
大人がはくべきデニムブランド42選。長く付き合える理想のジーンズに出会う
あらゆるボトムスの中で、一度手に入れたらもっとも長い付き合いになるのがジーンズ。それゆえ、確かなモノ作りを行うデニムブランドをしっかり押さえておきましょう。
確かなモノ作りを行うデニムブランドで、自分の相棒となるジーンズを探そう
はき慣らして経年変化が現れたときに、それまでとは違った魅力を放ち始めるジーンズ。そんなジーンズ最大の特徴といえるデニムの経年変化を楽しむには、生地の質や縫製のクオリティが重要となってきます。
しかし、実物を触ってみても生地や縫製の善し悪しなんてわからない……というのが現実でしょう。TASCLAP読者諸兄においては普段から触っているモノではあるでしょうが、値段に見合ったものなのか、きれいに色落ちするのか、などは多くの経験を経てこそわかるもの。となると、何を選ぶべきなのか? という問いに対するもっとも簡単かつ間違いのない答えが「信頼の置けるブランド」になるわけです。ここでご紹介するデニム専業、またはデニムに一家言あるブランドはそれぞれに工夫を凝らしたプロダクト作りを行う猛者揃い。安心して手にすることができるはずです。
ファッションのプロがレコメンド! 大人がはくべきデニムブランド42選
ここからは、ジーンズ発祥の地が生んだ質実剛健な「アメリカブランド」、洗練されたデザインが特徴の「ヨーロッパブランド」、高い技術力で独自の進化を遂げる「日本ブランド」の3つのテーマ別に、デニムブランドとおすすめの1本をご紹介。さらに、ヴィンテージデニムブームの立役者といわれる「ベルベルジン」ディレクターの藤原 裕さん、デニム好きスタイリストの柴山陽平さんがそれぞれのアイテムについてレビューしてくれました!
レビューしてくれたファッションのプロ
ヴィンテージデニムの世界的権威
「ベルベルジン」ディレクター
藤原 裕さん
原宿の老舗古着店「ベルベルジン」ディレクター。ヴィンテージデニムアドバイザーとして、豊富な知識を元に他ブランドとのコラボやディレクションも行う。 2015年に書籍「THE 501 XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS」を上梓したほか、YouTube配信やメディア連載を通じてジーンズの魅力を発信。
ハイブランドからストリートまで幅広くカバー
スタイリスト
柴山 陽平さん
スタイリスト石黒亮一氏に師事した後、2009年に独立。メンズ・レディース問わずカジュアルからハイブランド、オーセンティックなスーツスタイルまでスタイリングするほか、俳優やミュージシャンの衣装も数多く手掛ける。趣味のキャンプやスキーをきっかけにアウトドア関連の仕事も行うなど、ジャンルレスに活躍中。
PART1:ジーンズ発祥の地が生んだ質実剛健な「アメリカブランド」
西部開拓時代のワイルドな暮らしが生んだ服、それがジーンズです。発祥の地であるアメリカでは、今なお当時の質実剛健なモノ作りを現代に受け継ぐブランドが割拠しています。また、近年ではLAやNYなどの都市圏を中心に、セレブリティに愛される高価格帯のジーンズも注目を浴びているんです。
デニムブランド1
『リーバイス』
ジーンズの歴史は、1873年に『リーバイス』社がデニム生地のトラウザーズを補強するために金属製リベットを活用する方法を発明したことから始まった、といっても過言ではありません。その代表モデルである「501」が登場したのは1890年のこと。炭鉱夫やカウボーイ、工場労働者たちの作業着であった時代を経て1950年代にはデイリーウェアとして普及し、現在まで永遠のスタンダードであり続けています。ちなみに現在は「501」と一口にいっても、オリジナルフィットからスキニー、ユーズド加工を施したモデルや各年代のディテールを再現した『リーバイスヴィンテージクロージング』まで百花繚乱。写真のモデルは定番的なオリジナルフィットの「501」ですが、オーガニックコットンとリサイクルデニムを素材に使うことで、昨今のキーワードである“サステナビリティ”に訴求しています。
デニムブランド2
『リー』
『リーバイス』と並ぶアメリカンジーンズの二大巨頭として数えられるのが『リー』。当初から両社はライバルとして意識しあっていたのか、『リーバイス』がリベット留めの特許を取得したのに対し『リー』は「馬の鞍がリベットで傷つく」という理由でリベットではなく閂(かんぬき)ステッチによる補強を採用。『リーバイス』がざっくりとしたドライタッチな風合いの右綾のデニムを採用したのに対し、『リー』は基本的に表面がフラットでソフトな左綾のデニムを用いる(物資統制下にあった1940年代の「101-B」や1970~80年代頃の一部製品には右綾生地のものもあります)など、同じように見えてまったくコンセプトの異なるジーンズ作りを行っています。そして、その『リー』のモノ作り精神の決定版として結実したのが「101Z」。映画「理由なき反抗」でジェームス・ディーン氏が着用したことでも知られ、それまで労働着として認知されていたジーンズを一気にファッションピースにまで高めました。
藤原
ジーンズの三大ブランドのひとつである『リー』は、カウボーイのジーンズから進化した「101」 ボタンフライに加えて、フロントジッパーを採用した「101Z」が代表作。防縮加工を施した生地にきれいなシルエットのストレートジーンズは、やはりかっこいいの一言です。
デニムブランド3
『ラングラー』
『リーバイス』や『リー』が今やファッション的なジーンズだとしたら、『ラングラー』は現役バリバリのワークウェア。なにせ今でも米国南部のロデオ競技会や牧場を訪れてみれば、カウボーイたちがはいているジーンズはほぼ例外なく『ラングラー』製なのです。彼らがそれほどまで『ラングラー』を愛する理由は、洗ってもよじれず破れにくいブロークンデニムの採用や、ガッチリと補強しつつも鞍を傷つけないフラットリベット、馬に乗っているときに使いやすいロデオ・ベン・ウォッチポケットといった、徹底的にカウボーイのことを考え抜かれた作りにあります。なかでも1964年に誕生した「13MWZ」は織り方を変えることでねじれを防ぐブロークンデニムを初めて採用したモデルとして知られています。
藤原
『ラングラー』もまた、三大ブランドとして有名なジーンズブランド。カウボーイを意識したストレートなシルエットと、バックポケットに付くパッチが他のブランドとの違いを表しています。サイドに赤ミミが付かないダブルステッチも特徴のひとつです。
デニムブランド4
『ダブルアールエル』
『ラルフローレン』のハイエンドカジュアルラインにあたるのが『ダブルアールエル』。生粋のヴィンテージラバーにしてカウボーイフェチのラルフ・ローレン氏が、自身と奥さんの所有する牧場の名前からネーミングをしているだけあって、そのジーンズに対するこだわりは並ではありません。スタンダードなリジッドものの色落ちの良さやシルエットの美しさを一度知ってしまうと、これ以外のリジッドジーンズはいらないかなと思わされるほど。さらに超リアルでラギッドなユーズド加工が施されたものやマニアックなヴィンテージのディテールを再現したアイテムなど、幅広いバリエーション展開でデニム好きを魅了し続けています。
