
バルマカーンコートとは? 持っておいて間違いない冬コートの主戦力
フォーマルにもカジュアルにも映えるニュートラルな立ち位置のコートとして、これまで以上に存在価値が高まっているバルマカーンコート。再評価すべき魅力をご紹介します!
別名・バルカラーコート。バルマカーンコートがワードローブに必要だ
バルマカーンコートとは、襟腰、あるいは台襟と呼ばれる立て襟が付いたロングコートのこと。上襟の幅が広く下襟の幅が狭くなっており、第一ボタンを留めたときと外したときの印象変化を楽しめるコンバーチブル仕様となっています。
チェスターフィールドコートがラペルを備えたフォーマル色の強い襟型なのに対し、バルマカーンコートの場合は汎用性の高い襟型なのが特徴。ハードボイルドな薫り漂うトレンチコートと比較しても、バルマカーンコート特有のニュートラルな立ち位置が際立ちます。一方で現代の着こなしに目を向けてみると、ビジネス服のカジュアル化が進み、オン・オフの装いの境界線がなくなりつつあります。デニム&スニーカーにも、スラックス&革靴にも映えるバルマカーンコートは、今まさに時代が求める在り方に叶うスタイルといえるでしょう。
バルマカーンコートは、シルエットの面でも現代のスタイルに映える要素を備えています。チェスターフィールドコートがウエストを絞ったグラマラスなスタイルを特徴とするのに対し、バルマカーンコートは脇を絞らずAラインを描くのが一般的。ワイドシルエットインナーが主力を担う昨今において、着回し力で軍配が上がるのはバルマカーンコートなのです。
ちなみに、バルマカーンコートという名称は、発祥の地とされるスコットランド・ハイランド地方の地名に由来するもの。日本ではステンカラーコートという呼称もよく使われますが、これは和製英語。日本のみで流通している呼称なので海外で買い求める際などはバルマカーンコートと伝えるのが正解です。
まずは、バルマカーンコートの基本ディテールを知っておこう
ここからは、バルマカーンコートを特徴づけるディテールを見ていくことにしましょう。ポイントになるのは襟型・袖付け・前立てからなる3つのディテール。作り手であるブランドによって味付けやアレンジが施されているケースもあるからこそ、こうした基本ディテールを押さえ、その意味合いや歴史的背景を知る楽しさもまたひとしおです。
ディテール1
“後ろが高く前が低い”という襟のデザイン
バルマカーンコートの襟は、襟腰(台襟)の襟足側が高いのに対し、前方が低くなっているのが特徴。襟羽根が付いているので第一ボタンを閉じるとシャツ襟のような見え方にとなり、品良く着られます。一方で、第一ボタンを開くと下襟が自然と開き、首元に立体感をもたらすのも、後ろが高くて前が低い襟腰ならではの演出効果となっています。
ディテール2
体型を選ばない、ラグランスリーブの採用
バルマカーンコートの袖付けは、ラグランスリーブが基本。肩周りに継ぎ目がなく袖と一体になっているため、セットインスリーブと比べて柔らかなシルエットを描き出せます。特徴的なAラインシルエットとの相性が良く、体型を選ばずにゆとりを持って着られます。最近はセットインスリーブを採用するケースもありますが、本来の姿=クラシックさを魅力として楽しむのであればラグラン袖一択です。
ディテール3
ビジネスにも効く、比翼仕立ての前立て
バルマカーンコートの前立ては、比翼仕立て=フライフロントが王道。ボタンを閉じると第一ボタン以外が隠れるこの仕様は、テーラードの世界ではフォーマルなスタイルとされているもの。バルマカーンコートがビジネスの場においても定位置を獲得しているのも、こうした正装の要素を併せ持っているからなのです。
見れば納得。バルマカーンコートの万能さを、洒落者のコーデで実感しよう
