
誠実に、高機能。エディー・バウアーのアウターは大人に欠かせない
90年代リバイバルの波も手伝い、再び脚光を浴びている『エディー・バウアー』。100年以上も愛され続け今なお輝きを放つ理由は、地に足のついた確かなモノ作りにあります。
100周年を迎えたアメリカブランドの良心、『エディー・バウアー』
2020年に100周年という記念すべき年を迎えた『エディー・バウアー』に、再びスポットライトが当たっていることをご存じでしょうか。90年代を席巻したアウトドアブランドが次々と再浮上している昨今の流れも当然受けてのことですが、アニーバーサリーイヤーを祝う記念モデルがドロップされ、カニエ・ウエスト一派のジャスティン・サンダース氏率いる『ジョウンド』とのコラボが実現するなど、話題性にも事欠きません。要は、ここにきてファッションブランドとしてのステータスが上昇傾向にあるわけです。しかし、同社の真骨頂はやはり創業以来積み重ねてきたモノ作りに対する信頼性の高さにあります。そのバックボーンと真価をおさらいしておけば、久しぶりに袖を通すときの高揚感もひとしおでしょう。
高品質な製品を誠実なモノ作りで世に送り出してきた『エディー・バウアー』
『エディー・バウアー』の100年に及ぶ歴史を紐解いてみると、アメリカのアウトドア史とともに歩んできたブランドであることがよくわかります。シアトル近郊のオスカル島で創業したのは1920年のこと。創業者のエディー・バウアー氏自身がアウトドアをこよなく愛した人物で、彼の実体験から作られたとある製品が社運を大きく変え、急成長を遂げるきっかけになったというのは有名な話。真冬に友人と釣りに出かけたバウアー氏は、当時主流だったウールのアウターが濡れてしまったことが原因で低体温症となり、凍死寸前の危険な状況に陥ります。その体験から最高の防寒着を作ることを決意し、開発したのが、羽毛を中綿として採用したキルティング仕様のダウンジャケットでした。これが皆さんもよくご存じ「スカイライナー」。同アイテムは、アメリカ初のダウンジャケットとして特許も取得しています。そして、1942年にはエクスペディション・アウトフィッター部門を設立し、冒険家やパイロットの相棒となる数々のエポックメイキングな製品を生み出していくことになります。
「スカイライナー」により一躍有名になったことでダウンの代名詞として認知されるようになった同社は、極地探検隊や登山隊に支給するウェアの開発にも着手。1953年に「カラコルムパーカー」というダウンジャケットを支給したヒマラヤ遠征隊を筆頭に、1957年の南極科学探検隊、1963年にアメリカ初のエベレスト登頂を成し遂げた登山隊など、サポートしてきた登山隊には枚挙にいとまがありません。その一方で、米軍パイロットの支給品も手掛け、「B-9ボンバージャケット」や「A-8フライトパンツ」を供給してきた実績もあります。
『エディー・バウアー』の歴史を切り開いてきた、3つの代表モデル
アメリカのアウトドア史・冒険史と並走してきた『エディー・バウアー』ですが、その軌跡は名品として愛され続けているアウターからも垣間見ることができます。築き上げた伝統を現代に受け継ぐ、数々のマスターピースを見てみましょう。
名品1
ブランドの偉大な発明。キルトダウンの祖、「スカイライナー」
アメリカ初のダウンジャケットとして語り継がれている歴史的アウターがこちら。キルティングを採用したボディは今でこそ多くのアウターに採用されていますが、これをダウンとともに取り入れたのはこのアウターがオリジンといわれています。羽毛を保温材に採用することを思いついた創業者は、羽毛がどうしても偏ってしまうという問題に直面。これを解消すべく試行錯誤した結果、ダイヤモンド状のキルトで固定する方法を生み出ました。
アイコニックなダイヤキルトの採用で、羽毛の暖かさをどの部位でも均等に得ることが可能に。ボディにはワックスコーティングを施したコットンナイロンで仕立てられています。現在、そのシルエットはオリジナルよりも細身かつモダンにアップデートされています。
名品2
創始者が“最高級品”と謳った「ユーコンクラシック」
1936年の「スカイライナー」の誕生から6年後となる1943年に誕生したのが、この「ユーコンクラシック」。ダウンが下に偏るのを防ぐ役割を果たすキルティングは、ダイヤモンド型ではなくスクエア型を採用し、ブルゾン丈ではなく腰まで保温できるレングスとなっています。“ダウンジャケットの最高級品”と銘打ってリリースされたことからも、性能の高さに対する自信が窺えますね。現在は「スカイライナー」と双璧を成す人気を誇っています。
首周りをじんわり温めてくれるフェイクファーは、取り外すことも可能。ブランドの伝統を物語るアウターゆえに、背裏のタグはオリジナルの雰囲気を残したヴィンテージデザインを採用しています。マチ付きで収納力の高いフロントのパッチポケットやスクエアキルトは、オリジナルと変わらぬヘリテージ感溢れる佇まいなのがたまりません。
名品3
米国空軍に提供を行った、ハイスペックな「B-9」
