
アンダー10万円でも良作揃い。初めての機械式時計はこの中から
“本物”の機械式時計が欲しいけれど予算が少々心もとない……。でも大丈夫、今や10万円以下でも良質なアイテムがよりどりみどり! 時計好きの2本目以降としてもどうぞ。
お手頃プライスでもスペック十分。今は機械式時計も気軽に試せる時代だ
ここ数年の不自由を強いられる生活の影響か、昨今はクォーツをはじめ、ソーラー、スマートウォッチといった利便性を売りにする高機能ウォッチが注目を浴びている。しかしその一方、機械式時計の持つロマンや味わいを愛する男性が一定数存在しているのもまた事実だろう。
そもそも機械式時計とは? 簡単に説明すると、巻き上げたゼンマイがほどける力を動力とする腕時計のことだ。「手巻き」と「自動巻き」の2種類があり、前者はリューズを手で回すことでゼンマイを巻き上げる機構を指し、後者はローターが回転することでゼンマイを自動的に巻き上げるメカニズムを指す。
機械式時計の歴史は長く、ルーツとなるポケットウォッチ(懐中時計)が世に現れた17世紀にまで遡ることができる。日本の「セイコー」が1960年代に発表したクォーツ式の腕時計によって機械式時計は存続の危機に陥るものの、その後、長い歴史に裏打ちされたステータスや職人の手作業によって生み出される芸術的な装飾性が再評価を受ける形で復活。21世紀には高級時計のメインストリームに返り咲いた。
しかし手に取ろうにも、機械式時計はクォーツ時計に比べて値が張るもの……。その認識は間違っておらず、どんな高級腕時計ブランドでもクォーツモデルは数十万円で頭打ちであるのに対し、機械式腕時計のプライスは青天井となっている。だがしかし、近年は技術革新の恩恵もありリーズナブルなモデルも増加中。なかには2~3万円台の良作もちらほらと見られるようになっている。今や名門と呼ばれる海外ブランドでも、10万円を切る本格モデルを展開していることもあるのだ。
確かにクォーツやソーラー、スマートウォッチのほうが便利であり、コスパも高いモデルが多い。しかし機械式時計には、オーバーホールさえすれば半永久的に動き続けるという強みがあり、何より所有しているだけで気持ちを豊かにしてくれる不思議な力が備わっている。そう、機械式時計は、人類が築き上げてきたモノ作りの歴史を感じさせてくれる唯一無二の存在なのだ。
そんな機械式時計を初めて購入する人のために、手の届きやすい10万円以下の価格帯から間違いのないモデルをセレクトした。あなたの豊かな時計ライフが始まるきっかけになれば幸いだ。
初めての機械式時計なら検討したい、魅力に溢れた3種のカテゴリ
どうせ機械式時計を買うなら、目や手といった“感覚”でその魅力が味わえる一本を手に入れたい。そう考える人には、「裏スケ」「オープンハート/スケルトン」「手巻き式」の3種類が有力候補となる。ムーブメントの動きを眺めたり、手でゼンマイを巻いたり、機械式時計がもたらす愉悦のひとときを堪能しよう。
カテゴリ1
精緻なムーブメントの動きを鑑賞できる「裏スケ」
通称“裏スケ”と呼ばれる裏蓋スケルトンとは、サファイアガラス製の裏蓋からムーブメントを眺められる仕様のこと。「シースルーバック」とも呼ばれるこの仕様の醍醐味は、なんといっても通常は見ることができない腕時計の心臓部・ムーブメントを眺めることができる点にある。腕時計ブランドの技術の粋が凝らされたムーブメントの動きと姿は、機械式時計を所有する喜びを感じさせてくれることだろう。以前は複雑機構を売りとする高級時計のディテールだったが、近年は10万円を切るモデルにも広く採用されるようになった。最初の機械式時計としてもおすすめの仕様だ。
カテゴリ2
着こなしの強烈なアクセントにもなる、「オープンハート」や「フルスケルトン」
スケルトンとは文字盤の大半、もしくはその全体がくり抜かれた仕様や腕時計のこと。そのうち文字盤の一部がくり抜かれ、その窓から内部構造が見えるものを「オープンハート(セミスケルトン)」、文字盤・裏蓋からムーブメント全体を眺められるものを「フルスケルトン」と呼ぶ。前述した「裏スケ」が自分でムーブメントを鑑賞するパーソナルな仕様だとしたら、オープンハートやフルスケルトンはどちらかというと魅せることに重きを置いた趣向といえるだろう。昨今の高級時計のトレンドでもある仕様であり、そのインパクトのあるデザインは着こなしを格上げする格好のパワーアイテムとなる。
カテゴリ3
自分で巻く楽しみ、を感じたいなら「手巻き」を選びたい
ここ数年、にわかに脚光を浴びている「手巻き」の腕時計。前述したように機械式時計の動力源はゼンマイであり、このパーツをローターでオートマティックに巻き上げるものを自動巻き、リューズを使って手で巻き上げるものを手巻きと呼ぶ。当然、手巻きのほうが手間はかかるわけだが、その人気は根強く、今なお多くの時計ブランドが手巻きのモデルを作り続けている。理由はほかでもない、一部の腕時計愛好家にとって手でコリコリとゼンマイを巻くという行為は腕時計と対話し、心を豊かにしてくれる儀式となるからである。10万円以下や裏スケのモデルこそ数少ないが、機械式時計の神髄を味わえる手巻きのモデルをファーストチョイスの候補に入れる価値は十分にある。
10万円あれば人気ブランドも射程圏内。ハイコスパな機械式時計15本
では、最初の機械式時計にはどんなモデルがふさわしいのか? 以下では手の届きやすいアンダー10万円という価格を基準に、「裏スケ」「スケルトン/オープンハート」「手巻き」のモデルを中心に15本をセレクト。いずれもハイコスパながら、機械式時計の魅力を体感できる逸品ばかりとなっている。
