
気軽に取り入れるべし。オペラシューズが主張する、濃厚なエレガンス
正統派のドレス靴でありながら、紐なし靴ゆえに実は気軽に履けるオペラシューズ。どこか抜け感が欲しい今どきなきれいめコーデの仕上げに、取り入れる価値は大アリです!
リラックス感に反する、フォーマルさ。オペラシューズって何モノだ?
日本のファッションシーンにおいても、洒落者たちの足元を彩る1足としてオペラシューズを見かける頻度が随分と増えてきました。ドレス寄りの装いを主力に位置付けているなら間違いなく戦力になってくれる靴ゆえ、ぜひチェックしておきたいところ。ですが、日本においてはレディース向けの靴というイメージが根強く、それが履いてみたい気持ちにブレーキをかけることも。本記事ではそうした誤解を解く意味でも、オペラシューズの出自や選びのポイントまで深掘りしてみることにしましょう。
まず出自ですが、19世紀中頃のヨーロッパで、その名の通り、オペラなどの舞台観劇を鑑賞する際に男性が履くために作られた紳士用礼装シューズが起源。極めてフォーマル度の高い靴がルーツであり、由緒正しい紳士靴なのです。そんな“ハレの日”で履く礼装靴がルーツゆえ、リボン飾りやパテントレザーといったエレガントさ溢れる意匠が満載。オペラパンプスという名称で女性用に改良され広く受け入れられるようになったのも、こうした毛並みの良さに根差すところでしょう。
ですが、シューズとしてはいわゆる短靴。しかもフォーマル度の高い靴に欠かせない、靴紐がないスリッポンでもあります。つまり、正装靴にしか出せない品の良さと、ローファー的な雰囲気を併せ持つシューズというわけです。ちなみにフォーマル靴として仕立てられた正統派のオペラシューズには甲部にリボン飾りが施されていますが、普段使いを想定して仕立てされたモノにはこのリボン飾りを簡略化しているものも多数。エレガントなトゥシェイプを描くプレーントゥに落とし込まれたスリッポンデザインも、ファッション解釈のオペラシューズとして認知されています。そんなフォーマル感と気楽さを併せ持つ靴であるがゆえに、ドレスコードが緩和された現代のジャケットスタイルにおける仕上げの一手としてもうってつけなのです。
最初の1足で選ぶなら、スエードやベルベッドなどの起毛素材がベター
では、ここからはそんなオペラシューズを今履くにあたって意識したいポイントを整理してみましょう。まずは素材選び。そもそもが礼装靴なのでエナメル製が最もフォーマルにして正統ということにはなりますが、メンズが普段使いする靴としては色気があり過ぎて腰が引けてしまう人がおそらく多数派でしょう。靴自体がフォーマル顔ゆえ、ツヤやかな表革も相まってセクシーさが強く出がち。その点、スエードやベルベッドといった起毛素材であれば色気を中和でき、カジュアルにも落とし込みやすくなるのです。
とはいえ、フォーマル靴としての本領を発揮してほしいシーンであれば、躊躇なくエナメル仕立てのものに頼ってしまいましょう。パーティのような華やかな場所では、“わかっている感”とともにおしゃれ偏差値の高さも印象付けられます。
いわゆる“紐なし”だからこそ。オペラシューズはかかとで選ぶ
選ぶ際の留意点として、忘れてはならないのがフィッティング。一般的なレースアップタイプのドレスシューズはつま先のフィット具合や捨て寸などを重視しますが、オペラシューズの場合はその逆サイド、つまりかかと側が大切。これは、オペラシューズは概してつま先側の幅が狭めだから。つま先側に合わせて選んでしまうと、かなり大きめのものを選ぶ羽目になってしまいます。順番としては、まずかかと側のサイズ感がちょうどいいものを選び、その上でつま先周りのフィット感とのバランスを見る、という流れが理想です。
アレンジの差が出来を分ける。オペラシューズの着こなし足元サンプル
普段使いするのは難易度が高そうなオペラシューズですが、要点さえ押さえればそう難しくありません。ポイントになるのは、パンツのシルエットやレングスとのバランス。そして、ソックスの有無や選び方。正解を導き出すためのスタイルサンプルで見てみましょう。
コーデ1
無造作感のあるロールアップを、ドレス感の中和剤に
まずは、じわじわきている総柄ニットにミリタリー系のチノパンを合わせた装いから。白ソックス見せで抜け感を出していますが、パンツの裾を無造作に折り返している点にご注目ください。左右のレングスをあえてチグハグで折るがゆえの力の抜けた感じが、オペラシューズのドレス感を中和する効果を発揮しています。難易度のハードルをグッと下げる裏技として、ぜひお手本にしたいテクニックです。
コーデ2
白ソックス魅せのワイドパンツで、品格と抜け感を両取り!
