川と街の垣根を越える。日本産アウトドアブランドの新ラインに興味津々
山と街。まったく違うフィールドだが、歴史をたどればアウトドアがファッションシーンに及ぼしてきた影響は小さくないことがよく分かる。もはやダウンアウターは真冬のマブダチで、クライミングパンツも今となっては休日の頼れる相棒。でも、さすがに「釣り」は難しいかもしれない。専門性の強さがアダとなり、ディテールをそぎ落とせば“らしさ”を失い、そのまま着てはコスプレになってしまう。そんな高き垣根を飛び越えようとしているのが『フォックスファイヤー』である。
『フォックスファイヤー』は、1982年創業の知る人ぞ知る日本産アウトドアブランド。自然との共生をテーマにアウトドアクロージングやギアを展開してきたが、今秋、街での着用も視野に入れた新ライン「スプルースライン」を世に送り出す。ファーストシーズンでは同社を象徴するオールラウンダーベストもスタンバイ。設立当時に採用されていたカモ柄を裏地にあしらい、釣り具としての意匠を落とし込みつつも、スマートとさえ思える現代的なカッティングにリファイン。街でも生かされるようにデザインされている。またバックヨークにあしらわれた起毛感のあるスエードの切り替えも、上質な雰囲気を静かに伝える。
とにかく「逃した魚は大きかった」と嘆く前に、一度手に取ってみてはいかがだろう。モダンでありながらもしっかりオーセンティックなその姿が、貫禄と味わいをもたらしくれることが分かるはずだ。こんなアイテムが、長きにわたりワードローブに定着していくような気がする。手に入れたならばやはり、リリースはご法度だろう。
Text_Ryo Kikuchi