
増永眼鏡は福井をメガネの聖地にした立て役者。その歴史と技術を纏いたい
メガネの国内生産シェア90%超えを誇る福井県。実はかの地でメガネ産業が根付いたのは、ある企業があったからこそ。そんな老舗中の老舗『増永眼鏡』の魅力に迫ります。
目の肥えた大人たちを魅了するアイウェアブランド『増永眼鏡』
ファッショナブルな海外ブランドのアイテムから職人仕立てを謳うものまで、さまざまなアイウェアが林立している昨今。ですが、実はその多くが福井県・鯖江で作られているのはご存じでしょうか。逆にいえばブランドが異なっていても生産背景が同一のため、一部ではいわばドングリの背比べとなっている側面も否めないのが、メガネというアイテムでもあります。そんな中で、こだわり派の芸能人やメガネ好きのファッショニスタに愛され、頭一つ抜けた存在として知られているのが『増永眼鏡』です。なぜ目の肥えた大人たちがこぞって『増永眼鏡』を選ぶのか。その理由をともに読み解いていきましょう。
快進撃を続ける老舗。『増永眼鏡』の伝統と技術とは
『増永眼鏡』は、メガネ好きにとっては知っていて当然ともいうべきブランドでありながら、直営店の少なさゆえかメディアへの露出が控えめなゆえか、一般層への知名度が乏しいのも否めないところです。しかし近年では次々と新店舗がオープンしており、街で見かけて「新しくできたメガネブランドのお店かな」と思った人もいるのでは? いえいえ、実は『増永眼鏡』は国内最古参の眼鏡メーカーであり、福井にメガネ産業が興ったのは同社があったからこそなのです。
ポイント1
雪深い村に産業を。福井のメガネ作りを支えた増永眼鏡の「帳場制」
そもそも、かつてメガネの産地として知られていたのは東京と大阪。読み書きすることが少ない農村部ではメガネを必要とする人が少なかったこともあり、地産地消的に大都市圏で作られていたのでしょう。そんな中、地元・福井の村おこしとして産業を興そうと考えたのが『増永眼鏡』の創業者にあたる増永五左衛門です。「これから教育が普及すればメガネが必要になる」という予測のもと、日露戦争の特需景気に沸く明治38年に村の腕利きの大工を大阪のメガネ職人のもとに派遣して技術を習得させ、さらに東京からも腕利きの職人を招聘しメガネ作りをスタートしました。
もともと冬の間の内職としてメガネを作りはじめ、軌道に乗ったら専業になれば良いという目標のもと始めたそうですが、その運営手法も独特でした。親方と弟子によるグループを作り、出来上がった製品は五左衛門が一手に引き受ける「帳場制」という製造体制を採用したのです。これは一種の職人ギルドともいうべき制度であり、職人間での技術の向上と伝承を容易にしつつ、経済的にも安定させるための方策でもありました。職人たちが安心して製造に専念できたことで、“福井のメガネ”は圧倒的に品質が向上していきました。そして「帳場制」のもとで技術を磨いた職人がやがて独立し、メガネ産業を盛り立てていったことで、今では鯖江がメガネの聖地として世界的にも知られるようになったのです。
ポイント2
希少な自社製造を守るのが、『増永眼鏡』のクオリティの秘密
その「帳場制」の名残もあってか、現代のメガネ作りはフレームの切り出しから磨き、金具の生産やメッキなど、工程ごとに細かく工場が分かれているのが特徴です。そのためメガネはOEM生産が一般的であり、ブランドは異なっても生産背景を辿ると生産している工場は同じ、ということもよくある話。しかし『増永眼鏡』では自社工場を所有しており、企画から製造・販売までの全工程を1社で手がけている希少なブランドのひとつです。しかも自社工場ではプラスチックフレームからメタルフレームまで多種多様なメガネの生産が可能であり、例えばメタルフレームの金型や台座まで自社内で生産するというこだわりぶり。「Chord」シリーズで採用されているチタンと18金の接合など、世界でも『増永眼鏡』だけが可能な技術も有しています。
『増永眼鏡』を手に入れるなら、最初の1本は「マスナガ シンス1905」から。
伝統に裏打ちされた技術力を誇る『増永眼鏡』ですが、現在はコンセプトの異なるさまざまなシリーズをラインアップしており、どれを選んだら良いのか目移りしてしまいます。そこで、最初の一本として購入をおすすめしたいのが「マスナガ シンス 1905」。自社の名を冠したシリーズだけあって最も力を入れているメインラインとなっており、チタンをメイン素材に用いた、サーモントやハーフリムなどのコンビフレームなどのモデルが多いのが特徴のシリーズです。繊細さを感じるモダンデザインの中に、掛け心地に対する工夫が盛りだくさんな『増永眼鏡』。その技術力を存分に堪能できるでしょう。
アイテム1
WALDORF
フジテレビ開局60周年特別企画ドラマ『教場』で、主演の木村拓哉が掛けていたモデルがこちら。オールチタンの削り出しフレームで、立体的なブロウを設けたサーモントタイプです。天地幅がしっかりとあるスクエアシェイプに、削り出しならではのシャープな造形がよく映えます。テンプルにはβチタンの倍の弾力性を持つGUM TITANIUMを採用したことによる、柔らかな掛け心地も特徴です。
