チュードルからチューダーに。進化し続ける老舗の腕時計

チュードルからチューダーに。進化し続ける老舗の腕時計

2018年の時計界のビッグサプライズといえば、『チューダー』の日本正規展開である。長年に渡るユーザーの期待に応えるコレクション。改めて、その魅力を解き明かす。

ワダ ソウシ

2019.01.18

チューダー(TUDOR)
腕時計

『チューダー』? 『チュードル』? 満を持して本格上陸した老舗

『チューダー』は1970年代までは日本でも輸入されていたが、取り扱いが解消されて以降は一部の並行輸入店のみが販売してきた。当時は『チュードル』という名で展開されていたが、2018年の再上陸をきっかけに『チューダー』へと改名。理由は定かではないが、以前は『ロレックス』の姉妹ブランドであるりディフュージョンブランドとしての位置付けが明確化されていたので、その認識を刷新する意図もあったと思われる。同時に原点回帰の意味合いも込め、創立時にイメージしたイギリスの華やかな時代である“チューダー朝”の発音に合わせたものとの推測も挙がっている。

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日本上陸までの紆余曲折。『チューダー』の歴史を振り返る

日本国内から長く姿を消していた『チュードル』改め『チューダー』だが、その間に『ロレックス』とは異なるコンセプトを打ち出し、独立したデザインや自社ムーブメントを開発するなど飛躍的な進化を遂げている。改めて、創立時からの“偉業”を検証しよう。

1930年代もともとは、『ロレックス』のディフュージョンブランドとして登場

1905年に『ロレックス』の前身会社を立ち上げた創業者ハンス・ウイルスドルフ氏は、この技術力と信頼性を使った普及価格帯のブランドを新たに興したいと考え、1926年、ジュネーブにて『チュードル』を創立した。当時はまだまだ腕時計が一般に広まっていなかったため、ウイルスドルフ氏自身も同ブランドがそのシェアを開拓してくれることに大いに期待していたことだろう。なお先にも紹介したように、“TUDOR”の名前のコンセプトは15世紀末から17世紀初頭までのイギリスで繁栄したチューダー朝から名付けられたもの。その紋章である薔薇を、ロゴやディテールのモチーフとして採用していることも特徴である。

1940年代〜60年代ほぼ『ロレックス』。なのにリーズナブルな『チュードル』時代の人気

実用的な腕時計のパイオニアである『ロレックス』のファミリーブランドであるため、『チュードル』には創立当初から開発や製造のノウハウが備わっていた。さらに現在は行われていないが、以前は『ロレックス』とパーツを共用することが多く、『チュードル』製の「サブマリーナー」や「エクスプローラーT」にそっくりな「レンジャー」といったモデルが存在していたほどである。この時代の両ブランドの異なる点を挙げるとすれば、大きくは搭載ムーブメントの違いだった。『ロレックス』はほとんどで高品質な自社製を使っていたが、『チュードル』は比較的に安価なETA社製を採用することでコストパフォーマンスを高めたのだった。

1960年代末“イカ針”を機に独自路線へ。オリジナルデザインを重視し始めた『チュードル』

堅牢性と防水性の高いオイスターケースを筆頭に、『ロレックス』譲りの高度な技術と高品質な部品を共用していた『チュードル』だが、1960年代の終わりになると独自のブランディングをスタートした。その1つが短針の変更で、個性的なスタイルからファンの間で“イカ針(正式名は「スノーフレーク針」)”と呼ばれる『チューダー』まで続く伝統的意匠を生み出したのだ。それまでの同社製ダイバーズウォッチには『ロレックス』製と同じベンツ針をセットしたモデルもラインアップしていたが、この短針の登場によってデザイン上の差別化が進み、以降のコレクションにはオリジナルの設計や部品が用いられるようになっていった。

2015年ついにマニュファクチュールへ。2015年に自社ムーブメントを開発

近年の『チュードル』に大きな変化をもたらしたのが、2007年のリローンチ発表だろう。ここから「ブラックベイ」や「ぺラゴス」(ともに2012年発売)を輩出するなど、革新的なシリーズを連発している。そして2015年に満を持して投入されたのが、同社初の自社製ムーブメントだ。3針式のキャリバーMT5602は、ゼンマイを最大まで巻き上げた状態ならば約70時間も持続するほか、精度の調整がしやすいフリースプラングテンプの搭載、磁気帯びしないシリコン製のヒゲゼンマイを備えている。さらに高精度の証明であるクロノメーターも取得しているなど、『ロレックス』のムーブメントに匹敵するほどのスペックを有している。

よく耳にする、アンティーク『チュードル』の“デカバラ”とは?

90年以上の歴史がある『チューダー』には、いくつものレアアンティークウォッチが存在する。もっとも有名なものに1970年製の「オイスター デイト クロノグラフ」があり、コンディションによっては700万円以上の価値が付くという。また手頃なところでは、1950年代から1960年代に製造されていたと考えられている“デカバラ”と呼ばれるモデルが。12時のインデックスにチューダーローズを配した3針時計で、手巻きと自動巻きが存在していた。オイスターケースを使った堅牢さや、薔薇のあしらいのユニークさもあって、現在でもマニアを中心に高い人気を誇っている。

定番から新作まで。『チューダー』のおすすめモデル10選

日本での正規販売が再開したことにより、今まで以上に『チューダー』は注目されている。とくに国内で買えるコレクションは日本人好みのスポーツウォッチが中心のため、多くの人が購入候補とすることだろう。

