
米国紳士靴の最高峰。オールデンのコードバン靴がモノ好きに愛される理由
アメトラなスーツスタイルから、きれいめジーンズスタイルまで対応してくれる『オールデン』。なかでも、同社が誇るコードバン製シューズに絞ってご紹介しましょう。
アメリカの紳士靴といえば『オールデン』。その歴史と背景は?
1884年にマサチューセッツ州ミドルボロウで創業した『オールデン』。現在は米国既成靴の最高峰として名高いブランドですが、実はカスタムメイドのブーツや紳士靴の受注生産からその歴史をスタートしています。その名が広く知られるようになったきっかけが、1948年に世界ではじめてタッセルローファーを作ったこと。元々は『ブルックスブラザーズ』で販売するために開発されたOEMモデルだったのですが、今では『オールデン』の定番モデルとなったのみならず世界中の靴メーカーでも製造されるようになり、トラッドな足元に欠かせない存在として受け入れられています。
また『オールデン』はアメリカのトラディショナルシューズの中でも履き心地に優れているブランドとして有名。特に、その技術の高さを示すのが1970年代から行っている、足に問題を抱える人向けのオーソベディックシューズ(医療用矯正靴)の製造でしょう。この矯正靴の製造に使われているのが、『オールデン』の代名詞的存在ともいえるモディファイドラスト。内振りのカーブを描くシルエットに加え、内側のくるぶしが靴に当たらないように設計されたモディファイドラストは、極上の履き心地と美しさを兼ね備えた木型として知られています。一度見てみれば、医療分野だけでなくファッションシーンでも高い人気を獲得している理由がわかるはずです。
世界最高のコードバンを作るタンナー、ホーウィン社と『オールデン』の蜜月関係
そして『オールデン』の靴といえば真っ先に思い浮かぶのが、“革のダイヤモンド”と名高いホーウィン社のシェルコードバンを使用したアイテムでしょう。しかし、時代の変化によって農耕馬が減った現在は原皮の確保が難しく、コートバンの希少性は高まる一方。特に靴の製造には大判で厚みのある革が必要となるため、各社ともコードバンの確保に難儀しています。しかし、そんな状況下でも『オールデン』が良質なコードバン製の靴を作り続けられるのは、その歴史に秘密があります。実は60年代にホーウィン社が倒産の危機に直面した際に『オールデン』が一括で2年分の革を買い上げるなどの援助を行ったことがあり、当時のことをホーウィン社は恩義を感じているのだとか。そのため、今でもホーウィン社は高品質なコードバンを優先的に『オールデン』に卸し続けています。また、『オールデン』では“アーサーチェック”といって社長直々にコードバンの品質チェックを行っています。それほどまで品質に一切の妥協なくコードバン製の靴を作り続けることができているのは、ホーウィンと『オールデン』という、アメリカの老舗同士の粋な結束があるからなのです。
その作りから“一流”。『オールデン』のコードバン靴が放つ魅力とは
もちろんその歴史だけでなく、プロダクトとしてもメンズを強く惹きつけるのが『オールデン』のコードバンシューズ。他ブランドでは味わえない唯一無二の魅了の源がどこにあるのか、3つのポイントから探ってみましょう。
魅力1
“革のダイヤモンド”と称される美しいツヤ感と経年変化
現在では原皮の入手からなめし、仕上げまで一貫してコードバンを作っているのは、日本の新喜皮革とアメリカのホーウィン社のみといわれています。ホーウィン社のシェルコードバンは、しっかりと厚みがある革をアニリン仕上げすることによる透明感のあるツヤと、たっぷりと油分を含んだしなやかさが特徴であり魅力。一般的にコードバンは硬めで伸びにくい革であり、縦方向に繊維が並ぶ構造であるため釣り込み時に裂けやすく、靴を作りやすい革ではありません。しかし、しなやかなシェルコードバンは立体的に仕立てやすく、油分を多く含んでいるため雨にも強いなど、靴作りに向いた特性を備えています。また、履き込んだときのシワも大きくうねるように刻まれ、独特の透明感と相まって唯一無二のオーラを放ってくれるのです。
魅力2
堅牢な作りでも足にフィットする、『オールデン』独自のラスト
