
1枚でも主役級の存在感。メキシカンパーカーが人気再沸騰中
ファッションブランドの参戦が追い風となり、赤丸急上昇中のメキシカンパーカー。コーデの主役として劇的なキャラ立ち効果が期待できる注目トップスの魅力を読み解きます。
ヒッピー&サーフのアイコン、メキシカンパーカーに今こそ頼りたい
メキシカンパーカーといえば、かつてのヒッピー文化やサーフ文化を象徴するアイテム。日本にはそうした西海岸カルチャーに欠かせない服の1つとして上陸を果たしましたが、そもそもどうしてアメリカ経由なのに“メキシカン”なのでしょうか。せっかく着るなら、まずはそのあたりの基本の“き”からおさらいを。
アメリカ映画ではアウトロー的な不良キャラがよく着ていることからもわかるように、本国での位置付けは今も昔もカウンターカルチャーを体現する服。その発祥は意外と古く1930年代のこと。波を求めて南下したサーファーたちがメキシコの“バハ・カリフォルニア”にたどり着き、そこで見たセラーピブランケットと呼ばれる伝統生地を使った服にひと目惚れ。その服を海上がりに気楽に着られる服としてカリフォルニアに持ち帰り、それが60年代後半から70年代にかけて盛り上がったヒッピー文化に浸透したようです。その後も『ステューシー』などが手掛けたことでストリートシーンでも存在感を放ってきたのですが、ここストリートファッション人気再燃の流れの中で表舞台に再浮上。ハイブランドも作り始めたことが追い風になって、ヒッピー色を中和したガチ過ぎないデザインのモノも増えてきたというわけです。
ただのパーカーと何が違う? メキシカンパーカーの特徴とは
というような経緯で選択肢がグッと増えたメキシカンパーカーですが、そのデザインはバサッと被るだけで着られるプルオーバーが基本形。伝統的なブランケットから派生した服なのでストライプを中心とした柄モノが多く、その存在感のおかげで1枚着るだけでコーデが完成する楽ちんさが魅力です。たっぷりとしたシルエットは、昨今のトレンドにもマッチしています。素材に関しては、コットンや再生繊維といった素朴なものに限らず、最近はカシミヤのような上質素材やスウェットといった快適素材のモノも登場しています。
今度は、そのこなし方についてのお話を。柄や織り自体に存在感があるのでTシャツの上に羽織るだけでもコーデはキマりますが、胸元が大きく開いているのも普通のパーカーと違うところ。だから、レイヤードにもなかなか使えるアイテムなのです。写真のように思い切ってシャツをインしてしまえば、上級者感も簡単に出すことも。ドライ系の生地を選べば夏でも使えますし、そのままレイヤードを工夫すれば秋冬でも使い勝手は良好です。
さらりとラフに。メキシカンパーカーはこう着こなす
さて、次は気になる着こなし例を見てみることにしましょう。といっても難しいテクはまったく必要ないのでご安心を。サッと着るだけで絵になるし、レイヤードも拍子抜けするほど簡単です。
着こなし1
シンプルコーデが一気に見栄え良くアップデート
ストライプ柄のメキシカンパーカーの威力が、一発でわかるのがこのコーデ。白Tにベージュのチノパンというともすればコンサバ過ぎる印象に傾きがちなシンプルコーデですが、そこにこれ1枚着るだけで見え方が激変。柄が目立ち過ぎない配色を選んだこともあって、キャラが立ちつつも、力の抜けた装いに。
着こなし2
インナーに仕込めば、抜け感の演出にも力を発揮
このコーデは、ステンカラーコートのインナーにメキシカンパーカーを1枚仕込んでいるのがポイント。黒の単色であればチェック柄パンツのような街顔のボトムスにもスッと馴染んでくれるのでご安心を。大きく開いた首元から白Tを見せることもできるので、抜け感たっぷりのコートスタイルに落とし込めます。
着こなし3
パンチの強いアイテムとも相性抜群
鮮やかな配色のワイドパンツは難易度高めな印象。ですが、トップスにメキシカンパーカーを投入すればご覧の通りです。パンツのアクの強さを柔らかな配色のストライプ柄がいなしてくれるので全体にまとまり感が生まれ、上下で互いを引き立て合った着こなしに。スニーカーやインナーのTシャツを、シンプルな配色にしたのも勝因に。
