
押さえるべき革靴の種類。デザインの違いと履き分け方
衣類はもちろん、足元もTPOをわきまえたいもの。そこで押さえるべきは、革靴の種類です。デザインの違いや活用シーンなど、大人として知っておくべき基本を解説します。
何でもOKじゃない。革靴のデザインとシーンの関係を押さえよう
革靴を購入する時や履く時に、何を基準にしていますか? もしも見た目だけの好みでセレクトしているならば少々リスキーかもしれません。なぜなら本来、革靴はトゥのデザインや、ひもの有無、さらにはひもを通す穴部分の作りによってシーンがある程度限定されているアイテムだからです。
例えば、『クロケット&ジョーンズ』の「モールトン」。大人の男性に人気のUチップシューズですが、こちらのシューズはどんなデザインでどのようなシーンに向いているかを即答できるでしょうか? シューズのデザインやシーンによっては不向きなモノもあるので、知識が曖昧な方はぜひ基本から見直してみましょう。
革靴のデザインの基本。外羽根と内羽根の違いとは?
ひもで結ぶタイプのレースアップシューズには、羽根開き部分に外羽根と内羽根の2種類があります。内羽根は、ボディからひと続きで上部から切れ込みが入ったモノで、フォーマルに分類されます。冠婚葬祭には内羽根がマストと言われており、黒を選べばまず間違いはありません。
一方、外羽根はひもを通す穴部分のパーツが靴本体とは別に扉状に取り付けられているモノを指します。内羽根に比べて開きが大きい分、シューレースによるフィットの調節が容易なのがメリットです。カジュアルに分類されるので、普段履きや平時のビジネスに適しています。
押さえておきたい革靴のデザインは6種類。特徴とおすすめを紹介
外羽根と内羽根に加えて、革靴にはひもなしのスリッポンやベルトでとめるモンクストラップなど複数の種類があります。
■プレーントゥ
■ストレートチップ
■ウイングチップ
■Uチップ
■スリッポン
■モンクストラップ
当記事では、上記6タイプそれぞれの特徴とおすすめのシューズを解説していきます。革靴選びに迷っている方や、足元のTPOをしっかり学びたい方はぜひチェックを。
▼種類1:プレーントゥ
プレーントゥとは、トゥが靴のボディとひと続きで、切り替えや飾り穴のないモノ。なかには、1枚革でアッパーを成形したホールカットと呼ばれる内羽根も含みます。外羽根のものは、穴数が少ないほどドレッシーに見え、2穴や1穴のものはトゥまでの距離があるためスマートに見せられるのが特徴です。
4穴や5穴となると、装飾性を排したユニフォーム靴としてワークシューズやミリタリー靴などに使われることも多くなります。
現代のプレーントゥは羽根の内外を問わずビジネス靴や普段履き、フォーマルにも履くことができます。ただし、トゥがぽってりと丸いものほどカジュアルな印象に見えることは忘れずに。スーツに合わせるならば、トゥは適度にスマートかつドレッシーなモノを選びたいところですが、つま先がとがりすぎているものは避けましょう。
おすすめ1
『バーウィック』コードバン プレーントゥシューズ
1707年、スペインにて創業した老舗シューメーカーの外羽根プレーントゥ。素材にはコードバンを使い、重厚感たっぷりな仕上がりとなっています。グッドイヤーウェルト製法かつソールには英国製のダイナイトソールを採用しているため、本格靴としてのディテールも十分。雨の日でも歩きやすいゴム底です。
おすすめ2
『マドラス』外羽根プレーントゥビジネスシューズ
優雅なイタリア靴のイメージを、日本の技術で再現した『マドラス』。素材感にこだわった上質な牛革を贅沢に使用し、シンプルでありながら高級感たっぷりな足元を演出してくれます。足入れの良いラスト形状を採用し、履き心地も快適なので日々のビジネスシーンで重宝すること間違いなし。もちろん、オフでのジャケパンスタイルにもマッチします。
▼種類2:ストレートチップ
トゥ部分が真一文字に切り替えられ、キャップが取り付けられたようになっている靴。このキャップ部分に装飾がなく、切り替えのラインも縫い糸が見えるだけで穴飾りなどがないシンプルなモノを限定してストレートチップといいます。