コードバンに加えて、『オールデン』の強みといわれているのが多様なラスト。元々オーダーメイドシューズ作りから始まっている同社だけあり、履き心地に定評があるのはいうまでもありません。しかし、足型にフィットするラストとサイズを知ることで、より極上の歩き心地を手に入れることができます。ウエスト部分が絞り込まれたモディファイドラストや、幅広でぽってりしたトゥが特徴のバリーラスト、シャープなシルエットが特徴のアバディーンラストに、軍靴に使われていたミリタリーラストなどが有名どころでしょう。甲が低めなミリタリーラストはハーフサイズアップで履いたほうがフィットしやすいなど、ラストごとに最適なサイズが異なるため、初めて挑戦するラストは試着したうえで購入することをおすすめします。
魅力3
レア仕様の別注で、自分だけの1足が手に入る
創業地であるミドルボロウに自社ファクトリーを有していることもあって、世界各国のセレクトショップから別注を受け付けているのも『オールデン』の特徴。“世界一美しいオールデンを作る”と名高いフランス発の名店『アナトミカ』の別注モデルや、日本未上陸のモデルなど、掘り出すとキリがないほど。なかには傷のない原皮の確保が難しいためホーウィン社がほとんど製造しないことで知られるレアカラーのウィスキーコードバンを使ったアイテムや、『ユナイテッドアローズ』のみが使用できるトムラストを使った別注モデルなども存在しており、多彩なバリエーションの中から他人と被らない傑作を見つけ出すのも楽しみの1つといえるでしょう。
コードバンの『オールデン』といえばまずコレ。プレーントゥの「990」を押さえるべし
『オールデン』の中でも最初に選ぶ1足であり、最後に戻ってくる1足といわれるのがこの「990」。数ある木型の中で、最もベーシックでアメリカ靴らしいボリューム感のあるシルエットを備えつつ、日本人の足型にも合いやすい形状のバリーラストを採用した外羽根式のプレーントゥです。そのシンプルな造形は、コードバンのツヤを楽しむのに最適。デイリーに履きこなせる懐の広い靴でありながら、コードバンならではの気品が装いを格上げしてくれます。
そして「990」の驚くべきポイントは、最高級のシェルコードバンをたっぷりと使いながらもヒール部分以外に継ぎ目のない一枚仕立てで作られているところ。これにより、履き込むにしたがって親指の付け根から平行にシワが入ったときに筆舌に尽くしがたい美しさを描くのです。美しいシワを作るため、履き始めの際にあらかじめ棒を使ってクセをつけるなんて人もいるほどです。
そして「990」をはじめとした『オールデン』の靴の多くはアウトステッチがぐるりと1周するオールアラウンド・グッドイヤーウェルト製法で仕立てられています。それによりヒールとアッパーの一体感が生まれ、安定した履き心地を実現しています。また「990」ではL字のストームウェルトを使うことで防水性を高めつつ、武骨なルックスのコバに仕上げている点も魅力です。
心して履きたい。『オールデン』珠玉のコードバンシューズ5選
「990」でコードバンの魅力を知った人は、きっと他のモデルも気になってくるはず。ここでは『オールデン』の代表モデルの中から、コードバンを使用したアイテムをご紹介します。
アイテム1
987
アイビー御用達として知られるペニーローファーの最高峰「987」。こちらも仕様やラスト違いで、『ブルックスブラザーズ』や『ラルフローレン』のために『オールデン』が作り続けてきた定番のスタイルです。その最大の特徴が針を貫通させずに革の内部に糸を通す、スキンステッチ(ブランドはハンドステッチと呼称しています)で施されたモカ縫い。ただでさえ難しいスキンステッチをコードバンに施すのは至難の業であり、『オールデン』の中でも限られた職人しか行うことができない超絶技法なのです。
アイテム2
M6906H
アメリカ軍のオフィサーシューズ用として1900年代に開発されたミリタリーラスト。同ラストを使用したレースアップブーツの「M6906H」も、『オールデン』を代表する名靴です。“タンカーブーツ”の通称でもお馴染みであり、ブランド中で最も武骨なモデルといえるでしょう。ちなみにタンカーブーツと混同されがちなインディーブーツ(その名の通り映画『インディ・ジョーンズ』で主人公が履いたことで有名なブーツです)は、プランテーションソールとトゥルーバランスラストを採用したレースアップブーツ。なお、基本的にインディーブーツはクロムエクセルとカーフのみのラインアップですが、たまにコードバン仕様で別注されることもあります。そちらも気になるなら、マメにチェックをしてみてはいかがでしょう?
