時代に流されない“クラシック”。カルレイモンの腕時計から、我々が学ぶこと
値が張るイメージのあるムーンフェイズ時計を、手頃な価格で実現した話題の『カルレイモン』。その魅力は、腕時計の伝統をリスペクトした情熱的な作り込みにありました。
ムーンフェイズ人気の立役者。時計好きの間で話題になっているブランドがある
時を知るための道具から、自分らしさを表現するアイテムへと変化した腕時計。そんな時代だからこそ、昔ながらのクラシックな時計の価値が見直されています。そんな中、昨今はムーンフェイズを搭載したカジュアルウォッチが人気を博していますが、その流れを作ったブランドが、2017年に登場した『カルレイモン』です。
何を隠そうこの『カルレイモン』、実は3万円台でムーンフェイズを搭載してしまった常識破りのカジュアルウォッチなんです。それでいて見た目はしっかり高級感があり、フォーマルなシーンでも堂々と身に着けられるとあって、人気の時計セレクトショップでも取り扱いが始まっているんです。
素朴な疑問と腕時計への愛から生まれた新興ブランド『カルレイモン』
トレンドを超えたクラシック。その価値を広めることが『カルレイモン』の目指すところ。創業のきっかけは、時計界に対する1つの疑問にありました。「美しくも優れた技術の結晶であるムーンフェイズは、なぜ高級時計に独占されているのか」。当時、日本に留学中だった創業者である2人の若者は、“クラシックは不滅だ”という信念を掲げるほどのクラシック好き。しかし若者にとって、クラシックを代表するムーンフェイズウォッチは高価で、なかなか手を出せるものではありませんでした。その後、一般企業に就職をするも、そのときの思いを忘れられず、2017年に自ら時計ブランドを設立。納得のいく1本を完成させるまでには、2年の歳月が掛かったといいます。
『カルレイモン』の腕時計は、時計界の伝統に則ったクラシックなデザインが何よりの特徴。ブランドの個性を主張するような装飾を一切入れていないことが逆に個性となり、人気を高める要因の1つになっています。実際、商品化にあたって実施されたクラウドファンディングでは、国内外で計5,000万円以上の支援を集めるほどの反響がありました。これは、リーズナブルでクラシックなアナログ時計が世の中に求められていることの証左でもあります。支援者の中には目の肥えた40~50代の時計愛好家も多くいたというエピソードも、『カルレイモン』の完成度の高さを物語っています。
『カルレイモン』の腕時計には、誠実なモノ作りと確かなこだわりが宿っている
デビュー早々、時計界に新たな常識を作り出した『カルレイモン』。画像だけでは伝わらない、そのモノ作りの裏側をご紹介します。これを読めば3万円台という価格がいかに破格か、おわかりいただけるかと。
こだわり1
デザインへの飽くなき探究心と、それを形にする工場の存在
『カルレイモン』のモノ作りは、一言で言えば「クラシックへの回帰」。長い歴史の中で形成されてきた“時計とはこういうものである”という古典的なディテールが、1本の腕時計の中にいくつも落とし込まれています。例えば、腕に着けてみるとやや小ぶりに感じることでしょう。それはケース径が38mmと実際に小さいからですが、このサイズ感こそクラシックな時計のスタンダード。そして針も、ドレスウォッチの正統を意識した2針(秒針がない)であることでエレガントさを意識しています。さらにムーンフェイズを配する文字盤は、特に納得のいくバランスを表現するのは難しかったといいます。ダイヤル自体の大きさや、その中のサブダイヤルの直径を数十回も微調整し、理想とする黄金比率に辿りつきました。
他にも書き切れないほどのこだわりが詰め込まれている『カルレイモン』ですが、実際にそれだけのものを表現するには、生産する工場の協力も欠かせません。通常、この価格帯のブランドであれば、中国などで生産するのが一般的なスタイルですが、実績のある日本の工場をパートナーに選んでいる点も特筆すべきところ。それだけでなく、その工場を情熱で口説き落とし、ムーンフェイズの月の色を文字盤のカラーごとに変更するという、コストからすると通常ではありえない加工なども実現してしまっているというから驚き。もちろんこだわりは見た目だけでなく、中身のムーブメントにも信頼性の高いジャパンムーブを採用しています。
こだわり2
プライス以上の価値を創出する、妥協を許さないディテールの存在
『カルレイモン』が類い希な高級感を生み出している秘密。それは、文字盤のデザインだけが理由ではありません。ケースの仕上げや内部の構造などにおいても、これまでのカジュアルウォッチとは一線を画しているんです。特に時計好きを唸らせたのが、ムーブメントを止める爪。マニアックな話になりますが、この価格帯であれば普通はプラスチック製であることがほとんど。それを金属製にすることでホールド感を高めるとともに、重厚感も増すことで高級感が生まれているんです。さらにケースは、ケースとベゼルが別体になったセパレート構造を採用。精度の高さも求められコストに跳ね返りますが、これも同様に重厚感を高めるのが狙いです。