藤原
『ダブルアールエル』のジーンズはデザインチームがいろんなヴィンテージデニムを研究して作っている印象で、シルエットや色落ち加工もかなりのこだわりようがうかがえます。『ラルフローレン』の世界観がきちんと見られて、ジーンズに対する思い入れが伝わってきますね。
デニムブランド5
『ヤヌーク』
LAで誕生したリラックス系デニムブランドの『ヤヌーク』。レディースやキッズアパレルのイメージが強いですが、実はメンズラインには、日本が世界に誇るヴィンテージショップ「ベルベルジン」のディレクターにして、生粋のヴィンテージデニムマニアとして知られる藤原 裕氏がアドバイザリーを務めるガッチリとハードなラインが存在します。そのうちの1本がこちらの「ヴィンセントII」で、藤原氏がチョイスしたヴィンテージジーンズの色落ちを最先端技術と職人の手作業で再現しつつ、スリムなテーパードをシルエットに採用。経糸と緯糸の番手を変えることで柔らかさを出しつつ、硫化染料によるロープ染色で中白に染めるなど、従来のブラックデニム作りにとらわれない手法を採用しています。
藤原
4年前からアドバイザーとして仕事をさせていただいていますが、はきやすさを重視したストレッチデニムに、ヴィンテージ加工の表情にもきちんとこだわった1本。大人の男性にあった細身のシルエットもウリのひとつです。いろんなタイプのシルエットがあるので選ぶ楽しみがありますよ。
デニムブランド6
『ラグ&ボーン』
アメリカのデニム業界においてニューカマーといえば、大都市圏でセレブリティを対象としたデザインコンシャスでトレンドを踏まえたプロダクトメイキングを行うことが多いもの。ですが、その渦中において『ラグ&ボーン』は異色の存在といえます。というのも創業地は大都市から離れたケンタッキー州で、しかもデザイナーはイギリス人。トレンド集積地から離れたケンタッキー州をあえて創業地に選んだのは老舗のデニム工場があったためだといわれています。創業の際に18か月間にわたって日本のカイハラデニムに通い詰めて理想の1本を作り上げたという逸話からもわかる通り、そのモノ作りへの真摯な姿勢とクオリティの高さは、数あるプレミアムジーンズの中でも群を抜いているといえるでしょう。なお、この1本でも高品質な14オンスのカイハラデニムを素材に抜擢。適度にテーパードを効かせた美シルエットでも大人の琴線を刺激します。
柴山
モノによっては、タックインしたときにシャツにインディゴが移染するのを防ぐためにウエストにコットンを裏打ちするなど、細かなところまで目が行き届いています。ジーンズだけでなくトップスやアウターなどトータルでアイテムを展開しているので、コーディネートもしやすいと思いますよ。
デニムブランド7
『ピーアールピーエス』
元『アカデミクス』のデザイナーであるドンワン・ハレル氏と日本人デザイナーによって発足されたNY生まれのデニムブランドで、産声を上げたのは2002年のこと。高級素材として知られるアフリカのジンバブエコットンを使用し、日本の織機を駆使して生産を行っています。デイビッド・ベッカム氏をはじめとしたセレブリティにも愛用されるなど、そのクオリティはまさしく折り紙付きといえるでしょう。この1本はすらっと美しいスリムシルエットとアメリカ産デニムならではのザラ感が魅力。バックヨーク裏に『リー』のストームライダーを思わせるブランケットライニングが施されているのもポイントです。
柴山
日本の岡山産デニムにこだわってきた同ブランドですが、新たに立ち上がったのがアメリカ製デニムを使った「エアルーム」というコレクションです。もちろんフロントのダメージは手作業で行われるなど、ここならではの高い加工技術は健在です。
デニムブランド8
『ギャップ』
アメリカを代表するファッション量販店であり、今では『ユニクロ』や『H&M』、『ザラ』などのファストファッション界隈で当たり前になったSPA(委託製造と自社店舗での販売を一貫して行う方式)の概念をいち早く提唱したブランドでもある『ギャップ』。ご存じの通りSPA方式のメリットは中間コストのカットと大量生産によって高品質な製品をリーズナブルに販売できること。なかでもジーンズは大量の販売数が見込めることもあって、SPAの強みを最大限に発揮できる商材です。しっかりとした生地や縫製に、良い意味で攻めすぎないノーブルなデザイン、さらには財布にやさしい価格設定と、『ギャップ』のジーンズは日常使いにぴったりの要素を兼ね備えています。こちらはGapFlexという独自のストレッチ機能とウォッシュウェルという環境負荷を低減した洗い技術を使用した1本で、量販ならではの価格で高い機能性を備えています。
藤原
『ギャップ』のデニムは低価格ではあるものの、レギュラー古着として流通しているはき込まれたジーンズを見ると、こだわりのモノ作りをしていることがわかります。少し太めのシルエットもバランス良く、今の時代に合った若い人にもハマるジーンズです。
デニムブランド9
『プリズンブルース』
数あるアメリカンブランドの中でも極めて異色の存在が、この『プリズンブルース』。1989年からオレゴン州の刑務所内で労働プログラムとして生産されているワークウェアブランドであり、当初は囚人服を生産していたのですが、現在は一般向けの製品もリリースするようになっています。今や希少なMADE IN USAブランド、どころかMADE INSIDE USA(米国の牢屋製)というシビれるうたい文句で展開中。あくまで労務作業として生産されたもののため品質に比べて非常にリーズナブルであり、しかもそこはかとなく武骨な佇まいなのもポイント。
柴山
囚人が刑務作業の一環として作っているジーンズ、というエピソードだけでグッとくる男の人も多いはず。紙パッチにプリントされた“外で着るために塀の中で作ってます”というメッセージも洒落が効いています。
デニムブランド10
『スティーブンソン オーバーオール』
凄腕のヴィンテージディーラー&デニムのリペア職人にしてスタッズブランド『HTC』のディレクターでもあるジップ・スティーブンソン氏が作るジーンズが、この『スティーブンソン オーバーオール』です。1930年代から続くワークウェアファクトリーを生産背景に作られるジーンズはいずれも武骨で男らしく、クラシック。そのアイテムにはブランドのシグネチャーともいえる1920年代以前の縫製を再現した1本折り伏せ縫いをはじめ、ヴィンテージ好きらしいこだわりが随所に込められています。そして、こちらの「ラホーヤ-727」は1960年代にカラーデニムが流行した際のモデルがモチーフ。すっきりとしたテーパードシルエットに、月桂樹ドーナツボタンやスターマークの打ち抜きリベットといったヴィンテージ好きも納得なディテール構成も見どころです。
柴山
