
バッグと共存するという発想。マスターピースが提案する、まったく新しい服の話
『マスターピース』が満を持して発表した新作は、バッグではなくウェア!? 専業ブランドだからこその気づきを形にした、バッグライフをサポートするための服とは。
専業ブランドだからこその“気づき”。その蓄積を服の形にしてみたら
今や押しも押されもせぬバッグブランドとなった『マスターピース』が誕生したのは、1994年。当時のファッションといえばカラフルなアウトドアイテムが街をにぎわせていた時代で、アウトドア向けの機能的なバッグをストリートで使うというのが1つのトレンドでした。そんな時流をいち早く察知し、“ファッションと機能性の融合”をコンセプトに生まれたのが『マスターピース』です。
機能性を重視したバッグは国内外問わずありふれていたものの、そこにファッション性を両立させようというのは当時としては最先端の試み。『マスターピース』はその後、時代のニーズに合った名作をいくつも生み出し、幅広い世代から愛されるブランドへと成長しました。
そんなバッグ一筋だった『マスターピース』が服を作る。一見すると突拍子もないことに思えますが、そこにはバッグメーカーだからこそ成せる服作りを見出しているといいます。そのキモとなるのが、“バッグを持つことによって生まれる不便をいかに解消するか”という部分。
というのも、バッグは便利である半面、不便も生じます。「トートバッグが肩から滑り落ちてしまう」、「バックパック着用時、服にアタリができてしまう」、「ジャケットの襟をストラップが巻き込んで形が崩れてしまう」などなど。四半世紀以上にわたるバッグ作りの中で得られた気づきや、ユーザーからのフィードバッグによって蓄積されたノウハウを、今度は服に生かそうというワケなのです。
バッグと共存する服。『マスターピース』のウェアラインが、できること
ブランドの設立以来、人々の日常をより豊かにするためにバッグを作り続けてきた『マスターピース』。これまでバッグだけでは実現できなかった、バッグを生かすためのディテールを洋服に落とし込み、バッグメーカー目線のアイテムを完成させました。掲げるテーマは、“Functional beauty for all packers”。つまり、“すべてのバッグユーザーに機能美を”。服に表現されたディテールを、3つのポイントに絞ってご紹介します。
▼その1:衣服単体として、都市生活に似合うミニマルなデザインと機能性を宿している
『マスターピース』の服から感じるのは、洗練された都会らしさ。バッグのための機能を落とし込んだといってもデコラティブに飾るわけではなく、あくまでもミニマルなデザインにまとめられているのです。カラーもオリーブやブラックなどメンズの基本色となる構成なので、さまざまなバッグや着こなしに合わせやすい服であることが一目でわかります。また、クリーンな印象を保ちつつ、昨今のトレンドを意識したリラックス感のあるシルエットを意識しているのも特筆すべき点。素材の面でもソフトシェルコートに4レイヤー素材を採用していたりジャケットにストレッチ素材を取り入れていたりなど、機能素材でストレスを軽減するバッグブランドらしいアプローチが垣間見えます。
▼その2:バッグ本来の機能性を邪魔せず、+αの利便性を引き出してくれる
そして何よりの特徴が、バッグのあるライフスタイルを後押しする機能です。例えばオーバーコートには、フロントを閉めたままでも内側に着用したボディバッグへアクセスできる専用のポケットを有していたり、Tシャツにはトートバッグなど肩に掛けるタイプのバッグが滑り落ちるのを防止するグリップテープを肩部分に配置していたり……。バッグ本来の機能を邪魔しないだけでなく、より使いやすいようにサポートする機能も備わっているという点が、『マスターピース』のウェアラインたる条件というワケです。
▼その3:バッグを持つことにより生じる“服へのダメージ”も、最小限に抑えてくれる
バッグ専業だった『マスターピース』が長年抱えていたジレンマ。それは、バッグと服の相性が悪いと服にダメージを与えてしまうことがある、ということでした。そもそもバッグと擦れる部分に毛玉ができやすいことや、バックパックを背負った際にパンツのベルトループとバックパックの間に挟まれるジャケットやTシャツにアタリが出てしまうことなど、誰しもが一度は残念な思いをしたことがあるのではないでしょうか。そういった点に配慮した『マスターピース』の服は、摩擦が起きやすい部分に摩耗に強い素材を用いたり、時には大胆にベルトループを排してしまったりなどで、細かなトラブルを回避できるように設計されているんです。
