2人のプロが魅力を語る。男はなぜ、カーキ フィールド メカに惹かれるのか
ミリタリーウォッチの王道として君臨する『ハミルトン』の「カーキ フィールド メカ」。不朽の名作たる所以、その魅力に2人のファッショニスタを交えながら迫ります。
ファッショニスタに愛され続ける、「カーキ フィールド メカ」とは
正確な計器、ロマン、アート性、アクセサリーとしての感覚。腕時計の魅力にはさまざまな側面がありますが、米国発のウォッチメーカー『ハミルトン』のそれは、高い実用性とデザイン性に重きを置いています。特に1940年代に米国陸軍に供給された軍用時計をルーツとする「カーキ フィールド メカ」は、歴史的観点から見ても特別な1本。無駄のないフェイスデザインとタフな設計は、まさしくミリタリーウォッチのど真ん中を捉えています。当然ファッション関係者からも高い支持を獲得。世界初の電池式腕時計「ベンチュラ」とともに、長らく『ハミルトン』の二大看板を形成してきました。
今回は、そんな「カーキ フィールド メカ」より2019年に発売されたモデルをいくつかピックアップして、腕時計のみならずファッションの酸いも甘いも味わってきた二人にインタビュー。セレクトショップの雄『ビームス』の敏腕プレスとして幾多の名品に触れてきた日高正幸氏と、有名誌やブランドのスタイリングを数多く手掛けてきた人気スタイリスト・菊池陽之介氏。異なる立場の二人の目にこれらの新作群がそれぞれどう映るのか、お話を伺ってきました。
まずはおさらい。ミリタリーウォッチの完成形「カーキ フィールド メカ」の現在
1892年にアメリカはペンシルベニア州で誕生した『ハミルトン』。彼らの作る腕時計は鉄道時計として名を馳せたのち、航空用時計・軍用時計として地位を確立していきます。今作「カーキ フィールド メカ」は、第二次大戦中にアメリカ陸軍へと支給された由緒正しき軍用時計、通称“ハックウォッチ”がオリジン。リューズを引くと秒針が止まる当時画期的な時刻調整機能から、戦地で時刻合わせを行う際の「ハック」という掛け声にちなんで名付けられた名品です。無駄のないシンプルなケース、視認性に優れたフェイス、高精度な手巻き式キャリバーなど、軍用時計として必要十分な機能性は現代の「カーキ フィールド メカ」にも受け継がれています。
名作にして完成形。そんな「カーキ フィールド メカ」ですが、現在においてもさまざまなバージョンアップが図られ、進化し続けています。古き良きデザインは生かしながらも、ムーブメントを改良して約80時間ものロングパワーリザーブを備えるなど内面もアップデート。また、新作ではストラップやダイヤルに多くのバリエーションが投下され、新規ファンを獲得することも忘れてはいません。だからこそ、ミリタリーに軸足を置くラギッドな「カーキ」コレクションの中にあり、シグネチャーモデルとして抜群の存在感を放っているのです。
『ビームス』プレス・日高氏が語る「カーキ フィールド メカ」という腕時計
「まず“カーキ”でしょ」。日本を代表するセレクトショップ『ビームス』のプレスを務める日高正幸氏は、約20年前の入社当時にそう教わったといいます。今では「ベンチュラ」を身に着けることも多いという敏腕プレスは、「カーキ フィールド メカ」の最新形をどのような目で見るのでしょう。
「個人的な好みでは、オリジナルの良さをいかに薄めないかが大事。その視点で新作を見ると、外見は大きく変えず、中身に絞ってアップデートしているのが好印象です。ミリタリー由来の男っぽいデザインと、『ビームス』の原点でもあるアメリカンカルチャー。それらを体現した1本は、今見てもまったく色褪せませんね」。
細部まで妥協せず無駄もないデザイン。この潔くタフな設計に、「モノとしての愛着が湧く」と目を細める日高氏。「ミリタリーウォッチであればなんでもいいというわけじゃない」からこそ手に取ったのは、もっとも原型に近い黒文字盤の1本。背景を感じさせるディテールに、“ならでは”の魅力が詰まっています。
「秒針ハック機能やシンプルな文字盤、蓄光塗料が塗布された針。軍用としてのスペックを突き詰めた結果、今ではそれらが“アジ”となり、ひいてはロマンにつながっているんだと思います。いわば本物のミリタリーウォッチ。その文脈からいっても原型を変にいじらないことが重要。それが実際に今、スマートに見えますから」。