1920年代頃のジーンズや1950年代頃のストアブランドのアイテムに見られる一本針の折り伏せ縫いなど、マニアックな視点から再構築して仕上げられたジーンズは非常に独特。ガチッとしたマスプロダクション製品という面構えではなく、服を手仕事で仕立てていた頃の温かみすら感じられる風合いです。
デニムブランド11
『テラソン』
米国のジーンズといっても生地やジッパーは日本製で、縫製は中国といったブランドがほとんど。そんな中にあって、徹底的にMADE IN USAにこだわり抜いているのが『テラソン』です。『リーバイス』の「XX(ダブルエックス)」を生産していたコーンミルズ社のホワイトオーク工場が閉鎖される2017年まで同社のデニム地を使い(以後はディフュージョンラインにコーンミルズ社のデニム、スタンダードラインはカイハラに特注した生地を使用)、革パッチはポートランドの『タンナーグッズ』によるハンドメイド、リベットはケンタッキー州のメーカー、さらに加工を行わずリジッド状態での販売のみという原理主義ぶり。分厚いスレーキやバックポケットの補強など随所に仕込まれた工夫ははき込んで使い倒すために施されたものであり、ジーンズ本来の姿であるワークウェアとしてのあり方を真摯に追求しています。長く付き合っていきたいなら、まずはこちらのような王道のストレートシルエットから押さえておきましょう。
PART2:洗練されたデザインが特徴の「ヨーロッパブランド」
ジーンズが長らくワークウェアとしてはかれてきた歴史を持つアメリカと異なり、ヨーロッパではあくまでファッションアイテムのひとつとして捉えられてきたこともあって、デザイナーの個性や流行を反映したアイテムが多いのがヨーロッパブランドの特徴。モダンでトレンドを踏まえた着こなしにジーンズを取り入れたいならば、以下のブランドたちが筆頭候補に挙がるでしょう。
デニムブランド12
『アー・ペー・セー』
1987年にパリで生まれた『アー・ペー・セー』は、トータルウェアブランドの中でも特にデニムの品質が秀逸なことで有名。“フランスパンのよう”とも形容される表面は硬く中は柔らかい独自の生デニムを使ったジーンズは、30年以上にわたって展開され続けるブランドの顔ともいえる存在です。なかでもおすすめしたいのが、定番型の「プチニュースタンダード」。股上深め&膝下テーパードという旬度の高いシルエットで、着こなしの格上げを簡単に叶えてくれます。そして同ブランドならではの面白い試みが「バトラープログラム」。消費者がはき込んだ『アー・ペー・セー』のジーンズを店舗に持ち込み、色落ちや生地が問題ない状態と判断されれば半額で新しいジーンズと交換してもらえるという仕組みです。はき込まれたジーンズはメンテナンスが施され再び販売されるため、いわばユーザーを活用したエイジング加工であり、リユースであり、さらにはユーザーも大事にはきたくなるというサステナブルな試みでもあります。いずれにせよ、生地や縫製の品質に自信があるからこそ可能なサービスといえるでしょう。
柴山
1990年代のジーンズ好きは『アー・ペー・セー』派かヴィンテージレプリカ派で二分されていたほど。そして現在に至るまで高い人気を誇っています。すっきりとしたシルエットと美しい色落ちで、アメカジ以外のファッションにもよく似合うため、さまざまなコーデと組み合わせたい人におすすめです。
デニムブランド13
『ディーゼル』
1978年にレンツォ・ロッソ氏がイタリアで設立した『ディーゼル』。共同設立者は『リプレイ』のディレクターや『AGジーンズ』の創設でも知られるデニム界の重鎮、アドリアーノ・ゴールドシュミット氏であり、創業当初からジーンズは主力アイテムのひとつに数えられます。デコラティブかつトレンド感のあるデザインを巧みに落とし込むクリエイティブで知られており、ハードなダメージ加工やラグジュアリーなシルエットが『ディーゼル』のジーンズの特徴。ですが、特に注目したいのが2011年に発売するや否や極上のはき心地で大ヒットとなった「ジョグジーンズ」シリーズです。スウェット素材をデニム生地のように織り上げたモノで、デニムらしい風貌を残したまま着心地は部屋着級の快適さ。さらに『ディーゼル』らしいハードな加工も可能と、まさに同ブランドの技術力とデザイン力の結晶といえるアイテムです。こちらの1本でも、職人の手作業によって精巧なヴィンテージ加工が施されています。
柴山
これまで何度もファッション誌の企画などでここのジーンズをスタイリングに活用してきましたが、イタリアンストリートブランドらしい、ツヤっ気とインパクトのあるデザインが魅力です。特に名作「ジョグジーンズ」はイージーパンツの本命といえる1本ではないでしょうか。
デニムブランド14
『ジースターロゥ』
1989年にオランダのアムステルダムで設立され、欧州のプレミアムジーンズを代表するブランドとして知られる『ジースターロゥ』。その代表作のひとつが1996年に発表された世界初の立体裁断ジーンズ「エルウッド」でしょう。2000年に発表された『リーバイス レッド』で一躍有名になった立体裁断ですが、実はジーンズに取り入れたのはこちらのほうが先。雨宿りしていたバイカーがはいていたジーンズがインスピレーション源となったといわれており、膝部分を中心に25以上ものパーツで構成される構造は今見ても新鮮です。この1本はハードな生地加工も印象深い要素で、コーディネートの主役としても躍動。しかも、オーガニックコットンを採用したり、化学薬品を大幅削減したエコな染色を取り入れたりと、“地球思い”なアイテムでもあります。
デニムブランド15
『デンハム』
『ジョー ケイスリー ヘイフォード』でパタンナーとして腕を磨いたジェイソン・デンハム氏が、2008年にオランダで設立した『デンハム』。生地から縫製、パーツ類まで日本で仕上げることによる高品質さに加えて、同社がデニム好きを惹きつけてやまないのがはいたときの美しさです。デンハム氏自身もパタンナーを務め、さらにイタリアの熟練パタンナーたちと共同で作り上げるシルエットは適宜立体裁断が用いられ、飽和状態の5ポケットジーンズに新しい息吹を与えたともいわれます。特にこのテーパード型の「レイザー」は、日本で非常に高い人気を誇っているアイテムです。そしてブランドのデニム愛がひしひしと伝わる試みが、一部店舗で実施している無料のハンドウォッシュサービス。『デンハム』のジーンズを持ち込めば、スタッフが店先で手洗いをしてくれるといううれしい施策です。長年はき続けるためのアドバイスも同時に行ってくれるため、お気に入りの1本に対する愛着が増すこと請け合いです。
藤原
『デンハム』といえば加工技術に定評がありますが、同ブランドらしい独特のシルエットを味わうなら、リジッドタイプもおすすめ。ファッション感度の高い大人の男性を魅了するこだわりの1本としてファンも多いですね。
デニムブランド16
『アクネ ストゥディオズ』
