時計修理技能士に教わる、愛用ウォッチのメンテナンス方法とその必要性

時計修理技能士に教わる、愛用ウォッチのメンテナンス方法とその必要性

お気に入りの腕時計、いつまでも美しく保つ努力を怠っていませんか? 服を洗濯したりアイロンがけするように、大切な腕時計も、日々のケアが大切です。

横山 博之

2017.09.01

インタビュー記事
アナログ腕時計
ハウツー
ケア用品

その腕時計、日頃からきちんとお手入れしてますか?

その腕時計、日頃からきちんとお手入れしてますか?

風合いを損なわないよう洗濯したり、専門店にクリーニングに出したりと、衣類なら当たり前のように購入後はケアしますよね。ところが腕時計になると、一切のケアをしていないという人も。数回使っただけでは汚れやニオイは気にならないかもしれませんが、使用によるダメージが蓄積され、気づいたときには取り返しのつかない状態に陥ってしまうことも。でも、家でできるちょっとしたお手入れを心がけておくだけで、こうした事態を回避できます。

部品交換や高額な修理代が必要となってしまう前に、適切なメンテナンス術を身に着けるべく、専門店「ウォッチ・ホスピタル」の曽根さんに腕時計のお手入れについて伺ってきました。

取材協力:ウォッチ・ホスピタル 曽根健人さん

取材協力:ウォッチ・ホスピタル 曽根健人さん

オーバーホール・パーツ交換・電池交換の専門店「ウォッチ・ホスピタル」勤務の時計修理技能士。これまで高級スイス時計からカジュアル時計まで、幅広いモデルを手がけ、知識・経験ともに豊富。

知らないと損をする! 腕時計のお手入れの重要性とは

「一種の機械なんだから、自分がやれることなんてないのでは?」「ステンレスってサビに強いんでしょう?」というのは早とちり。精密機械である腕時計でも私たちがお手入れできることはありますし、ステレンスでもケアを怠ればサビてしまうんです。専門家である曽根さんに聞く、適切なメンテナンス術とは?

知らないと損をする! 腕時計のお手入れの重要性とは

■そもそも自分でメンテナンスする必要あるの?

「腕時計は定期的なお手入れをされていれば、良好な状態に保てます。『精密機械だから手が出せない』と関心を持たないのは、とても勿体のない話。確かに、私どものような専門家でないと直せない領域はありますが、それがすべてではありません。日々のメンテンナンスによって見た目を左右する外装部分を美しくしておけますし、内部の精密機械部分に生じやすいトラブルを抑制させることもできるんです」

知らないと損をする! 腕時計のお手入れの重要性とは 2枚目の画像

■どうやって手入れすればいい?

「具体的なメンテナンス方法はこれから詳しくお伝えしますが、特別な知識は必要ありません。基本は、ていねいに汚れを拭き取るだけ。それだけで腕時計は購入時の状態に近づくことができます。道具も100円ショップや近くのお店に売っているようなものばかりで、1,000円もしないで揃えることができるでしょう。時間も5分から10分程度で済みます。できれば着用するごと、または1週間に一度のケアを心掛けるようにしてください」

知らないと損をする! 腕時計のお手入れの重要性とは 3枚目の画像

■ちなみに、手入れをしていないとどうなる?

「お手入れをサボっていると、まず外観がひどく汚れていきます。これは主に、皮脂汚れや汗に由来するモノ。ブレスレットのコマやケースバックの隙間にこびりつき、ひどくなると汚れも発生させます。この状態が続くと、サビが生じてしまうことも。これは最も避けるべき事態です。素人ではサビの除去が難しく、見た目が悪くなるうえ、内部にまでサビが広がれば致命的なダメージになりかねません」

プロがレクチャー! 腕時計の正しいお手入れ方法

では、実際のどのようなお手入れをすればいいのか? ここからは曽根さんの指導のもとで、その方法をじっくりと解説していきます。

▼毎日行いたい。基本のお手入れ

腕時計のお手入れは、着用した後に行うのが基本。なぜなら、付着した皮脂汚れや汗を素早く拭き取ることがなによりも大切だからです。毎日することができなくても、1週間に一度はお手入れを行うように心掛けましょう。帰宅後、いつもの定位置に腕時計を置く直前に、サッとお手入れをするよう習慣づけられるとベストです。

