男の相棒。レッド・ウィングのアイリッシュセッターと、今一度向き合う

男の相棒。レッド・ウィングのアイリッシュセッターと、今一度向き合う

ワークブーツの永遠の定番『レッド・ウィング』の「アイリッシュセッター」。あまりにも身近であるが故に見落としがちな名作ブーツの魅力を、今一度おさらいしましょう。

那珂川廣太

2020.04.20

レッド・ウィング(RED WING)
ブーツ
ワークブーツ

『レッド・ウィング』の“顔”、「アイリッシュセッター」って何だ?

日本人が『レッド・ウィング』の存在を知ったのは1970年代半ばのこと。当時のアメリカはアウトドアブームの真っ最中であり、若者たちはラガーシャツにブッシュパンツをはき、足元は『レッド・ウィング』の「アイリッシュセッター」を履いたファッションで街と山を行き来していました。

そのアメリカの若者の着こなしを日本に紹介したのは、ご存じ『Made in USA カタログ』と『ポパイ』。『Made in USA カタログ』では1975年の第2号の表紙で「アイリッシュセッター」をドカンと登場させ、翌年に創刊した『ポパイ』ではスタイリストの北村勝彦氏が『シエラデザイン』のマウンテンパーカーとともに「アイリッシュセッター」をスタイリングに取り入れたことで、日本の若者にとっても憧れのブーツとなりました。その後も90年代の渋カジブームをはじめ、常にアメリカンカジュアルの足元を担ってきた『レッド・ウィング』は、今ではブーツの最重要ブランドとしての地位を確かなものにしています。

「アイリッシュセッター」といえば#877……、といわれるまで

「アイリッシュセッター」とは何かを語るために、まずはその歴史についておさらいをしましょう。「アイリッシュセッター」の前身となったのが、1950年に誕生した#854。#854は現在の「アイリッシュセッター」と同じくモックトゥの8インチブーツで、ソールにはコード入りのラグソールが使用されていました。その後、1952年に#854の後継モデルにあたる#877が登場。この#877では狩猟時に木の根に引っかかるのを防ぐために、フラットなワンピースタイプのトラクショントレッドソールを採用しており、現在まで続く基本的なスタイルが完成します。

当時の#877はカリフォルニアのタンナーがセコイアの樹皮を使ってなめしたオロ・ラセットレザーという革をアッパーに使用していました。このオロ・ラセットレザーが猟犬のアイリッシュセッターの毛色と似ていたことから、#877の愛称として「アイリッシュセッター」の名前が使われるようになりました。1954年にはシュータン裏に“IrishSetterBoot”の文字と猟犬のデザインを盛り込んだタグ(通称:犬タグ)が縫い込まれ、#877のモデル名として正式にカタログに掲載されています。

また、#877が爆発的な人気を得たことで数年後には6インチ丈の#875がリリースされるなど派生モデルがいくつも誕生。それらにも犬タグが施されるようになりました。そのため、歴史的な経緯を鑑みると“オロ・ラセット系のレザーをアッパーに使い、犬タグが施されたブーツ”をアイリッシュセッターと呼ぶのが、狭義の意味では正解。しかし、会話の中で「アイリッシュセッター」という単語が出た場合は#877か#875を意味するのが一般的。さらに現在の『レッド・ウィング』では、オロ・ラセット系以外のレザーを使用したモデルも「アイリッシュセッター」として扱われています。本稿ではブランドの定義に従い、#877や#875に限らず犬タグが施された派生モデルも含めて「アイリッシュセッター」として扱っています。

#875を例に解説。「アイリッシュセッター」のポイントをチェック

モックトゥ・ワンピースソール・赤茶のアッパーという構成が、「アイリッシュセッター」の原点にして本流。その普遍的なデザインはもちろん、今なおハンティング&ワークという過酷な状況の中で使われているだけあって、履き馴染みの良さや耐久性、防水性の高さもお墨付きです。もちろんそれらのスペックは派生モデルも同様です。ここでは「アイリッシュセッター」に共通する魅力の秘密を解説します。

ポイント1堅実な製法と、ステッチ1つ取っても合理的な作りで“馴染む”ブーツへ

アメリカンワークブーツの特徴が、非常に合理的な作りを行っているところ。生産効率と履き心地を向上させるグッドイヤーウェルト製法は言うに及ばず、さまざまな工夫が1足の中に込められています。例えば、ちょうど足首が曲がる部分に施されたヒール部分のステッチもその1つ。これは屈曲部にステッチを施すことで曲がりやすくしつつ、ヒールカウンターを正確な位置に縫い留めるためのもの。数十年以上前の設計にもかかわらず、既に人間工学に基づいた靴作りを行っていることが伺えます。実際に履いてみればその他のステッチ部も足の可動域に対応して施されており、生産効率と履き心地を考えながら設計されていることがわかるでしょう。

