2世紀にも迫る歴史。ロンジンの腕時計には、確かな“伝統”が宿る

2世紀にも迫る歴史。ロンジンの腕時計には、確かな“伝統”が宿る

2017年には創業185年を迎え、ますます老舗としての風格を高める『ロンジン』。数多の賞を獲得し、著名な冒険者たちと積み上げてきた歴史が、プロダクトには宿っている。

牟田神 佑介

2020.08.14

ロンジン(LONGINES)
腕時計

今に続く復刻腕時計ブームの流れを作った名門、『ロンジン』

昨今のウォッチシーンにおいて一大ムーブメントを築いているのが、アーカイブからの復刻。かつてブランドの黎明期を担ったモデルや、一時広く受け入れられながらもトレンドの波に飲まれ消えていった名品などから、わずか1年間しか生産されなかった、などのマニアの琴線を刺激するモノまで、対象となるモデルはさまざまだ。そのルーツを問わず、購入時からすでにヴィンテージの空気を纏う復刻時計は腕時計に風格と普遍性を求める大人の大好物。時代に流されないモデルを求めるなら一度チェックしておいて損はないカテゴリといえる。

2020年も『オメガ』や『ブライトリング』、『ボーム&メルシエ』に『ラドー』など有名スイスブランドから次々と復刻モデルが発表。いずれも目の肥えた大人を満足させる出色の出来を誇っており、この潮流はしばらく続きそうだ。そして何を隠そうこのブームの火付け役こそ、『ロンジン』により2009年のバーゼルワールドにて発表されたヘリテージコレクションであると考える。当時らしいレトロな顔立ちはそのまま生かしつつ、現代的な技術を注ぎ込んだ名品たちは、同年のバーゼルにおいて目玉の1つとなったことは間違いない。

『ロンジン』は1832年にスイス・サンティミエの地で立ち上がったブランドだ。創業時には他社よりパーツを購入し職人が組み立てるエスタブリール方式を取っていたが、1867年には自社ブームメントを開発。歴代万博にも名を連ね、1900年代前半には1,100人以上を抱える巨大メーカーへと成長した。同時期において『ロレックス』に並ぶ“憧れブランド”としての地位を確固たるものとし、現代に至るまで確かなステータス性を有する名門として君臨し続けている。

昨今においては、各種スポーツシーンとの結びつきも強くアクティブなモデルも広くリリースされている。しかし人気の中核をなすのは、ヒットを飛ばし続けている前述のヘリテージコレクションや、機械式にこだわるマスターコレクションに見られるクラシック顔だろう。今記事においては、そんな『ロンジン』の“伝統“を体現する腕時計たちを紹介していこう。

まずは『ロンジン』というブランドが持つ“強み”について

各コレクションに触れる前に、まずは『ロンジン』とは何モノなのかを見ていこう。“歴史”、“技術”、“価格”の3ポイントから、その魅力を紐解いていく。

歴史スイス時計中随一の長い歴史を持つ重鎮である

前述の通り、設立は1832年。時計産業の要と言われているスイスでも、特に歴史の古い時計メーカーとして知られている。1866年にはそれまで自宅で作業していた時計職人たちを一か所に集めた自社工場を建設。このとき、街の南を流れていた川右岸の「Les Longines(レ・ロンジン)」と呼ばれる土地に工場を建てたことから、社名も現在の『ロンジン』に。以降、技術的にも躍進を遂げた『ロンジン』は1878年に世界初のコラムホイール内蔵クロノグラフを開発、時計の博覧会で数々の賞を総なめにし、一流ブランドとしての地位を確固たるものとしてきた。エルヴィス・プレスリー氏をはじめ、かつてはアインシュタイン氏や西郷隆盛氏も愛用していたというのだから歴史の重みを感じずにはいられない。

技術“顔”だけじゃない。『ロンジン』は時計製造技術も一級品

長い歴史に裏打ちされた、時計製造技術。その一端はコンクエストシリーズに見ることができる。例えば、高精度クォーツウォッチとして名高い「コンクエスト V.H.P.」。年差±5秒という単純な精度だけでなく、磁力や衝撃による針ズレを補正してくれるGPD(ギアポジション探知)システム、時差修正を容易に行えるスマートクラウン、長寿命バッテリーにパーペチュアルカレンダーと、時刻を計時するという使命をあらゆる方向からサポートしている。また、ダイバーズモデルである「ハイドロコンクエスト」では日常生活において十分すぎる30気圧防水を実現するなど、ケースの製造技術も出色。元は1881年にホースレースに熱狂する観客のために作り出されたコンクエストだけあり、そのスペックは抜かりない。

