デンストンとデンハムがこの冬、進化。ラベンハムの二大定番はどう変わった?
今季、一段とスマートに進化した『ラベンハム』の二大定番キルティングジャケット。同ブランドの魅力を改めて掘り下げながら、どこがどう進化したのかを徹底解説します!
軽くて暖か。大人の味方、キルティングジャケットといえばやっぱり『ラベンハム』
本格的にアウターが必要となる時期はもうすぐそこ。今季もアウターの選択肢は実に多彩ですが、大人っぽい見た目と機能を両得したいなら、キルティングジャケットは確実な一手です。軽くて暖かいうえ、端正な風貌でビジネス使いも余裕なので、これからの時期の装いにおいてこれほど頼りになる存在はありません。
さらにいうなら、やはり選ぶべきは、信頼の置ける品質を誇るリーディングブランドによる1着。そう、例えば英国の老舗『ラベンハム』はその代表格です。50年以上にわたってキルティングアイテムを手掛けてきた同社のアウターなら、安心して身を預けられます。とりわけ、今季アップデートを果たした二大定番モデル「デンストン」と「デンハム」は要注目! これまで以上にスマートな風貌へと進化を遂げており、装いに洗練を呼び込むことができるんです。
改めて知っておきたい。『ラベンハム』ってこんなブランド
キルティングジャケットを代名詞とする『ラベンハム』の生誕地は、ロンドン北東部・サフォーク州にある小さな村 “ラベンハム”。当時エリザベス女王に仕える女官であったミセス・エリオットにより、1969年に創設されました。当初はキルティングを使ったホースブランケットを製造していましたが、1972年に顧客から要望を受け、保温性に優れる乗馬用のキルティングジャケットを発表。1980年代に入ると『ラベンハム』はファッションブランドとして認知されるようになり、1993年にはここ日本にも上陸。そして2002年・2007年には英国産業界の名誉である「クイーンズ・アワード」を受賞しています。
アジアに生産を移す英国ブランドが多い中、『ラベンハム』の製品は現在もすべてMADE IN ENGLAND。サフォーク州のサドバリーにある自社工場にて、厳しい管理体制の下で生産されています。しかも、縫製や仕上げのみならずキルティング生地の製造まで自社で行っているというのだから驚き! そして、さらに特筆すべきは『ラベンハム』を象徴するディテールであるダイヤモンドキルト。上糸には伸縮性のあるナイロン糸、下糸には毛羽立たせたポリエステル糸を使い、ステッチの十分な耐久性を確保。加えて、万が一ほつれた場合でも損傷が最小限で済むよう、写真のようにダイヤモンドキルトの角で糸を交差させているんです。このような高度なステッチ技法は、ブランドの長い歴史が培ってきたものといっても過言ではありません。
より着やすく、今っぽく。『ラベンハム』の定番モデルはココが変わった
今季大幅なアップデートを果たし、これまで以上に魅力の増した「デンストン」と「デンハム」。ここからは、両者に共通する4つの改良ポイントをナビゲートしていきましょう。着心地も今っぽさも飛躍的に向上しているので、冬スタイルの良きパートナーとなってくれること請け合いです!
▼ポイント1:パターン刷新で立体的な仕立てに。着用感が格段にアップ
まず大きなアップデートとなるのが、パターンの刷新。特に印象的なのがスリーブ部分です。袖山~袖先に掛けてゆるやかに前方に向かってカーブする、立体的な前振り仕様へと改良。本来の人体構造に近い仕様を取り入れることによって、可動域が格段に広がりました。これまでシーズンモデルではいくつか前振り仕様のジャケットは展開されていましたが、定番型では今回が初の試みとなります。
▼ポイント2:腕&肩周りをゆったりリサイズ。ストレスフリーな動きやすさを追求
そして、着心地のキモとなる腕&肩周りについても、同様にパターンをモディファイ。これまでよりもアームホールや上腕などにゆとりを持たせ、運動性を改善しました。また、パターンの見直しに併せて、背面上部の生地使用量もアップ。背面は腕を動かす動作時に突っ張りを感じやすい部位ですが、今回のアップデートでそのウィークポイントが見事に解消されました。
▼ポイント3:襟が小さくなって、よりモダンでスタイリッシュな印象に
リラクシングなパターン設計で動きやすさを追求しただけでなく、ジャケットの“顔”である襟もアレンジ。これまでよりもコンパクトな形状へとデザインチェンジされています。具体的な数値でいうと「デンストン」は幅8cmから7.5cm、「デンハム」は9cmから7cmへと襟をサイズダウン。この小型化によって、今っぽくスタイリッシュな雰囲気がグッと強まりました。
▼ポイント4:高品質の証し。作り手のサイン入りラベルを内側にセット
直接的に見た目に干渉するものではありませんが、ジャケット内側にも大人の琴線に触れるちょっとした仕様変更があります。それがこちらの、製品の最終検品者による直筆サインが入ったニューラベル。MADE IN ENGLANDの矜恃を代弁するかのような、小粋なディテールワークといえます。
どっちを選ぶ?『ラベンハム』で人気を二分する「デンストン」と「デンハム」
続いて、「デンストン」と「デンハム」それぞれのモデルにフォーカス。コーデサンプルを交えながら、2型の特徴や魅力を掘り下げて解説していきましょう。どちらもオン・オフ兼用で使えるオールラウンダーであることは共通項となっており、押さえておけば着こなしの安定感が大幅に増すこと必至です!