1996年にスウェーデンで創立したファッション広告のクリエイティブ集団が知人に向けてハンドメイドで作っていたジーンズが話題となり、現在は総合アパレルブランドへと成長した『アクネ ストゥディオズ』。スカンディナビアン・デザインらしいシンプルかつナチュラルで品の良いモノ作りを特徴としており、現在も生地の生産から縫製まで自社で手掛けていることで知られています。創業エピソードからもわかる通りブランドの代表作のひとつがジーンズであり、レディースを得意としていることもあってか、ユニセックスにはけるクリーンな印象のアイテムが多いのも特徴。例えばこの1本も、美しくフェードしたインディゴの色合いから洗練されたムードを感じ取ることができます。おまけに、計算された立体的なシルエットは“美脚見せ”も簡単に叶えてくれるんです。
柴山
ユニセックスでクリーンな印象のアイテムが多いですが、素材や縫製の質が非常に高いためハイブランドのアイテムと組み合わせても負けることはありません。パターンも巧みで、特にタイトなシルエットの1本ならその良さを存分に味わえると思いますよ。
デニムブランド17
『ヌーディージーンズ』
日本でスキニージーンズを流行らせた立役者的存在が『ヌーディージーンズ』です。生産をイタリアで行うスウェーデンブランドとあって、デザイン重視のいわゆるセレブ系プレミアムジーンズの一派かと思われがちですが、実は必ずしもさにあらず。使用している生地は色落ちに優れるカイハラ製のスペシャルオーダーで、“ジーンズははき込むうちに第二の皮膚になる”というコンセプトが表すように、経年変化による色落ちも秀逸です。名作を世に数多く送り出している同ブランドですが、ハズさない1本としてレコメンドしたいのがスキニーデニム人気に火をつけた不動の定番「シンフィン」。1950年代のキャロットシルエットをベースに、独自のセンスで美麗な細身シルエットへと昇華しています。加えてこちらは特別にユーズド加工を施した日本限定モデルにつき、無地Tシャツのシンプルなコーデでも、これさえあればサマになること請け合いです。
柴山
一般的にスキニージーンズといえば、ストレッチが強く入っているため色落ちが期待できませんが、『ヌーディージーンズ』に限っては話が別です。日本が誇るデニム生地メーカーのカイハラと共同開発したデニムは、ストレッチ入りとは思えないワイルドな色落ちを見せますよ。
デニムブランド18
『ヤコブコーエン』
デニムのトレンドが、日本製のヴィンテージレプリカから欧州のプレミアムジーンズブランドへと移り変わりつつあった2003年にデビューした『ヤコブコーエン』。その時代性を反映するかのように『ヤコブコーエン』のジーンズは「501」に範を取りつつも、イタリアらしいテーラードの技術で仕立てられているのが特徴です。スラックス的な立体縫製による美しいシルエットこそが同ブランドの持ち味であり、ジャケパンのスタイリングにおけるジーンズの活用をいち早く提唱したことでも知られています。ここでピックアップしたこの「J622」はブランドを代表するロングセラーとしてお馴染みで、ややローライズ気味のモダンなスリムテーパードシルエットが印象的。細身でありながら驚くほどノンストレスな着用感となっているのも流石の一言です。また、余談ですが新品の『ヤコブコーエン』のジーンズは独特な良い香りを発しており、これは最後の色止め工程で使われるパチョリというハーブによるもの。五感に訴えかけるモノ作りをしているあたりも、イタリアの伊達男らしいではありませんか。
デニムブランド19
『シビリア』
1983年創業の実力派メーカー、ワンウェイ社が2006年にイタリアのアンコーナで創業したパンツブランド。クラシカルを根底に置きつつ、その中にモダンなアプローチを取り入れるのが『シビリア』の得意技となっています。特にジーンズの完成度の高さには定評があり、スマートなタイトシルエットと驚くほどのコンフォートなはき心地を両立したプロダクツはここ日本でも高い評価を獲得。上のモデルも見た目こそすらりとシャープですが、こだわりのパターンと動きを妨げないストレッチデニム素材によってワンランク上のコンフォートさを実現しています。“1年着用”をイメージした、リアリティ溢れる経年加工にも注目したいところ。
柴山
ちょいワル親父なジャケパンスタイルにぴったりのイタリアンデニムです。もともとイタリアは美しいスラックスを作る専業メーカーが多いのですが、こちらもそんなイタリア発のファクトリーブランドのひとつ。いわゆるピタピタではなく少しゆとりを持たせているので大人もはきこなしやすいですよ。
デニムブランド20
『ピーティートリノデニム』
2008年に設立されたイタリアの人気パンツ専業ブランド『ピーティートリノ』のデニムラインが『ピーティートリノデニム』。実はもともと『ピーティートリノ』は『ピーティー01』、『ピーティートリノデニム』は『ピーティー05』というブランド名でしたが、それぞれ2020年に現在のブランドネームへと刷新されています。デザインとしては、イタリアブランドらしい端正なシルエットと、ウォッシュやダメージを駆使した加工の多彩さが大きな魅力に。また、ブランドの母体がファブリックメーカーということもあって、生地品質もかなりのハイクオリティを誇っています。紹介の1本はスーパースリムフィットの人気型「スウィング」。バックポケットの位置をあえて高めにすることで、足を長く見せるスタイルアップ効果を実現しています。
PART3:高い技術力で独自の進化を遂げる「日本ブランド」
かつてアメリカから中古で輸入した旧式力織機を現在に至るまで現役で稼働させ続け、世界に誇るデニムの産地となった児島という生産背景を武器に、糸の構造や織りの本数、洗い方にいたるまで徹底的に研究が重ねられてきた日本のジーンズ。今では本家アメリカを超えた実力を有している、というよりも世界各国のハイクオリティなジーンズのほとんどは実は日本で作られているといっても過言ではありません。
デニムブランド21
『エドウイン』
創業60年を超える老舗『エドウイン』。日本のジーンズブランドの多くが児島の協力工場でモノ作りを行うのに対し、『エドウイン』は古くから自社工場を有し、ワンウォッシュやストーンウォッシュ加工をいち早く取り入れるなどオリジナルなモノ作りを実践してきました。そして『エドウイン』の開発力の高さが伝わる好例が、フラッグシップたる「503」。専用の液体アンモニアに生地を浸すことで繊維を膨らませるEKIAN加工を用いることで、しなやかで快適なはき心地と日本人好みの濃紺を両立させ、1990年代の大ヒット作となったのです。そして現行の「503」はEKIAN加工の魅力を最大限に引き出すためにクラボウの特許技術を使った精紡交撚糸を経糸に使ったデニムを採用するなど、さらなる進化を遂げています。さらに、オゾンの力で洗うエアウォッシュを加工に取り入れているのもポイント。これにより、生産時の使用水量を大幅に削減することに成功しています。
柴山
『エドウイン』は単なるデニムブランドではありません。自社で縫製・加工工場を所有する、世界でも数少ないデニムメーカーのひとつなのです。同社の技術が込められた「503」は、当時人気絶頂のブラッド・ピット氏が『ごぉ~まり~さん~♪』と歌うCMで大ヒットしたことを覚えている人も多いのでは?
