
30代の君へ。井浦 新さんに聞く、おしゃれな年齢の重ね方
30代から40代への転換期には、意識も体型も変わるでしょう。そんな変化のなかで、人はどのように年齢を重ねるべきか。その回答を、表現者・井浦 新さんに聞きました。
ふと思う。どうやって年齢を重ねるべきか、と……
どうも、編集フカザワです。先日、健康診断に行きましてね。数値に表れる自身の変化とともに、確固たるモノを感じました。
それが、“加齢”です。
20代から30代へと、環境も意識も見た目も変わってきましたからね……。そんな私に神さまがつぶやきます。「どんな40代を迎えたいのかね、チミは」と。コレ、悩んでいる方も多いのでは?
迷ったあげく、毎度お馴染みの職権乱用っぷりで私が憧れる40代のアノ方にお話を聞きました。アノ方とは、10代より俳優業やファッションブランドのディレクションなどさまざまな分野で活躍されている井浦 新さんです。
私的には、映画『ピンポン』におけるスマイル役の好演からファンでした(告白)。ド素人感全開の私は、初対面ながら思わずその気持ちを伝えてしまいましてね。そんな私に井浦さんは「懐かしいですね。でも、うれしいです。今日は何でも聞いてください」と答えてくれたんですよ。「神か」と思いましたが、神でした。汗はかきまくっていましたが、涙も出そうでしたね……。
私の感想はさておき、40代の井浦さんは現在、芸能界での活動と並行して『エルネスト クリエイティブ アクティビティ(以下、エルネスト)』というクロージングブランドのディレクションを手がけています。
ワークテイストやアウトドアなどをミックスさせた同ブランドは、2017年で10周年。そんな記念のシーズンに行われた展示会“十選”に恐縮ながらも突撃し、井浦さんにブランドと自身の10年間についてインタビューを敢行。まずは『エルネスト』というブランドの成長について話を伺いました。
井浦 新さんが手がける、『エルネスト』とは?
井浦さんへ最初に投げかけたのは、ブランド創立のきっかけについて。そもそも、ファッションへの歩みがどんな経緯ではじまったのかをたずねました。
■ファッションへの関心は、自身がモデル業を行ってきた10代から芽生えていたのでしょうか?
「そうですね。当時は“洋服好きの10代”とでもいえるほど、ファッションへの興味が尽きませんでした。古着もDCブランドも、あらゆるテイストをミックスするのが好きでしたね。今にして思えばファッションという世界への初期衝動があったからこその今があるのかもしれません」
■初期衝動がきっかけというのは、具体的には?
「僕はファッションに関して何かを学んだ経験というのがありません。つまり、学校で勉強をしてブランドを立ち上げたワケではないんです。それでも、環境に恵まれました。環境というか、僕の背中を押してくれる仲間がいたんです。20代前半から立ち上げたブランドは、自分が作りたいモノを作ってきました。それがだんだんと変化していったんです」
■どのように変化していったのでしょう?
「当時は皆が喜ぶモノを作ろうと思っても、その知識が僕にはなかった。でも、服作りを続けていくなかで“自分が作ったものが、誰かの機能面でフォローできたら違う喜びがあるな”と気づけたんです」
■その“気づき”が『エルネスト』創立の背景だったのでしょうか?
