
旬の真っ只中。クラークスのワラビー、そのコーデ法から種類までを徹底リサーチ
快適であることがこれまで以上に価値を持つ現代において、人気が再燃している名靴といえば『クラークス』の「ワラビー」。派生モデルもフォローしつつ、その今に迫ります。
革靴以上、スニーカー並みの履き心地が面白い。『クラークス』には「ワラビー」がある
「ワラビー」を深掘りしていく前に、まずは『クラークス』というブランドのおさらいから。日本においてはアメカジの足元を完成させる靴として認知度の高い『クラークス』ですが、その実は1825年にイングランド南西部にあるストリートという町の靴工場として創業した英国ブランドです。創業当初の看板商品はシープスキンで仕立てられた柔らかな履き心地のスリッパで、そこからシューズ業界へと進出しました。ブランドの名が世界に知れ渡ることになったのは、1950年のこと。クーラク家の4代目であるネイサン・クラーク氏が、ビルマ駐屯の陸軍兵士時代に友人に見せてもらった柔らかい革靴に着想を得て「デザートブーツ」を開発します。
当時の男性靴といえば、ドレスシューズか軍から支給されるアーミーブーツ、あるいは作業靴といった選択肢のみでカジュアルシューズという概念自体が存在しませんでした。そんな時代だったからこそ、かつてない快適さを実現した「デザートブーツ」が画期的なシューズとして脚光を浴びることに。同作はアメリカでも大ヒットし、『クラークス』自体がカジュアルシューズの代名詞として認知されるようになったわけです。その後、1966年には「ワラビー」、1980年には「ナタリー」といったヒット商品を発表。いずれも、スニーカーに比肩するコンフォート感と、英国の香り漂う程良いドレス感を兼ね備えた絶妙なバランスのカジュアルシューズであることは皆さんよくご存じでしょう。そして、コンフォートさが重視される現代においても、特別な存在感を放つブランドとしてその地位を確立しています。
コンフォート靴の代名詞である『クラークス』のラインアップの中でも一、二を争う快適さを誇るのが、袋状のモカシンアッパーで足をやさしく包み込む「ワラビー」です。スニーカーとはまた違う、クッション性に優れた履き心地と歩きやすさ、そしてタイムレスにしてジェンダーレスなスタイルの秘密を読み解いていきましょう。
『クラークス』の「ワラビー」。その基本から素材バリエーション、サイズ感まで
冒頭でも触れたように、「ワラビー」が誕生したのは、1966年のこと。第二のデザートブーツを目指して開発された靴であり、デンマーク発祥の靴をモチーフに発案され、当初は『クラークス』傘下の靴メーカーであったアイルランドの『パドモア&バーンズ』の工場で製造していました。ちなみに「ワラビー」というモデル名は、アメリカとカナダでの販売を始めるときにつけられたのだとか。モデル名の由来は、袋縫いのモカシン靴特有のやさしく包み込まれる履き心地を、カンガルー科の動物であるワラビーがお腹の袋の中に子供をやさしく入れて育てることになぞらえたものです。
▼快適な履き心地を実現する、袋状のモカシン縫いと肉厚クレープソール
「ワラビー」特有のぽってりとしたフォルムを特徴づけ、快適さをもたらす要因になっているのが、袋縫いのモカシン構造です。一枚革のスエードで足をゆったりと足を包み込むような被せモカを採用し、タンもアッパー本体とつながった袋状になっています。なお、トゥはラウンドではなく、スクエアトゥを採用することで他にはない個性とつま先周りに程良いゆとりを持たせているのもポイント。スニーカーに比肩する、いやスニーカー以上にやさしい履き心地はこの特徴的な製法なくしては実現できません。
「ワラビー」のソール素材は多岐にわたりますが、オリジンはやはり極厚クレープソールです。天然ゴムに酢酸を加え、凝固させる際に現れる凸凹感を生かした作りが特徴的。合成ゴムでは味わえない粘りと弾力が、クセになる心地良さをもたらしてくれます。とりわけ「ワラビー」のものは厚みがあってボリューミーなため、一段上のクッション性を体感可能です。
▼「ワラビー」はメープルスエードだけにあらず。カラーと素材の基本バリエーション
「ワラビー」のアッパー素材といえば、毛足を短く整えたメープルスエードがトレードマーク。ですが、黒のスエードや表革といったバリエーションにより異なる表情を、スタイルに合わせて楽しむのもまた一興です。