デニムブランド22
『ドゥニーム』
ヴィンテージレプリカのジーンズブランドが雨後の筍のように誕生した1990年代の日本。その中で頭一つ抜けたモノ作りを実践していたのが、1988年にデニム界の巨匠として知られる林 芳亨氏が立ち上げた『ドゥニーム』です。ロープ染色やムラ糸、旧式力織機といった今ではお馴染みのワードは『ドゥニーム』のモノ作りとともにデニム好きの間に広まっていったといっても過言ではありません。特に人気なのがブランド創設時よりラインアップされている看板ジーンズ「XX」。ちなみに2022年に突如ブランドの公式サイトとSNSが閉鎖になりましたが、2023年に『ウエアハウス』の手によって電撃的に復活。ちなみにこちらは『ハウス』製になる前に30周年記念として66モデルをシリアル入りで真空パックしたもの。ひょっとしたら数十年後にヴィンテージとして価値が出るかも!
藤原
ヴィンテージレプリカの先駆者ブランドであり、ここ最近再び注目を浴びているブランドのひとつです。1990年代の面影を復活したような定番のストレートジーンズに、しっかりヴィンテージ感を出しつつもイメージを変えない、非常に安定したジーンズだと思います。
デニムブランド23
『リゾルト』
上記『ドゥニーム』から続く話ですが、創業者である林氏が2010年に新たに立ち上げたデニムブランドが『リゾルト』です。ヴィンテージレプリカブームが去った後の設立ながら、林氏らしいこだわりのモノ作りと美しいはき味は健在。しかも定番モデルである「710」は『リーバイス』の「66モデル」のシルエットや仕様をベースにしつつ、誰もが裾上げせずにはけるよう7種類のレングスをラインアップしています。そのため、ジーンズ本来の美しいシルエットを裾上げによって崩すことなくはくことが可能なんです。実はアメリカでは「501」も幅広いレングス展開で販売され、裾上げせずにはくのが本来の姿。単に製品の再現だけでなく実際のはかれ方にいたるまでリアルに再現してみせるあたり、林氏の本気ぶりがうかがえます。
柴山
元『ドゥニーム』の林氏が新たに立ち上げたジーンズ専業ブランドです。裾上げによってジーンズ本来のシルエットが崩れないよう、非常に細かいレングス設定がされているのが最大の特徴です。ウエストが細めでお尻が薄めの体型の人がジャストではくととても美しいシルエットに仕上がります。
デニムブランド24
『レッドカード』
『エドウイン』で「503」の立ち上げに関わり、『リーバイス』で「501」のモデルチェンジを手掛けるなど、世界的なデニムデザイナーとして知られる本澤裕治氏が2009年にスタートしたのが『レッドカード』。国内の生産背景を生かした上質なデニム生地やリアリティ溢れるヴィンテージ加工を強みとする一方、日本人の体型とトレンドにフィットした軽やかな仕立ても得意としています。定番モデル以外が欲しいけれど、欧州プレミアムジーンズのようにツヤっぽいモデルは気恥ずかしい……という人もいるかもしれません。トレンドを適度に取り入れながら抑制の効いたデザインと絶妙な価格設定の『レッドカード』なら、そういったニーズにピタリとハマってくれるのです。なかでも看板作の「リズム」は持っておいて間違いなしのプロダクト。浅めの股上と流れるようなテーパードシルエットが、こなれたスタイルを演出してくれます。こちらの1本は軽量でもちもちとしたストレッチデニムを用い、スキニーならではの窮屈さを感じさせません。
デニムブランド25
『オアスロウ』
独学でオリジナルジーンズを製作し、服飾学校を経て児島の老舗ジーンズ工場へと就職した仲津一郎氏が2005年に設立した『オアスロウ』。徹底して日本製にこだわり、企画からパターン製作まで行うだけでなく、サンプル製作はデザイナー自身が縫製するという職人肌なブランドとしても知られています。アトリエには買い集められたヴィンテージミシンが並び、6歳のときに出会った1950~60年代のデニム生地の色落ちを求めてブランドを立ち上げたほどのヴィンテージ好きである仲津氏。しかし単にヴィンテージを精巧に再現するのではなく、現代を生きる大人の普段着としてマッチする絶妙な塩梅の仕上がりこそが『オアスロウ』の魅力です。
デニムブランド26
『ヒステリックグラマー』
1984年に北村信彦氏によって創設された『ヒステリックグラマー』。2021年に名作スネーク柄が『シュプリーム』とのコラボデニムジャケットで復活したり、1990年代に大ヒットを記録した「キンキージーンズ」が再発されたりと、デニム界隈で何かと話題に欠かないブランドでもあります。そしてアメリカンカジュアルに1960~70年代のロックカルチャーをMIXするブランドだけあって、そのジーンズもロック精神が反映されたインパクトあるデザイン。タイトなシルエットにダメージ加工やプリントを施したジーンズは、コーディネートの主役として申し分ありません! 写真のモデルは1960年代のオーセンティックなデニムをベースとしながら、ハンドワークによる大胆なリメイク加工でオリジナリティたっぷりに仕上げられています。
柴山
スネーク柄に染め抜かれたジーンズやさまざまなデニム生地をボーダー柄でパッチワークしたベルボトムなど、衝撃的なルックスのヒット作がいくつも存在するブランドです。1990年代終わり頃のファッション雑誌のスナップはヒス一色、というほどの人気ぶりでした。そしてその存在感はいまだ健在!
