
軽くて丈夫で合理的。チタン製の腕時計を今、腕に巻く意味とは?
近頃、カーボンやセラミックといった異素材系が脚光を浴びる腕時計シーン。とはいえ、今も昔もこの分野の主役といえば、合理的な機能性を持つチタン製の腕時計です。
成熟してきたチタン加工技術。今改めてチタン製腕時計と向き合いたい
ライフスタイルの変化によって、以前に増して機能性が求められるようになった腕時計。その影響か、ステンレスの枠に捉われない高機能な異素材系の腕時計がトレンドとなっています。近頃はセラミックやカーボンのモデルが話題にのぼることが多いものの、このジャンルを語るうえで絶対に欠かせない素材が「チタン」です。腕時計に使われ始めてからすでに50年あまりが経ち、現在ではダイバーズなどのスポーツウォッチから北欧系のデザイン時計まで幅広いモデルに使われています。
チタンとは、天然のチタン鉄鉱を主原料とする銀灰色の金属です。軽くて強度に優れ、錆びにくく、その上アレルギーフリー。まさに合理的という言葉がふさわしいこの金属は、現代のライフスタイルにフィットする最たる素材といえるでしょう。今や異素材系腕時計の王者として不動の地位を築いたチタン製腕時計。その奥深い魅力を改めて検証しましょう。
もはや耳タコかもですが……チタン製腕時計のメリットって?
腕時計がチタンと邂逅を果たしたのは1960年代のこと。日本の『シチズン』は、アポロ計画の宇宙船にも使用されたこの素材にいち早く注目します。そして1970年にチタン製腕時計の「X-8 コスモトロン・クロノメーター」を発売。諸説ありますが、このモデルこそがチタニウムウォッチのオリジンといわれています。1980年代にはスイスのメーカーでもチタン製ケースが採用されました。
実はチタンには、腕時計に使用するうえで2つの問題がありました。まず、粘性が高い金属ゆえに加工が難しい点。そして高い強度を持つ一方、表面がやわらかいためキズがつきやすいという点でした。しかし、各メーカーの加工技術が進歩を遂げた結果、現在、その問題はほぼ完全にクリアされています。『シチズン』にいたっては、2000年にステンレスの約5倍もの表面硬度を持つ「スーパーチタニウム」の開発に成功。こうしてチタンは技術の熟成とともに、“完全なる素材”へと近づいていったのです。
メリット1
ステンレス素材の約60%。圧倒的な軽さは、一度経験すると離れられない
初めてチタン製腕時計を腕に着けた人は、大抵その軽さに驚かされます。チタンはあらゆる金属の中でも特に軽く、ステンレスの60%ほどの重量しかありません。言うまでもなく、ずば抜けた軽量性はスポーツの際に腕をスムーズに動かせる、長時間装着していても腕が疲れにくい、などユーザーにさまざまなメリットをもたらします。また、近頃はボリュームのある複雑時計にも使用され、その軽量化に大きく貢献しています。
メリット2
強く、割れにくく、腐食しにくい。長く愛用すべき1本こそチタンで選びたい
強度もまた、チタンが腕時計に用いられる理由の1つ。強度は鉄の約2倍、アルミニウムの約3倍にも及び、金属の大敵である海水に対してもプラチナ並みの耐腐食性が備わっています。また、粘り気があり、しなりやすいという特性のおかげで割れにくいというメリットも。前述したように、チタンには表面硬度が低くキズがつきやすいという欠点がありました。しかし、各メーカーが表面を硬化させる処理や加工を行うことで表面硬度を向上させることに成功。今や実質的な欠点ではなくなっています。
メリット3
インプラントにも使用。生体適合性を備えたチタンは、アレルギーが起きにくい
チタン製腕時計は金属アレルギーを持つ人にもメリットが。チタンは軽く強度に優れているうえ、高度な生体適合性によってアレルギーが起きにくいため、医療分野でも人工関節やインプラント、体内で使用するボルトなどに使われています。個人の体質やチタンのグレードも関係するため絶対にアレルギーが起こらないとは言い切れませんが、金属アレルギーで腕時計が着けられない、という人は試してみる価値があるでしょう。
ステンレスと同等の高級感を得たいなら、グレードにこだわる
腕時計愛好家にとっては、腕時計に使われている素材の質感も譲れないポイント。そこで注目したいのがチタンのグレードです。純チタンの場合は純度の割合から「グレード1」から「グレード4」までが存在し、腕時計には「グレード2」がよく使われます。また、強度を高め、かつ加工しやすくするために合金化されたチタンもあり、こちらは20近い種類があります。チタン合金の中では、加工がしやすく、かつ高級感のある仕上げを施しやすい「グレード5」がポピュラー。質感にこだわる人はチタンのグレードもチェックすると良いでしょう。
5万円アンダーから、あのハイブランドまで。チタン製腕時計のおすすめ15選
さすがは異素材系腕時計の代表格というべきチタニウムウォッチ。手に取りやすい5万円アンダーのモデルから、ハイブランドが作る数十万円のモデルまで、バリエは実にさまざまです。本パートではブランドの格や機能性、質感の高さを基準に、買って間違いのない15本をピックアップ。チタン製腕時計の醍醐味を味わえる秀作を、価格順にご紹介します。
1本目
『ボッチア チタニウム』ベーシック/9,460円(税込)