1本目
『ハミルトン』カーキ フィールド メカニカル H69439131
10万円以下で一目置かれる手巻きといえば、1960年代の軍用時計を復刻させた「カーキ フィールド メカニカル」が最右翼だろう。リューズを時刻調整の位置まで引くと針が止まるハック機能は兵士同士が時刻を合わせる際に使用された機能。光の反射を防ぐサンドブラスト加工が施されたケースや操作しやすい大型リューズなど軍モノらしい機能美が光る。サイズ:38mm、SSケース、手巻き。
2本目
『ティソ』ヘリテージ ヴィソデイト オートマティック T1184301605100
1853年から続くスイス時計の名門が誇るハイコスパ時計。曜日表示をいち早く取り入れた1950年代の名作、同モデルを再現した一本はアンティーク時計に見られるドーフィン針やドーム型の風防がノスタルジックな雰囲気を醸し出す。搭載されている自動巻きムーブメント、パワーマティック80は耐磁性に優れたニヴァクロン製ヒゲゼンマイと80時間ロングパワーリザーブが自慢だ。サイズ:42mm、自動巻き、SSケース。
3本目
『スウォッチ』プチ・セカンド・ブルー SY23S403
高コスパな機械式時計を語るとき、『スウォッチ』抜きには語れない。ユニセックスで使えそうな「プチ・セカンド・ブルー」はダイヤルをはじめ、6時位置に配されたサブダイヤル、そしてレザーストラップもブルーに統一。淡いブルーのグラデーションがエレガントなイメージを醸成する。ムーブメントの動きを眺められるシースルーバックもポイント。サイズ:42mm、自動巻き、SSケース。
4本目
『セイコー』セイコー 5スポーツ SBSA021
ルーツは自動巻き・防水・デイデイト表示をはじめとする5つの先進機能が注目された60年代の名機「セイコー スポーツマチック5」。その系譜を継いで1968年に誕生したスポーツモデルは、防水性能や夜光塗料による夜間の視認性、強化ガラス風防などスペック面がブラッシュアップされている。3万円台とお手頃ながら、国産機械式時計の実力を体感できる一本となっている。サイズ:42.5mm、自動巻き、SSケース。
5本目
『クラブ・ラ・メール』35th アニバーサリー リミテッド モデル BJ7-077-30
「手の届く機械式時計」をコンセプトとする『シチズン』のブランドには機械式時計入門に最適なモデルが揃う。設立35周年を記念する本作は大航海時代のマリンクロノメーターをイメージしたデザインに加え、アンティークの趣を醸成するケースのいぶし加工が存在感を放つ。シースルーの裏蓋からはブランド名が刻印された日本製ムーブメントを鑑賞可能だ。サイズ:38mm、自動巻き、SSケース
6本目
『ベーリング』オートマティック オープンハート 16743-377
自動巻きムーブメントが搭載された、「ベーリング オートマティック コレクション」の一本。北欧時計らしいシンプルなダイヤルに、9時位置の窓から覗く内部構造がアクセントを効かせている。なお、裏蓋もシースルーになっており、冒険家ヴァイタス・ベーリング氏の名とベーリング海峡が発見された年号が刻まれたムーブメントの動きを鑑賞することができる。サイズ:43mm、自動巻き、SSケース。
7本目
『スカーゲン』アンカー SKW6768
フード付きラグと薄型チタンケースがデンマークブランドらしい洗練イメージを強める定番「アンカー」。サンドブラスト加工とアラビア数字&バーインデックスが織りなすスマートなダイヤルと、中央部から覗く迫力のある自動巻きムーブメントの姿がコントラストを描く。サステナビリティに力を注ぐ同ブランドらしく、ストラップにはエコレザーを使用。サイズ:40mm、自動巻き、チタンケース。
8本目
『オリエントスター』セミスケルトン RK-AT0004S
アンダー10万円の優秀スケルトンが揃う『オリエントスター』。本作はブルーの針が映える金属製の白い放射目ダイヤルが、5万円台のモデルとは思えないエレガントな雰囲気を醸し出している。さらに9時位置のオープンハートとシースルーバック仕様により、両面からムーブメントを眺めることが可能に。50時間以上のパワーリザーブを誇る自動巻きキャリバー、F6R42を搭載。サイズ:39.3mm、自動巻き、SSケース。
9本目
『トゥルーム』Lコレクション ブレークライン TR-ME2014
『トゥルーム』の自慢は、進化した機械式ムーブメントというべきスウィングジェネレータ。腕の動きで発電し、蓄電できるムーブメントは光が届かない深い森や洞窟内でも動き続ける。本作は、ワールドタイム機能や気圧・高度・方位表示が搭載された「L コレクション」の一本。シースルーの裏蓋からはスウィングジェネレータの回転錘の動きも眺められる。サイズ:45.4mm、スウィングジェネレータ、チタン&セラミックケース。
10本目
『フォッシル』FB-01 オートマティック ツートーン ME3191
ファッションのアクセントとなるリーズナブルな機械式時計を狙うなら、アメリカ生まれの『フォッシル』だ。なかでもこちらのダイバーズライクな1本は、ブルー×ゴールドのツートーンカラーが強印象。さらに複雑にくり抜かれたダイヤルの窓より自動巻きムーブメントが覗くスケルトンデザインが、ラグジュアリーなイメージを強める。100m防水で、裏蓋もシースルー仕様に。サイズ:42mm、自動巻き、SSケース。
11本目
『フルボデザイン』ヴィゴラス F2502BKSS