デニムブランド27
『クロ』
その名前通り日本人の瞳や髪の色である「黒」をテーマに掲げ、MADE IN JAPANを守り続けている『クロ』。2010年のブランド設立当初からそのデニムコレクションはファッション感度の高い人々からの支持が厚く、海外でも高い人気を獲得しています。とりわけ、2017年に登場した「カーバー」はシルエットがアップデートされ、ストンと落ちるワイドめなストレートに。やや短めのレングスで裾をすっきりと見せれば、ヒネりのあるスタイリングに仕上がります。
デニムブランド28
『ジョンブル』
1952年に学生服メーカーのカネワ被服として創業した後に国産ジーンズの製造をスタートし、1967年に『ジョンブル』として立ち上がったのが同社の生い立ち。児島に有する自社の生産背景を使った質実剛健なセルビッジデニムのみならず、独自開発のストレッチデニムを積極的に使用したり、あえてライトオンスの生地を用いてモダンなデザインに仕上げたりと、デニムという素材を知り尽くしたモノ作りこそが『ジョンブル』の真骨頂です。こちらのジーンズでは、通常の横伸縮に加えて縦の伸縮性もプラスしたオリジナルの2WAYストレッチ生地を採用。シュッとした美フォルムでありながら、締め付け知らずの気持ち良さです。
デニムブランド29
『フルカウント』
ヴィンテージレプリカブーム真っ盛りの1992年に創業した『フルカウント』。“家に帰っても寝るまで脱ぎたくないジーンズ”をテーマに掲げ、日本人のデイリーウェアとしてのモノ作りを行ってきました。そのモノ作りが最も伝わるエピソードが、他社に先駆けてオーガニックのジンバブエコットンを生地に使用したこと。ジンバブエコットンは繊維長が平均35mmを超える超長綿の一種であり、しなやかで毛羽が少なく伸縮性に優れたデニムに織り上がるのです。その着心地の良さは「なんだか『フルカウント』の生地は薄い気がする……」と勘繰りそうになるほど。もちろん定番の生地では13.7オンスとしっかり生地厚を確保しているのですが、ともすれば11~12オンスぐらいの生地と勘違いしそうなほどライトなはき心地を実現しているのです。
柴山
リジッドからジーンズを色落ちさせてみたいけれど、窮屈なはき心地はイヤ……、というわがままな人は迷わず『フルカウント』を選びましょう。ジンバブエコットンならではのしなやかさ溢れるタッチはジーンズに苦手意識がある人こそ体験してみてほしいですね。
デニムブランド30
『カトー』
世界のファッション業界の最前線でデニムを中心に活躍してきたデザイナーの加藤 博氏が1999年に設立。形・生地・縫製・洗いなどすべての要素にこだわったプロダクトは、着込むほどに持ち主と同化し、奥深く変化していきます。代表作として名高い「3Dデニムパンツ」は岡山県井原市にあるセルビッチデニムしか生産しない機屋で織られたオリジナルデニムを使用。大きく湾曲したシルエットや膝裏のダーツによる立体裁断加工を特徴としています。体の動きに追従する絶妙なはき心地はもちろん、色落ちのきれいさも魅力のひとつです。
柴山
ガニ股になったパターンからは想像がつかないほど、美しいシルエットとストレスフリーなはき心地を備えています。また、糸を染める際にイエロー系の硫化染料を加えることで、インディゴを酸化したヴィンテージデニムのような緑色がかった色合いに仕上げるなど、細かなところまでこだわりが感じられますよ。
デニムブランド31
『マインデニム』
スタイリストの野口 強氏がディレクションを手掛け、岡山の自社工場で生産から加工まで行うMADE IN JAPANブランドの『マインデニム』。木村拓哉氏をはじめとしたデニム好きとして知られるファッションアイコン御用達のブランドでもあり、なかでもスリムストレートのシルエットの美しさは群を抜いています。Tシャツを使ったスタイリングの妙で知られる野口氏渾身の1本を味わい尽くすなら、同じく野口氏がディレクションを務める『スティーロー』のフォトプリントTシャツなどでコーディネートしたいところです。
藤原
プロデューサーのこだわりに裏打ちされたブラックデニムの人気は、『マインデニム』ならでは。こちらも、ファッション感度の高い大人な男性に向けた、コンセプトがしっかりしたブランドです。
デニムブランド32
『サムライジーンズ』
ヴィンテージレプリカ全盛の1998年に大阪で創業した『サムライジーンズ』。多くのレプリカブランドが「501」と同様に13.5~14オンス前後のデニムを使用するなか、同ブランドでは15~24オンスに及ぶ肉厚なデニムを多用するのが特徴です。激しい縦落ちに加えて、刀耳セルビッチや鉄製松ノ木ボタン、銅製銭型リベット、諸行無常スレーキといった和のテイストを入れたアクの強いオリジナルディテールも1990年代に誕生した関西のレプリカブランドらしいところ。思わずニヤリとさせられます。
柴山
関西らしさ溢れるパンチのある生地やディテールワークは好き嫌いが分かれるかもしれませんが、とにかくゴツくてタフなジーンズが欲しい方はこちらがおすすめ。シルエットそのものは「501」を踏襲したシンプルなもののため、意外とはきやすいですよ。
デニムブランド33
『桃太郎ジーンズ』
デニム=岡山=桃太郎=『桃太郎ジーンズ』と、まさに児島が誇るご当地ブランド代表といえるのがこちら。その最大の特徴は“世界で最も濃い”とも称されるインディゴ染め。しかも単に濃いだけではなくロープ染色によって糸の芯には白を残しつつ、表面はほぼ黒に近い濃紺に染め上げて紡績されるため、はき込むほどに激しい経年変化を見せてくれます。また自社内に藍染め用設備を有しており、定期的に本藍を使った手染め・手織りのジーンズを発売するなど、染めにこだわった独自性豊かなモノ作りを行っているのも同ブランドの特色といえるでしょう。ヒップの2本線をトレードマークとする「出陣レーベル」から登場の1本は、15.7オンスの特濃セルビッチデニムを素材に抜擢。シルエットは王道的な細身ストレートで多彩なスタイリングとマッチしてくれます。
柴山
メディアの工場取材でも、染色の工程は撮影NGが出るほど企業秘密だらけです。特にデニムは他の染料よりも扱いが難しいインディゴを使うため、色濃く染めるためには特別な手間と技術が必要とされるんですね。
デニムブランド34
『エヴィス』
国産レプリカジーンズブームの最初期から活躍する老舗ブランドであり、カモメマークのペンキステッチでお馴染みの『エヴィス』。ルーズでワイドなシルエットのジーンズをいち早く日本でも提唱したことでも知られており、1990年代のストリートが『エヴィス』一色に染められたのは大人世代にとって懐かしい記憶。最近は海外のライセンス生産モデルを、JAY-Z氏やトラヴィス・スコット氏、リル・ウジ氏といった大御所ヒップホップミュージシャンがはいたことで爆発的な人気を記録。その人気は日本にも波及し'90sリバイバルやビッグシルエット&ヒップホップブームと一体となって、再び『エヴィス』が注目を浴びつつあります。こちらは旧式力織機で織った生地に防縮加工を施したNo.2デニムを使用する定番シリーズの1本。ピンクのカモメステッチもキュートです。
