なぜ、ブライドルレザーをガンゾで探すべきなのか。 製品から読み解くその理由
深い味わいと圧巻の強度を両立したブライドルレザーは、“良いモノ”を求める大人にとって最高の盟友。今では扱うブランドも増えましたが、なかでも『ガンゾ』は別格です。
ブライドルレザーを世に浸透させた立役者。『ガンゾ』の“それ”は、格別だ
近年、日本市場でもすっかり定番素材として根付いた感のあるブライドルレザー。ロウ引き加工による独特な風合いに、使うほどに増幅していくコク、さらには馬具由来ならではの優れたタフネスなど、その魅力は枚挙に暇がありません。今では人気化に伴ってブライドルレザー製品を取り扱うブランドも幅広くなりましたが、一方で品質差が大きいのも事実。頑丈かつ地厚な革であるがゆえに縫製・裁断が極めて難しく、製品生産に高い技術が求められるためです。だからこそ、選ぶならば最高峰の生産背景を持つブランドに狙いを定めるのが常道。そこで本物を追い求める大人たちに推奨したいのが、国内市場におけるブライドルレザーの先駆である皮革製品専業ブランド『ガンゾ』です。
『ガンゾ』は1917年創業の老舗皮革メーカーAJIOKA.による最高級ラインとして、1999年に発足。当時ほぼ国内で流通のなかったブライドルレザーにいち早く目をつけ、設立当初から製品ラインアップに取り入れてきた日本におけるリーディングブランドです。長年皮革業界で培ってきた確かな審美眼と、腕利き職人の高次な技術の融合から生まれるブライドルレザー製品は、まさに出色の出来映え! しかも、製品の品質水準を維持するべく、今でもブレない“MADE IN JAPAN”を徹底しています。
珠玉の経年変化サンプルに見る、ブライドルレザーの深淵なる魅力
前述の通り多岐にわたる魅力を備えるブライドルレザーについて、ここから改めて深掘って解説していきましょう。そもそも同素材が誕生したのは14世紀頃のこと。生まれの地は英国で、騎手や貴族が使用する高級馬具の素材として重用されてきました。原料に使用するのは肉厚な牛革で、そこに幾度となくロウを塗り込むことでブライドルレザーは完成します。ロウ引きを行う理由は、湿気の多い英国の気候、あるいは馬の汗や唾液によって革が劣化するのを防ぐため。完全防水ではありませんが、ロウワックスを多量に含ませることで革の弱点たる“水への弱さ”を克服しているのです。そのうえ、ワックスの浸透効果によって柔軟性も飛躍的に向上しています。
そしてブライドルレザーの象徴といえば、表面に浮かぶ“ブルーム”と呼ばれる白い粉。これは革に塗り込んだロウの成分が表面に析出したものです。ブライドルレザーの奥深い風合いは、このブルームが生み出しているといっても過言ではありません。使い込んでいくとロウは革に馴染んでいき、少しずつ白っぽい風合いから艶やかな質感へと表情が変化。他のレザーとは一味違うこのユニークなエイジング過程も、ブライドルレザーならではの醍醐味の1つです。
ブライドルレザーと歩む『ガンゾ』。ディレクター・味岡儀郎氏が語るこだわりとは
設立から今日に至るまで、『ガンゾ』はブライドルレザーをコードバンと並ぶブランドの代表素材として位置付けてきました。そのモノ作りの裏にある背景を知るべく、ブランドディレクターである味岡儀郎氏を直撃。20年以上にわたってブランドの指揮をとるかたわら、『ガンゾ』の製品生産を担うファクトリー「ラマック」の代表も務めるキーパーソンが、ブランド“だからこそ”のこだわりを語り尽くします。
「ブライドルレザーは『ガンゾ』の立ち上げから付き合いのある素材。1999年頃、周りで使っている日本のブランドはほぼなかったと記憶しています。『ガンゾ』が根底に置く“使い込んだときの味わい”へのこだわりをもっとも表現しやすい素材だと思い、使ってみようと考えたんです。他のレザーとはまったく違う、このえも言われぬ温もりにも心惹かれましたね」
言わずもがな、モノ作りの“核”となるのが素材選び。『ガンゾ』では老舗フィニッシャーが昔ながらの製法で仕上げる、最高峰のブライドルレザーのみを使用しています。
「『ガンゾ』の製品で使っているのは。イギリスの名門レザーフィニッシャー「J&E セジュイック社」の英国産ブライドルレザー。同社は約18週間もの期間が必要な伝統製法を守り続ける、世界的にも希少なフィニッシャーです。さまざまなフィニッシャーのブライドルレザーを試したのですが、風合い・強度・経年の表情などあらゆる面において別格で、すぐ惚れ込んじゃいましたね。そのぶん、仕入れ値は張るんですけど(笑)。この会社は製造環境を少しも隠すことなく、すべてオープンにしているのも凄いところ。それだけ製法や革の品質に自信があるということなんでしょう」
