
実はあのブランドも作ってた!? エクワックス(ECWCS)レベル3フリースとは
春秋シーズンにはアウターとして、また冬場にはインナーとして活躍してくれる エクワックス(ECWCS) レベル3のフリース。シティユースにぴったりなその魅力を紹介します!
ヨーロッパ戦線の経験が産んだ米軍の防寒システム「エクワックス(ECWCS)」
第二次世界大戦の欧州戦線で厳しい寒さに晒されて以来、常に作戦行動中の防寒について研究していたアメリカ軍。当時の登山界で発達しつつあったレイヤードの概念を取り入れ、M-43フィールドパーカーに取り外し可能なライニングを採用するなどアップデートを行ってきましたが、1970年代に入るとアウトドアシーンではゴアテックスをはじめとした最新素材が使われるようになりました。それらの素材の進化に合わせてミリタリーウェアもアップデートを図るべく開発されたのが、日本語では拡張式寒冷地被服システムと訳されるECWCS(Extended Cold Weather Clothing System。以下、エクワックス)です。
1985年に登場してからもアップデートが続けられており、現在では7種類のトップスと5種類のボトムスを組み合わせることでさまざまな温度帯や行動に合わせた防寒ができるように考慮されているのが特徴です。
エクワックスの注目アイテムはレベル3 フリース。なぜなら……
エクワックスといえばオーバーシルエットなレベル7 モンスターパーカーの人気が爆発したことで一気に知名度を上げましたが、実はもっと注目したいのがレベル3 フリース。というのも、2000年代に入ってから米軍のアフガニスタン侵攻に合わせて『パタゴニア』や『ワイルドシングス』といったアメリカのアウトドア企業がMARS(Military Advanced Regulator System)やPCU(Protective Combat Uniform)といった特殊部隊向けの装備を供給するようになりました。そして、同時に米軍はエクワックスシステムの改修にも着手したのです。
その結果、ミリタリー臭の強かった第1世代と比べて第2世代以降はアウトドアテイストが強まり、シティユースしやすいアイテムに仕上がっているのです。なかでもレベル3 フリースはアウターとしてもインナーとしても使える万能選手という位置付けのうえ、最もアウトドアライクな雰囲気を持っているため、活躍の機会も多いアイテムといえるでしょう。
レベル3 フリースの正式名称は「JACKET, FLEECE, COLD WEATHER」で、通称・ベアジャケットと呼ばれるパイル地の第1世代から、ポーラーテックを採用した第2世代、そしてより軽量になった第3世代が存在しています。
ちなみに米軍実物の場合はNSN:8415~と続いている番号で検索をかけると色やサイズ、コントラクター(製品納入業者)の情報が出てくるようになっており、もしNSN番号がない場合や検索で出てこない場合はレプリカだと思ってOK。ちなみにコントラクターも複数の業者が存在するため、業者ごとの縫製の質や細かな違いなどを見比べるというマニアックな楽しみ方もあります。
ポーラーテックとは、ポーラーテック社が『パタゴニア』の創業者であるイヴォン・シュイナードと共同開発したフリース素材で、毛足が長くボリューム感がありながら編み立てを甘めに仕上げることで軽量さや通気性を出しているのが特徴です。ちなみに第3世代のボディはポーラーテックのなかでも限られた取引先のみが使用できる、最も保温性に優れたサーマルプロハイロフトという生地を使用しています。
ミリタリーアイテムらしさが伝わるのが、ネームワッペンや部隊章用のベルクロが胸に取り付けられているディテール。フリースと同色のベルクロを使用しているため、アクセントになりつつも、目立たない点が街で着る際にありがたいポイントです。フロントのファスナーは手袋をしている際も開閉しやすいようにドローコードが付属しています。
襟裏や肩、肘などスレやすい場所はナイロン生地によって補強してあり、脇下や前立てには伸縮素材を用いることで動きやすさにも配慮してあります。他にも首元の防寒性を高める立ち襟など、随所にアウトドアの知恵とミリタリーのニーズが盛り込まれていることがうかがえます。
メッシュ製の内ポケットやフロント両側にマフポケットを採用しており、インナーとしてだけでなくアウターとして着ることも想定されていることがうかがえます。袖もリブではなくパイピングで処理されているため、インナーとして着たときにアウターの内側から飛び出しにくい仕様になっているのもポイントです。
軍の放出品からアレンジものまで。街で着たいレベル3フリース
過去3回の世代交代を経ているうえに複数のコントラクターが納入してきたレベル3 フリース。そのためデッドストックの放出品でもさまざまなバリエーション違いが存在するうえに、多くのブランドがレプリカや民生品(一般消費者向け販売商品)をリリースしています。そのなかでもおすすめのアイテムをご紹介しましょう。