柴山
ペンキで手描きされるステッチはさまざまなバリエーションがあり、バックビューの決め手になるインパクトがあります。1990年代に大ブームを巻き起こした際は両足の膝裏からお尻にかけて大きく“M”のマークが入るビッグカモメ仕様のデニムをワイドにはくのが定番でした。
デニムブランド35
『ステュディオ・ダ・ルチザン』
フランスで服飾を学び、1970年代後半にアメ村で「マリジュアン」という伝説的なセレクトショップを営んでいた田垣繁晴氏が立ち上げた『ステュディオ・ダ・ルチザン』。1990年代のレプリカブームよりも早く、1979年から旧式力織機によるセルビッジデニムを用いたジーンズ作りに取り組んでおり、いわば“「501」レプリカブランド”の元祖的存在でもあります。創業当初から児島に生産拠点を置いており、現在はジーンズ洗い加工大手の株式会社晃立(岡山県倉敷市児島)のグループ会社になったこともあり、裁断から縫製、加工にいたるまで一貫して自社工場で行うことができる数少ないジャパンブランドのひとつとなっています。
デニムブランド36
『ウエアハウス』
1995年の創業以来一貫して忠実なヴィンテージ古着の復刻にこだわり、糸1本からステッチの縫い目の本数、パーツごとの糸数にいたるまで正確に再現を行うことで知られる『ウエアハウス』。その再現ぶりは「色落ちしてしまえば、タグを見ない限りヴィンテージと判別がつかない」といわれるほど。徹底してリアルさにこだわるゆえに長らくユーズド加工をリリースしてこなかった同ブランドですが、2018年に満を持してリリースした加工モノが「2nd-Hand」、通称・セコハンシリーズです。デザイナーの塩谷兄弟が所有するヴィンテージから色落ちをサンプリングし、レーザー加工とウォッシュ、天日干し、サンディングにブラストなど複数の加工を重ねた色落ちと風合いは、まさにヴィンテージそのもの。ゴールデンレングスの30インチでリリースしているのも、せっかくの裾の色落ちを丈上げしなくて済むように、という配慮なのです。
藤原
一緒に仕事をさせていただいたことがあるブランドですが、デザイナーのヴィンテージに対する知識と研究は、他のブランドにはないほどのこだわりようです。色落ちの加工と今の時代に合った短いレングスなど、他のブランドがやらないファッション好きも納得するジーンズを理解した作り込みで、私も尊敬するブランドです。
デニムブランド37
『ピュアブルージャパン』
生まれはデニムの聖地たる岡山県倉敷市児島で、1997年創業の有限会社正藍屋(しょうあいや)が展開するMADE IN JAPANのデニムブランド。ちなみにそのブランド名は、天然の藍が放つ美しい青への愛着を表しています。糸の染めに始まり、織り、ソーイング、加工とすべてのプロセスを国内で行うことが『ピュアブルージャパン』の一貫したこだわりで、日本が世界に誇る職人たちの繊細な技術をいかんなく注ぎ込んだデニムは、本物志向の大人にぴったりです。紹介する逸品は定番型の「XX-003」。糸の形状や織り方まで徹底注力したオリジナルデニム生地は、ざらっとした良い意味で荒々しいタッチです。シルエットは正統派のレギュラーストレートですが、裾に向けてゆるくテーパードが掛かっており高い美脚効果も期待できます。
デニムブランド38
『キャントンオーバーオールズ』
アメリカから輸入された中古ジーンズをはくのが当たり前だった1960年代前半に、大石貿易がアメリカの「キャントンミルズ社」からデニム生地を輸入してマルオ被服(現・ビッグジョン)に縫製を依頼し、1963年に立ち上がったデニムブランドが『キャントン』です。一説にはジーンズ国産第一号ともいわれるブランドであり、タロン社のジップやスコビル社のリベットをも輸入して使用するなどこだわり抜いた作りで人気を博しました。しかし、惜しくも1970年代に活動を休止。一時は表舞台から姿を消しましたが、2008年に日本産のデニムを使用して『キャントンオーバーオールズ』の名で復活を遂げました。新生『キャントン』では、当時のこだわりを継承したクラフトマンシップ溢れるモノ作りを続ける一方で『MHL.』や「1LDK」といったブランドやショップとのコラボレーションを行うなど、ファッション感度の高いクリエイターやデニム好きからも厚い支持を集めています。復活後もたびたびリブランディングを行っていますが、こちらは2008年復活直後にデザイナーのさいとうとおる氏の手によって作られたクロップドのデッドストック。どこか和の雰囲気を感じるリラックスフィットが特徴です。
柴山
ヴィンテージの『キャントン』は「XX」と同じ生地を使っていたのではないか? など、マニアックなデニム好きたちの手によって解析が進められている伝説のブランドです。現在のラインアップはオーセンティックな5ポケットやデニムジャケットが中心で、そちらも国産最古の歴史に恥ずかしくないクオリティを実現しています。
デニムブランド39
『ビッグジョン』
そして『キャントン』と並んで国産第一号のジーンズブランドとうわさされる老舗が『ビッグジョン』。創業は同じく1963年で、アメリカのコーンミルズ社からデニム地の供給を受けて生産を開始しました。実は『キャントン』の西日本用の商品を製造していたのも『ビッグジョン』だったといわれています。いち早くヴィンテージ加工を取り入れたブランドでもあり、その後もヴィンテージ感を3Dパターンや日本人向けにシルエットを改良したモデルをリリースしたり、1973年には国産デニム地を採用した純国産ジーンズを発表したりと、積極的に技術開発を重ねて1970年代から80年代にかけてジーンズショップの定番品へと成長。近年は歴史ある生産背景を武器に『ロンハーマン』をはじめとしたセレクトショップとコラボするなど、デザイン面でもリフレッシュを遂げています。
デニムブランド40
『バーガス プラス』
上野・アメ横から長年にわたって良質なアメリカンカジュアルを提供し続けている老舗ショップのヒノヤ。そんな同店のオリジナルブランドとして1997年に誕生したのが『バーガス プラス』です。そのコンセプトは“究極のベーシック”で、時代やトレンドに左右されない筋の通ったデイリーウェアを展開しています。なかでも人気カテゴリとなっているのが、ヴィンテージのニオイを色濃く纏ったデニム。特に注目したいのは、1950年代のデッドストックをイメージしたフラッグシップモデル「955-XX」です。天然藍のロープ染色によって染め上げた縦糸にベージュの横糸を組み合わせることにより、深みのある色合いを追求。また、3種類の太さのムラ糸で織り上げて、クラシックデニムのようなランダムな凹凸感のある1本に仕上げています。一方でシルエットは現代的なジャストフィットにアップデートしていて、合わせやすさも抜群!