数々のドイツ軍用時計を手がけてきた時計メーカー『チュチマ』から生まれたブランドはその名の通りチタンの加工が得意。全モデルに純度99.0~99.7%のピュアチタニウムを使用しながらも、手の届きやすい価格を実現しています。「ベーシック」と名付けられた薄型の3針モデルは着けていることを忘れるほどの軽さ。デイトカレンダー搭載。サイズ:34mm、チタンケース、クォーツ。
2本目
『スカーゲン』グレーネン/27,500円(税込)
デンマークブランドが擁する「グレーネン」は、同ブランドの本拠地・スカーゲンにあるグレーネンビーチのゆるやかなカーブを描く海岸線にインスパイアされた1本。ケースはヘアライン仕上げが施されたチタン製で、アラビアンインデックスや調整可能なスティール製メッシュバンドが上品クラシックなイメージを強めます。サイズ:37mm、チタンケース、クォーツ。
3本目
『ティソ』ジェントルマン クォーツ/59,400円(税込)
1960年代に実在した往年の名作を現代的に蘇らせた「ティソ ジェントルマン」。丹念な面取りで仕上げられたインデックスがエレガントなムードを、グレーのサンレイダイヤル×チタンケースがモダンなイメージを生み出します。上品な顔つきながら、表面が硬化処理されたチタンケースのおかげでキズがつきにくく、ガシガシ使えます。サイズ:40mm、チタンケース、クォーツ。
4本目
『ハミルトン』カーキ フィールド チタニウム/126,500円(税込)
第二次世界大戦で使用された軍用時計をルーツとする「カーキ フィールド」のチタンバージョン。ブラックPVDコーティングされたチタンケースとブラックダイヤルが精悍なイメージを強めます。重厚な見た目とは裏腹に着け心地は、驚くほど軽快。ムーブメントはETA社が手がけた80時間ロングリザーブの“H-10”を採用しています。シースルーバック。サイズ:42mm、チタンケース、自動巻き。
5本目
『シチズン』アテッサ アクトライン ブラックチタンシリーズ/220,000円(税込)
多様化するビジネススタイルに合わせ、スーツにもカジュアルにも似合うようデザインされた「アクトライン」の1本。洗練されたブラックボディは軽くてキズや錆びに強く、肌にもやさしい独自のスーパーチタニウム製です。『シチズン』が誇る光発電システム・エコドライブのおかげで定期的な電池交換は必要ありません。サイズ:44.3mm、チタンケース、エコ・ドライブ。
6本目
『ビクトリノックス』イノックス プロフェッショナル ダイバー タイタニウム/101,200円(税込)
量感溢れる多面体のチタン製ケースを持つタフネスモデルは、プロフェッショナルダイバーズ規格に準拠した高スペックが自慢です。潜水中でもガラス面に曇りが発生せず、また、海水に24時間放置しても時計やベゼルの機能を保持できます。ダイビングスーツの上からでもスムーズに装着できる天然ラバーストラップを装備。200m防水。サイズ:45mm、チタンケース、クォーツ。
7本目
『カシオ』オシアナス マンタ/275,000円(税込)
美フォルムを追求する「マンタ」の最新作。24面のファセットカットが施されたサファイアクリスタルのベゼルはそのままに、パーツの配置や設計を見直すことで史上最薄ケースを実現しています。軽量チタンケースと相まって、極上の着け心地を醸成。スマホとのリンクやマルチバンド6による時間補正など機能面も優秀です。サイズ:48.8mm、チタンケース、クォーツ。
8本目
『セイコー』アストロン/88,000円(税込)
1969年に発売されたクォーツの名作。その名を受け継ぐ「アストロン」のスタンダードシリーズより。張り出したラグや細身のベゼルなどメリハリのあるデザインが特徴で、チタンケースによって軽さやタフさも一級品です。スーパークリアコーティング加工が施された風防によって視認性も◎! ムーブメントはソーラー電波時計用の“8B63”を採用しています。サイズ:47.9mm、チタンケース、クォーツ。
9本目
『ミドー』オーシャンスター200/135,300円(税込)
『ミドー』のシンボルカラーであるオレンジが映える1本は、ダイバーズコレクションの定番モデル。アルミの逆回転防止ベゼルや水の浸入を防ぐリューズガード、200m防水などを搭載した優秀ダイバーズに、チタンケースの採用によって軽量性やタフさをプラスしています。最大80時間パワーリザーブを誇る自動巻きムーブメントを搭載。サイズ:42.5mm、チタンケース、自動巻き。
10本目
『ロンジン』スピリット/389,400円(税込)
『ロンジン』の時計や計器の意匠を受け継ぐ、注目コレクションのチタンモデル。グレード5のチタンが使われたケースは軽く耐久性に優れ、ステンレススチールよりもダークでマットな質感が持ち味です。ダイヤルの5つの星はムーブメントの質を示す印で、このモデルにはパワーリザーブ72時間の“L888.4”が搭載されています。サイズ:40mm、チタンケース、自動巻き。
11本目
『ウブロ』クラシック フュージョン チタニウム ブルー/643,000円(税込)
チタニウムウォッチの名手として知られる『ウブロ』のラインアップの中でも、そのワザが光るのがチタン製ケースを持つ「クラシック フュージョン」。スタイルはシンプルなデイト表示付きの3針ですが、ベゼルはサテン仕上げ、サイドやラグはポリッシュ仕上げとパーツごとに質感を切り替えられたケースが存在感を放ちます。サイズ:45mm、チタンケース、自動巻き。
