
今こそはきたいタイトさ。リーバイスの606で永遠の若さを手に入れる
ワイドなボトムスが流行中ですが、海外のコレクションでは少しずつ細身ボトムスの登場頻度が高まっています。となると思い出される名品が1本。「606」はいかがでしょう。
業界人にも愛用者多数。『リーバイス』が誇るスリムモデル「606」
ここ数年、ボトムス周りはリラックスしたシルエットがトレンドでしたが、そろそろ揺り返しが来そうな気配。というのも、昨今のハイブランドのコレクションを見ていると、タイトなシルエットのアイテムが散見されるようになってきているからです。そこで注目したいのが、『リーバイス』の「606」。「606」は『リーバイス』の中でもファッションユースに特化したアイテムであり、これまでさまざまなコレクションブランドがモチーフにしてきた伝説的な一本でもあります。生産期間の短さもあってヴィンテージ市場でのタマ数も希少。かつ、本家『リーバイス』では長らく廃番が続いており、いわば知られざる名品という扱いでした。
『リーバイス』のファッションピースであり細めのモデルといえば、今なら「505」の存在が頭に浮かぶと思います。しかし、「606」はそれよりもグッと細めのシルエット。「505」が裾にかけて細くテーパードさせることでスリムさを演出しているのに対し、「606」は腿のワタリから絞ることによって、よりタイトなフォルムを実現しているんです。
また、いわゆるスキニージーンズの多くがローライズなシルエットを採用しているのに対し、「606」の股上はグッと深め。発売当時にリアルタイムではいていたパンクスやスキンズたちは、ジャストサイズのウエストに短めのレングスでタイトさをより強調してはくのが定番でした。しかし、今風にはくなら上の写真のように、細さを生かしつつ少しだけゆとりを持たせるのもアリ。そうすれば深めの股上に美しいシルエットも相まって、ジャケットなどと合わせたときも大人に仕上げることが可能です。
隠れた名品番「606」。スキニージーンズの祖が生まれた経緯とは
「606」が登場したのが1965年のこと。ベトナム戦争の終結後、ヒッピーに代わって台頭したパンクスが愛用していたのが、タイトな革ジャンやボンテージ、それにギチギチにヒモを絞った『ドクターマーチン』と『リーバイス』の「606」でした。そのアイテムに共通するのは、いわば“拘束感”ともいうべきもの。ヒッピーがヒラヒラした服で自由を謳歌したのに対し、パンクスが身に着けたそれらのアイテムは、身動きの取れない社会状況への皮肉であり、それらから身を守る鎧だった……というのは言い過ぎでしょうか。
ちなみに、当時のNYパンクシーンを象徴するバンド「ラモーンズ」が愛用したのも「606」だったという説と、いや「505」のカスタムモデルだった……という説が入り乱れています。ちょうど同じころに公開された映画『ハイウェイ』ではスティーブ・マックィーン氏が「501」を「505」風にカスタムしてはいているように、当時のアメリカのショービズシーンではステージ衣装として既存の服を改造するのはわりと当たり前でした。そういった考察も含めて楽しめるのは、歴史あるモデルならではといえそうです。
そして30代の方はよくご存じでしょうが、スキニージーンズを語るにあたっては2000年代前半の大流行は欠かせません。そのきっかけとなったのが、当時『ディオール オム(現・ディオール)』の初代デザイナーを務めたエディ・スリマン氏。上記の写真はブランドとして脂の乗り切った2006年のコレクションラインのものですが、ロックやストリートにインスパイアされたテーラリングは衝撃的であり、昨今のトレンドであるラグジュアリーストリートの走りともいえる存在でした。メンズウェアにスキニーパンツを一気に定着させた立て役者といえるでしょう。
ちなみにそんなエディ氏自身も「606」の熱心な愛用者として知られており、そのはき方はオリジナルパンクスと同じくタイト&ショートが信条。もちろん、氏が現在ディレクターを務める『セリーヌ』でも定番的にタイトなボトムスをリリースしています。
今「606」がホットな理由は、『リーバイス』の2022年春夏コレクションテーマにアリ
ファッション界のレジェンドやカルチャーアイコンから愛されてきた『リーバイス』の「606」ですが、その生産時期そのものは60年代半ばから70年代頃までと短いものでした。そのためヴィンテージ市場でも影が薄く、どちらかといえばマニアックな品番といえます。そんな「606」に今注目すべき理由が、2022年の『リーバイス ビンテージ クロージング』のテーマが“1960年代末のアメリカンユースカルチャーと1970年代のエコロジーアクション”であり、そのキーアイテムとして当時登場した「606」がピックアップ&復刻にあたるモデルがリリースされているから。そんな最新の「606」についてご紹介しましょう。
アイテム1
1965モデル 606TM SUPER SLIM RIGID
もっともオリジナルの「606」に近いシルエットと素材感・ディテールを採用しているのがこの「606TM SUPER SLIM RIGID」。ベースとなったのは65年のモデルです。ウエスト32インチの一本を例に挙げると、現行の「505」が腿のワタリが27cmなのに対し、こちらの「606」は26.5cm、裾幅は19cmに対して16cmと、全体的に細め。さらにテーパードも強めにかけられていることがわかります。
『リーバイス』の中でも「606」はワークウェアではなくファッションアイテムとして位置付けられていたため、当時のモノはパッチが紙製で、アーキュエイトステッチは施されていませんでした。今回の復刻でもそれらが再現されており、ミニマルなバックルックはジャケパン用としてもぴったりのはず。
1965年から68年までの「606」の特徴が、黒タブです。69年以降、工程を省略化・最適化したLINE8という製法が採用されたモデルにオレンジタブが採用されるようになり、黒タブは姿を消します。ちなみに『リーバイス ビンテージ クロージング』では過去にオレンジタブ時代の「606」を復刻したことも。そちらも後ほどご紹介します。
今回の復刻では、コレクションテーマに合わせてサステナブルコットンを使ったデニム生地を採用。年代ごとに生地の風合いから色落ちまで再現してみせる『リーバイス ビンテージ クロージング』ですから、その完成度の高さはお墨付き。当時の「606」らしく、程良い縦落ちに加えてフラットかつクリーンさを残した経年変化を見せてくれるでしょう。