デニムブランド41
『ジャパンブルージーンズ』
母体となった児島のテキスタイルメーカーが海外展示会に生地見本として持ち込んだジーンズが話題となってヨーロッパで火がつき、日本に逆輸入されたブランドが『ジャパンブルージーンズ』です。そのため日本の高品質なデニム生地を用いつつ、スキニーやタイトシルエットといったヨーロッパ流のファッションコンシャスなシルエットを持ち味としています。また、一般的なジーンズ作りでは生産効率と伸び縮みするデニム生地の特性から“シュリンクトゥフィット” (直線で裁断し、洗って縮んだものをはくことで体の曲線に合わせる設計)が一般的。しかし同社では看板商品の「サークル」シリーズでウエスト部分のベルトを曲線に設定することで快適さを追求するなど、日本ブランドらしい細やかな気遣いのアイテムを提案し続けています。
ブランド42
『ベティスミス』
『ビッグジョン』の下請け工場として1962年に創業し、国内初の女性用ジーンズ専門メーカーとして立ち上がった『ベティスミス』。自社工場を背景にさまざまなブランドのOEMを行うほか、生地や縫製、ボタンなど細かな仕様をパターンオーダーできる『倉敷オーダージーンズ』のサービスをスタートするなど、ファクトリーブランドらしい取り組みを行っています。なかでもこちらはセルビッチデニムを用いて仕上げたベーシックなスリムストレート。パターンオーダーする前に色落ちやはき心地を確認する1本としてもおすすめです。
柴山
実は、倉敷・児島をジーンズの聖地として国内外に向けて猛烈にプッシュしているのが『ベティスミス』。行政と一体となって工場見学ツアーなどを主催しており、児島のデニム文化の担い手としても目が離せません。
この記事の掲載アイテム一覧(全42商品)
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『リーバイス』 オリジナルフィット 501
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『リー』 AMERICAN RIDERS 101Z ストレート デニムパンツ
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『ラングラー』 13MWZ
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『ダブルアールエル』 ウエスト コースト ロウ ストレイト デニム
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『ヤヌーク』 スリムテーパード ヴィンセントII
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『ラグ&ボーン』 フィット2スリムジーンズ
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『ピーアールピーエス』 エアルーム
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『ギャップ』 Gapflex ウォッシュウェTM リラックステーパードデニム
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『プリズンブルース』 7ポケットワークデニムパンツ
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『スティーブンソン オーバーオール』 ラホーヤ-727
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『テラソン』 アンカラストレートレッグ
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『アー・ペー・セー』 プチニュースタンダードジーンズ
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『ディーゼル』 ジョグジーンズ レギュラースリムキャロット
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『ジースターロゥ』 エルウッド ORIGINAL RELAXED TAPERED JEANS
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『デンハム』 レイザー
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『アクネ ストゥディオズ』 デニムパンツ
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『ヌーディージーンズ』 シンフィン マーティン レプリカ
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『ヤコブコーエン』 J622
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『シビリア』 ストレッチ テーパード スキニージーンズ
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『ピーティートリノデニム』 スウィング
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『エドウイン』 503 レギュラーストレート
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『ドゥニーム』 30th記念 真空パックデニム
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『リゾルト』 ジーンズ Lot 710
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『レッドカード』 リズム
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『オアスロウ』 IVY FIT 107 JEANS One Wash
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『ヒステリックグラマー』 スクエアウインドウリメイク スリムストレートデニムパンツ
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『クロ』 カーバー ヘリテイジウォッシュ02
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『ジョンブル』 ダブルストレッチテーパードジーンズ
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『フルカウント』 1108 STRAIGHT LEGS
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『カトー』 3Dデニムパンツ
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『マインデニム』 S.Slim STR 5pocket
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『サムライジーンズ』 新・710モデル 19oz刀耳セルビッチデニム
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『桃太郎ジーンズ』 0705SP
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『エヴィス』 No.2 2000 朱耳スペシャルカモメ ピンク
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『ステュディオ・ダ・ルチザン』 D1823・KASURIジーンズ
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『ウエアハウス』 LOT1105
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『ピュアブルージャパン』 XX-003
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『キャントンオーバーオールズ』 9オンスINDIGO DENIM ARMY TRUSERS WEIT BOTTON
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『ビッグジョン』 M3 キャロットレッグ テーパード
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『バーガス プラス』 955-XX
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『ジャパンブルージーンズ』 J301 サークル 14.8オンス ストレート ジーンズ
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『ベティスミス』 ストレッチセルビッチデニム
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藤原
2023年に150周年を迎えた「501」。定番のボタンフライのストレートジーンズは、アップグレードしつつも変わらないスタイルが素晴らしい。何十年か後にヴィンテージとして価値が出ることを期待します。