30歳になったスカーゲン。変わらなかったこと、変わったこと
2019年で30周年を迎えたデンマーク発の『スカーゲン』。改めて魅力を読み解いてみましょう。なぜ我々は同ブランドに惹かれるのか、その強みに迫ります。
30年間変わらない、ミニマルなデンマークデザインへのこだわり
北海とバルト海の海流が出会う、デンマーク最北端の海辺の町・スカーゲン。ゆったりとした時間が流れ、同国内で1番晴れの日が多いとされるこの町は、芸術の町としても知られています。そんな町と同名を冠するブランド『スカーゲン』が、今年で創業から30周年を迎えました。機能性と品質を重視するデンマークデザインの中にあって、ひときわシンボリックな腕時計を製造。そこには、長年にわたって愛される理由が潜んでいます。
一見してそれとわかるミニマルなルックス。足し算ではなく、引き算で個性を演出する希有な力が『スカーゲン』には存在します。ダイヤルもブレスレットも余計な装飾を省き、一貫してシンプルなデザインを追求。洗練されたスタイルはトレンドに流されず、どの時代のどんな装いにも適応する懐の深さを持ち味とします。それは必要性のある装飾品として、着用者を嫌味なく彩ってくれるのです。
同ブランドの“ミニマル”という外見的特徴は、優れた実用性にもつながっています。こと現代人にとって、腕時計はアクセサリー、または時刻を知るために特化したもの。無駄を省いたウォッチメイキングは、極めて合理的な考え方でもあるのです。複雑な機能がないぶん故障の心配も少なく、快適性も担保。そう考えれば、ミニマルさこそ今の腕時計に必要であるともいえるでしょう。
着用者が快適に、本当に心地良く感じるためには、当然ながらぱっと見のビジュアルアイデアでは不十分です。『スカーゲン』の特徴でもある“引き算による美”がもたらした薄いケース形状は、腕に負荷をかけないために生まれたもの。着けていることを忘れるようなスリムウォッチのやさしさも含めてミニマルにデザインされているのです。また、テーラードジャケットや長袖の裾に引っかからないのも美点。見やすく、扱いやすく、スタイリングの邪魔にならない。そんな魅力を長い期間変えず、ブランドの価値として打ち出しているのです。
普遍的なルックス、シンプルな機能、快適性。ここまで述べた『スカーゲン』の特徴は、なにも男性だけに刺さるわけではありません。事実、ブランド創設当初こそ男性の支持率が高かったものの、今では女性の購入者も増えています。世代や国境、性別を超えて愛されるのも、ブランドが30年続く大きな理由なのです。
“ミニマル=無味無臭”じゃない。“好き”の多様化にフィットする柔軟性
1989年の創業以来変わらず、北欧らしいミニマルさを提唱する『スカーゲン』ですが、それは決してプロダクトが単純であることを意味しません。例えばコペンハーゲン・ニューハウン地区の街並みに着想を得た「アレンカラー」シリーズは、温かみのある色使いが特徴。カラフルかつシンプルな仕立てで、時の楽しみ、装う楽しみを端的に伝える表現媒体となっています。
ラインアップの中には、より遊び心を宿したモデルも存在します。あえて機械式ムーブメントを使ったり、それを眺められるようスケルトンダイヤルを採用したり。最近では心拍センサーやアクティビティトラッキングを搭載したスマートウォッチも手がけています。ミニマルという軸を保ちながら、時代のニーズに合わせて進化することもまた『スカーゲン』の強みなのです。
自分にも、パートナーにも。『スカーゲン』が提案する大人たちの腕時計
男女問わず愛されるタイムレスな腕時計だからこそ、ギフトシーズンの主役にもぴったりです。美しい時計をさりげなく着けた2人は、きっとお互いをより親身に感じるはず。それこそ、デンマーク・スカーゲンの町で巡り会い、美しいコントラストを描く2つの海流のように。
「ペアウォッチには多少の抵抗が」という方におすすめしたいのが、同様のニュアンスをたたえつつも異なるモデルを身に着けること。ともにダイヤルにMOP(マザーオブパール)を使った40mm径の「ハーゲン」と36mm径の「シグネチャー」なら、これ見よがしではない“ちょいペア”気分を味わえます。天然のMOPならではの絶妙なブルーダイヤルの表情も、ペア使いにふさわしいスペシャル感を高めてくれるでしょう。
よりストレートに2人の絆を深めたいなら、同タイプのペア使いを選択肢に。こちらの「グレーネン スリム」は同ブランドのロングセラーモデルで、同名の岬にインスパイアされたゆるやかな流線型のシルエットが特徴。ブルーのサンドブラストダイヤルとブラックレザーという組み合わせは、腕元をエレガントに演出します。こんな“ガチペア”も、ミニマルデザインなら違和感を覚えません。
2人が気に入った腕時計を交互に身に着ける。そんな使い方ができるシェアウォッチもまた、ギフトにうってつけでしょう。『スカーゲン』からは、今シーズンのスペシャルセットとして「アレンカラーボックス」が登場。色とりどりのカラフルストラップが5本セットになり、その日の気分に合わせて付け替えられます。自分でストラップが簡単に付け替えできるのも、快適性を求めてミニマルデザインを追求すればこそ。ここにも、同ブランドの強みが垣間見えます。
これまでも、これからも。『スカーゲン』でおしゃれに、豊かに
シンプルで使い勝手の良い『スカーゲン』の腕時計。そのデザインには、モダンなイメージ演出以上に深い意味合いが込められています。それは、「限られた日照時間の中で、いかに楽しく豊かに暮らすか」という思い。そんな北欧に根付く知恵が、ブランドが提唱するミニマルの源にあります。忙しい我々にとって、まさに考えさせられる腕時計といえるのではないでしょうか? だからこそ30年経っても色褪せず、これからも愛され続けるのかもしれません。
Photo_Keiichi Ito
Text_Naoki Masuyama