ただでさえ高い技術が必要とされるチタンの削り出しを、さらに立体的なサーモントに仕上げることができるのは同社の技術があってこそ。しかもブロウの部分は溶接なしでリムとピッタリ組み合わせられています。
アイテム2
TANGO
透明感のあるプラスチック製インナーリムとメタルを組み合わせたコンビネーションフレームの「TANGO」。クラウンパント型を採用した天地幅広めのレンズシェイプのため、サングラスとして使うのもおすすめです。一見すると華奢に見えるものの、『増永眼鏡』のチタンは強靭なことで知られているのでご安心を。
テンプルに彫り込まれたラインが、柔らかさの中にシャープさを演出。ノーズパッドもチタン製のため劣化しにくく、金属アレルギーの方でも安心して掛けることができるでしょう。
皇室御用達からコラボまで。『増永眼鏡』の個性豊かなシリーズを味わう。
国産最古の歴史を誇る『増永眼鏡』ですが、常に最新技術を取り入れながら進化し続けているブランドでもあります。定番の「マスナガ シンス 1905」でその技術力を味わった後は、同社の歴史と今を味わえる個性豊かなシリーズもチェックしておこうではありませんか。今回ご紹介するラインの他にも、プロダクトデザイナーの川崎和男氏とコラボした「カズオ カワサキ」や、コレクションブランドの『ケンゾー』とコラボした「K3」など、個性豊かなラインが揃っていますよ。
シリーズ1
大阪万博の歴史を備えた名作の後継シリーズ「光輝」
時代を象徴するメガネとして大阪万博のタイムカプセルに収納された名作「CUSTOM72」の後継モデルとして2009年に登場した「光輝」シリーズ。素材はカラーが美しいことで知られるイタリアMazzucchelli(マツケリ)製のアセテートを主に使用し、テンプルの銀飾りは1970年代のデザインを再現するなど、細部までこだわり抜いたヴィンテージテイストのフレームを提案しています。なかでもこちらの「光輝000」はシリーズ最初のモデルであり、「CUSTOM72」の面影を最も色濃く現代に伝えています。
重厚な7枚丁番を採用。フロントとテンプルが隙間なくピッタリと合っているところからも精度の高さがうかがえます。バレル研磨に加えて職人の手によって行われる泥磨きによって実現する美しい光沢も特徴です。
シリーズ2
昭和天皇に献上したモデルを復刻した「マスナガ GMS」
1933年に『増永眼鏡』が昭和天皇に献上するために製作した18金のメガネを復刻させるべく2009年に立ち上がったラインにして、型番「GMS-999」は献上品のメガネを極めて正確に再現したモデルとして知られています。また、現在では復刻の過程で製作されたコレクションも加わってラインアップも増え、レギュラーシリーズとして継続中です。こちらの「GMS-103」もそんなレジェンドモデルをベースとした一本。トレンドのラウンドというだけではない、気品に満ちたモデルです。
献上品の復刻モデルである「GMS-999」は、ノーズパッドが付かないシンプルなひと山タイプのブリッジ。ですが、今モデルでは日本人の鼻筋にも合うようノーズパッドが装着されています。
シリーズ3
アメリカ発のハイエンドフレーム「TOKI」
アメリカでデザイン・プロデュースされ、『増永眼鏡』が製造を行うシリーズがこちらの「TOKI」。もともと現地のビジネスエグゼクティブを対象にしたラインでしたが、日本にも逆上陸を果たしています。その特徴が、チタンをプレス加工することで立体的な三次元フォルムを実現していること。テンプル部分のセルもチタンと段差なくスムーズに接合されるなど、高い技術力が見受けられます。
“共磨き”と呼ばれる手法を用い、硬質なチタンと柔らかいアセテートとを継ぎ目なく接合するのが「TOKI」のデザイン上の特徴のひとつ。多面構造のリムは面ごとにマットとツヤありの仕上げを組み合わせて立体感を強調するなど、非常に手間のかかる仕上げを採用しています。
この記事の掲載アイテム一覧(全5商品)
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『増永眼鏡』 WALDORF
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『増永眼鏡』 TANGO
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『増永眼鏡』 光輝000
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『増永眼鏡』 GMS-103
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『増永眼鏡』 TOKI
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