1本目ブラックベイ Ref.79230R

現在の『チューダー』の中核を担う「ブラックベイ」シリーズのスタンダードモデル。2012年に新世代のダイバーズとして発表され、2016年にムーブメントを自社製造かつクロノメーター認定のキャリバーMT5602へと切り替えた。ダイヤルとベゼルを同色で揃えたデザインが特徴的で、バーガンディレッドのほかにブラックとマットブルーが存在し、ストラップはブレスレット以外にエイジドレザーストラップかファブリックストラップが選択できる。200m防水。自動巻き。

2本目ブラックベイ フィフティ-エイト Ref.79030N

『チューダー』のアンティークのなかでも希少価値が高い、通称“ビッグ クラウン”と呼ばれるダイバーズをイメージさせるレトロスタイルの1本。小振りな39mmケースのため、欧米人に比べて腕が細い日本人にも適するモデルとして人気が高く、正規店では品薄状態が続いている。マニュファクチュールムーブメント、キャリバーMT5402を搭載。アルマイト加工ディスクを備えた逆回転防止ベゼル上のレッドマークが印象的だ。200m防水。自動巻き。

3本目ブラックベイ GMT Ref.79830RB

「ブラックベイ フィフティ-エイト」とともに2018年に登場し、世界的にヒットしているレアモデル。需要が多いことから正規店では購入しにくく、並行店ではプレミアム価格になっている。『ロレックス』の「GMTマスターU」と同様に、回転する赤青ベゼルと小型の“イカ針”によって最大3つのタイムゾーンを表示できる。新開発のGMT機能付き自社ムーブメント、キャリバーMT5652を搭載する。ケース径41mm。200m防水。自動巻き。

4本目ブラックベイ クロノ Ref.79350

クロノグラフの作動系パーツにコラムホイールを、伝達系パーツに垂直クラッチを採用する高性能な自社製ムーブメント、キャリバーMT5813を搭載する自動巻きクロノグラフ。3時位置に45分積算計、9時位置にスモールセコンドを配した2カウンターデザインがクラシカルなデザインだ。直径41mmのステンレススチールケースのベゼルに、速度を計測できるタキメータースケールを刻印。リューズとプッシュボタンをねじ込んだ状態で200m防水を確保。

5本目ブラックベイ ブロンズ Ref.79250BM

シリーズ最大43mmサイズの存在感が際立つ、ブロンズ製モデルとして2016年にデビュー。使い込むことで風合いが変化する特性を活かし、“世界に1本のオリジナル性”で人気を呼んでいる。ブラウンダイヤルに合わせアルマイト加工を施したブロンズ製逆回転防止ベゼルを装備。同社アンバサダーの元プロサッカー選手、デイヴィッド・ベッカム氏が広告で着用している。他のブラックベイと同じく、耐傷性の高いサファイアクリスタル風防をセット。200m防水。自動巻き。

6本目ペラゴス Ref.25600TB

『ロレックス』でいう「シードゥエラ―」に相当するプロフェッショナルダイバーズで、ダイビングに余裕の500m防水、飽和潜水に対応するヘリウムガス排出バルブ、海水による腐食に強いチタン製ケース、傷が付きにくいセラミックベゼルなどを採用している。2015年に自社ムーブメントモデルへとアップデートされたことでスペックアップを果たし、カラーコンビネーションも一新された。左利き用の「ぺラゴス LHD」も存在する。ラバーストラップが付属。自動巻き。

7本目ヘリテージ クロノ Ref.70330N

1970年にリリースした『チューダー』初のクロノグラフ、「オイスター デイト クロノグラフ」の復刻版。ユニークな5角形のインデックスから、コレクターの間では通称「ホームベース」とも呼ばれる。横位置の2カウンターや文字盤外周のミニッツカウンター、6時位置のデイト表示、そしてオレンジのクロノグラフ針など、当時のデザインを見事に再現している。ポリッシュ&サテン仕上げの42mmステンレススチールケース。両方向回転ベゼルを搭載。自動巻き。

8本目ヘリテージ クロノブルー Ref.70330B

かつて人気を博し、今なおアンティーク市場で高い評価を受ける1971年製クロノグラフを現代に甦らせた。カジノのルーレットを想起させるカラーリングより時計収集家たちから「モンテカルロ」の名で呼ばれる逸品は、オリジナルモデルは手巻きムーブだったが、現代人の嗜好に合わせて自動巻きムーブへと変更。ストラップは写真の3連ブレスレットか、ブルー×ホワイト×オレンジのカラーに合わせたフランス製のファブリックストラップから選択できる。

9本目レンジャー Ref.79910

「エクスプローラーT」に似たアラビア数字を配したスタイルにより1960年代後半の同社主力モデルだった「レンジャー」も、現代的な解釈を踏まえて復刻されている。とくにアロー型の短針は当時の面影を残す重要なディテールだ。デザインもスペックも同等の「ブラックベイ 41」が存在するためか、同モデルは現在のところ日本国内での正規展開はされていない。だが、販売している並行店では人気上々と聞く。サテン仕上げのステンレススチールケースは直径41mm。150m防水。自動巻き。

10本目クロノタイム(アンティーク)Ref.79160

『チューダー』人気を象徴するアンティークの1本が「クロノタイム」である。生産終了しているモデルだが、1976年に汎用ムーブメントの名作「バルジュー7750」を搭載してデビューし、デイトナに通じるスポーティな自動巻きクロノグラフとして好評を得た。とくに初期ロットは側面から見るとケースがカマボコ型をしていたり、ベイクライト製のタキメーターベゼルやプラスチック風防を備えているなど、コンディションに優れる個体は年々アンティーク市場で評価を高めている。

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