<用意するモノ>

<用意するモノ>

■全体を拭き上げるためのクロス
■細部の汚れを除去するつまようじ
■汚れを吹き飛ばすブロアー
■こびりついた固着汚れを落とす金ブラシ(普段の汚れ落としはナイロン製ブラシや歯ブラシなどでOKです)

「基本となるのがクロスで、セーム革でも代用可能。細かな繊維が落ちるタオルは故障の原因になりかねないので、避けましょう」

1.ケースを拭く

1.ケースを拭く

「乾いた清潔なクロスを使い、親指の腹で押すような感じでケースを拭きます。力を込める必要はなく、全体をもれなく拭きましょう。凹凸の多いケースの場合は、つまようじやブロアーも併用するのが効果的です」

2.ガラス面を拭く 

2.ガラス面を拭く 

「ケースと同じく、指の腹を使いクロスでガラス面を吹いていきます。硬いゴミを押し付け、ガラス面を傷つけてしまわないよう、サッと拭き上げるのがポイントです。なお、ガラスに傷がついてしまうと研磨で直すことはできず、交換するしかありません(プラスチックガラスを除く)」

3.裏ぶたの汚れをつまようじでかき出す

3.裏ぶたの汚れをつまようじでかき出す

「皮脂汚れや汗が付きやすい裏ぶたは、特に重点的にお手入れを。まずはクロスで全体を拭いた後、つまようじでケースの隙間やブレスレットの付け根などの汚れをかき出しましょう。木製のつまようじは適度に柔らかく、傷をつけません」

4.ブレスレットの汚れも拭き取る

4.ブレスレットの汚れも拭き取る

「クロスを使ってブレスレット全体を拭き上げます。腕時計を保持するのに手で直に触ると、そこにも皮脂汚れが付いてしまうため、写真のようにクロスを使って保持しながら吹き取るのがベストです」

5.ブレスレットのコマの汚れは念入りに 

5.ブレスレットのコマの汚れは念入りに 

「ブレスレットのコマの隙間は、最も汚れがたまりやすい箇所。クロスだけでなく、つまようじも使ってしっかり汚れを落としましょう。ここに汚れがたまることが、コマの動きが悪くなる原因になります」

6.つまようじで落ちないものはブラシでこする

6.つまようじで落ちないものはブラシでこする

「汚れが固着してしまった場合は、金ブラシを使ってこすり洗いをしましょう。これはヘアライン(筋目仕上げ)のブレスレットではとても効果があります。鏡面仕上げのブレスレットにはナイロン製のブラシを使ってください。なお使用するときは、ガラス面にあてないよう注意を」

※ステンレスの表面には酸化皮膜(保護膜)が施されていて錆びに強いため、金ブラシでこすっても錆びることはありませんが、酸化皮膜が薄くなっていたり剥がれてしまっていると錆びる原因になりますのでご注意ください。

7.ブロアーでゴミを吹き飛ばす

7.ブロアーでゴミを吹き飛ばす

「固着していない隙間のゴミを取るには、ブロアーで風を吹き付けるのも効果的。一瞬でゴミが吹き飛ぶので、お手入れも簡単です。ただ、これだけでは粘度のある皮脂汚れは落ちにくいので、クロスやつまようじも併用しましょう」

8.リューズを動かす

8.リューズを動かす

「電波ソーラーのようなモデルの場合、あまり使用することのないリューズですが、定期的に動かしておくことも重要です。可動部を動かすことで潤滑油を巡らせ、汚れの固着やサビの防止になります。なお、リューズの動きに少しでも異変を感じたら、オーバーホールに出すのが賢明です」

▼腕時計のディテール別に知っておきたいお手入れのコツ

ここまで、最も一般的なブレスレットタイプの3針モデルをサンプルとしてご紹介してきました。逆回転防止ベゼルが付いたダイバーズやプッシュボタンの多いクロノグラフなど、タイプの異なるモデルのメンテナンス術についても、その一端をご紹介します。