アイテム2
1965モデル606TM SUPER SLIM FUTURE SHOCK
オリジナル「606」をベースにしつつ、腿のワタリは少し太め。裾はわずかに細く絞り、よりテーパード感を強調したシルエットに仕上げたのが「606TM SUPER SLIM FUTURE SHOCK」です。さらに、裾のチェーンステッチを解いたかのような切りっぱなしと色落ち、右膝に施されたタタキ補修のステッチでアクセントをプラスしています。レングスは32インチのため、裾をややダブつかせてはくのもいいでしょう。
アイテム3
1965モデル 606TM SUPER SLIM WIDE OPEN
同じく「606」をアレンジした「606TM SUPER SLIM WIDE OPEN」は、ウエストをわずかにゆったりとさせ、股上を浅めに設定することでより現代的なシルエットに近づけています。ライトブルーにフェードした強めのウォッシュも、トレンドを演出。こちらもレングスは32インチのみの設定。
まだまだ見つかる。『リーバイス ビンテージ クロージング』が誇る「606」群
待望の復刻が実現したこともあって、より注目度が高まる「606」。しかし、実は「606」は以前にも『リーバイス ビンテージ クロージング』の名義で復刻されたことがあるんです。また、今回の復刻は65年モデルがベースでしたが、前回は69年モデルとモチーフとなった年代も異なります。筆者の記憶をたどってもその正確な時期は不明ですが、2017年末に工場が閉鎖されたコーンデニムを使用していることから、少なくともそれ以前でしょう。まだ市場を探せば前回の復刻モデルをデッドストックで見つけることが可能ですが、今後新品で手に入れることはどんどん難しくなっていくことは間違いありません。もし「606」の購入を検討しているなら、こちらも候補に入れてはいかがでしょうか。
アイテム1
1969モデル 606TM Old Man
前回の復刻は、LINE8製法と呼ばれる効率的な縫製工程を採用したオレンジタブ時代にあたる69年のモデルがモチーフ。今モデルにおいては、その製法も正確に踏襲しています。こちらの「606TM Old Man」は随所に施されたリアルなダメージ加工がポイント。革パッチの破れまで忠実に再現しています。
アイテム2
1969モデル 606TM Hank
片膝の破れた雰囲気や全体的に薄くなった色落ちなどが、ジョーイ・ラモーン氏のはいていたジーンズを思わせる「606TM Hank」。もしジョーイ氏が「505」ではなく「606」をはいていたならば、年代から考えてオレンジタブ時代のアイテムだったはずです。当時のNYパンクスな気分で『コンバース』の「オールスター」とともにはくのもアリでしょう。
アイテム3
1969モデル 606TM STEER
ポケット脇や腿、膝にダメージ&リペア加工を施した「606TM STEER」は、どことなく『RRL』のアイテムを思わせるラギッドな雰囲気が魅力。腿の色落ちもコントラストが強めであるため、リペアと相まってより武骨な雰囲気に仕上がっています。
アイテム4
1969モデル 606TM TURPENTINE
ヒゲに沿って擦り切れたクラッシュや、非常にコントラストの強い腿の色落ちなど、糊を落とさずに鬼ばきしたときの色落ちを思わせる加工を施したのが「606TM TURPENTINE」。実際はヒゲを濃く出すためにはサイジングに程良いゆとりが必要であるため、実際に「606」をはいて強いヒゲを出すのは至難の業だったりします。その点でも希少な一本といえそうです。
アイテム5
1969モデル 606TM Ceder Street
前述の「TURPENTINE」が理想のヒゲを追求したものだとして、こちらの「606TM Ceder Street」はより現実的でリアルな雰囲気を再現した色落ちが特徴。きっと適度に洗濯しつつはき込んだであろうストーリーがうかがえる、クリーンなウォッシュ感が魅力です。
アイテム6
1969モデル 606TM SLIM BLACK OVERDYE
69年の復刻&アレンジモデルで筆者的に最も気になるのが、この「606TM SLIM BLACK OVERDYE」。その名の通り「606」のシルエットを採用しつつ、ブルーデニムを製品染めすることでブラックにアレンジしているため、はき込むにしたがって少しずつ青みが出てくるのが特徴。そのアレンジといい手法といいルックスといい、エディ・スリマン氏が好みそうなモードな雰囲気が漂っている一本ではありませんか。
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1965モデル 606TM SUPER SLIM RIGID
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1965モデル606TM SUPER SLIM FUTURE SHOCK
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1965モデル 606TM SUPER SLIM WIDE OPEN
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM Old Man
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM Hank
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM STEER
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM TURPENTINE
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM Ceder Street
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『リーバイス ビンテージ クロージング』 1969モデル 606TM SLIM BLACK OVERDYE
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