バリエ1
カジュアルさはそのままに、男っぽさを醸す「ブラックスエード」
メープルスエード同様に毛足を上品に整えた裏革ながら、サンドベージュにはない男らしさを味方につけられるのがブラックカラーの1足です。クレープソールの側面もブラックの配色となっており、スウェットパンツやジーンズといったカジュアル顔パンツの引き締め役として期待以上の活躍をしてくれます。
バリエ2
快適さに加え、革靴の醍醐味も堪能。「ブラックレザー」も見逃せない
同じ黒でも、ツヤのある表革になればグッとドレス感強めな顔立ちに。きれいめなワイドパンツやスラックスに合わせてもしっくり馴染んでくれます。それでいて、やさしく包まれる履き心地や柔らかなクッション性は変わらず。オフィスでのセットアップなどにおいても、良き相棒になってくれることでしょう。
バリエ3
カーキカラーとも相性抜群な、大人顔の「ダークブラウンスエード」
メープルスエードとはまた違う落ち着きをもたらすのが、ダークブラウンスエードです。実はメンズの大好物であるミリタリーカーキと相性の良い配色でもあるため、ファティーグパンツやカーゴパンツの足元とも好相性。ミリタリー感の中和にも、一役買ってくれます。
バリエ4
履き込む程に色味を深める「ブラウンレザー」のエイジングに期待したい
ちょっとラギッドな香りが欲しいなら、濃淡が味わい深いブラウンレザーを検討しましょう。鈍い光沢を放つオイルドレザーは、経年変化によるエイジングが強く表れるエイジング好きの心をくすぐる素材。多少の傷なら簡単なケアで馴染ませられるのもメリットですし、汚れがついても男らしい味として楽しめます。
▼「ワラビー」はやや大きめ。サイズ感は足長ジャストぐらいを検討すべし
気になる「ワラビー」のサイズ感ですが、基本のウィズが2Eで、モカシン構造ゆえに甲周りはゆったりしています。そのため、試着する際は一般的な革靴と同様に自分自身の足長(つま先からかかとまで)のサイズに忠実に選ぶのがおすすめです。履いていると甲部のスエードがさらに柔らかくなるため、後でゆるく感じてしまうのを回避する意味でも大きめではなくジャストサイズを選んでおくのが賢明でしょう。
ブーツか、ローカットか。それぞれの「ワラビー」の特徴とコーデをチェック
「ワラビー」にはブーツタイプとローカットタイプが存在します。そもそも「ワラビー」は合わせられるパンツの幅が広い名靴ですが、丈感の違いを上手く活用することでより洒落感ある足元を演出可能です。双方の成功パターンと選びのキモを、ピックアップしたスタイルサンプルでご紹介します。
▼ブーツ:足首までホールドする「ワラビーブーツ」は、ジャスト~細身のパンツと好マッチ
「ワラビーブーツ」はくるぶしまですっぽりカバーでき、特有のボリューミーなフォルムに加えて足首につながるラインを強調できるのが特徴です。これを見栄え良く履くなら、パンツのシルエットは細身かジャストのものを選び、レングスはジャストかやや短めが好バランスです。トゥからのラインを生かしつつブーツならではのシルエットを引き立てることができ、同時に重たく見えてしまうのを回避する効果が期待できます。なお、ブーツだけあって微フレアのパンツにもよく合います。
コーデ1
9分丈ジーンズでブーツ感を強調し、大人なカジュアルに誘導
この写真のようにジャストフィットなジーンズのレングスを気持ち短めの9分丈で合わせても、「ワラビーブーツ」が見栄え良く引き立ちます。トップスはタックインすることで、足元と同時に腰周りにも軽快さをプラス。あえてソックスが隠れるギリギリの丈感とすることで、品良く大人らしい印象に誘導している点も注目です。
コーデ2
パンツも黒で揃えて、旬のフレアパンツの引き立て役に
細身のパンツの中でもフレアパンツとの相性の良さは、この写真を見れば一目瞭然です。あえて大きくクッションを作らず、パンツのシルエットを生かす掛け感も絶妙です。ブーツなら、歩行時に脚を上げた際もソックスを見せず見せ方をキープできます。合わせているのはスポーティなトラックパンツですが、「ワラビーブーツ」と同色の黒で馴染ませることでストリート感も中和されて大人目線のフレアパンツ姿を印象付けられます。
