
当時を知る世代だからこそ特別な、イエローブーツの限定品
1990年代初頭。部屋に鎮座していた大型ラジカセのラジオから流れてきたのは、重低音の効いたビートに流れるような話し言葉の乗った耳慣れない音楽――。日本におけるヒップホップミュージックの第一波が押し寄せてきたのがちょうどこの時代だ。そのカルチャーはすぐにファッションにも影響を及ぼし、いわゆるBボーイ系と呼ばれるダボダボのファッションに身を包む若者が街にあふれかえった。そしてその足元として定番だったのが、『ティンバーランド』の通称「イエローブーツ」。“おしゃれな人の履いているブーツ”の代名詞となったこの1足を求め、当時お年玉をかき集めながら店を探しまわったという読者諸兄も少なくないだろう。
そんな90年代の思春期を懐かしく回帰できる世代にとって特別な存在である『ティンバーランド』からビッグニュースが舞い込んできた。今年で「イエローブーツ」が誕生45周年を迎え、その記念としてアニバーサリーモデルがリリースされるというのだ。我々にとって馴染みのある質感の良いヌバックレザーや厚めのラバーソール、タフなステッチワークやアイコニックな6ホールスタイルといった発売当時から変わらないディテールはそのままに、履き口やシューレースに45周年のシンボルカラーである“ダークサファイア”を用いてモダンにリミックスした特別な1足だ。そのダークサファイアカラーで用意されたハンドタグやシュータンには記念イヤーの刻印がなされ、スペシャルなムードをさらに引き立てている。
若かりし頃は生まれた背景やその用途などは考えもせず、ただただ格好良いブーツという感覚で魅了されていた「イエローブーツ」。実はアウトドアでの用途に重きを置いた完全防水仕様のレザーブーツとして誕生し、長きにわたるブーツメイクの経験を生かして素材やスタイルを向上させてきたという、歴史に根付いたプロダクトとしての完成度の高さを誇っている。だからこそ、アウトドアレジャーや子供連れでの水遊びなど、大人になった今こそ履きたくなる存在であるわけだ。そして、これまでの歴史を味わえる特別仕様となれば、すぐにでも手に入れたくなるだろう。ポチ袋ではなく自分の財布から購入する、その姿も大人になった証として格別に感じられるに違いない。
Text_Daisuke Kobayashi
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