
経年変化こそ魅力。ドクターマーチンの8ホール
“8ホール”の呼称で愛される「1460」の存在を無視して『ドクターマーチン』は語れない。同モデルの歴史や魅力をはじめ、ラインアップ、着こなしまで掘り下げて解説する。
『ドクターマーチン』の宝刀。“バウンシングソール”と「1460」誕生の背景
『ドクターマーチン』のはじまりは1945年。同ブランド名の由来であるドイツ軍所属の医師であるクラウス・マーチン氏が休暇中に負った怪我がきっかけだ。負傷時に支給されたブーツが足の回復やリハビリにふさわしくないと感じた彼は、やわらかな履き味を求めて空気を含んだソールユニットを発案。これが後に改良を重ね、歩行時の衝撃を緩和する“バウンシングソール”の原案となっている。
同ブランド最初のモデルであり、“8ホール”の呼び名でお馴染みの「1460」は1960年4月1日に誕生。レザーブーツの屈強かつ上品なルックスと上記のとおりこだわり抜いたソールの快適な着用感が当時の警察官や郵便局員、工場労働者などに支持を得た。以降は周知の通りヒッピー文化に対抗していたスキンズやミュージシャンに愛され“カウンターカルチャーを象徴するブーツ”としてストリートシーンに波及。素材やディテールの変更がありつつもその知名度は浸透し、日本においてもファッションブーツを代表する1足として根付いた。
8ホールは経年変化こそが魅力の1足
現在は牛革のスムースレザーを採用した「1460」を指すことが多い8ホール。『ドクターマーチン』ならではの履き心地に加え、耐久性や男らしいルックス、育ってきたカルチャーなどその魅力は枚挙に暇がない。
その中で筆者が最も魅力的だと感じるのが8ホールの経年変化である。レザーシューズやブーツは「美しく履くこと」や「なめらかな経年変化」が語られがちだが、こと8ホールにおいては「履き倒してナンボ」ではないだろうか。足を踏み込んだ際にできるシワは、頑強な男の足元を物語ってくれるし、くるぶしから履き口に至るそれもまた、履き手の歴史を感じさせてくれる。
他の革靴であれば「残念」のひと言に尽きるトゥの傷でも、8ホールならば魅力的に映る。『ドクターマーチン』ならではのイエローステッチがすり切れるほどに履き込まれた状態のモノであれば、そこにはモノを永く愛用した男のひたむきな愛情すら感じられるはずだ。
実はバリエーション豊富。8ホールのラインアップ
牛革のスムースレザーを採用した「1460」以外にも8ホールを呼ばれるモノはある。定番である「1460」を中心に、“8ホール”のラインアップを紹介しよう。
アイテム1
1460Z 8EYE BOOT
「1460」は、ブラックやチェリーレッドなどの定番色をはじめホワイトやグリーン、ネイビーと多彩な色みをスタンバイ。汎用性の高さにおいてはブラックに軍配が上がるが、足元に個性を持たせる点では他の色みも検討したい。なお、こちらはスムースレザーにイエローステッチを採用したもっともベーシックなモデルだが、同“3ホール”も昨今8ホールに劣らない人気モデルなので、チェックしておいて損はない。
アイテム2
1460 MONO 8EYE BOOT
魅力満載の8ホールだが、『ドクターマーチン』特有のイエローステッチが気になるという方も多いだろう。そんな読者諸兄にはワントーンカラーの「MONO」を推奨したい。ステッチやソール、履き口のプルタグ、ライニングまでオールブラックという点以外の素材や製法はアイテム1と同様。
アイテム3
1460 SNOWPLOW
より高機能な「1460」として紹介したいのが「SNOWPLOW」。モデル名は、採用されている耐水性レザーのことを指している。水だけではなく、汚れを落とすのも簡単という点も特徴だ。また、滑り止めの効果があるウインターグリップソールを備えているので、雪道でも安心して着用することができる。
アイテム4
VINTAGE 1460Z 8EYE BOOT
1960年4月1日に誕生したファーストモデルの復刻版。イギリスにある同ブランドの向上で職人が手作業で製造されていたり、スムースレザーよりもキメが細かいQUILONレザーが採用されていたりと所有感を倍増させてくれる。その分高価ではあるが、『ドクターマーチン』が好きという方にはぜひプッシュしたい。
アイテム5
バスキア コラボ 8ホールブーツ
これまでは「1460」の定番ラインアップを紹介してきたが、コラボモデルも見逃せない。こちらは20世紀において絶大な影響力を誇った、ポストモダンアーティストのジャン=ミシェル・バスキアの作品の1つ「Untitled」を大胆にプリント。バックストラップとシューレースチャームにはバスキアのシンボルとなったクラウンモチーフも配置した、まさしく特別な1足だ。
アイテム6
PASCAL 8EYE BOOT
「1460」よりも幅が細く、甲も低めのレディースラストを採用。木型はレディースだが、28cmまでサイズ展開されているので男性でも履ける。加えてソフトレザーであることも特筆すべき点。スエード仕様のモデル同様に履きはじめから足馴染みが良い。
汎用性◎。8ホールの取り入れ方
8ホール元来のイメージとして浸透している着こなしと言えば、レザージャケットや黒スキニーといったロックミュージックやパンクを想定させるスタイリングだろう。しかし、よりタウンユースに落とし込み、今らしく取り入れる手段もある。
以下で紹介する4コーデは、ブーツインやパンツのロールアップで8ホールの存在感を強調しつつ、各々のテイストにマッチした好例だ。
コーデ1
“音”の印象は小物で巧みに緩和
モッズコートに8ホールともなれば、やはり音楽の要素が香るコーディネートになりがち。それをグレーのジーンズやニットキャップ、アイウェアでかわすことで、カルチャーの印象を残しつつもカジュアルダウンに成功している。
コーデ2
グランジスタイルは配色でカジュアルに
レザージャケットと8ホールの組み合わせにおいても、配色と小物使いで今に馴染むスタイリングに。ジャケットやグランジ感のあるライトブルーのダメージジーンズをジャストサイズで合わせた潔さもまたおしゃれ。
コーデ3
「1460」×ワイドパンツは丈感で攻略
ゆったりとしたシルエットのパンツでも、ロールアップすることで8ホールと呼吸を合わせることができる。タイトなテーラードジャケットとの組み合わせによるIラインのシルエット構築もお見事。
コーデ4
「1460」でカジュアルコーデを引き締める
レザーブーツでありながら、ラギッドなファッション以外にも活用できることも8ホールの魅力。こちらは、ブラックとベージュというツートーンのカジュアルスタイルながらも8ホールの存在感を強調することでセンスアップに成功。ハンチングやサコッシュなどの小物使いも、大人が目指すべき春先の軽装として参考に。

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