バルマカーンコートがニュートラルな立ち位置であるがゆえの万能さを、コーディネートサンプルで見ていくことにしましょう。この冬、着こなす際のヒントにしてみてください。
コーデ1
優雅なシルエットが引き立つウール仕立てで、品格あるビズスタイルを構築
バルマカーンコート特有の柔らかなシルエットは、ウール仕立てを選ぶことでより一層引き立ち、エレガントな印象に。ソリッドタイでVゾーンを引き締めたスーツスタイルとの相性も良く、ビジネスの装いに品格をもたらしてくれます。こちらのコーディネートではダークトーン主体の装いにブルーのシャツを挿し込むことで爽やかさの演出にも成功しています。
コーデ2
シャツなしのラフなビズカジも、コート1着でオフィス映えする装いに
こちらの装いは、丸首ニットにコーデュロイパンツを合わせたウォームビズ寄りのビジカジスタイル。ニットの下にシャツを着ていないためカジュアル感が強く出そうですが、バルマカーンコート特有の立体的な襟のおかげで品良くまとめられています。中にジャケットを着ないでラフに羽織っても、フロントラインが整って見える比翼仕立てがゆるさの緩和に一役買ってくれます。
コーデ3
太パンツをどっしり受け止めるAラインで、カジュアルスタイルを大人めに誘導
太めのワイドパンツの足元に合わせたのは、ぽってりフォルムのスニーカー。そんなストリート寄りのスタイルにも、ゆったりシルエットのバルマカーンコートなら違和感なく羽織れます。コートはオーバーサイズかつ、無地ではなくチェックの総柄を選んだことも、カジュアルな装いとの親和性を高めるうえで狙い通りの効果を発揮。全体をベージュ系でまとめた配色も相まって、大人らしいカジュアルスタイルに落とし込めています。
バルマカーンコート10選。人気ブランドから選ぶ、今年の即戦力
バルマカーンコート本来の魅力を享受できる鉄板ブランドから、今の気分をきっちり楽しませてくれる旬のブランドまで。頼れる作り手から届いた、この冬の即戦力候補をピックアップ!
1着目
『アナトミカ』シングルラグランコート
1960年代以降にリリースされた『バーバリー』のバルマカーンコートを研究し、普遍的なシルエットとして再構築した労作。ボディにはスコットランドの老舗であるラヴァット社のツイードを採用することで、肉厚でしっかり打ち込まれた昔ながらの生地でしか味わえない重厚感と耐久性を打ち出しています。耐久性に富み、着込むほどに味が出る生地でもあるので、一生モノとして良き相棒になってくれるでしょう。
2着目
『ユナイテッドアローズ』モッサ バルマカーンコート
ふっくら柔らかなウールモッサという縮毛生地を採用し、長丈を感じさせない軽やかな着心地を追い求めた1着。副資材を極力省いた仕立てによって生地本来のソフトさを生かし、美しいドレープの演出にも成功しています。身幅やアームホール、袖にゆとりを持たせた今どきのゆったりシルエットを採用しつつ、ラグラン袖や比翼仕立てに加え、チンフラップまで備えた仕様は王道中の王道です。
3着目
『ナナミカ』ゴアテックス バルマカーンコート
ボリュームを持たせたAラインボディを、2レイヤーのゴアテックスで描き出した1着。防水透湿性の高さは折り紙付きですが、表地がコットンツイルなので見た目のテック感は皆無です。ゆえにカジュアルにもジャケットスタイルにも違和感なく合わせられます。裏地には速乾素材クールマックスの混紡素材を採用し、蒸れにくさも意識した作りに。
4着目
『SANYO(サンヨー)』レインウール スーパー100’s バルマカーンコート
国内屈指の技術力を誇るコート専業ブランドとして名高い『SANYO(サンヨー)』が新規軸として打ち出した本作は、ウール100%でありながら雨や染み、汚れを寄せ付けないレインウールという素材を採用しているのが特徴。グレーのヘリボーンの織り柄がクラシカルな印象を放ちつつ、天候を気にすることなくオン・オフで着回せます。