表面のブルームを見ただけでも、「J&E セジュイック社」のブライドルレザーは“その他大勢”と明らかに違うのだとか。
「このブルームの表情も「J&E セジュイック社」のものでしか味わえないんですよね。ロウの浮かび方が力強くて、パッと見たときのインパクトがあるんです。しかも、よく見ると職人が手作業でロウを塗り込んだ跡が残っているんですよ。マニアックなんですけど、こういう“泥臭さ”もまた最高というか。実は諸事情がありスペイン産ブライドルを使ったシリーズも一時期展開していたのですが、見栄えに納得がいかなかったんです。すぐさま廃盤にしたことは、少し苦い思い出です(笑)。今は完全に「J&E セジュイック社」のブライドルレザーに一本化しています」
ただ高品質な素材を使えばそれだけで良いモノが出来上がるのかといえば、当然ながら答えは×。レザーの厚みから細部の仕立てまで、あらゆる箇所に気を配りつつ珠玉の製品を作り上げます。
「ブライドルレザーの“厚み”もこだわっている部分の1つですね。特に定番シリーズ「シンブライドル」は試行錯誤の繰り返しでした。シン(thin=薄い)と謳っていますから薄くしなきゃいけないんですが、やり過ぎるとブライドルレザー特有の温もり感や耐久性が損なわれてしまいます。スリム化と風合いのバランスを見ながら試作を繰り返した結果、現在の厚さにたどり着きました。表地をヘリ返さずにレザーの裁断面を見せる「切り目仕上げ」や、専門の職人による数度にわたるコバ磨きなど、細部もかなり気を使っていますね。さらにいうと、組み合わせている金属パーツはすべて厳選された欧州メーカーのものか、国産。特に国産は鋳物メーカーとともに、オリジナルで製作しています」
ナイーブに扱う必要がなく、日常に心地良く寄り添ってくれる……。そういった“気楽さ”もブライドルレザーの魅力だと味岡氏は語ります。
「普段のケアがラクなのもこの素材の良いところ。油分が多いので、頻繁に手を掛けずともツヤを保つことができます。コードバンなどと違って水気にも強く、シミの恐れも少ないですしね。私は普段サッと乾拭きするぐらいで、正直ほったらかしに近い(笑)。もちろん、カサつきが気になってきたらクリームを塗ったほうが良いですが、そこまでデリケートになる必要はありません。高級素材でありつつ気楽に持てるっていうその二面性も、長く付き合っていける大きな理由ではないでしょうか」
魅力を踏まえ、3つのカテゴリから出会う『ガンゾ』の「シンブライドル」シリーズ
素材から仕立てまでこだわりが濃縮された『ガンゾ』のブライドルレザー製品。とりわけスマートな大人におすすめしたいのが、人気NO.1シリーズ「シンブライドル」です。「J&E セジュイック社」のレザーが放つ温かな風合いを生かしつつ、端正な薄手フォルムに仕立てられたそれは、日々の相棒として適役。新品がピークではなく使い込むほど風格が増幅するので、その過程も楽しみたいところです。ちなみに写真の経年サンプルは、手帳カバーが7年ものでペンケースが5年もの。じっくり時間を掛ければ、こんなにも円熟した風合いに育つんです! 同シリーズの製品はブラック・ネイビー・ヘーゼル・チョコの4色で展開されるので、自身の好みに応じて選択しましょう。
カテゴリ1
革小物の基本。“ウォレット”こそ、シンプルに作りの良い逸品を手に入れたい
シリーズの看板アイテムでもあり、革小物における基本でもあるウォレット。いずれもブライドルレザーの質感が際立つシンプルさが売りとなっており、オン・オフを通じて活用できます。二つ折り財布(上)は6つのカードポケットと4つのフリーポケットによる優れた収納力が自慢。シャツの胸ポケットにスッと入るミニマルな形状のマネークリップ(中)は、2つのカードポケットが付きキャッシュレス派にも◎です。加えて、シリーズ内屈指の売れ筋であるBOX小銭入れ付きコンパクト札入れ(下)も着目すべき存在。掌に収まるサイズ感ながら6つのカードポケットやボックス型の小銭入れを装備し、見た目以上に使い勝手良好です。