ちなみに、ストレートチップがフォーマルと言われる理由は諸説存在します。かつてプレーントゥを1枚の革で美しく整形することができなかった時代に、別革で先端をくるんだことによるもの……というのも1つの説です。何にせよ、ストレートチップの整形は当時の職人の腕の見せ所だったわけですね。
ストレートチップは、やはり冠婚葬祭用の内羽根式を1足は押さえたいところ。ビジネスシーンにもハマるデザインですから、大人として靴箱に用意しておいて損はないでしょう。
おすすめ1
『ユニオンインペリアル』ビジネスシューズ
『ユニオンインペリアル』は、イタリアの靴作りの技法をいち早く取り入れた日本靴のブランドとして知られています。手作業でアッパーや中底、ウェルトを縫い付けるハンドソーンウェルテッド製法により底の返りが良く、履きやすいと定評があります。見た目も機能も申し分のないシンプルな1足として、ワードローブに組み込んではいかがでしょうか。
おすすめ2
『ジャラン スリウァヤ』ストレートチップシューズ
イギリスで経験を重ね、インドネシアで本国仕込みのグッドイヤーウェルト製法の靴を展開する『ジャラン スリウァヤ』。ストレートチップの美しいフォルムと、確かな仕上がりは英国靴の気品をそのまま映し出しています。それでいてリーズナブルな価格設定なのも魅力。はじめの1足としても、国内のセレクトショップや百貨店で人気のブランドです。
▼種類3:ウイングチップ
トゥに鳥が羽を広げたようなW型のキャップが切り替えられているのが、ウイングチップの特徴。穴飾り(ブローグ)が施されたり、切り替え部分にピンキングと呼ばれるギザギザのカットが施されるなど、デザインが入ることも多くあります。これは野山を歩く際に靴に傷がついても目立ちにくくするため、またはトゥを保護しつつ革の間に湿気がたまらないようにするためとも言われています。
ウイングチップはドレス靴というよりもワークシューズ的な役割の靴に付けられた装飾と言われているため、カジュアルなウェアとも好相性なんですね。
そんなワークシューズ由来のウイングチップ。通常のビジネスシーンに取り入れるのには問題ありませんが、フォーマルな席には不向きです。英国のカントリーシューズによく見られるデザインなので、大人のカジュアルスタイルに合わせる革靴としてスタンバイさせておくのがベターでしょう。
おすすめ1
『トリッカーズ』バートン ウィングチップ カントリーブーツ
『トリッカーズ』は英国王室御用達のシューメーカー。英国靴の聖地ノーサンプトンに現存するグッドイヤーウェルト製法を行う最古の工場としても知られる、伝統的な英国靴の老舗です。フルブローグと呼ばれる全面に穴飾りを施したウイングチップは、英国貴族が野山を歩くときの伝統的なカントリーシューズを今に伝える1足。同ブランドならではの気品ある色味、エイコンはエイジングの過程も楽しみたいところです。
おすすめ2
『リーガル』ビジネスシューズ
ウイングチップの両端がサイドに延長してヒールまで届いている形状は、ロングウイングチップと呼ばれるアメリカンウイングチップの定番デザイン。幅が広く、稿が高い日本人の足の形状に合わせた木型使いは、日本の老舗靴メーカー『リーガル』ならではでしょう。ガラス加工が施された美しい光沢を放つアッパーは、お手入れが簡単なこともうれしいポイントです。
▼種類4:Uチップ
Uチップとは、甲の上にU字型の革を使ったタイプのこと。U字の革を縫い合わせる部分を“モカ縫い”といい、縫い合わせ方によって「乗せモカ」や「伏せモカ」、「つまみモカ」などさまざまな呼び名があります。冒頭で紹介した『クロケット&ジョーンズ』の「モールトン」もUチップの一種です。
Uチップは、北欧の漁師の靴やアメリカのネイティブのモカシン、あるいはゴルフ用のスポーツシューズなど、ハードな使い方をするのが前提とされています。外羽根式が一般的で、革靴の分類としてはカジュアルな印象です。しかしこれを逆手に取って、ドレス靴として履くのもアリでしょう。『クロケット&ジョーンズ』もそうですが、モカ縫い部分に緻密な職人技術が落とし込まれているブランドなら、プレーントゥなどと変らず端正な足元を演出してくれます。
