英国ブランド・バブアーの顔、ビデイルを持っているか

英国ブランド・バブアーの顔、ビデイルを持っているか

一生モノに出会う30代。人生の節目に手に入れる1着として、英国のロイヤルワラントブランド『バブアー』のビデイルを候補に入れておきたい。

牟田神 佑介

2019.10.02

バブアー(Barbour)
アウター
ジャケット
ミリタリージャケット

『バブアー』のビデイルが、いい大人にはよく似合う

いい大人になった男のアウターに求められる条件とは何か。若い頃はその時々のデザインに流された買い物も良かったかもしれないが、円熟味を増した大人にはそれからの人生を長く付き合うに足る1着が必要になる。例えば、着こなしを選ばず似合うオーセンティックな見た目と、手入れ次第で一生ワードローブに残すことのできる耐久性。そして、自信を持って人に語ることのできる歴史的背景。そんな要素を一手に引き受けてくれるアウターこそが、今なお英国にて生産を続けているロイヤルワラントブランド『バブアー』であり、同ブランドを代表する「ビデイル」だ。

実はブランド内の歴史としては、1936年に登場したライダースジャケット「インターナショナル」のほうが長い。同作は1970年代までのレースにおいてほぼすべてのレーサーが着用したという伝説的なモデルだ。だが、1980年に乗馬用アウターとして「ビデイル」が、追って1983年に丈を長めに設定された狩猟用の「ビューフォート」がリリースされると勢力図は一転。『バブアー』は英国王室御用達のアウトドアウェアブランドとして認知されるようになり、「ビデイル」はその顔として世界的に知られるようになる。

その大きな要因はやはり、オンからオフまで着こなしを選ばずにクラスアップさせてくれる普遍的なデザインにある。写真の復刻モデルに見られる大ぶりな両胸ポケットがハンドウォーマーになったりなど細かな変更はあるものの、裏地のチェックや襟元の暖かなコーデュロイなどそのルックスは大きく変わっていない。肩肘を張らず英国紳士を気取れる魔法のアウター。その着こなし方から順に、魅力を読み解いていこう。

▼デザイン:スタイル不問に似合う、ハンティングジャケットの完成形

オイルドクロスばかりが取りざたされる「ビデイル」だが、世代や国を超えて愛される理由として前述のとおりそのデザイン性も一役買っている。ハンティングジャケットのディテールを踏襲したマチ付きの大ぶりなポケットやコーデュロイ生地で切り替えた襟をアクセントとし、落ち着いた印象を与える美しいAラインシルエットを形成。フロントを開けて着用すればライニングのブリティッシュチェックが着こなしに華を添え、何よりオイルドクロスモデルを選べば深いツヤがタフな男を演出してくれる。ジャケットスタイルにはもちろん、シャツにざっくりと羽織ってもスタイルを作ってくれる汎用性の高さもまた、「ビデイル」の魅力だ。

1人目クリーンなセットアップのビジネススタイルにも

クセのないAラインを描く「ビデイル」の端正なシルエットは、フォーマル度の高いネイビーのセットアップスーツにもよく似合う。太幅のタイでシックに決めたスタイリングに、「ビデイル」の程良いスポーティさが大人の抜け感を演出。このコーデでは、セレクトショップ『エディフィス』の別注としてライニングにゴールドのファーをあしらった1着をオン。ネイビー一色の洗練された空気の中に、ラグジュアリーなアクセントを生み出している。

2人目Gジャンを挿した武骨なワークスタイルにも

ワイドTテーパードパンツにGジャンをセットした男くさい着こなしもまた、「ビデイル」の得意とするところ。着古して濃淡が出始めたオイルドクロスが、「ビデイル」をワークスタイルにマッチするタフな印象に引き上げてくれる。インナーにはカスタムオーダーブランドの名門『インディビジュアライズドシャツ』のボタンダウンシャツを合わせ、あくまでクリーンに引き締めているテクにも注目したい。

3人目カットソーにサラッと合わせるだけでもサマになる

アウターレイヤードをするほど寒くもない……、という日にはいつものシンプルなカットソーにサッと羽織るだけでもスタイルを完成させてくれるのが「ビデイル」の強みでもある。1枚でも存在感は十分なので、合わせるジーンズもスニーカーもオーセンティックなモノをチョイス。肩肘張らないリラックス感が心地良い。

