トレンドの旨みを総取り。スピニカーが見せた高コスパダイバーズの新次元
年の瀬にはまだ早いが、2019年の腕時計市場を振り返ってみると脱シンプルの流れが顕著であったように思う。挙げたいキーワードは、「ダイバーズ」「機械式」「ヴィンテージ」。いずれも腕時計に玄人感や“知っている感”、うんちくを求めるような男性の物欲を刺激する要素だ。この傾向はいわゆる高級腕時計ブランドに始まり、夏ごろにはカジュアルなプライスの腕時計まで広く浸透。特にダイバーズウォッチの隆盛は目を見張るものがあり、保守的な腕時計トレンドにおいて久々に大きな動きを実感できた。
そんな今年を象徴するような、「この手があったか!」とひざを打ちたくなる腕時計ブランドが日本に上陸した。古き良きヴィンテージダイバーズの名作を彷彿とさせる顔立ちに、イタリア発らしい洗練された配色。そこに信頼性の高い日本製の自動巻きムーブメントを搭載した、まさに2019年の注目キーワードを網羅するブランド『スピニカー』である。
『スピニカー』が代表作「ブラッドナー」で表現したのは、1950~60年代に採用されていたコンプレッサースタイルのダイバーズウォッチ。これは水深が深まるほどにかかる水圧を利用して腕時計の密閉性を高める、なんとも革新的な機構を搭載した腕時計だ。また、コンプレッサースタイルの腕時計は防水性能を高めるために回転式スケールも風防の内側に格納している。専用に配置されるリューズによりスケールが回転するさまには、腕時計愛好家でなくとも心くすぐられるものがある。
ただデザインが珍しいというだけではない。今作「ブラッドナー」は、どれも3万円台。日本製の自動巻きムーブメントを積んでいるというだけでも十分価値はあるのだが、そこに+αの価値を付与するコストパフォーマンスの高さも『スピニカー』の強みだ。
まず、風防はサファイアクリスタルガラス。汎用性の高いアクリルガラスと比べて加工が難しい反面対傷性が高く、高級腕時計によく見られる素材だ。特にヴィンテージの空気を演出するために欠かせないドーム型への加工はコストが高く、この価格帯の腕時計で取り入れているブランドは希少といえる。また、ダイバーズウォッチとしての機能もきちんと踏襲されており、針やインデックスには暗闇で光を放つスーパールミノバを塗布。リューズはねじ込み式を採用し、18~20気圧防水を実現した。付属のレザーストラップにもウォータープルーフ加工が施されているなど、細部までぬかりはない。
ちなみに、ブランド名のSPINNAKERとは、追い風を受けてヨットを前進させる三角形の帆のこと。そういわれてみれば確かに、リューズにも風を受けて膨らむ“スピニカー”の雄々しい姿が描かれている。こと日本上陸の年となる2019年においては、ウォッチトレンドという追い風を受けて大きく躍進するであろう『スピニカー』。しかし、腕時計初心者にもやさしいプライスと玄人をうならせる徹底した作りこみを両立させる手腕を見れば、翌年以降も業界の荒波を果敢に乗り切っていくであろうことは想像に難くない。
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