1940年代から米軍のパイロットにダウンジャケットを支給し、その性能の高さに対する信頼を得ていた『エディー・バウアー』。そんな同社に対し、ダウンジャケットにライフジャケットとしての役割も果たせるようにできないだろうか、という軍関係者からの依頼がありました。その依頼の内容というのは、万が一海上に墜落した場合約10kgの荷物を持ったパイロットの24時間浮かせておける浮力を備え、マイナス20度の低温下で3時間でも保温性を保ちたい、というもの。そのスペックを見事に実現して開発されたのが「B-9」です。その佇まいを現代に受け継いでいるのが、この1着。耐久撥水加工を施した表地でタフさを体現しています。
ヒップが隠れるミドル丈。ウエストはシャーリング仕様で、フィット感を高めることでウェア内のデッドスペースを無くし、フィリングされたダウンの保温力を存分に引き出すことができます。フードを縁取るフェイクファーは着脱可能な設計です。
他にも名品揃い。『エディー・バウアー』で見つける今冬の相棒
アメリカに根付いたアウトドア文化とともに歩んできた『エディー・バウアー』には、寒さが本格化するこれからの季節に頼れるアイテムが豊富に揃っています。看板モデルのアウターに負けず劣らずの優秀なアイテムたちをご紹介しましょう。
アイテム1
チョッパージャケット
『エディー・バウアー』のハイスペックアウターに欠かせない存在となっているのが、独自の防水透湿シェルである「ウェザーエッジ」。これはそのシェルを採用しつつ、カラーブロックで90年代テイストを感じるスタイルに落とし込んだ1着です。レトロな面持ちながら、ポケットにも止水ジッパーを採用し、細部も完全防水ジャケットに見合った仕上がりに。
アイテム2
イグナイトシリーズ リバーシブルジャケット
表地や裏地に加え、中綿にもストレット性を持たせ、運動量の多いシーンでの快適さを追求したのが「イグナイト」シリーズ。これはそのリバーシブルタイプで、裏返すとキルティングのないすっきりしたブルゾンとして着用可能です。イグナイトという素材は通気性が非常に高く、トレーニングなどで着用した際に体温が過度に上がり過ぎるのを防ぐ効果も期待できます。
アイテム3
フォイル シェルパラインド ジャケット
温故知新な薫りが漂うこちらのブルゾンは、ボアフリースがライニングされていており首周りにほっこりとしたアクセントを加えることが可能。モコモコにならない絶妙な塩梅で中綿が仕込まれているので、ボアと中綿がダブルで体を温めてくれます。ポケットの裏地も起毛トリコット素材ゆえ、ハンドウォーマーとしても使い勝手は良好です。
アイテム4
トラッキー ダウンジャケット
見た目こそボア襟付きのトラッカージャケットですが、こう見えて中にはダウンもフィリングされているので保温力は抜群。襟のボアはやわらかなフリース素材が採用されており、裏面は滑りの良いポリエステルによるキルティングなので、アメカジテイスト溢れるタフな顔立ちとは裏腹に、やさしい着心地に仕上がっています。
アイテム5
ウールブレンド フェアアイル クルーネック セーター
歴史あるブランドらしく、タイムレスな魅力を放つフェアアイル柄ニットもしっかり手掛けています。こちらは、柄自体はトラディショナルですが、ニットはウールに対してアクリルとナイロンをブレンド。非常に軽やかで、ストレスなく着られます。細身過ぎず、適度なゆとりを持たせたレギュラーフィットはサイズアップして着ても映えそうです。
アイテム6
ベリンハム フリース クルーネック スウェット シャツ
毛足の長いフリースで仕立てたチャーミングなプルオーバー。「サーモソーラー」という、高機能繊維を用いています。光を吸収して熱エネルギーに変換してくれるので、癒しを感じる着心地に加えて圧巻の保温力を期待できます。左胸のポケットに施された織りネームには、1980~90年代に使用されていたマウンテンロゴの復刻デザインを採用。
アイテム7
ファーストアセント マウンテンオプス チョアジャケット
山岳ガイドのために開発されたこちらの1着はオーセンティックなカバーオールと思いきや、ボディの素材はただのダック地ではありません。コットンにポリエステルを混紡し、伸縮性を持たせたコーデュラ社のストレッチキャンバスを採用しています。11オンスの地厚な生地ながら非常に動きやすく、裏面にフリースがライニングされているので寒さにも滅法強い仕上がりです。
アイテム8
スカイライナー スエードダウンジャケット
看板モデルの「スカイライナー」には、より街映えするスエード仕立てという選択肢もあります。ボディに採用したのは、しなやかな手触りのゴートスエード。しかも、ジッパーはヴィンテージ感溢れるコンマー社のものを使用。同社のジッパーは、1930年代に現在のような機構を完成させており、当時のミリタリーアウターの要ともいえるディテールとしてマニアには評価されています。そんな男心をくすぐる作り込みもたまりません。

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