価格確かなスペックを有する腕時計が、ミドルプライスで手に入る

「名のある腕時計ならきっと高価に違いない」と、思わず引けてしまう物欲を後押ししてくれるプライスも、『ロンジン』が長く愛される理由の1つだ。

リアルな30~40代が背伸びをして購入できるプライスレンジがミドルプライス(20万~50万円台)といわれているが、『ロンジン』の腕時計は一部を除いて大半がその範囲内に収まっている。もちろん中の機構は信頼の精度と安定した供給を誇るエボーシュメーカー・ETAをベースとしたモノ。クラシックな見た目に最新鋭のマシンを乗せたハイブリッドな腕時計は、流行廃りを越えて長く愛用できることは間違いない。

復刻好きならたまらない。まずはヘリテージコレクションからピックアップ

昨今まで続く復刻時計人気の火付け役ともいえる『ロンジン』のヘリテージコレクションでは、サンティミエのミュージアムに陳列されている貴重なタイムピースを復刻・発表している。例えば、世界初単独大西洋無着陸横断を成功させたチャールズ・A・リンドバーグ氏の依頼で製作された1931年の「ナビゲーション・ウォッチ(リンドバーグ アワーアングル)」。これはパイロットの経度緯度計算を容易かつ正確にした、当時画期的な腕時計だった。

ほかにも同社が世界で初めて発明したコラムホイール クロノグラフモデルや、当時製造が困難だった全回転式ローターを使用したものなど、「オールドロンジン」と呼ばれ寵愛されてきた古き良き名品ばかりが並ぶ。とてもぜいたくなコレクションは、一見の価値ありだ。

モデル1丸みを帯びた風防がクラシカルな「フラッグシップ」

オリジナルは1957年発表。日本人の腕にも馴染む38.5mmのケース径が、色褪せたようなクリームダイヤルとゴールドのインデックスと調和してタイムレスな腕時計に仕上がっている。アンティークウォッチを思わせるドーム型風防は、耐傷加工を施したサファイアクリスタル製。安価なプラ風防と比べると格段に加工が難しく、高級時計ならではのディテールだ。ムーブメントの駆動時間はフルで42時間。

モデル2コッパー(銅)カラーの文字盤がカジュアルな装いに馴染む「ヘリテージ1945」

米国の人気ウォッチ・サイトが所有していたアーカイブにヒントを得て製作された、文字通り1945年製造の品。原型のケース径は35mmだが、ヘリテージコレクションに加わるにあたり需要の高い40mmへとサイズアップがなされた。落ち着いたコッパー(銅)カラーダイヤルに、ベルトは暖かみのあるヌバックレザーを採用。大人のオフの日によく似合う、上品な1本だ。

モデル31960年代のダイバーズウォッチを現代に蘇らせた「レジェンドダイバー」

無駄を削ぎ落とした実用時計として作られた、1960年代のダイバーズウォッチをアップデート。2時位置のリューズをまわすことでインナーベゼルが回転する、男心をくすぐる機能も搭載している。サイズは今回紹介した中ではやや大ぶりな42mmだが、ベゼルを細く絞りケース厚を抑えた形状ゆえに、着用すると見た目以上にシャープな印象へと帰結する。レザー、ラバーのストラップも用意されているが、オンオフと使いまわすならエレガントなメッシュタイプがおすすめだ。

モデル4ブランド初のダイバーズとして登場した「スキンダイバー」

『ロンジン』のダイバーズウォッチ、というと「レジェンドダイバー」ばかりが取り沙汰されるが、実は1959年に発表された「スキンダイバー」こそがブランド初のダイバーズとなる。「レジェンドダイバー」がインナーベゼルであるのに対し、こちらはオーセンティックな単方向回転ベゼルを採用。加えて、焼けたような夜行塗料の風合い、ざらついたブラックダイヤルなど経年変化を再現し、ヴィンテージウォッチファンも納得のディテールを取り入れている。ムーブメントには、COSC取得のL888を搭載。

モデル5ツーカウンタークロノの王道を征く「クロノグラフ1946」

2020年にリリースしたばかりの新作がこちら。名前が示すとおり、1940年代に製造されていたアーカイブが元となっている。昨今トレンドの1つとして熱を上げているクラシカルなツーカウンタークロノは、半世紀以上前のデザインとは思えない新鮮な顔立ちだ。40mm径の程良いケースに収められたムーブメントは、エクスクルーシブとなるL895.5。パワーリザーブも実用的な54時間を実現している。

モデル6『ロンジン』の名を一躍有名にした「アワーアングル」

今項冒頭でも触れた、1931年リリースの“リンドバーグ”モデル。プライスは『ロンジン』の中でも頭1つ抜けているが、どうモデルが時計史において果たした功績は計り知れない。47.5mmというビッグケースを支えるベゼルの目盛りと針を組み合わせることで瞬時に経緯度を把握できるこの時計は、現代においてもなお画期的だ。大ぶりなオニオンリューズも、パイロットウォッチとしての魅力を存分に発揮している。なお、今作はシースルーバックを採用。こういうモダナイズは、大歓迎だ。