オリジナルの完成度を讃える一方で、自分なりにカスタム可能であることも「カーキ フィールド メカ」の良さだとする日高氏は、ストラップの変更にも意欲的。タフかつ容易に付け替え可能なNATOストラップのカスタム性に、改めて心惹かれているようです。
「新作ではイタリアンレザーを使ったNATOストラップモデルも発表されましたが、自分好みに付け替えができる仕様は非常にありがたいです。コーディネートや季節に応じて見た目が変えられるのはもちろん、男心くすぐる拡張性というか、自らカスタムする感覚はやっぱり楽しい。古き良き王道を、あえて現在進行形の自分だけのモノにしていく。それも1つのロマンだと思っています」。
「カーキ フィールド メカ」は、自ら巻き上げる必要のある手巻き式のムーブメントをあえて採用。 自動巻きに比べて手間がかかりますが、それが逆に嗜好性と愛着を高める要素にもなっています。
「放っておくと止まってしまう手巻き式腕時計は、忙しい日常をリセットするという意味で実に現代的な役割を果たすと思っています。男っぽい“メカ”なニュアンスも、僕はたまらなく好きですね。しかも、シンプルな「カーキ フィールド メカ」は、手でリューズを巻く仕草すらサマになる。この時計にまつわるさまざまな機構やロマンを含めて、コミュニケーション作りのきっかけになると思うんです。『その時計、手で巻くんだ?』とかね」。
最後に、日高氏による「カーキ フィールド メカ」を使用したコーディネートも披露してもらいました。アメリカントラッドな装いの中で、オーソドックスなミリタリーウォッチがしっかり主張しています。
「全体の雰囲気から開襟シャツ、グレースラックスといったアイテム選びまで、「カーキ フィールド メカ」にふさわしい古き良きアメカジをテーマとしました。とはいえ、シンプルなだけに幅広いコーディネートに対応するのがこの腕時計の強みだと思います。モノとして唯一無二の存在感を放ちながら、日常にスマートに溶け込んでくれる。だから今までも、そしてこれからも長く愛されるんでしょうね」。
スタイリスト・菊池陽之介氏が語る「カーキ フィールド メカ」のファッション性
多くの媒体でスタイリングを手掛ける菊池陽之介氏もまた、「カーキ フィールド メカ」の愛用者。10年程前に購入して以来、「新作が出たら常にチェックしています」と進化を目の当たりにしてきました。この日はカーキのトータルコーデの中で、ベージュのストラップを纏った私物をチョイス。
「腕時計からコーディネートを組むことは普段ありませんが、説得材料として装いに深みをもたらしてくれる1本は貴重です。「カーキ フィールド メカ」はその意味で頭1つ抜けています。シンプルだけど、歴史やディテールにおいて雄弁。身に着ける人の趣味嗜好、はたまた人格まで表現してくれるような心強さがあります」。
「カーキ フィールド メカ」の新作群をチェックしながら、イタリアンレザーのNATOベルトモデルに目を留めた菊池氏。爽やかな白文字盤も相まって「これまでの武骨なイメージとは趣が変わり、よりファッション性が高く見えます」と高評価だ。
「見た目の印象が軽くなって、より手に取りやすくなった感じです。元のデザインがオーソドックスな分、無理なくアレンジが効くんでしょうね。ミリタリーウォッチの佇まいは残しながらも、色味的にきれいめなスタイルにすんなり馴染みそう。ハードに使えるタフウォッチだからこそ、質感の良いレザーを使っていて使い込むほどに経年変化が期待できるのもうれしいポイントですね」。
では実際に、どうコーディネートに組み込むのか。「従来のモデルはアーバンアウトドアや旅といったキーワードと親和性が高いと思っていました。ですが、この新作は少し雰囲気が異なりますね」と菊池氏。ホワイトダイヤルとレザーストラップの上品なコンビネーションに、新たな可能性を見出していました。
「腕時計と服の組み合わせは、基本的にカラーリングをマッチさせることがベースになります。とはいえこのモデルはルーツとして“アメリカ”が強く香りますから、ワークやトラッドなど、都会的なアメカジに合わせてみたくなりますね。デニム地との相性はいいでしょうし、ジャケパンなどの軽いビジネススタイルにも使えそうです」。
▼「カーキ フィールド メカ」を、オンとオフで使いこなすなら
ここからは、スタイリストの菊池氏による着こなし提案。品良く生まれ変わった新しい「カーキ フィールド メカ」を軸に、オン・オフそれぞれのコーディネートを作ってくれました。
オンで取り入れるなら
