なんですね。
「はい。暑かろうが寒かろうが、身につけるモノによって人間は汗をかきますよね? もちろん、日常生活であれば暑ければウェアを脱ぐだけで済みますが微細な体温調整が求められるアウトドアシーンでは考えモノ。登山などが好例ですよね。また雨天時には“雨を防ぎたいけど、暑いのもイヤだ”というニーズだってあるでしょう。誰もが当たり前に感じる願いを叶えるのが“防水透湿”という機能なんです」
■うーん、雨ギライの汗っかき人間である私にとってはありがたい限りです。
ゴアテックスはどのようにシューズや衣類に取り入れられているの?
感動している編集フカザワを前に、市塚さんは次のように話を続けます。
「汗っかきの方はもちろん、そうではない人も“蒸れてイヤだ”という体験をされたことがあるでしょう。でも、そうならないというか何に対しても“気づかない”ことこそが機能美だと私たちは考えます」
■気づかない、ですか?
「はい。雨が降っても、雨が気にならない。蒸れて当然の状態でも、暑苦しさを感じない。これが“快適”という状態だと考えています」
■たしかに、快適に過ごしているときは暑さも寒さも、乾きも蒸れも気になりませんよね。でも、先ほどのゴアテックスはどのようにシューズや衣類に取り入れられているのでしょうか?
編集フカザワの質問に回答すべく、市塚さんが取り出したのは登山靴。アッパーの素材だけでも数種類採用されている登山靴ですが、どのようにゴアテックスが使われているのでしょう?
ちなみに私は「膜状のモノを砕いて、全素材に混ぜ込んでいる」と本気で考えて答えました。
「違います」と笑顔で市塚さんが答える様子は、誰にでも想像できるでしょう。
コチラは前述の登山靴をカットしたモノ。よーく見ると、白い膜が見えますよね? そう、コレこそが冒頭から紹介しているゴアテックスメンブレン。なるほど、このようにアッパーの素材に挟み込んであることで、長所である“防水透湿”を機能させているということなんですね。
市塚さんが続けて取り出したのは「ゴアテックス製品のなかでもおすすめしたいジャンル」と語るビジネスシューズ。こちらも、一見すると何の変哲もないビジネスシューズです。
しかし……。
ソールを見ると、この通り。
穴が空いてます!
編集フカザワ、さすがにツッコませていただきましたよ。「いやいや、市塚さん。コレは雨入ってきちゃいますよね? そりゃそうですよ。だって、穴が空いちゃってるんですもの。いや、もちろん涼しいとは思いますけどね」と。当然、ドヤ顔で。
「たしかに、単純にソールに穴が空いたシューズでは水を通してしまうでしょう。でも、コチラのビジネスシューズももちろんゴアテックス製品の一種です」と答える市塚さん。赤面中の編集フカザワを前に、シューズの形に成形されたゴアテックスファブリクスを手に取り、話を続けます。
「シューズのソールにもゴアテックスファブリクスが行き届いているため、水分は防ぐことが出来るんです。カジュアルなシューズよりも、ビジネスシューズは蒸れが気になりますから。シューズ内の熱気がソールから輩出できるように、複数のメーカーから工夫されたモノが数多く展開されているんです」
ウェア類でもゴアテックス製品が数多くリリースされていますが、基本的にはシューズ類と考え方は同じ。表面の素材(黄緑)と内側の素材(水色)に、ゴアテックスメンブレンが挟まれた“層構造”になっているのです。
■参考:雨の日に備えて。ゴアテックス採用シューズで快適な足元に
写真で紹介しているモノは表地とゴアテックスメンブレン、そして裏地がすべて貼り合わされた3層(3レイヤー)。ゴアテックス製品のなかには、表地とゴアテックスメンブレンのみを貼り合わせた2層(レイヤー)も展開されています。
素材の力だけじゃない。ゴアテックス製品が有する実力の秘密
“防水透湿”の魅力を堪能した編集フカザワは思いました。
「ゴアテックスって、本当にスゴいや」
そして同時に、「全製品にゴアテックスが搭載されたらいいのに」と。コレ、名案じゃないですかね。ただし、その返答は「NO」。その理由に“ゴアテックス製品の真価”が隠されているのです。
■登山靴やビジネスシューズ、あるいはマウンテンパーカーにも採用されているゴアテックスですが、すべてのアイテムに適応されないのはなぜなのでしょうか? 一般人の私としては、全製品がゴアテックスファブリクスを有していたらALL HAPPYになるのではないかと思うのですが……。
「これまでのお話を通じてゴアテックスの魅力を知っていただいたのは本当にうれしいことです。でも“すべての製品に対して”というのは無理というよりかなり難しいというのが正直なところなんです」
■なっ、なぜ……?