「要因のひとつではありました。あとは、自身の活動というか、趣味が明確になったことは大きかった。外で遊ぶこと、僕のなかでは旅だったのですが、20代後半から日本をちゃんと知りたいと思い、国内旅行が習慣になっていったんです。旅の初心者というか、はじめはいわゆる日常着で出かけるんですよ。そうすると機能的に足りないことが多くて……。その経験が重なって、旅に出かけられる日常着を作りたいという教訓を反映させたのが『エルネスト』なんです」
自身の経験を落とし込み、機能を追求した『エルネスト』の姿勢に、数多くのブランドが賛同してくれたと、井浦さんは話を続けます。
「『エルネスト』と『スノーピーク』とで展開している『カマエル』というブランドは、僕たちらしいブランドのひとつ。『カマエル』は写真を楽しむ方のための“フォトギア”で、数々のアイテムを展開しています。このバッグ(写真右、黒のバッグ)もそのひとつです」
『カマエル』以外にも、『エルネスト』のアイテムにはいずれも旅を楽しむ井浦さんならではのデザインが。そんなブランド展開から10年を記念して行われたのが、インタビュー当日にお邪魔した“十選”。その概要を伺いました。
「“十選”は、僕たちが行ってきたモノづくりのなかで関わってきた他のブランドやクリエイターとともに、“衣”はもちろん“遊”、“美”、“野”、“旅”などの10のテーマを選定し、作り出したコレクションを発表する場。たとえばこのセットアップがそうです」
井浦さんが紹介してくれたのは、セレクトショップ『A-1クロージング』と日本のアメリカンカジュアルブランド『コロナ』、そして日本屈指のデニムメーカー『カイハラ』と『エルネスト』という豪華コラボの一品。1950年代のヴィンテージデニムをイメージしたカバーオールとジーンズのセットアップは、中空糸を使用しているのでとにかく軽い着心地という点が魅力。(10月発売予定)
ウェアにとどまらず、『エルネスト』では、日本の伝統を大切にしたコラボアイテムを製作。こちらは、福島県会津若松市の伝統工芸を現代の感覚に落とし込んだ『ノダテマグ』とのコラボ。漆掻きの際にできる傷跡とそこから垂れる漆をそのまま生かしたデザインが特徴です。(9月発売予定)
また、こちらの剣玉と専用のホルダーも同展示におけるコレクションのひとつ。剣玉は競技用剣玉の「大空」を作成している『山形工房』とコラボしたモノ。“銀河ブラック”と題した男心をくすぐる武骨なブラックカラーがこだわりの逸品です。専用ホルダーは、『エルネスト』の人気アイテム、シューズホルダーでお馴染みの組紐を使用して作られたモノ。パンツのベルトループに通して、剣玉を写真のように保持することも可能という遊び心に富んだアイテムです。(9月発売予定)
10周年を記念した"祭り"。変化への助走と、今見える景色
「気づけば、10年が経過していました」と井浦さん。
「2016年の暮れですかね。仲間たちと話していたんですよ。“来年は『エルネスト』の10周年”だってね。『エルネスト』はブランド立ち上げから一貫してスタンスを変えずに育ててきたブランドです。だからこそ、記念となる2017年は変わったことがやりたいと思ったんです」
■変わったことというのは?
「僕はもちろん、『エルネスト』の仲間、支えてくれた方々とともに、『エルネスト』オリジナルではなく全アイテムをコラボして作っていく。そんな大がかりなことをやってみようって。僕らにしてみれば“祭り”でした。やりたくてもなかなかできないですからね」
笑顔で話す井浦さんは、次のように話を続けてくれました。
「10周年というのは、最高の理由づけになりました。今までの『エルネスト』とは違う、僕たちの変化を展示会に来てくださるお客様に伝えたかったんです」
■来客される皆さまは、どんな反応でしたか?
「それがもう、良い意味で裏切られました。“変わらないね”としかいわれない。“変わったね”という声があがることはまったくなかったんです」
■井浦さんの姿勢が変わらなかった、という意味では?
「たしかに、そうかもしれません。でも、そもそも今回の展示会は“ブレブレ”の展示会にしたかったんです。一緒にモノ作りをさせていただいたブランドの色に『エルネスト』が染まって、いかに“らしくない”アイテムを楽しんでもらえるかが勝負でした」
■それでも、そんなスタンスが井浦さん“らしい”と?
「コラボによって『エルネスト』の色を消していくことが今回の挑戦でした。変わることを楽しもうと思ってふたを開けてみたら、何も変わっていないと。僕自身がその回答を知りたいくらいです(笑)。でも、面白いですよね、そういう部分が。本当に面白い」
『エルネスト』の創立から10年。そんな年月を経ても、モノ作りの姿勢は変わらなかったと井浦さんは答えます。
しかし、意識だけが変わるファクターではありません。当然、自身を取り巻く環境も変わるでしょう。そんな率直な疑問と、自身の変化について質問を続けました。
30代から40代へ。変わったものと、変わらないもの
■ブランドに対する姿勢は変わらない。それが10年目の答えだと思うのですが、環境も変わらなかったのでしょうか?