モデル7半世紀以上前に感じた“モダン”を現代に蘇らせた「ヘリテージ 1969」

鈍い光沢を湛える金属文字盤に、印象的なクッションケース。そこに丸く縁取りを施したサファイアクリスタルガラス風防を乗せた「ヘリテージ 1969」は、1960年代の当時の空気を存分に表現したモデルだ。36×36mmの小ぶりなケースに、装飾性を抑えた刻印を筋目加工の上に施したスナップバックも雰囲気満点だ。ストラップにはリアルアリゲーターを採用しており、高級感にも訴求している。

モデル8鉄道時計としての機能美が宿る「レイルロード」

1960年代実際に使用されていた鉄道時計をモチーフにしたレイルロードの文字盤には、“R.R.(=Rail Road)”の文字とともにキャリバー名が印字されている。ブラックで統一されたシンプルなアラビアインデックスとクリームの文字盤に、陽に焼けたリアルなヴィンテージウォッチの郷愁を感じることができる。

ヘリテージ以外にも。『ロンジン』の“伝統”をその身に宿す腕時計たち

『ロンジン』を構成するのは、もちろんヘリテージだけではない。スポーツウォッチ・コンクエストや機械式時計の殿堂マスターコレクションなど多岐にわたる。今回はその中から、4本を厳選して紹介していこう。

モデル1ポインターデイトにムーンフェイズと、機構を満載した「マスターコレクション」

『ロンジン』の「マスターコレクション」は、ブランドが培ってきたクラシックとエレガンスを機械式時計というジャンルで体現したもの。今作は、クロノグラフにポインターデイト、ムーンフェイズ、デイデイト表示……、と腕時計においておよそ考えうる機能がこれでもかと搭載されている。これらすべてを40mm径に収め、あくまでドレスライクに仕上げている手腕は流石といえるだろう。

モデル2ムーブメントを根幹から見直した「コンクエスト」の自動巻きクロノグラフ

クロノグラフの制御方式には、カム式、コラムホイール式の2種類があることはご存じだろうか。一般に、後者の方が精密な制御が可能であり、ボタンの押し心地が柔らかいといわれている。かつては50万円を超える高級クロノグラフウォッチの必須条件といわれていたが、実は工作技術が向上した現在においてはコラムホイールも決して手のとどかないモノではない。こちらの「コンクエスト」も、そんな現代技術の恩恵を存分に受けたモデル。クロノグラフムーブの名品ETA7750をベースにコラムホイールを搭載、さらにブレーキレバーやスプリング、地盤や受けに至るまで徹底的に改良を加えつつ40万円前後に抑えている。

モデル3トノー型ケースがエレガンスを語る「エヴィデンツァ」

今モデルがデザインソースとしているのは、“狂騒の20年代”とも名高い1920年代のカルチャー。ジャズを初めとする音楽が流行、車が活発に市街地を走り、映画も盛んに撮られていた文化的運動の最盛期だ。そこに、『ロンジン』が1911年に発売したオリジナルのトノー型時計のフォルムをオン。放射状に広がるギョシェ彫りにスモールセコンド、リーフ針などクラシカルな要素を盛り込みながら新鮮な顔立ちに仕上がっているのは、文化が自由な発展を遂げた1920年代の空気に強く影響を受けているためであろう。

モデル4始まりの年にオマージュを受けた「1832」

モデル名が示しているのは、創業年。時刻を知る、ということの重要性が高まってきていた当時を思わせる、原点に立ち返ったかのようなオーセンティックな空気は『ロンジン』にしか醸し出せないものであろう。直線的なカッティングが施されたラグにバーインデックス、時刻を示すのにこれ以上無いほどシンプルなドーフィン針など、採用されているディテールは恐ろしいほど実直だ。それでいて、ムーブメントには『ロンジン』が誇る64時間連続駆動の高機能ムーブL897が搭載。裏蓋は、スケルトンにより観賞性を優先している。圧倒的にクラシカルな顔と、裏側から覗く現代的な要素の対比はとてもユニークだ。

実は女性へのギフトとしても喜ばれる『ロンジン』

余談だが、密かに『ロンジン』は女性人気が高い。特に1997年に発表された「ドルチェヴィータコレクション」は白眉。女性の手首を意識してデザインされたブレスレット然としたルックスは、悪目立ちもせずスッと馴染んでくれる。

ちなみに、映画「タイタニック」のローズ役として有名なオスカー女優、ケイト・ウィンスレット氏も2010年以降『ロンジン』のアンバサダーの一員。これまで男物のイメージが強かった『ロンジン』は、いまやグローバルなユニセックスウォッチブランドとして認知を改めている。

「Men’s JOKER」、「STREET JACK」と男性ファッション誌を経た後、腕時計誌の創刊に携わり現職。メンズ誌で7年間ジャンルレスに経験してきた背景を生かし、TASCLAPでは主に腕時計や革靴、バッグなど革小物に関する記事を担当している。
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