▼素材:「ビデイル」を手に入れる前に知っておきたい、オイルドクロスのこと

「ビデイル」の万能さに触れてもらったところで、ここからは機能にまつわる話を。まずは、『バブアー』製品の最大の魅力でもあり、特徴でもあるオイルドクロス。長い歴史に裏打ちされた画期的な機能素材であるとともに、「ビデイル」を筆頭とした同ブランド特有の色気を醸し出す唯一無二のマテリアルだ。昨今は予めオイル抜き処理がされたウォッシュドモデルやナイロン素材のノンオイルタイプも増えているが、着古すうちに表れる味はオイルドクロスならではの楽しみだ。

ただ、ここ日本においてオイルドクロスと長く付き合っていくにはちょっとしたコツが必要になる。同素材の歴史を読み解くとともに、そのポイントを理解しよう。

歴史英国軍にも認められた、1894年に開発された機能素材

『バブアー』が生まれたのは、イングランド北東部のサウスシールド。気まぐれな北海の天候の下で作業をする水夫や漁師のために、上質なコットンにオイルを染み込ませた生地を提供したことがブランドの始まりといわれている。通常のコットン生地に比べて圧倒的な防水性、防寒性、そして耐久性を有した同生地の評判は瞬く間に広まり、2度の大戦中は英国軍の防水服にも採用されていた。そんなオイルドクロスを使用している「ビデイル」もまた、高い機能性を保持している。

注意オイルドジャケットを街で着るには注意が必要

そんな歴史的背景を持つ素材であるオイルドクロスだが、満員電車や人ごみなど他人と密着するシーンの多い日本では同素材がトラブルを引き起こすことも。現在のワックスは改良されて匂いも気にならなくなったようだが、古いモデルや古いワックスを使用している場合そうはいかない。また、染み出したオイルが他人の服やカバンに付着することもある。だが、オイルドクロスはデメリットばかりでない。使用によるオイルの濃淡が生まれ、レザージャケットなどとはまた異なる独特のツヤが出てくるのも同素材の強みだ。その長所短所を理解し、長く付き合っていくのもまた、大人の『バブアー』の楽しみ方だろう。

手入れオイルが抜けても、あわてる必要はない

『バブアー』のオイルドクロスの高い防水性と防寒性は、染み込ませた「ソーンプルーフドレッシング」の効果によるもの。経年によりオイルが落ちてしまえば、その機能性も低下していくことになる。正規代理店でリプルーフしてもらうのも手だが、純正オイルを購入することで自宅でもケアを行うことが可能だ。手順を下記に簡単にまとめてみた。一般的にオイルがコットンに馴染むまで3か月を要するといわれているので、8月~9月頃にリプルーフしてオンシーズンに備えたい。

1. 表面の大きなほこりやゴミをブラッシングで落とす。
2. 水を染み込ませたスポンジで、生地の汚れをふき取る。このとき温水を使用してしまうとオイルが溶け出してしまうので注意。
3. 水ぶきした部位が乾くまで干す。
4. 純正オイル「ソーンプルーフドレッシング」のふたを開けて、缶ごと湯煎。
5. 溶けたオイルをウェス(布)に取り、全体に塗りこんでいく。体温で馴染みが良くなるため、布ではなく手で、という人もいるがそこは好みで。
6. ドライヤーを当てながらオイルを均等に伸ばし、むらをなくす。
7. 風通しのいい日陰で干し、完成。

また、そもそも『バブアー』はオイル抜きをしてから使う、という人も少なからずいる。専門の業者もあるようだが、自己責任において自宅で行うことも可能だ。通常『バブアー』にはタブーとされる60度程度の温水に洗剤と一緒に漬け洗いをし、オイルが落ちるまですすげば完成だ。ただ、オイルが抜けた分、色が薄くなり防寒性・耐久性も低下するなどのデメリットが生じることも覚悟して行ってほしい。

▼サイズ:フィッティングはオリジナル(ノーマル)と「SLシリーズ」がある

英国のワークシーンを発祥とするだけあり、胸板や肩幅がないとなかなかさまにならないのがオリジナルのビデイルの悩みどころ。だが、ここ日本ではうれしいことに胸囲や腕ぐりがコンパクトにリサイズされた「SLシリーズ」が販売されている。セレクトショップなどでの取り扱いも、今ではこの「SLシリーズ」が圧倒的多数派だ。身幅のもたつきもなくシルエットもスマートなので、都会的な着こなしやビジネスシーンでの活用にも間違いなくハマってくれる。