腕時計本体から離れ、ベルトに注目してみると、ここにもこだわりが隠れていました。高級時計に採用されることの多いD(ディプロイメント)バックルを採用しているのです。ワンタッチで着脱可能で、革ベルトを曲げないためにベルトの寿命が伸びるといったメリットがあります。しかし、毎日触れる部分にこうした高級感のあるパーツを採用しているというのが、使う側にとっては何よりのメリットでしょう。『カルレイモン』の魅力は、こうしたクラスを超えた圧倒的な作り込み。その積み重ねが類い希な高級感を生み出しているのです。
こだわり3
良いモノ”を手にする喜びを提供する企業姿勢
徹底した作り込みは、クラシックな腕時計をどこまで表現できるかというチャレンジの体現。そして同時に、手にした人に喜んでもらいたいというシンプルな思いの表れでもあります。良いモノを買ったという喜びや満足感を得てもらうために、妥協はしない。だからこそ、『カルレイモン』の腕時計はケースを開ける前から良いモノ感がひしひしと伝わってくるよう演出されています。なにせケースも高級時計と見紛うしっかりとした作り。これなら、ギフトとして贈っても喜ばれること請け合いです。
ブランドの運命を決めた1本と、渾身の新作2針について知っておくこと
気になるラインアップは、実は2モデルのみ。それぞれの腕時計に持てる情熱をすべて注いで作るだけに、かなり濃い2モデルであることは間違いありません。これはある意味、究極の選択です。
モデル1
『カルレイモン』のスタートダッシュを担った名作「クラシックパイオニア」
ブランド第1弾となるモデルは、月・日・曜日を表示するフルカレンダーに月齢を表示するムーンフェイズを装備したモノでした。機械式時計では複雑機構とされる機能を惜しげもなく盛り込んだ、伝統的なスタイルを再現しているのです。ケースには医療現場でも使われる316Lステンレスを採用しつつ、高級感漂うポリッシュ仕上げを施すことで隙のないルックスに。風防は反射の少ないサファイアクリスタルガラスを採用することで、細部まで抜け目のない1本へと昇華しています。
カラーバリエーションは白、黒、ネイビーの3色。いずれもスーツに合わせやすい色という点で共通しており、ビジネスシーンにはもってこいといえます。プライベートでもきれいめなコーディネートによく映えるデザインです。ケースがゴールドのモデルもありますが、オン・オフ兼用するなら派手すぎないシルバーケースが適役でしょう。
■DATA
SSケース、ケース径38mm、クォーツ、5気圧防水
モデル2
より高級感香る仕上げが光る「クラシックシンプリシティ」
第2弾となるこちらのモデルはカレンダーを排し、文字通りシンプルなデザインに。文字盤中央にはクラシックな腕時計ではお馴染みの意匠であるヴァーグギョーシェを刻み、その外側には円形のヘアラインを施しました。異なる仕上げが混在することによる表情の豊かさが価格以上の高級感を演出するだけでなく、文字盤の視認性にも寄与しているのです。また、針にはオーセンティックなドーフィン針を採用。第1弾のリーフ針の繊細な印象に対し、直線的なフォルムが文字盤にスタイリッシュな空気をもたらしています。
こちらのモデルもカラバリは3色、ケースはシルバーとゴールドの2色展開。ちなみに、ケースの形状も刷新されており、曲線を意識したベゼルと角の取れたラグが、よりドレス感のある雰囲気を作り出しています。
■DATA
SSケース、ケース径38mm、クォーツ、5気圧防水
クラシックウォッチ好きにはたまらない、“ブルーハンズ”にも注目したい
また、今年10月からは「ブルーハンズシリーズ」が登場。「クラシックパイオニア」、「クラシックシンプリシティ」の2モデルに青針を採用したこちら。この青針も、実は高級時計の世界ではよく知られたクラシックなディテールの1つで、見る人に品格を感じさせます。同モデルでは、シルバーカラーのケースにホワイト文字盤、レザーベルトはブルーを採用してより爽やかな印象に仕上げています。
なお、SSケースに白文字盤、青針という組み合わせの「クラシックパイオニア」は時計専門セレクトショップ「オンタイム」と「ムーヴ」でのみ購入可能な店舗限定商品。実際に手に取る機会があれば、ぜひお試しを。
真摯なモノ作りに頭が下がる。『カルレイモン』には価格以上の価値がある
3万円のカジュアルウォッチと聞くと、どうしても粗探しをしてしまいがち。ですが、価格から来るイメージを吹き飛ばすほどの洗練された作り込みによって、腕時計好きをも納得させるデザイン性と品質を『カルレイモン』は手に入れたのです。腕時計の何たるかを凝縮したこのブランドなら、初めて時計を持つ初心者はもちろん、すでにメインの高級時計を持っているという人でもサブウォッチとして満足できることでしょう。時計を知っていればいるほど、手に取った時の驚きは大きいはず。『カルレイモン』がその腕元から、腕時計のある日常をより鮮やかに彩ってくれます。
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※掲載の金額はすべて税抜価格です
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Text_Ryo Ishii