
世界を震撼させた薄さ。エコ・ドライブワンが魅せる静かなすごみ
2016年の衝撃デビュー以降進化を重ねる『シチズン』の極薄時計「エコ・ドライブ ワン」。厚さ3mmに満たない世界には、膨大な技術力と途方もないロマンが秘められています。
「エコ・ドライブ ワン」が成し遂げた、世界最薄という偉業
薄くて軽い。そんな男性は嫌われてしまいそうですが、腕時計となると話は180度変わります。腕時計はいうまでもなく、多くのパーツから成り立つ精密機械。結果、どうしてもサイズの制約が生まれます。そんな中、各メーカーは技術を結集してコンパクト化に挑み、エレガントで利便性の高い1本を追求してきました。壁掛け時計から懐中時計、そして腕時計へ。その進化の歴史の側面には、小型化への強い思いも存在するはずです。そして2016年、1本の時計が転換点を作ります。
戦前から続くジャパンウォッチの雄『シチズン』が、世界最薄の光発電式腕時計「エコ・ドライブ ワン」を発表。ケースの薄さは、なんと2.98mm(設計値)。メタルブレスのモデルが約70g、レザーブレスでは29gと、軽さも驚異的なミラクルウォッチでした。
薄くて軽い「エコ・ドライブ ワン」は、我々のライフスタイルにも好影響を及ぼします。まずは物理的にストレスを受けにくい点が挙げられるでしょう。身に着けていることを忘れるような快適な着用感は、至福そのもの。スーツ着用の際にも袖口を邪魔せず、作業中の煩わしさがありません。また、極薄ゆえにどの角度から見てもエレガントなルックスは、大人の装いに特別な品格を与えてくれます。
光発電エコ・ドライブ40周年を祝うモデルとして企画された「エコ・ドライブ ワン」
画期的な「エコ・ドライブ ワン」。その背景にも語るべきポイントがあります。そもそも『シチズン』は、数あるウォッチメーカーの中でもテクノロジーが突出。チタンに独自の表面硬化技術「デュラテクト」を施した「スーパーチタニウム」や、GPSによる時計・カレンダーの自動修正機能「サテライト ウェーブGPS」などを生み出すかたわら、これまでさまざまな世界一、世界初を実現しています。
特に業界に衝撃を与えたのが、1976年に誕生した世界初のアナログ式光発電時計。その根幹を担ったのが、わずかな光でも電力に換える「光発電エコ・ドライブ」でした。その“発明”から40周年を祝うスペシャルモデルとして、「エコ・ドライブ ワン」の開発が始まったのです。プロジェクトの始動は2014年の夏。“薄さで世界を驚かせる”というモットーのもと、素材からパーツまですべてを一新して試行錯誤が続けられ、約2年の歳月を経てムーブメント厚1.00mm、ケース厚2.98mm(設計値)という境地に達しました。
ただ薄いだけではない、『シチズン』らしい偏執的なまでの機能追求
2016年の誕生以来、現在も『シチズン』のフラッグシップモデルに君臨する「エコ・ドライブ ワン」は、圧倒的な薄さを誇ると同時に多くの特徴を併せ持ちます。以下では、『シチズン』のすごみが宿る驚異のテクノロジーについて読み解いていきましょう。
スペック1
まずは、光発電エコ・ドライブ。この薄さでも変わらぬロングライフバッテリー
まず改めて紹介すべきは、誕生のきっかけともなった光発電システム「光発電エコ・ドライブ」についてでしょう。前述の通り、太陽光に限らず蛍光灯などのわずかな光でも動力に変換する同システムは、充電後の余った電気を二次電池に蓄える点でも優秀です。1度フル充電すれば光の届かない場所でも半年近く動き続け、定期的な電池交換も不要。「エコ・ドライブ ワン」においては極薄ケースの中でこれを追求・達成しており、その姿勢にロマンを感じずにいられません。
スペック2
わずか1mmの厚さに85個のパーツ。超薄型ながら高性能を実現したムーブメント
腕時計本来の美しさを、限りなくシンプルに表現する。薄さの探求にはそんなロマンも込められていますが、そのためにはムーブメントの見直しが不可欠でした。「エコ・ドライブ ワン」のムーブメントは85個のパーツから成り立っており、それらを1mm厚の中に収める必要があったのです。結果、時計の心臓部であるローターだけでなくコイルなどもイチから再設計し、二次電池にいたっては「マクセル」と共同開発。それまでの時計作りの常識を根底から覆す極薄構造は、技術大国日本の技術力の高さを証明するものでもありました。
スペック3
薄さの裏で強度を担保する、サーメットをはじめとした高硬度素材
物理的に薄い時計は、守りも薄い時計と思われがち。ただし、「エコ・ドライブ ワン」は一味違います。2016年のデビュー時、2つの新しい素材を纏って“強さ”もアピール。それが、チタンベースの硬い粒子で構成された「サーメット」と、硬さと耐食性・耐酸化性を備えた「バインダレス超硬合金」。ケースやベゼルに使われたこれらの素材は堅牢な腕時計のベースとなるだけでなく、腕時計の持つ美しい見た目を持続させる機能も果たすのです。
ドレスウォッチの極み。「エコ・ドライブ ワン」より5本をピック
極薄の2針という無駄をそぎ落としたルックス。それはまさに、シンプルなドレスウォッチの王道をいく佇まいです。以下では、至極の5本をピックアップ。どれもが、シンプルな外見に気高きロマンとテクノロジーを宿す一生モノです。
1本目
AR5050-51L
設計値にしてケース厚2.98mm、重量70g。改めて驚愕の数値ですが、今作ではブルーのグラデーションダイヤルを纏い、エレガンスを強調させています。ビス打ちが特徴的なベゼルには、シルバーカラーのサーメットを使用。ステンレスケースの表面にはデュラテクトαで加工を施し、堅牢性を高めました。
2本目
AR5025-08E
ブラック&ピンクのカラーリングにワニ革のベルトを備え、よりシックな顔立ちに。タキシードにも馴染みそうな格式高いデザインが特徴です。上のモデルと同様に、ベゼルにはサーメットを、ステンレスケースにはデュラテクトDLC加工を、文字盤にはサファイアガラスをそれぞれ採用。時計の美しさを長く保ってくれます。
3本目
AR5044-03E
2018年に発表された世界限定1,000本モデルで、スペシャルBOXも付属します。ブラックグラデーションの引き締まったルックスもさることながら、最大の特徴はベゼルに「アルティック」なる新素材を使っている点。アルミナと炭化チタニウムの複合素材であるそれは、硬く、軽く、滑らかな美しい鏡面に寄与します。
4本目
AR5034-58E
特定のショプだけで取り扱われる限定モデルで、ケースとブレスレットにはスーパーチタニウムが使われています。ゆえに、わずか48gと圧倒的に軽く、金属アレルギーを起こさないやさしさまで備えています。時計と人の幸せな関係を突き詰めた、『シチズン』らしい1本といえるでしょう。
5本目
AR5034-07L
こちらも取扱店舗が限られたモデルで、合計220本をリリース。通常のバーインデックスとは異なり、存在感のあるローマンインデックスがあしらわれます。3.5mmの薄い設計だけでなく、ネイビーとゴールドの織りなす色彩もスーツスタイルにも馴染んでくれます。

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