▼ちなみに:オプションパーツを取り付けることで、使い勝手が向上

初めて「ビデイル」を手に入れたとき、「首周りのスナップボタンはなぜ付いているのだろう」と思った人はいないだろうか。『バブアー』では、襟裏に取り付けられる共地のフード、ライニングとして使用できるファーベストなどのオプションパーツを別途販売している。これにより、オイルドクロスでは対応できないような極寒の地や、雨の多い土地でも快適に使用することができるのだ。オーナーの必要に応じてカスタマイズができる点も、リアルなワークウェアを発祥とする『バブアー』らしい一面といえるのではないだろうか。

現代的に着こなすなら、セレクトショップの別注という手も

本家本元の『バブアー』ビデイルについて解説を行ってきたが、ここからは一風変わったモデルを求める人に向けた別注アイテムを紹介していこう。すでに1着手に入れている、オイルドクロスが苦手、よりスマートに着こなせる素材のモノが欲しい……という人は必見だ。

1着目『ビームス プラス』別注

男の琴線を刺激する骨太なモノ作りに定評がある『ビームス プラス』からは、素材面で現代的にアップデートした「ビデイル」を提案。一件普通のノンオイルモデルだが、実は使用しているのは撥水・透湿・防風性能を備えたレイヤー素材。ライニングのハウスチェックや襟元もコーデュロイもそのままに、『バブアー』らしさを損なわず華麗なアップデートを施す『ビームス プラス』の手腕には恐れ入る。もちろん、(SLシリーズ以外の)ライナーの取り付けも可能だ。

2着目『シップス』別注

『シップス』らしく、「ビデイル」を秋冬用に品良く解釈したのがこちらのモデル。シェルにウール地を使用したキルティング素材で全体を仕上げ、ライニングもスーツ着用時に滑りの良いナイロンに変更。シルエットはSLラインのものを採用しているので、見た目にもすっきりとシャープだ。もちろん防寒性も抜群なので、スーツに羽織る「ビデイル」を探しているならこちらで。

3着目『パラブーツ』『インターナショナルギャラリー ビームス』別注

一見普通のオイルドクロスの「ビデイル」だが、チンストラップと前面のポケットの光沢が異なることにお気づきだろうか。実はこれ、『パラブーツ』の代名詞的素材であるリスレザーをあしらったもの。オイルの含有量に定評のある同素材だが、ここで使用したのはオイル少なめでキメ細かい特に良質なレザー。『インターナショナル ギャラリー ビームス』別注らしい、細やかな気配りはこんなところにも表れている。

4着目『ビームス F』別注

SLフィットとクラシックフィットのいいとこ取りを行ったのが、『ビームス F』別注だ。全体的なシルエットはクラシックフィットを採用。特有のゆったりとしたシルエットに加え、丈をやや長めに設定することでより落ち着きのあるルックスに仕上げた。しかし、ハンドウォーマーやポケットのサイズはSLフィットのモノを踏襲することで、見た目に都会的でシャープな印象にまとめている。その名も、“BEDALE-F”。ブランドのこだわりが詰まった渾身の別注だ。

5着目『トゥモローランド』別注

そもそも何故オイルドジャケットが考案されたのか、と原点に思いを馳せると“防水性”に行き当たる。『トゥモローランド』はその防水性を、ベンタイル地で表現した。コットン100%ながらオイルを使わずとも優れた防水性能を発揮する同素材は、まさに現代のフィールドウェアにぴったり。上品な光沢を湛えているため、オフだけでなくオンでも活躍する1着に仕上がっている。

6着目『グリーンレーベルリラクシング』別注

『グリーンレーベルリラクシング』別注のポイントは、素材。ただのノンオイル素材ではなく、ポリエステルとコットンによる2レイヤー地を採用している。撥水性、透湿性に秀でた、合理的な素材だ。つるっとしたシャープな素材感からスーツにも合わせたくなるが、そんなときにはライニングにセレクトした鮮やかなタータンチェック地がアクセントとして機能してくれる。ブラックとのコントラストが効いた、実に思い切った配色には目を奪われるはずだ。

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平 格彦

「Men’s JOKER」、「STREET JACK」と男性ファッション誌を経た後、腕時計誌の創刊に携わり現職。メンズ誌で7年間ジャンルレスに経験してきた背景を生かし、TASCLAPでは主に腕時計や革靴、バッグなど革小物に関する記事を担当している。
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