ポイント2袋状に縫い上げられたシュータンが、防水性能も担保

元来はハンティングブーツとして作られただけあって、グッドイヤーウェルト製法に加えてオイルをたっぷりと含んだレザーによって確保される「アイリッシュセッター」の防水性はなかなかのもの。雨の日に多少水たまりに足を踏み入れた程度では、靴内部まで濡れることはありません。また、意外と役立つのが、袋状に縫い込まれたシュータン部分。アッパーとシュータンの切れ目から泥や水の浸入を効果的に防いでくれます。ただし、汚れの溜まりやすい部分でもあるため、メンテナンスの際はしっかりと掃除してあげましょう。

ポイント3犬タグが満たす、男の所有欲

一言で「アイリッシュセッター」の犬タグといっても、1950年代から60年代の“刺繍犬タグ”から、以降の“白四角犬タグ”、“半円犬タグ”など、製造された年代によってバリエーションはさまざま。それらを後年に復刻したタグまで入り乱れているうえに、年代や輸出地の仕様によっては#877や#875でも犬タグを使ってないモデルも存在するため、ある意味でややこしくもあり面白くもあるのがこの部分です。また、タグだけでなくアッパーの色合いやディテールも年代によって異なるため、ヴィンテージ市場では人気の年代はプレミアム価格で取り引されています。もしシューズボックスの中で眠っている「アイリッシュセッター」をお持ちであれば、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

革も形も種類豊富。今買える「アイリッシュセッター」5選

前述の通り、時代とともにバリエーションが増え、今では『レッド・ウィング』の代名詞ともなった「アイリッシュセッター」。シェイプや革が異なるモデルが多数存在するのみならず、同じ#877系でも生産年度ごとに微妙に異なるカラーを採用するなど、奥が深いのも魅力の1つ。ここではその中から注目のアイテムをご紹介します。

1足目#8877

オロ・ラセットレザーを使用した#877は時代を経るにしたがって赤みが強くなり、1996年に「レッド・ウィング」本社は元のブラウンがかった色味に戻すことに。しかし日本市場では赤みの強い色が好まれたため、#877から#8877と品番を変えて赤みの強いモデルも存続することになりました。こちらは2018年に#8877を復刻したモデル。いわば『レッド・ウィング』ブーム真っ最中の#877の色味を再現したモノであり、おそらく30~40代の読者がイメージしている「アイリッシュセッター」はこの色ではないでしょうか。

2足目#9875

セコイアの樹皮のタンニンでなめしていた頃のオロ・ラセットレザーは色が安定せず、ロットによって赤茶に近い濃色から黄色味の強いものまでバリエーションが存在していました。こちらモデルでは#875をベースに、当時のオロ・ラセットレザーの中でも比較的明るめの色合いに仕上がったものをイメージして再現したゴールドラセット・セコイアをアッパーに使用した#9875。上質な光沢とやや硬質な銀面が特徴で、履き込むに従って猟犬の毛並みのような落ち着いた色合いへ変化します。

3足目#8167

『レッド・ウィング』の創業初期から存在していたチャッカタイプのラウンドトゥブーツですが、1954年にトラクショントレッドソールと犬タグが装着されたことで「アイリッシュセッター」の仲間入りを果たしました。こちらのモデルではホーソンアビレーンというドライタッチで肉厚なラフアウトスエードをアッパーに使用しており、ラインアップの中でも特にスニーカーライクな軽さを感じるルックスに仕上がっています。

4足目#9895

いわゆるワークオックスフォードの名前で知られる短靴に犬タグが施されたバージョン。もともと1954年に#875とともに「アイリッシュセッター」の仲間としてリリースされた歴史あるモデルですが、その後何度も廃盤になった幻のモデルでもあります。ちなみに、洒落者として知られていたイラストレーターの故・安西水丸氏が「ワークオックスフォードが好きなんですが、もう売ってないんですよね……」と雑誌の記事でボヤいたことがきっかけになって復刻に至った、という裏話も。

5足目#9874

黒アッパーと白ソールの「アイリッシュセッター」は、当時藤原ヒロシ氏が『フラグメント』の名義で『レッド・ウィング』に別注して爆発的な人気が出たモデル。90年代の『レッド・ウィング』ブームを知る人にとって懐かしい&憧れの1足ですが、こちらは同様の仕様でカタログ入りした#9874。安西氏や藤原氏のケースだけでなく、同ブランドでは日本発信の別注企画がヒットした場合、後にカタログ入りすることがしばしばあるようです。

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大中 志摩

バイク専門誌と男性向けライフスタイル誌で編集を約8年務めたのちに独立。ファッションはアメリカンカジュアルからトラッドまで幅広く執筆を行い、特にブーツやレザー、ジーンズ、古着など男臭いアイテムの知識が豊富。また乗り物やインテリア、フードまでライフスタイル全般にわたって「ラギッド」を切り口に執筆する。
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