イタリア語で“抜け目がない”という意味のブランド名を持つ、ライフスタイルブランドから。エレガントなクッション型ケースを持つ人気モデル「ヴィゴラス」は、ダイヤルの中央部を大きくくり抜くことで日本製の自動巻きムーブメントを大胆に露出。加えて宙に浮いているかのようなブランドロゴや、7時位置のテンプに配されたリングがデザインに奥行きを生み出す。サイズ:39.5mm、自動巻き、SSケース。
12本目
『ドゥッファ』ヨゼフ・アルバース DF9011102
150年の歴史を持つドイツ時計の名門ブランド『ドゥッファ』に、シースルーバックのモデルを発見。「ヨゼフ・アルバース」はバウハウスの流れを汲むミニマルな文字盤に、薄型ケースとドーム型のミネラルガラスがエレガントなエッセンスをプラスする一本だ。裏蓋は半円のシースルーバックになっており、ブランドアイコンが刻まれたローターを眺めることができる。サイズ:38mm、自動巻き、SSケース。
13本目
『タイメックス』M79 TW2U83400
1979年発売のモデルを復刻した「Q タイメックス」。同シリーズは“Q”の名の通りクォーツが中心のラインアップとなっているが、機械式時計にアップデートを図ったのがこちらの「M79」だ。インデックスや針がアップグレードされ、ベゼルは“コーク・ベゼル”の愛称で親しまれる黒×レッドにアレンジ。シースルーバックとなっており、信頼性の高いミヨタ製のパワーリザーブ40時間自動巻きムーブメントを眺めることができる。サイズ:40mm、自動巻き、SSケース。
14本目
『ブローバ』97A169 クラシック
伝説の音叉時計「アキュトロン」のDNAを継ぐ、「クラシック コレクション」の一本。中央部が大胆にくり抜かれたダイヤルと、ローズゴールドカラーケースのコンビが5万円台のモデルとは思えないラグジュアリーなムードを醸成する。スケルトンウォッチでは犠牲になりがちな視認性の問題も、山型インデックスと立体的な時分針によってばっちりクリア。サイズ:43mm、自動巻き、SSケース。
15本目
『D1 ミラノ』P701
カジュアルプライスのラグスポウォッチ。その最先端を行くブランドの1つが、『D1 ミラノ』であることは間違いないだろう。特徴的なオクタゴンケースの中に収めたのは、テンプ部分より同心円状に広がるカットアウトが個性を放つスケルトンフェイス。日本製のオートマティックムーブメントは“裏スケ”からも覗くことができ、プライスに良い意味で不相応な高級感を醸し出している。サテンとポリッシュの丁寧な磨き分けも、同価格帯の腕時計にあるまじき(もちろん良い意味で)ポイントだ。サイズ:41.5mm、自動巻き、SSケース。
この記事の掲載アイテム一覧(全14商品)
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『ハミルトン』 カーキ フィールド メカニカル H69439131
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『ティソ』 ヘリテージ ヴィソデイト オートマティック T1184301605100
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『スウォッチ』 プチ・セカンド・ブルー SY23S403
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『セイコー』 セイコー 5スポーツ SBSA021
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『クラブ・ラ・メール』 35th アニバーサリー リミテッド モデル BJ7-077-30
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『ベーリング』 オートマティック オープンハート 16743-377
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『スカーゲン』 アンカー SKW6768
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『オリエントスター』 セミスケルトン RK-AT0004S
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『トゥルーム』 Lコレクション ブレークライン TR-ME2014
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『フォッシル』 FB-01 オートマティック ツートーン ME3191
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『フルボデザイン』 ヴィゴラス F2502BKSS
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『ドゥッファ』 ヨゼフ・アルバース DF9011102
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『タイメックス』 M79 TW2U83400
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『ブローバ』 97A169 クラシック
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