人気ブランドから続々。メキシカンパーカーのおすすめ8選
メキシカンパーカーの魅力がわかったら、あとは自分好みの1枚を絞り込むだけ。お馴染みのセレクトショップも手掛けているので、きっとピンとくるデザインが見つかるはず。
アイテム1
『エイティーズ』ビロウ サイクロン
ストックホルムからストリートテイストを感じさせるスニーカーや服を発信している『エイティーズ』が手掛けたこちらは、柄違いのメキシカンパーカーを合体させたようなデザインがひと味違う個性に。ボディは柔らかなウール仕立てで、裾周りやスリットにハンドメイド風の素朴なステッチを施すことでほっこりとした癒やしの佇まいを演出しています。
アイテム2
『クラネ オム』メキシカンパーカー
総柄にハードルの高さを感じる場合は、無地からトライするのも手。こちらのボディは、度詰めのスウェット仕立て。ドロップショルダーのゆったりシルエットやガバッと開く胸元はメキシカンパーカーの佇まいですが、開き加減を調節できるボタンフライ仕様なのが新鮮。袖や裾周りにはリブが付いているので、その分すっきりとした印象を加味できます。
アイテム3
『ワカミ』メキシカンパーカー
グアテマラ共和国の農村地域に暮らす女性たちの生活環境を改善すべく、フェアトレードの理念に基づくブランドとして創設された『ワカミ』。これはそのアパレルラインの新作で、その代表作であるアクセサリーを思わせる鮮やかな配色をマルチストライブ柄で表現。ドローコード付きで、裾周りのシルエット調整も自由自在です。コードの先端にあしらわれたブレスレットでお馴染みの編み柄も見どころ。
アイテム4
『チャンピオン』×『シップス』別注 メキシカン フード スウェットパーカー
『シップス』の別注で、『チャンピオン』のインラインにはないスウェット仕立てのメキシカンパーカーがお目見え。ボディはヒップに少しかかるくらいの着こなしやすいゆったりシルエットで、V地型の襟ぐりや両裾のスリットといった特有の意匠もしっかり再現。ミディアムウェイトのしっかりとしたフレンチテリーや確かな縫製といった“キング・オブ・スウェット”ならではのクオリティももちろん健在です。
アイテム5
『エルパソ サドル ブランケット』サウスウエスト フリース プルオーバー
インパクト重視で選ぶなら、ネイティブ柄もぜひ選択肢に。こちらは40年以上の歴史を持つテキサス州のサドルブランケットメーカーが手掛けたモノなので、柄や色使いの佇まいはまさしく本格派。しかも実はこれ、ボディがポリエステルのマイクロフリースなので、着心地はすこぶる軽やか。当然、保温力も高いので、秋はもちろん、真冬のインナーとしても心強い存在になってくれそうです。
アイテム6
『サニースポーツ』メキシカンラグパーカー
味わい深いボディの生地は、不要になった布を細かく裂いて織り上げる裂織(さきおり)の生地をオリジナルで作成したもの。ラグにも使われる生地なので、非常に丈夫。シルエットは直線的なオーバーサイズフォルムで、フロントのニューメキシコ産のコンチョ風ボタンに加え、裾周りがカットオフ風のフリンジ状になっているのも個性を印象付けるポイントに。
アイテム7
『ダウン オン ザ コーナー』ストライプメキシカンパーカー
本場メキシコで生産されたストライプ柄ボディに、スカルやタートルなどのロゴでスパイスを散りばめたデザイン。コットンにポリエステルとアクリルをブレンドしたボディは、軽やかな着心地を演出。裏起毛されているので、表面はざっくり感がありつつも、やさしい着心地に仕上がっています。背中にはブランド名がドカンとバックプリントされているので、後ろ姿も存在感抜群です。
アイテム8
『アースラグス』バハパーカー
このメキシカンパーカーを手掛けている『アースラグス』は、カーペットや洋服の端切れや生地を買い取り、それをラグや服、バッグとして再生させているエシカルなブランド。拠点はフロリダ州ですが、製品はすべてメキシコの工場で作っているのだとか。看板アイテムとして知られるこの「バハパーカー」もリサイクルファブリックで仕立てられたモノ。これも裏側が起毛仕上げで、体を柔らかく包むような着心地です。
紺ブレもビーサンも守備範囲。雑食系服飾ライター
遠藤 匠