ワントーンの中に異素材でリズムを生み出したビジカジスタイル
レザーストラップのブラウンと相性の良いネイビーのスーツ。まずは基本となる色合わせを重視しつつ、他のアイテム選びにさらなるポイントが潜んでいました。「ネル素材のシャツ、ウールタイ、スエードの靴にキャンバスコットンのバッグなど、質感の異なる素材を組み合わせることで、レザーストラップの持つ風合いを相対的に強調しました」。
オフで取り入れるなら
文字盤の白で、抜け感と大人っぽさを際立たせたアメカジスタイル
こちらは上質なニットとタフなジーンズで、大人のアメカジを体現しました。グレー&インディゴの色味を温かみのあるブラウンレザーが支え、さらには随所に挿した白がアイキャッチ的な役割を果たしています。「白いTシャツやソックスを挿すイメージで、白の文字盤でも抜け感をプラス。腕元のポイントは目に留まるので、地味に効いてくるはずです(笑)」。
時計史に名を残す『ハミルトン』のオリジンに、今、もう一度触れてみる
腕時計の枠を飛び越えた、ファッションアイテム以上の存在。二人の“カーキ愛”からは、そんなメッセージが感じ取れることでしょう。2019年の新作群には日高氏、菊池氏が手に取った2本以外にも、ベルト違いのモデルや上の写真にあるアースカラーPVD加工をケースに施したモデルもラインアップ。特に後者はより強くミリタリー感をあおるグリーンダイヤルを採用しており、「カーキ」シリーズに男らしさを求める人にはうってつけの1本に仕上がっています。
時代性や背景を大切にしながらも、進化の道を歩む『ハミルトン』の名品たち。唯一無二の傑作ミリタリーウォッチの未来と展望から、目が離せません。
“メカ”好きに朗報。パイロットシリーズからも手巻きの復刻モデルがお目見え
手巻き、そしてミリタリー。「カーキ フィールド メカ」同様にロマンを感じさせる要素を乗せた「カーキ パイロット パイオニア メカ」が2019年秋に登場します。こちらは、1970年代に英国空軍に愛用された「W10」と呼ばれるモデルの復刻。33mm径のクッションケースにはマット加工が施され、ボックス型のミネラルクリスタル風防もレトロな空気を加速させます。また、ムーブメントには最新の手巻き式キャリバー「H-50」を搭載、約80時間のパワーリザーブを実現しました。ストラップもグレーテキスタイルとブラウンレザー、2種類を用意してスタンバイ! 9月21日(土)から『ハミルトン』公式 オンラインブティックにて先行予約受付が開始されます。
▲スタイリングアイテム
[オン]スーツ99,000円/エストネーション、シャツ25,000円/バグッタ、バッグ79,000円/フェリージ(すべてエストネーション)TEL:0120-503-971、ネクタイ20,000円/アーディ&シー 1956 ミラノ(インターブリッジ)TEL:03-5776-5810、ベルト18,000円/レグロン(エリオポールメンズ銀座)TEL:03-3563-0455、メガネ28,000円/タナゴコロ×ポーカーフェイス(ポーカーフェイス池袋店)TEL:03-5391-8571、ソックス2,700円/アトリエ ベトン(スタジオ ファブワーク)TEL:03-6438-9575、ローファー66,000円/パラブーツ(パラブーツ 青山店)TEL:03-5766-6688
[オフ]ニット25,000円/ラッピンノット、ブーツ27,000円/ヨーク(ともにHEMT PR)TEL:03-6721-0882、インナーカットソー8,500円/アナクロノーム(アナクロノーム コンテキスト ギャラリー)TEL:03-5784-2669、ジーンズ17,000円/アトリエ ベトン(スタジオ ファブワーク)TEL:03-6438-9575、ソックス2,500円/ロトト(ジャーミネイション)TEL:06-6585-9660、サングラス42,000円/アイヴァン 7285(アイヴァン 7285 トウキョウ)TEL:03-3409-7285
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※掲載の金額はすべて税抜価格です
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photo_Yuichi Sugita[POLYVALENT]
interview& text_Naoki Masuyama