海でも空でも、もちろん陸でも。そんなタフウォッチに憧れて
逆境に強い。これは、誰もが憧れる人物像の代表的性格だろう。ピンチでこそ力を発揮するヒーロー性や圧倒的なタフネスは、実に魅力的だ。そしてそれは、腕時計であっても同じ。防水性能の高いダイバーズや視認性に優れたパイロットウォッチなど、過酷な環境でも耐え抜くタフな1本にこそ、大きなロマンを抱く人も多いはず。
そんな腕時計の中でも、今作は少々異彩を放っている。手掛けたのは『エドックス』。「クロノオフショア1」「グランドオーシャン」「デルフィン」といった傑作ダイバーズで名高いスイスの老舗は、防水性能を大きく左右するリューズのダブルOリングを開発するなど、海中における腕時計の機能性の発展に大きく寄与したことでも知られる。その抜群の信頼性をうけ、スイス軍の依頼によって作られたのがこの「スカイダイバー」だ。名前通り、単なるダイバーズではない。パラシュート部隊のために作られた、空の性質も備えた時計なのだ。空から飛び立ち、海へ山へと着陸するパラシュート部隊は、それこそ戦う場所を選んではいられない。彼らの要望に沿って作られた腕時計もまたしかり。つまりは頑丈で、視認性や操作性、防水性能に優れたポリバレントプレイヤーたる、この上ない証左となるだろう。しかも、当時のスイス軍からの作製依頼は軍事秘密。たまたま工場の書物庫でデザイン画が見つかったおかげで再び世に出たという逸話付きだ。さらにはブランドの創業135周年を記念する555本限定というのだから、ロマンに通ずる付加価値がありすぎて逆に困ってしまう。
ちなみに、「スカイダイバー」は前述のリミテッドエディションのほかにも、デイト表示を備えた自動巻きの「スカイダイバー デイト オートマチック」、クォーツムーブメントを積んだ「スカイダイバー デイト」、同じくクォーツでストップウォッチ機能を備えた「スカイダイバー クロノグラフ」がスタンバイ。オーセンティックなケース、スーパールミノバを塗布したインデックスなど基本デザインは変わらないものの、内部構造や機構によってバリエーションを持たせているのだ。この点においても、実にポリバレントなモデルと捉えられるだろう。空でも海でも頼れるタフウォッチは、シンプルな見た目と幅広い選択肢によって街でも使える汎用性も手にした。逆境に強いどころではない大活躍ぶりを、期待せずにはいられない。
Text_Naoki Masuyama
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