「シンブライドル」の内装には“ミネルバ・ボックス”と呼ばれる高品質なショルダーヌメを採用。同素材はイタリアのタンナーであるバダラッシィ・カルロ社が手掛けるもので、古くから伝わるスローな製法で生産されています。オイルを多量に含む素材ゆえに傷が目立ちにくく、経年変化の表情も抜群! 取り出しやすさに配慮したカードポケットの曲線的カッティングや、カード段のコバの下にあしらった“ネン引き”(熱した鉄ゴテで付けられる直線状の溝)など、細かなディテールにも隙がありません。
※上から
■大型二つ折り財布
W11.5×H9.8×D3.2cm
■コンパクトマネークリップ
W10.3×H6.5×D0.7cm
■BOX小銭入れ付きコンパクト札入れ
W9.6×H8.5×D2cm
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確かな品質が見て取れる“ビズ小物”が、持ち主の人となりを雄弁に物語る
手帳カバーを筆頭にビズ向け小物も充実する「シンブライドル」。装いの制約が多いビジネスシーンですから、雰囲気の良いビズ小物で差別化を狙うのは合理的といえるでしょう。重厚感溢れるシステム手帳のバインダーは、バイブルサイズ、A5サイズ、ミニサイズの3サイズ展開。ドイツメーカー・クラウゼ社製の紙留めリングを用いるなど、パーツにも品格が宿ります。携行性に長けた細身のペンケースもビジネスシーンの良き相棒に。ジップの両サイド部にはミネルバ・ボックス、裏地には鮮やかなイエローの牛革を組み合わせています。二つ折りのカードケースは今季登場の新作。パスケースや名刺入れとしても活用できる作りで、シーンを跨ぎ活躍すること必至です。内部は両面にマチ付きポケットが付属し、計8枚程度のカードを収納可能となっています。
※上から時計回りに
■システム手帳バインダーミニサイズ
W10.5×H15.2×D3cm
■ペンケース
W19.5×H4.5×D4.5cm
■二層式カードケース
W10.5×H7.5×D1.7cm
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身に着ける上質。“装飾品”も『ガンゾ』を取り入れて、自信と活力を得る
小物類のみならず、バッグ&ベルトといった装飾品もスタンバイ。ブライドルレザー特有のエレガンスな風合いが、装いのクラスアップを確約します。持ち手までブライドルレザーを贅沢に使ったブリーフケースは、ビズコーデに風格をもたらす名脇役。重い荷物を入れても形崩れしにくいという、剛健な素材ゆえの実用的な利点もあります。手回り品や書籍を素早く出し入れできる、大型のあおりポケットが付属するのもうれしいポイントです。ベルトはスタイルを問わず合わせられる3cm幅。表側にブライドルレザーを使っているうえ、中にレザー製の芯材を配しているためしっかりした肉感です。小物類同様、裏にはミネルバ・ボックスを貼り合わせています。
通常は内装にミネルバ・ボックスが使われる「シンブライドル」ですが、こちらのブリーフでは軽量かつ手触りの良いディア調スエードを起用。極めて汚れに強い素材であることも特筆点です。また、ジップ周りやロゴプレートといった細かいパーツまでブライドルレザーが使われている点にも注目を。『ガンゾ』らしい、細部にまで美意識が行きわたった逸品となっています。
※左から
■38cmブリーフケース
W38×H29×D9cm
■ベルト(フェザー) M
W101×H3cm
※ベルト(フェザー) SはW96cm、LはW106cm
一度知れば離れられない。『ガンゾ』のブライドルレザーに触れて、一流を知る
20年以上にわたり、国内のブライドルレザー人気をけん引してきた『ガンゾ』。リーディングブランドの矜持が息づく確かな品質の逸品群は、きっと日常の頼れる女房役になってくれるはずです。直営店舗ではスタッフによるお手入れも行っており、アフターケアが万全なのも心強い限り! 製品はオンラインでもほぼフルラインアップが揃いますが、実際に直営店や百貨店で現物に触れ、その魅力をダイレクトに感じてみるのも良いでしょう。特に直営店はエイジングサンプルが豊富に揃うほか、知識豊富なスタッフの提案も受けられる“革の聖地”。ブライドルレザーと深く濃く付き合っていくためにも、ぜひ一度訪れてみてはどうでしょうか。
Photo_Shoichi Muramoto
Interview&Text_Satoshi Yamasaki