▼モデル1:ブランド屈指の人気者。ミドル丈の「デンストン」
『ラベンハム』が誇るラインアップの中で1、2の人気を誇るモデル「デンストン」は、スーツのジャケットをすっぽり隠せるミドル丈が特徴です。定番の表地は、ポリエステル地の“ラブンスター”。同生地は撥水&軽量性に秀でており、ツヤを抑えた上品な光沢も備えています。なお、この「デンストン」は前項で述べた4つのポイントに加えて、独自の2つの改良点があるのでそちらにも要注目。1つは、腰のシェイプを軽減して旬なボックスシルエットへと変更されたこと。そして、両脇のポケット口の素材がコーデュロイへとチェンジされ、見た目のバランス感がより高められています。
コーデ1
BIZスタイルにキルティングで洒脱なイメージを加味
フロントがボタンスルー仕様という品良い風貌で、オンタイムの装いにも違和感なく溶け込む「デンストン」。乗馬用アウターがルーツだけあって、ほんのりとスポーティさも感じさせ、セットアップスタイルを軽やかに彩ってくれます。その上、襟&ポケット口のコーデュロイ切り替えが絶妙なアクセントに!
コーデ2
シンプルな冬コーデにダイヤモンドキルトが効く!
無地スウェット&スラックスで潔くスタイリングしているからこそ、ダイヤモンドキルトの主張がより鮮明なものとなっています。この着こなしのようにインナーとボトムスを同系色でまとめれば、アウターの存在を際立たせながら、コーデの一体感を高めることが可能。「デンストン」はフードが脱着式なので、ほのかに抜け感を出すならフードあり、大人感を重視するならフードなし、と気分に応じてアレンジするのも良いでしょう。
▼モデル2:ブランドの“らしさ”を継承する看板モデル「デンハム」
『ラベンハム』が黎明期に生産していた乗馬用ジャケットのデザインを色濃く受け継いだ「デンハム」。着丈は「デンストン」よりも3cmほど短く設定されており、すっきりとキルティングジャケットを着こなしたい人におすすめです。もちろん、こちらのモデルもスーツスタイルのアウターとして問題なく着用可能。脱ぎ着をイージーにするスナップボタンや、モノの出し入れがしやすい斜めのポケット口、運動性に配慮したサイドベンツなど、シンプルに見えて機能性への配慮は抜かりありません。
コーデ1
華やぎのある装いをキルティングでピリッと引き締め
白デニムにカラーニット、インナーにはストライプシャツという華やぎのある着合わせ。そこに季節感を加える一手となるのが、上に羽織った「デンハム」です。マットな光沢のキルティング生地が、装いに適度な落ち着きをもたらしてくれます。おまけに、ゆとりが増した新パターンゆえ、レイヤードを駆使したインナーコーデと合わせても着膨れとは無縁です。
コーデ2
ワントーンのセットアップスタイルに素材感でニュアンス出し
旬なコーデュロイのセットアップを駆使して、秋冬らしく暖かみのあるきれいめカジュアルスタイルをメイク。そこへ、素材感の異なるキルティングジャケットをオンしたことで、ワントーンを基調にしながらも緩急のある着こなしに帰結させています。サイズ感は全体的にゆったりめですが、着丈の長さを抑えた「デンハム」を主役に据えれば、もたついて見える懸念はありません。
今だけの特別な1着。「レイドン」×「レクサム」のハイブリッドモデルも見逃せない
アップデートされた二大モデルに加えて、最後にもう1着、『ラベンハム』の今季注目モデルをご紹介。それが、英国ブランド専門のセレクトショップ『ブリティッシュメイド』の別注オーダーによって誕生したしたこちらの「ボタンジャケット」です。ベースにしたのは、「デンハム」や「デンストン」と同様にアップデートされた定番モデル「レイドン」のパターン。そこに、昨季まで展開されていたモデル「レクサム」のデザインを落とし込んでいます。インラインモデルとは一線を画すハイブリッドなルックスの1着は、“違い”を求める大人にうってつけ!
進化を遂げた『ラベンハム』で、一味違う冬スタイルを手に入れよう
英国メイドの確かな品質やマスターピースならではの汎用性はそのままに、より現代のニーズに応えたデザインへと進化した『ラベンハム』の定番キルティングジャケット。見た目も着心地もブラッシュアップされた逸品は、冬スタイルの主役として縦横無尽に活躍してくれるのは確実。あるときはビズコーデを軽快に彩り、またあるときは休日の装いに格をもたらしてくれる――。そんなマルチなキルティングジャケットをワードローブに備えておけば、この先“着こなし難民”に陥ることは決してないでしょう。
Text_Satoshi Yamasaki