
キングセイコーが見せる、“王”の器量。蘇った国産アンティーク時計の傑作を知る
日本が世界に誇る時計ブランド『セイコー』が創業140周年を迎えました。それを記念して、幻の国産機械式時計「キングセイコー」が復活! その魅力に迫っていきましょう。
『セイコー』の1960~70年代を“GS”と担った、「キングセイコー」を知っているか
今や押しも押されもしないジャパンウォッチの代表格として知られている『セイコー』。前身となる服部時計店の創業から数えて、なんと2021年で140周年を迎えた老舗です。国産初の腕時計「ローレル」(1913年)、同じく国産初となる自動巻き腕時計「オートマチック」(1956年)など日本の腕時計史を語るうえで欠かせないエポックメイキングなモデルを次々と発表してきた同社。1950年代後半にはスイスに負けずとも劣らない精度を誇る機械式時計の開発に注力し、その立ち位置を確かなものとしました。
1965年に発売された2代目「キングセイコー」、“KSK”
そして1960年代初頭。それまでに培われてきた腕時計製造技術の結晶として、『セイコー』にとっても特別な2つのブランドが誕生します。まず、1960年に発表されたご存じ「グランドセイコー」。そして、今回ご紹介する翌1961年誕生の「キングセイコー」です。両者は『セイコー』独自のデザイン哲学と高い実用性を兼ね備えた傑作として世に受け入れられましたが、後者はわずか14年間しか製造されなかった“幻の作品”として現在でもアンティークウォッチ市場で強い人気を誇っています。
しかしこの度、『セイコー』の140周年、そして「キングセイコー」の誕生60周年という二重の節目となるタイミングでリバイバルされることに。オリジナルを彷彿とさせる顔立ちから、すでに多くの注目を浴びているんです。
ファンも納得。2代目「キングセイコー」を、アーカイブに忠実にリファイン
[SDKA001]ステンレススチールケース(ダイヤシールド)、クロコダイルストラップ、5気圧防水、ケース径38.1mm、厚さ11.4mm ※世界限定3,000本
今回の復活劇にあたりベースとして選ばれたのは、1965年に発表された2代目の手巻き式「キングセイコー」です。同作は1961年発表の初代よりも実用面で大きな進化を遂げており、防水性能向上のためのスクリューバック採用に加え、今では当たり前となっている秒針ハック機能を実装。このことから“KING SEIKO規制(KISEI)付き”の頭文字を取って“KSK”の略号が付けられたとされており、現代にも通用する実用派アンティークウォッチとして知られています。
今回の復刻では、ルックス面において立体的で力強いかん足(ラグ)を含め、以下に紹介する各種ディテールを可能な限り忠実に再現。さらに、『セイコー』の現行機種で最薄となる自動巻きムーブメント「6L35」を搭載することで、手巻き式だったオリジナルの薄型ケースに迫る11.4mmのケース厚を実現しています。ケース径はオリジナルの36.7mmから、38.1mmへと若干のサイズアップ。わずか1.4mmの差ではありますが、これによりアンティークライクなこなれ感と現代的な空気を兼備した実用度の高い1本へと昇華されています。
文字盤を見ても、アーカイブを大切にする『セイコー』らしい骨太のデザインが光ります。12時位置のソリッドなインデックスにはライターカット(スタッズ状の刻み)が施され、堂々とした太く長いドーフィン針と美しく調和。また、文字盤上部にある“SEIKO”のブランド名が浮かんでいるように見えますが、これはアプライドロゴといってロゴマークを文字盤上への印刷でなく、別部品で構成する仕様となっています。今作はインデックスもアプライドインデックスが採用されており、立体的で視認性が高く、何より高級機としての雰囲気が漂います。文字盤そのものにはサンレイと呼ばれる繊細な放射模様が施され、その上に透明なラップ塗装を重ねることで、艶のある美しい光沢を醸成。さらに、当時アクリル製だった風防はボックス型サファイアガラスへとチェンジすることで、格式高い雰囲気はそのままに視認性と耐傷性を向上させました。
計時部のみならず、細部を彩るディテールも見逃せません。裏蓋を飾るメダリオンには、60年前の初代モデルにも採用されていた「キングセイコー」のアイコン、盾のモチーフを刻印。ピンバックルも当時の意匠が再現され、尾錠に描かれたロゴのレトロな書体はヴィンテージテイストを強くアピールします。また、リューズにはセイコーロゴの上に防水仕様の証しである“W”のマークが。総じて、随所に施された“ならでは”の仕掛けが品質の説得力、所有欲ともに高める要因となっているのです。
『セイコー』の隠れた立役者。「キングセイコー」を手にするのにこれ以上の好機はない
時代に流されない、王道のクラシックスタイルの再現。その気品溢れる佇まいは、いい大人の腕元を一際輝かせてくれます。腕時計を着用するシーンが限られる現代だからこそ、このシンプルさと力強さが同居する“良いモノ感”が頼りになります。カジュアルシーンはもちろん、ビジネススタイルにも確かな信頼感を演出する1本として、間違いないでしょう。現代に蘇った傑作「キングセイコー」。これからの相棒にふさわしい特大のポテンシャルを秘めています。
Text_Naoki Masuyama