「ダイバーズモデルや一部アウトドアウォッチで搭載される、回転ベゼル。ラチェットと呼ばれる内部の歯をかみながら、カチカチと明瞭なクリック音を鳴らして回転する仕組みですが、定期的に動かさないと汚れが固着し、動かなくなることも。着用した後、何度か回転するよう習慣にするのがいいでしょう」

「2時位置にスタート/ストップボタン、4時位置にリセットボタンが付いたクロノグラフモデル。優れた計時機能は腕時計の精密性を誇るものですが、その一方、日常で使う機会はそうそうないのが実情です。あまりに長い間使用していないと、精密さにも狂いが生じてしまうもの。やはり定期的に動かしてあげることが大切です」

▼ベルトの種類別のお手入れ方法もチェック

腕時計のベルトには、ステレンススチールやチタンといった金属と、カーフやクロコダイルなどのレザー、ラバーやポリウレタンといった種類があります。汚れを拭き取るという考えは共通ですが、そのアプローチ方法は若干の違いがあります。それぞれのお手入れ方法を見ていきましょう。

「最もお手入れがラクなのが、この金属ベルト。クロスやつまようじ、金ブラシを使ってゴシゴシと汚れを取りましょう。水に強いので、メガネのクリーニングなどにも使われる超音波洗浄機を使って水洗いすることも可能です。ただし、浸水のリスクがあるためケースは浸さないようにしてください」

「革ベルトは繊細なため、つまようじや金ブラシの使用はご法度。クロスのみを使い、汚れをていねいに拭き取りましょう。特に肌に直接接する裏側を重点的に。表面は、あまり強くこするとコーティングを傷めてしまうので、ソフトに。なにより湿気に弱いため、内部に浸透した湿気を除去するよう乾燥させて保管することも大切です」

「天然ゴムを主原料としたラバーベルトや、プラスチックの一種であるポリウレタンベルトは、ダイバーズモデルやカジュアルウォッチに多様されるモノ。水に強いイメージがありますが、長時間水分にさらされると加水分解を起こしたり、割れが発生してしまうことも。そのため、クロスでしっかり汚れと水気を拭き取り、乾燥させておきましょう」

意外とやりがち。腕時計の間違ったお手入れ&扱い方

最後に、腕時計を取り扱う際にやってはいけないことも聞いてみました。知らず知らずのうちにやってしまっていた……なんて方も多いのでは。

防水だからと水で洗うのは危険

防水だからと水で洗うのは危険

「機械に水は天敵。わずかでも内部に浸水してしまうと、それが原因でサビついてしまい、動かくなる原因になります。昨今の腕時計は一定の防水性を備えていますが、それでもお手入れの際に水に浸すのは高リスクなので、避けましょう。たとえ20気圧防水の高防水モデルでも、蛇口から勢いよく噴出した水流は局所的に20気圧を超える場合もあり、浸水の危険性があります」

スマートフォンと一緒に置く

スマートフォンと一緒に置く

「精密なパーツによって動いている機械式腕時計の場合、強力な磁力や電波を発するモノの近くに置いていると帯磁してしまい、正確に動かなくなってしまいます。そのため、スマホや電子レンジなどの近くに置くのはやめましょう。帯磁してしまった場合は、専用の機械によって脱磁する必要があります」

大切な時計だからこそ。長く使うために日々のお手入れを行いましょう

大切な時計だからこそ。長く使うために日々のお手入れを行いましょう

「末永く腕時計を愛用したいなら、メンテナンスの頻度に関わらず、専門家による定期的なオーバーホールは必須です。しかし、普段から汚れやサビを放っておくとオーバーホール以前に大幅な修理やパーツ交換が必要になることも。毎日のお手入れを行うことで良好な状態に保っておけますし、ていねいに磨いてあげることで愛着も深まっていくもの。ぜひ適切なメンテナンス術を身につけて、腕時計を大切にしてください」

都内に3店舗を構え、Webからの申し込みも日本全国から受け付けているオーバーホール・パーツ交換・電池交換の専門店。見積もり無料、オーバーホール申し込みは送料無料。リーズナブルな価格での時計修理を提供する。

photo_Yuta Kono

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