5着目
『ビームスプラス』ウール バルマカーン コート
1960年代のバルマカーンコートの佇まいを、現代のサイズ感で再現した『ビームスプラス』のオリジナル。スーツの上からもゆとりを持って着られるシルエットを意識しつつ、長過ぎない着丈に設定することで、軽快に着られる1着に仕上げています。採用した生地も高品質なウールを用いたオリジナルで、滑らかな風合いはストレスとは無縁の着心地を実現。
6着目
『ジョン スメドレー』メンズ ダブルクロスバルマカーンコート
こちらは、『ジョン スメドレー』における定番コートとして愛されているもの。デザイン自体は1960年代の名作をベースにしたものですが、そのシルエットはマントを彷彿とさせるゆったりフォルムを描いています。ハリのある二重織りギャバジン生地を採用しており、ボタンを外して両脇の深いベントを開くことでAラインが強調され、印象的なシルエットを演出できます。
7着目
『スティーブン・アラン』シェット ツイード ハーフ バルマカーンコート
コート姿でも男らしさを印象付けたい場合は、ネップ感のある生地の粗野さがたまらないドネガルツイード仕立ての本作を。たっぷりとゆとりを持たせた身幅と袖に対し、太ももにかかるくらいのミドル丈に設定したそのシルエットも存在感があります。前立ては比翼仕立てではなく、ボタンが見えるややカジュアルなタイプ。
8着目
『タウンクラフト』バルマカーンコート
『タウンクラフト』は、アメリカの老舗百貨店『J.C.ペニー』が1950年代に立ち上げたストアブランド。古きよきアメリカの薫り漂う同ブランドは、古着市場でも広く愛されています。そんな同社のスタイルを現代に甦らせたこちらのコートは、T/Cツイルと呼ばれる温故知新な風合いのコットンポリ仕立て。Mサイズでも身幅が74cmというアメリカンなビッグサイジングを生かし、軽やかな着心地を楽しみたいですね。
9着目
『J.プレス』ギャバジン バルマカーン コート
トラッドの様式美を現代に受け継ぐ『J.プレス』。こちらの新作は比翼仕立てに代表される王道のディテールを踏襲しつつ、胸やウエスト周りのフィット感を細身にアップデートしています。肩周りも、すっきりとした印象で着られるよう調整。とはいえ身幅自体の程良いゆとりは保たれた絶妙なバランスとなっており、スーツの上に着てもニットの上に羽織っても雰囲気良く着られます。ライナーは着脱式で、取り外せば春までの良き相棒に。
10着目
『エストネーション』スライバーニット バルマカーンコート
ツイードやギャバジンといったコートの定番素材とはまた違う、やさしい着心地を享受できるのがスライバーニットで仕立てたこちらの1着。スライバーニットとは、束状になったウールを特殊な手法で編んだもの。独特な膨らみのある、エアリーな風合いが特徴的です。それをゆったりシルエットのバルマカーンコートに採用することで、ガウン感覚でふわりと羽織れる1着に仕上がっています。
この記事の掲載アイテム一覧(全10商品)
画像をタップクリックするとアイテム詳細が表示されます
-
『アナトミカ』 シングルラグランコート
-
『ユナイテッドアローズ』 モッサ バルマカーンコート
-
『ナナミカ』 ゴアテックス バルマカーンコート
-
『SANYO(サンヨー)』 レインウール スーパー100’s バルマカーンコート
-
『ビームスプラス』 ウール バルマカーン コート
-
『ジョン スメドレー』 メンズ ダブルクロスバルマカーンコート
-
『スティーブン・アラン』 シェット ツイード ハーフ バルマカーンコート
-
『タウンクラフト』 バルマカーンコート
-
『J.プレス』 ギャバジン バルマカーン コート
-
『エストネーション』 スライバーニット バルマカーンコート
掲載アイテムをもっと見る(-2商品)