
レトロダッドなアーカイブに、近未来の空気を宿して
東京・上野を拠点にして日本、ひいては世界のスニーカーシーンを牽引する「ミタスニーカーズ」と『プーマ』とのコラボモデル「セルヴェノム“ステルス”」がゲリラリリースされた。その趣きは、どことなくトレンドの1990年代を彷彿とさせながらも、単なるダッドスニーカーとは一線を画すクールで洗練された仕上がりとなっている。
『プーマ』が1990年代にクッショニングテクノロジーとして開発した「CELL」を搭載し、体内に“VENOM(=毒液)”を持つ昆虫をデザインソースにした「セルヴェノム」は、1997年に長距離ランナー向けのトレーニングシューズとして登場。それまでのモデルよりも安定性と耐久性が飛躍的に向上したうえに、1990年代を象徴するヒップホップグループ「ウータン・クラン」のメンバー、ゴーストフェイス・キラー氏が着用するなど、当時はスポーツシーンだけでなくタウンユースとしても高い評価を獲得し、ファンを魅了した。
今回のコラボモデルには、そんな「セルヴェノム」をベースに、存在を探知することができない軍事技術「ステルス」から着想を得たというデザインを各所に散りばめている。トゥガードにプリントされた「ミタスニーカーズ」のロケーションコードを、日本人だけが読めないフォントと言われるエレクトロハーモニクスであしらったのもその1つだ。また気になるボディは、トーンの異なるグレーをグラデーション状に配しながらミッドソールに斑点模様を施し、細部に蛍光グリーンを散らしてアクセントにした洗練のカラーリングが目を引く。
素材にはマットな質感のヌバック、通気性に優れたメッシュ、耐久性のあるシンセティックレザーを組み合わせることで、ソールユニットだけにとどまらずアッパーでもデザイン性と機能性を融合。まさに半歩先をいく逸足へと仕上げられている。
Text_Yasuyuki Ouchi