「そもそも、ゴアテックス製品というのは“ゴアテックスを採用していればOK”ではないのです」
■へ?
「私たちがお客様へ“プロミス”として掲げているのが“中を濡らさない”ということ。ゴアテックス製品に付属する同社のロゴにもその考え方が反映されています」
■確かに。“保証する”と書かれていますね。
「弊社の保証制度として提示していることでもあるんですよ。そのため、ロゴを提供する製品として認めるためには、いくつかの条件があります」
■それはどのような?
「たとえば、ゴアテックスの機能である“防水透湿”を叶えるため、表地にも透湿素材を採用いただくことが一例です」
■たしかに、ゴアテックスそのものが透湿でも表地が水蒸気を通さなければ意味がないですよね。
「“水が入らないようにする”ため、フードが着いていないウェアもNG。また、縫製にもこだわっていただくことも条件です。熱圧着によるシームテープをはじめ防水性を備えていなければ、ゴアテックス製品として認めることは難しくなりますね」
■そういえば、ゴアテックス製品はどのような手順で製品化されているのでしょう?
「まず、メーカーから製品化前のモノを送っていただき、弊社で試験を行います。ウェアであればマネキンに着用させて、防水性はもちろん透湿性、温度なども弊社の基準に沿っているかどうかを確認します」
■厳しい試験を通過してこその製品化。バックボーンのある製品、やはり魅力たっぷりです。弱点なし!
「それなんです」
■それ、というと?
「ゴアテックス製品は“永久”と思われがちですが、そうではありません。なぜなら、人の肌に触れる以上は汚れが付着します。透湿性を最大限に発揮するためには皮脂などの汚れが大敵。機能性が落ちてしまっては、ゴアテックス製品としてのパフォーマンスが低下してしまうのです」
■つまり、洗濯の必要があるということですね! いや、下世話な話ですがゴアテックス製品はクリーニング屋さんで洗うとか、限定された洗剤で洗うとか……。いずれにしても手間がかかりそうだなと思うんですよね。
「いえいえ(笑)」
■????
最後に知りたい。ゴアテックスのお手入れ方法は?
ゴアテックス製品の魅力にぞっこんの編集フカザワ。まさかの“オチ”とも呼ぶべき衝撃の展開に動揺が隠せません。
■ま、まさか。洗わなくてもいい……?
「それもあり得ません(笑)。付着した汚れは落とすのが当然です」
■とはいえ、クリーニングにしょっちゅう出すのも出費が……。
「そこなんです。多くのユーザーの方が誤解されているのですが、ゴアテックス製品は自宅で洗濯しても問題ないんです。むしろ着用して汗をかいたら洗うというペースがおすすめ。要は、普通の衣服とあまり変わらない頻度で洗濯を行っていただきたいですね」
■洗剤はどうすればいいのでしょうか?
「洗剤に関しても特別なモノはありません」
■市塚さんは何を使っていらっしゃるのですか?
「スーパーや薬局で販売されている、誰もが目にしたことがある洗剤を使いますよ。ネットに入れて、すすぎをしっかりします。ゴアテックス製品に関しては“洗うこと”が目的なので芳香剤も不要です」
■勘違いしていました……。何か、スペシャルな洗剤を使用するのかなと……。
「強いて申し上げるならば、アイロンをかけることくらいでしょうか」
■ア、ア、ア、アイロンですか?
「しっかり洗って、しっかり乾かす。つまり清潔な状態に保つことがゴアテックス製品の機能を保つことにつながるんですよ。表地に撥水性素材が使用されたモノであれば、アイロンをかけることで撥水性も回復します」
あらためて知る、ゴアテックスの魅力
高機能素材として愛用していたものの、実は知らないことばかり。だからこそ、ゴアテックスに対してより一層の魅力を感じた方は多いでしょう。また、洗濯に関する真実にも驚愕。まさか洗剤でジャバジャバと洗うことがマストだったとは……。
いずれにせよ興味深すぎるゴアテックス。編集フカザワの散財ターゲットがまたひとつ増えたことは、お約束です。
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