
履く喜びを教えてくれる、日本人のための国産革靴ブランドがある
良質なブランドは数あれど、真に日本人の足を満足させる革靴は実はとても貴重だ。大人の審美眼を満たしつつ足を通すことが楽しくなる。そんなブランドが、浅草にあった。
我々の足元には結局、国産革靴ブランドが1番似合う
イギリスやイタリアなど製靴業に歴史を持つ国のブランドは、やはり憧れだ。高いステータス性に惹かれ、清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったインポート靴が、TASCLAP読者諸兄の靴棚にも1足や2足は眠っていることだろう。だが、そんなブランドを履けば履くほど気付くのが、自分の足と靴の間に生じる違和感。それらは「足幅がキツい」、「甲が圧迫される」といった痛みとしても表れてくる。
我々の足は欧米人と比べ、甲高幅広でかかとが小ぶりだといわれている。個人差があるためひとくくりにはできないが、幅広の“Eウィズ”以上を採用する日本ブランドが多いのには理由があるのだ。だからこそワードローブに1足、日本人の足を知り尽くしたジャパンブランドの靴を用意しておきたい。それがルックスだけでなく、長く愛用できる確かな作りを持ち合わせているなら言うことはない。
TASCLAPが東京は浅草で出会ったのは、そんな希望を叶えてくれるファクトリーブランド。靴職人の聖地において一目置かれる老舗メーカーが、満を持して立ち上げた『ブラザーブリッジ』だ。
日本人による日本人のための革靴。『ブラザーブリッジ』を知っているか
数多の著名ブランドのOEM生産を請け負ってきた生産背景を生かし、厳選された素材と匠の手仕事にこだわった靴作りを行う『ブラザーブリッジ』。自社で工房を有し、主軸であるワークブーツを中心にドレスラインまで広く展開を行うブランドだ。懐古的なデザインに独自開発の近代的な技術を掛け合わせたハイブリッドなモノ作りは、靴好きの間ではすでに話題に。ファクトリーブランドらしく価格も現実的で、他社なら倍額はするところを実用靴の範疇に収めている点には頭が下がる。グッドイヤーウェルト製法へのこだわりも強く、長く愛せる靴を探しているならまさに適任のブランドといえるだろう。
古き良き見た目と技術の調和。『ブラザーブリッジ』で手に入れたい3モデル
百聞は一見にしかずという言葉もある。同ブランドの技術に関しては、実際のシューズを紹介しつつ解説を行おう。ここからは『ブラザーブリッジ』のシューズ&ブーツを、2つのラインに分けてピックアップする。
▼“品”と“実”の融合。古き良き時代に敬意を表する「ワークドレス」ライン
現代に生きる我々が美しいと感じる靴のデザインは、1900年代初頭に完成されていたと『ブラザーブリッジ』は考える。当時のワークシューズやオフィサーシューズ、ワークブーツに敬意を表してデザインされた「ワークドレス」ラインには、そんな思想を反映した質実剛健な紳士靴が揃っている。
1足目
品格と剛健さの融合。「モーガン」はドレス靴の新機軸
フォーマルさもありつつ、どこかストレートチップやプレーントゥにはない色気を感じさせる靴としてVチップシューズはいつの世も大人の男性から高い支持を得てきた。つま先の空間を広く取り、ゆったりとした履き心地を叶えるトゥ部分のセンターシーム。そこに文字通りシャープなラインを描くV字のエプロンをかぶせた靴は、オンもオフもカバーする高い汎用性を有している。
『ブラザーブリッジ』ではVチップの男性的な色気を損なわないフォルムを維持しつつ、土踏まずにゆとりを持たせた快適なラスト(木型)を開発。写真のモデル「MORGAN」に足を入れてみると、ドレスにも通用する洗練されたルックスと豊かな履き心地のギャップに驚かされるはずだ。アッパーの肉厚なカウレザーは足馴染みも良く、半張りされた工房オリジナルのラバーソールはデイリーユースでの利便性を高めてくれるなど実用面も申し分ない。
2足目
自然なホールド感と、無理のないエレガンスが心地良い「ハリー」
比較的カジュアルな装いに似合う靴として分類されるローファー。“Loafer=怠け者”の言葉が示すように、着脱に手間取らない気軽さが特徴だ。ただし靴紐がない分、足へのフィットに関しては融通が利かない。ハイブランドのローファーを手に入れたは良いが、足に馴染まず泣く泣く手放した……、という失敗は誰しも通る道だろう。
だが『ブラザーブリッジ』の「ハリー」はひと味違う。ポイントは日本人の小ぶりなかかとに合わせて成形したヒールカップと、フィット感を重視した無駄のないラスト(木型)。足の甲までアッパーが覆う深めの足入れも手伝い、土踏まずで足をしっかりホールドしてくれるのだ。加えて、履き心地に配慮しつつもシルエットに野暮ったさは皆無。1枚の革からモカシンを成形する高度な“つまみモカ”に加え、トゥまで緩やかに絞ったエレガントなフォルム、ステッチ1つ取っても実に細やかで、プライス以上の濃密な手仕事と品格を感じさせる。今履いているローファーに不満があるなら、ぜひ試してほしい1足だ。
▼ブランドの真骨頂。武骨なだけではない“格”が漂う「ヘリテージ」ライン
ブランドの本領発揮ともいえるワークブーツ&ワークシューズを展開する「ヘリテージ」ライン。どこまでも実直な作りながら、現代的なテクノロジーが内に潜む『ブラザーブリッジ』のハイブリッドさを実感できる。
3足目
趣味に興じる大人のオフには、「ビダソア」の適度な重厚感が心地良い
『ブラザーブリッジ』において定番に位置する「ビダソア」。オーセンティックな顔立ちのアンクルブーツで、裁断面の革の肉厚さを見てもらえばいかにタフな1足かはわかってもらえることだろう。しかも、履き込むうちに塗料の下から革の芯地が覗く“茶芯”を採用。アメカジ好きにはたまらない、“実にわかっている”モデルだ。
そんなワークブーツの王道ともいえる同モデルだが、足に血がにじむようなタフな履き心地まで再現していない。足首をソフトに包み込むクッションを履き口とタンにあしらい、人間工学に基づいて設計されたオリジナルのインソールをセットすることでルックスを良い意味で裏切るフィッティングを実現しているのだ。このインソールには足裏の負荷を効率よく分散する3点自立の鼎(かなえ)構造を採用しており、はずむような快適な歩行を叶えてくれる。ブーツなのにまるでスニーカーのような、新感覚の履き心地はやみつきになること請け合いだ。