「環境はやはり変わりました。『エルネスト』スタート時は、僕を含めて3名、しかも、アパートの1室で。そこからスタッフの出入りがあって、今は5名でやっています。でも、スタンスは変えずにやってこられたので、変化の有無がどうこうよりもただただ環境に恵まれたと、感謝の日々です」
■井浦さん自身の意識に変化はあったのでしょうか?
「洋服が好きっていう初期衝動は今も感じているんですけど、進化していく自分に驚いていたいんですよ、僕は。だから、これからも進化し続けていきたいという思いは強いです。進化し続けていけば、まわりの仲間もお客様も楽しんでくれますから」
自身のブランドに対する想いを、言葉を選びながらうれしそうに語る井浦さん。そんな彼の日常着や定番ギアをたずねました。
井浦さんが紹介してくれたのは、“これさえあれば、東京のビル群から自然豊かな場所に行ける”という“らしい”アイテム。『カマエル』のセットアップや『キーン』のシューズ、『ペンタックス』のカメラの3種は、いずれも自身の日常着と常備カメラとして愛用しているそう。
インタビュー当日の着こなしは、自身のブランド『エルネスト』が中心。いずれも「自身の肌に合うモノ」として重宝しているそう。
そんなインタビューを経て、編集フカザワが感じたのは「井浦さんのように、かっこいい大人になりたい」という何ともシンプルな思い。執筆中の今現在においては気恥ずかしい質問を、当日の最後にぶっちゃけてしまいました。
30代の君へ。井浦 新さんが贈るメッセージ
■井浦さん、井浦さんのようにおしゃれな大人に憧れる読者は多いと思うんですよ。
「えっ?(笑)」
■いや、年齢を重ねてもかっこいい人に憧れるのは当然じゃないですか。何か意識的に行っていることはあるんですか?
「僕は年齢を重ねることに対して、何ひとつマイナスを感じていないんですよ。シワが増えることも、体型が変わることも。むしろ、役者としても転換期を迎えていて“繊細な役柄”からは卒業したいんです。むしろ、体型を大きくして和装が似合う日本男児になりたい」
■!? 意外でした……。体型を大きくするためのトレーニングをされているんですか?
「トレーニングはしていますが、それは旅を続けるための基礎体力を維持するくらいのものです。やっぱり外で遊んでいたいんですよ(笑)」
そんな回答に納得の私。最後に、当記事のタイトルでもある“おしゃれな年齢の重ね方”を聞きました。
「すみません(笑)」
と、開口一番で笑う井浦さん。その理由をたずねます。
「僕は、おしゃれを追いかけた時点でおしゃれじゃないと思っていて。いかに自分が好きなモノを明確に持っていて、それを続けているかということが大事なんです。ライフスタイルというか、生き方に一貫性があると“センスがあるな”って。そういうことがおしゃれなのかなって。役者としても、作り手としても僕は僕の軸をありありと発信していきたいです」
もはや、ショックを通り越して感動した編集フカザワ。そして井浦さんは、このように言葉を加えました。
「この記事も危ない(笑)。おしゃれというワードが入った時点で、僕は読まないから」
かっこいい大人になりたい。そんな編集フカザワに、確かな回答を残してくれた井浦さん。
「僕は読まない」と笑顔で話しながらも「ぜひその発言は入れてほしい」と加えてくれたユーモアはもちろん、“ブレないこと”、“好きなモノを続けること”というアンサーは、30代から40代へ、そして40代から50代へと年齢を重ねる男性に響くのではないでしょうか?
「さてと」と、自身の軸を過去から現在へと思い返そうと決意する、編集フカザワなのでした。
photo_yuri yasuda
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