アイテム1
GEN1 レベル3フリース
「僕の知っているレベル3フリースと何かが違う……」と気づいた方、その通り。こちらは1980年代から2000年代前半まで採用されていた武骨な印象の第1世代です。年々数が少なくなっていくのは確実なアイテムで、しかもこちらは放出品のデッドストック。欲しい方は入手を急ぎましょう。
アイテム2
GEN2 レベル3フリース
ポーラーテックを採用した第2世代で、放出品のデッドストック。肩全体を覆うように施されたナイロンの補強や脇部分のファスナー式ベンチレーション、ベルクロで調整できる袖など、現在の第3世代よりも凝った仕立てを採用しているのが特徴です。部隊章などの装着ディテールが省略されており、随所のファスナーにドローコードがついていることから、最もアウトドアな雰囲気の強い世代といえるでしょう。比較的短期間で第3世代へとバトンタッチされたため、数は少なく、実物新品が欲しい人はお早めに。
アイテム3
GEN3 レベル3フリース
こちらは現行モデルにあたる第3世代で、同じくデッドストックの放出品。第2世代ではジップ式のベンチレーションが設けられていた脇下にポーラーテック・パワーグリッドを配することでゴワツキを防ぎつつ伸縮性や放湿性を高めるなど、素材やディテールを見直すことでウェアとしての機能性を高めながら生産効率も改善されています。
アイテム4
『メイドインスタンダード』GEN2 レベル3フリース
アメリカンウェアを愛するブランド『メイドインスタンダード』が第2世代をベースにアレンジしたモデル。街でのコーディネートに馴染むブラック、ネイビー、ホワイトの3色を展開。大きめサイズを選びつつ、第2世代ならではのドローコードで、裾を引き絞ってニュアンスを出して着るのもおすすめです。
アイテム5
『ロスコ』GEN3 レベル3フリース
米軍にさまざまなウェアを納品しているコントラクターの『ロスコ』が、一般消費者のための民生品として製造したアイテム。ポーラーテックではないものの、MILスペックファクトリーならではのしっかりとした縫製を味わうことが可能です。ポーラテックに比べ保温性は幾分落ちますが、お手軽プライスで手に入るのはうれしいポイント。
アイテム6
『ヒューストン』GEN3 レベル3フリース
日本のミリタリーレプリカブランド『ヒューストン』が作ったレベル3 フリース。実物よりも毛足が短いマイクロフリースをボディに採用しているため、すっきりとした印象でコーディネートが可能です。
アイテム7
『アルファ インダストリーズ』GEN2 レベル3フリース
第2世代のレベル3フリースをベースに、フライトジャケットの製造で知られる『アルファ インダストリーズ』がアレンジ。実際には存在しないホワイト×ブラックのバイカラーや1970年代のフリースのようなゴロっとしたボア感のある素材使いでアップデートしています。
アイテム8
『ワイパー』GEN3 レベル3フリース
さまざまなミリタリーものを独自で復刻する福岡のミリタリーショップ『ワイパー』のアイテムで、カラーは実物と同じくコヨーテブラウン、セージグリーン、ブラックの3種類でラインアップ。素材をポーラーテックから、透湿性に優れたポリエステルのフリースに変更することで、よりサラリと着られる1着に仕上げています。
この記事の掲載アイテム一覧(全8商品)
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GEN1 レベル3フリース
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GEN2 レベル3フリース
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GEN3 レベル3フリース
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『メイドインスタンダード』 GEN2 レベル3フリース
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『ロスコ』 GEN3 レベル3フリース
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『ヒューストン』 GEN3 レベル3フリース
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『アルファ インダストリーズ』 GEN2 レベル3フリース
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『ワイパー』 GEN3 レベル3フリース
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