▼ローカット:ボリューム控えめのローカット「ワラビー」は、太めパンツにもサラッと似合う
一方、くるぶしが隠れないローカットの「ワラビー」の場合は、サラッとスニーカー感覚で履くのがコーデを成功させるポイントに。パンツのシルエットはゆったりめのワイド系が相性良く、裾が靴の上に少し溜まるくらいのワンクッションで合わせるとバランス良く履きこなせますよ。
コーデ3
極太ウールパンツ合わせで、都会派のストリートスタイルに
こちらはウール仕立てのワイドスラックスを同色の「ワラビー」と合わせた装い。パンツの極太シルエットを生かし、靴の上に裾を少し乗っけるくらいのレングスで履くことでどっしりとした今どきのシルエットを描くことが可能です。とはいえ、足元が黒スエードゆえ大人っぽさはしっかり担保。ワイドパンツがルーズ見えせずはけますよ。
コーデ4
足元の引き締め効果で、強面感ゼロの都会派ミリタリーカジュアルに
こちらは、ミリタリーテイスト漂うワイドパンツに黒スエードの「ワラビー」を合わせた装い。裾周りのたっぷりとしたたるみが見栄え良く足元に収まるのは、ローカットならではでしょう。黒の裏革から漂う程良い上品さもあって、イカつ過ぎないバランスのミリカジに仕上がっています。
「ワラビー2」に、ゴアテックス搭載モデルまで。増え続ける「ワラビー」の種類
優れた派生モデルが登場するのもまた、名靴ゆえのもの。ソールのアップデートを図った「ワラビー2」や完全防水を実現した「ワラビーGTX」など、頼れる注目モデルをピックアップしました。
モデル1
ワラビー2
パッと見では定番と見分けがつかないかもしれない「ワラビー2」。ですが、靴底にご注目を。天然ゴム製のクレープソールではなく、軽量にしてさらなるクッション性とグリップ力を有するラバーソールにアップデートされています。木型やアッパーの製法は変わっておらず、「ワラビー」特有の佇まいはそのまま。よりスニーカーに近い機動力が欲しいときの選択肢としておすすめです。
モデル2
ワラビーGTX
ゴアテックスのライニングにより、防水透湿性を担保したのが「ワラビー GTX」です。アウトソールはビブラム社のドレッドラバーソールを搭載し、グリップ力の向上も図っています。また、側面を強靭なツイルで切り替えたアッパーも相まって、ハイテクムードを感じせる横顔を演出可能。雨にも負けず、「ワラビー」ならではの足元を楽しみたいという方に手に取ってもらいたいですね。
モデル3
ワラビー カップブーツ
カップソールの採用により、厚底スニーカーを思わせるぽってり感を付与したのが「ワラビーカップ」。こちらはそのブーツタイプで、滑らかな表革もソールもブラックに徹した配色で、都会的な足元を演出してくれます。ソールはトゥ側でも約3cmの厚みがあり、定番とはまた違う力強さをもたらす効果も期待できそうです。
モデル4
『ナノ・ユニバース』別注ワラビー
周囲との違いをセンス良く印象付けたいときは、ショップやブランドの別注品もおすすめです。こちらの『ナノ・ユニバース』との1足は、別注ならではのカラーが目を引きます。ジーンズからスラックスまで品良く引き立ててくれる淡ネイビースエードに対し、オレンジのシューレースをセット。アッパーと同色のシューレースも付属しており、コーデや気分に合わせた印象変化を楽しむことができます。
似ているけど、ちょっと違う。「ワラビー」のエントリーモデル「シェイカー」って?
変わり種として知っておきたいのが、エントリーモデルとしてリリースされている「シェイカーブーツ」というモデルです。デザイン自体は「ワラビーブーツ」がよりハイカットになったフォルムを採用しつつ、高機能インソールの搭載で軽快な履き心地を実現。超軽量フットベッドのオーソライトが足裏に隙間なくフィットし、歩行をアシストしてくれます。また、通気性も高く、よりコンフォートシューズに近い快適さを享受できる一足に。ラバーソールの表側をクレープソール風の見え方になるよう加工するなど、心にくい演出も見られます。
KEYWORD関連キーワード
STAFF STYLING
スタッフスタイリング
VIDEO
注目動画
ACCESS RANKING
アクセスランキング
ITEM RANKING
アイテムランキング