12本目
『ユンハンス』マックス・ビル メガソーラー/179,300円(税込)
電波式腕時計の草分けとして知られる、ドイツブランドの技術の粋を集結。ムーブメントには、約8分間日光に当てるだけで最大3年間のパワーリザーブを実現する“J101.85”を採用しています。また、専用アプリを使えば世界中で永久カレンダーやタイムゾーンの調整を行うことも可能です。チタン製ケース&バンドによるストレスフリーな着け心地も人気の理由。サイズ:約38mm、チタンケース、クォーツ。
13本目
『IWC』パイロットウォッチ マークXVIII ヘリテージ/572,000円(税込)
『IWC』のパイロットウォッチの代表作「マーク18」の兄弟モデルは、黒ダイヤル×茶のレザーストラップという配色の妙に加え、サンドカラーのアラビアンインデックスが醸すレトロなイメージが印象的。さらにチタンケースを採用することで軽量性と強度、耐腐食性を向上。チタン特有のザラリとしたマットな質感も男心を刺激します。サイズ:40mm、チタンケース、自動巻き。
14本目
『オメガ』スペースマスター Z-33/303,900円(税込)
黒いLCDスクリーンに浮かぶ赤い数字や、スーパーミノルヴァが配されたアワーマーカー。どこか宇宙船の計器を想起させるデザインは、1969年に発売された「オメガ パイロットライン」にインスパイアされたものです。グレード5のチタンケースの質感がそのモダンなイメージに磨きをかけます。クロノグラフ機能や永久カレンダーも搭載。ケース:43mm、チタンケース、クォーツ。
15本目
『パネライ』ルミノール 1950 サブマーシブル 3デイズ/944,600円(税込)
『パネライ』の伝統を継承するダイバーズの武器は、卓越した視認性を発揮する迫力のダイヤル。夜間や水中では12時位置に配されたスタッド型マーカーが青色に、他のマーカーは蛍光グリーンに発光します。ケースはサテン仕上げのチタン製。重厚なルックスに反して着け心地は軽やかです。約3日間のパワーリザーブを有する自社製キャリバー“P.9010”を搭載。サイズ:47mm、チタンケース、自動巻き。
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※掲載の金額は2022年1月25日時点のもので、すべて税込価格です
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この記事の掲載アイテム一覧(全15商品)
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『ボッチア チタニウム』 ベーシック
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『スカーゲン』 グレーネン
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『ティソ』 ジェントルマン クォーツ
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『ハミルトン』 カーキ フィールド チタニウム
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『シチズン』 アテッサ アクトライン ブラックチタンシリーズ
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『ビクトリノックス』 イノックス プロフェッショナル ダイバー タイタニウム
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『カシオ』 オシアナス マンタ
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『セイコー』 アストロン
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『ミドー』 オーシャンスター200
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『ロンジン』 スピリット
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『ウブロ』 クラシック フュージョン チタニウム ブルー
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『ユンハンス』 マックス・ビル メガソーラー
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『IWC』 パイロットウォッチ マークXVIII ヘリテージ
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『オメガ』 スペースマスター Z-33
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『パネライ』 ルミノール 1950 サブマーシブル 3デイズ
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