アイテム3
563
こちらは『オールデン』が作り、『ブルックスブラザーズ』が広めたタッセルローファーの「563」にコードバンを使用した1足。「987」などのペニーローファーはカジュアルな印象が強いものの、こちらは細身なアバディーンラストと相まって軽快ながらもドレッシーな佇まいを備えています。元々宮廷用の室内靴がモデルになっており、アメリカでは“弁護士の靴”としても知られているフォーマルな靴のため、ビジネスシーンでも活躍してくれる1足です。
アイテム4
1339
「990」と並んで、いえ、もしかすると実は「990」よりもコードバンの魅力を堪能できるかもしれない靴が、こちらの「1339」チャッカブーツ。2アイレット&アンクル丈のシンプルなスタイルにたっぷりとシェルコードバンを使用しており、アッパーのみならずシャフトでもシワ感を堪能することが可能です。バリーラストらしいぽってりとしたシルエットもサービスシューズ然とした趣を備えており、カジュアルからフォーマルまで幅広いスタイルにフィットしてくれます。
アイテム5
54321
「990」と並んで代表作に数えられるのが、モディファイドラストを使用した「54321」ことVチップ。ウエストがグッと絞り込まれたグラマラスなルックスは一見すると履きにくそうですが、実はさにあらず。モディファイドラストの魅力を広めた立て役者である『アナトミカ』のピエール・フルニエ氏に倣って土踏まずのカーブがぴったりとフィットするようなサイズ選び(=アーチ・フィッティングと呼びます)を行うことで、『オールデン』の中でも屈指のフィット感を堪能できることでしょう。
カジュアルにも、トラッドにも。男の着こなしに渋みを与える『オールデン』の活用例
フォーマルな佇まいながら、どこか気の置けないカジュアルさや男らしい武骨さを兼ね備えているのがアメリカの紳士靴の魅力。そのためカジュアルな装いからトラッドなコーディネートまで幅広い服装にマッチするのが魅力です。米国靴の最高峰である『オールデン』を使ったカジュアルとトラッドの着こなしをチェックしてみましょう。
着こなし例1
程良く抜け感のあるアメトラスタイルに、説得力を大幅プラス
紺ブレではなくネイビージャケットを選んだり、トレンド感のある太めのボトムスを合わせたりすることで定番のカラーリングに抜け感をプラス。そんな今どきアメトラ感も漂うコーデに、美しいシワの入ったキャップトゥスタイルの『オールデン』がしっかりマッチ! 足元のワンポイントながら放たれる凄みは、同ブランドならではでしょう。
着こなし例2
正統派アイビーのカジュアルコーデの引き締め役に
『バラクータ』の「G-9」にプルオーバーシャツ、テーパードのかかったホワイトの綿パンをセット。さらに『オールデン』のコインローファーを合わせることで、アイビーど真ん中のスタイリングに仕上げています。一般的にローファーは着こなしの“抜け”に使われるアイテムですが、アッパーのスキンステッチが上品な面持ちを見せる『オールデン』のそれは、ラストの美しいシルエットも相まって別格。頻繁に別注を行い、アメリカンスタイルを提唱する『ビームス プラス』のスタッフらしい『オールデン』の特性を理解したコーディネートです。
この記事の掲載アイテム一覧(全5商品)
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『オールデン』 987
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『オールデン』 M6906H
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『オールデン』 563
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『オールデン』 1339
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『オールデン』 54321
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