おすすめ1
『クロケット&ジョーンズ』モールトン
多くのセレクトショップや、高級百貨店で扱われる英国靴の老舗『クロケット&ジョーンズ』の代表的なUチップモデルがこちら。こちらは頑強なリッジウェイソールを搭載した別注モデルですので、カジュアルなスタイリングにマッチします。革靴はレザーソール! というこだわりがある方もいらっしゃるでしょうが、サイドから見たときにソールが薄く見えるリッジウェイソールもクリーンな足元を作ってくれますよ。
おすすめ2
『ヤンコ』Uチップ
『ヤンコ』はスペインにおける靴の聖地、マヨルカ島を代表する名門シューメーカー。程良くドレッシーで、程良くカジュアルというルックスが普段使いに重宝します。甲が高く、捨て寸が少なめに設計されているため、日本人の足型に馴染みやすいのがうれしいところですね。
▼種類5:スリッポン
スリッポンと聞くとスニーカーを思い出す方も多いでしょうが、ひもなし靴の総称です。特に、短靴を指します。Uチップのスリッポンに甲革をあしらったものをローファーと呼び、コインローファー、タッセルローファーなどもその一種とされています。
ひもなしで足を滑り込ませるだけで履けるので、本来はジャケパンなどのカジュアル用とされてきました。しかし昨今はドレスとカジュアルの垣根が曖昧になってきていることもあり、スーツスタイルの足元に素足でローファーというスタイルも目立ちます。
おすすめ1
『フェランテ』ローファー
『フェランテ』は、スリッポンを得意とするイタリアはナポリのシューメーカー。スマートなトゥが特徴のドレッシーなスリッポンに定評があります。カラーバリエーションや素材が豊富で、カジュアルに白パンで合わせるイタリアンスタイルも得意。薄手のビブラムソールを装備しているため、見た目にスタイリッシュなだけでなく防滑性も備えています。
おすすめ2
『ジーエイチバス』ローガン
世界で初めてローファーを作ったメーカーとして知られる『ジーエイチバス』。故・マイケル ジャクソン氏も愛用していたというエピソードをご存じの方も多いでしょう。話題性だけではなく、履き込む度に足に馴染んでいく革の質感やシンプルな見た目など、その実力も十分。コストパフォーマンスに優れているのも同ブランドの特徴です。オン・オフ兼用のローファーに迷ったら、まずはこちらを。
▼種類6:モンクストラップ
「モンク」とは「僧侶」の意。僧侶が履く靴が原型といわれるこの靴は、甲革をベルトで留めるデザインが特徴です。このベルト部分にはさまざまな仕様があります。ベルト1本のシングルモンク、ベルト2本のダブルモンク、ストラップが横に取り付けられるサイドモンクなどがそれにあたります。
よりシャープな印象を与えられるのはシングルモンクすが、現在あまり見られないかもしれません。主流となってきているのは、ベルト2本でとめるダブルモンクストラップ。稀代のウェルドレッサー、ウィンザー公が特別に作らせたもので、シューズのドレスコードとしてはスーツにもジャケパンにもカジュアルにも合わせられるとされています。
おすすめ1
『チャーチ』ウェストバリー
英国靴最大の生産地、ノーサンプトンのシューメーカー。現在はイタリアの高級ブランド、プラダ傘下です。こちらの「ウェストバリー」は、昔ながらのシングルモンク。無駄をそぎ落としたプレーントゥのシングルモンクは、大きめのバックルが特徴的です。『チャーチ』ならではのポリッシュドバインダーカーフにより、雨の日の機能性も十分。
おすすめ2
『パラブーツ』ウィリアム
ダブルモンクは英国のウィンザー公が、ロンドンの『ジョンロブ』にオーダーしたのがその最初。しかしその『ジョンロブ』から依頼を受けてダブルモンクを完成させたのは、パリの会社=ルポンヴェール社、つまりこのパラブーツの親会社だというのが定説です。その証拠に、『ジョンロブ』も『パラブーツ』もダブルモンク甲革の形状が酷似しており、しかも名前はともに「ウィリアム」といいます。

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