こちらは、より太めなチノパン型のワイドパンツを合わせたスタイル。ワタリから裾までストンと落ちる極太シルエットですが、くるぶしにかかるかかからないかぐらいの気持ち短めのレングスなのがポイント。これにより、オペラパンプスのエレガントなフォルムがちょうどいい塩梅で引き立つことに。裾クッションを作ってもたつかせてしまうと、この軽快さとこなれた雰囲気は出せません。あえての白ソックスで抜け感に拍車をかけているのも、その一助に。
コーデ3
スラックス合わせは、あえてのハンパ丈が吉
今度は、ドレス顔のスラックスを合わせたコーディネート。ジャストレングスにしてしまうとトップスをカジュアルに寄せにくくなりますが、これはくるぶし見せの9分丈。しかも、素足履き(もしくはシューズインソックス履き)なので、Tシャツ&カーディガンというユルめな上半身とのバランスもしっかり取れた格好に。それでいて足元のオペラシューズから立ち上がる上品さを嫌味なく印象付けられます。
名門ブランドからも続々。オペラシューズの名品、おすすめ10足
現在は、英国やイギリスの歴史あるシューズブランドに限らず、国内外の新鋭もファッション解釈のオペラシューズを手がけています。作り手の世界観を足元のおしゃれの味方につけられる秀作をピックアップしました。
アイテム1
『トリッカーズ』チャーチル
チャールズ皇太子御用達で知られるノーザンプトンの老舗が定番として作り続けている本作は、毛足が美しく整ったベルベット仕立て。継ぎ目なく流麗なトゥシェイプを描いたホールカットは、装飾性を省くことでエレガントなフォルムを強調。かかとのあるレザー仕立てのソールで歩きやすさを担保する一方、コバの張り出しがないため、素足履きしても極めて上品な足元を印象付けられます。
アイテム2
『マグナーニ』オペラシューズ
スペイン発の『マグナーニ』が得意とするセミロングのノーズが印象的な本作も、ベルベット仕立て。リボン飾りの代わりにあしらわれた黒革のタッセルが、歩調に合わせてふさふさと揺れ動き、見どころの演出に一役買ってくれます。底付けは反りのいいマッケイ製法で、アウトソールにはしなやかかつ減りにくいスーパーフレックスソールを採用。
アイテム3
『バーウィック』4950
創業は1991年と、スペインの靴ブランドとしては比較的新しい『バーウィック』。モカ縫いを施したスエードアッパーに革パイピングを走らせ、ローファーに寄せたデザインに落とし込んでいます。とはいえ、サドルがないので流れるようなフォルムが引き立ち、ソールが薄いマッケイ製法を生かした低めの甲部も上品さを感じさせる佇まいに。
アイテム4
『サントーニ』パテントレザープレーントゥスリッポン
イタリア生まれの本作は、エナメル加工された天然皮革であるパテントレザー仕立て。極めてフォーマルな革ゆえ色気が強過ぎるのかと思いきや、これはあえてのシワ加工を施したもの。そのため、ドレス感と脱力感が同居した、他にはないバランスのオペラシューズに仕上がっています。
アイテム5
『リーガル』オペラシューズ
エナメル仕立てのアッパーにサテンのリボン飾りという、王道のスタイルに徹したオペラシューズ。ですが、足にやさしい履き心地のセミマッケイ製法を採用し、靴底はグリップ力があり、軽快に歩けるラバーソール仕立て。ゆえに、ジーンズやワイドパンツに合わせるカジュアルな装いにも合わせやすく、サクサクと街を歩けます。
アイテム6
『クインクラシコ』オペラシューズ
本作は、神戸に本店を構える紳士靴の名店のバイヤーが企画から携わったオリジナル。美しく整えられたスエードで仕立てたアッパーは履き口が広めで脱ぎ履きがしやすい一方、かかとが抜けたりしにくく、ホールド感が高くなるよう設計されています。すっきりとしたフォルムを邪魔しない薄手のラバーソールは中央のパターンに工夫を凝らし、グリップ力を強化。
アイテム7
『アルフレッド バニスター』オペラスリッポン
見た目からも革自体のしなやかさが伝わってくる、ソフトなスエード仕立て。リボン飾りを思わせるサドル風の切り替えを施し、それを履き口周りに一周させたディテールが特徴的です。しかもこれがあえてのスムーズレザー仕立てなので、全方位どこから見ても印象的なアクセントになっています。
アイテム8
『カルミナ』80829 スリップオン
『カルミナ』は、スペイン有数の靴メーカーが1997年に満を持して立ち上げたファクトリーブランド。そこに、日本の名店『トレーディングポスト』が発注をかけたのが本作です。装飾性をそぎ落とすことで、柔らかな曲線を描くフォルムが際立つスタイルを演出。シングルのレザーソールをマッケイ製法で底付けし、やさしい履き心地に仕上げられています。
アイテム9
『フィレンツェ アトリエ』オペラシューズ 3100-N
甲部の高さを抑えつつ、ボールジョイントからつま先に向かってきれいにシェイプさせた本作は、熟練の靴職人が受注生産で仕立てるハンドメイド品。発色が良いヌバックアッパーの配色はブラックとブラウンが定番色ですが、全14色から選ぶことが可能です。圧巻のカラーバリエーションで遊ぶのも一興でしょう。
アイテム10
『ムッシュニコル』レザーオペラパンプス
遊び心が欲しいときは、本作のようにエンボス加工に迷彩柄を施したものが戦力になってくれるかもしれません。起毛系のレザーではないものの、表面に綾織りのような凹凸が施されているのでツヤっぽく見えてしまう心配は一切なし。迷彩自体も黒とグレーのトーナルカラーなので悪目立ちなしでさりげない個性だけをアピールできますよ。
オペラシューズを長く履きたいなら、履く前のハーフソールを検討すべし
オペラシューズはソールの厚みを抑えたものが多いため、耐久性の面が気になるところ。実際グッドイヤー製法に限らず、マッケイ製法であってもオールソール交換は可能です。しかし、オペラシューズ自体のソールが薄いものが多いのでものによってはデリケートな場合も。コスパ的にも頻繁にオールソール交換をするわけにもいかないので、購入時にリペアショップでラバーソールを貼ってもらってハーフソール仕様にしておくのが懸命です。

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