プロ目線のこだわりが随所に潜む、珠玉のラインアップを掘り下げる
『マスターピース』が作り上げたバッグメーカー目線の服。ファーストシーズンとなる2021年春夏は、オーバーコートを筆頭とする全7型がお目見えです。先んじて展開されるのは、コート、ジャケット、そして2種のパンツ。インナーとしても活躍してくれるハーフスリーブシャツとTシャツは、3月末に控えています。ここからは、その一つひとつを掘り下げて見ていきましょう。
アイテム1
悪天候下で真価を発揮。「パッカーズオーバーコート」はバッグのための要塞だ
正面から見ると、モッズパーカーのようなミリタリーテイストを漂わせる「パッカーズオーバーコート」は、バックパックを背負った上から着用することを想定。背中側が拡張するというのが最大の特徴で、雨から衣服もバッグも守ってくれる、頼もしい完全防水アウターなんです。
背面を拡張すると、バックパックを背負った状態にジャストフィット。さらにポケット内のドローコードを引っ張ることで風によるバタつきを抑え、バッグも動きにくくすることが可能です。拡張しない場合には、バックヨークのベンチレーションのような見た目になるため、従来の服と比べても違和感を覚えさせないデザインになっているのもうれしいポイントです。また、素材はオリジナルの4レイヤー生地を採用し、防水性を高めているのも特徴。耐水圧20,000mm以上、透湿度10,000g/m2/24hのスペックを誇るほか、前合わせは蒸れを逃がすボタンフライ(雨の侵入を防ぐ雨返し付き)なので、よりドライに着られることを意識した仕様になっています。ボディバッグや下に着たアウターのポケットにフロントを開けずにアクセスできる貫通ポケットも装備。
アイテム2
窮屈さ、不快感を徹底排除。現代的なビズスタイルにハマる「パッカーズジャケット」
ビジネスシーンでバックパックやショルダーバッグを使うのが当たり前となった現代。従来のジャケット着用時に感じる窮屈さや不快感を排除したのが、こちらの「パッカーズジャケット」です。ダーツのないストンと落ちるシルエットながらスッキリと見えるデザインは、昨今のビジネススタイルによくマッチします。
バックパックの着用を前提とした作りは、背面に設けられたベンチレーションに大きく表れています。バックパックを背負った際、背中のアーチによって隙間ができやすい位置(肩甲骨と腰骨の中間)にベンチレーションが配置されているため、通気の効率を上げることに成功。さらに脇下はメッシュ生地で切り替えているほか、ボディ自体の生地も接触冷感、UVカット、撥水性を持つ機能素材を採用しています。また、ラペルを縫い付けて固定、フロントは比翼ボタン、袖ボタンの省略によって、ショルダーストラップが引っかかってしまわないように工夫されているのも面白いこだわりです。
アイテム3
テーパードか、ワイドか。2シルエットから選択できる、快適トラウザー
昨今のセットアップの流れであるイージーパンツ「パッカーズテーパードトラウザー」、「パッカーズワイドトラウザー」は、シルエット違いでラインアップ。どちらもワンタックゆえ腰回りから腿にかけてゆとりがあるのは共通で、リラックスしたはき心地となっています。好みやTPOに合わせて使い分けられる2本に仕上がっているのです。そのうえで、見た目はシンプルながら各ディテールはバッグにしっかり最適化されているのです。
バックパックを着用した際、上着の内側に毛玉ができたりアタリが出たりしてしまうのは、その下にあるベルトやベルトループと摩擦が生じることが大きな理由。このパンツはそれを解消するため、あえてベルトループを排してドローコードによるフィッティング調整を取っています。しかも、ずり上げ、ずり下がり防止のグリップテープが付いているなどビジネス面もおいても有用なディテールを搭載。さらに背面側は、凹凸をなるべく減らす特殊なパターンのカッティングを開発する力の入れよう。服に対するダメージを軽減してくれるだけでなく、はき心地にも配慮したパンツなのです。ちなみに、生地はジャケットと同じものを採用しており、こちらも接触冷感、UVカット、撥水性があります。
▼3月末に発売となるシャツ&Tシャツも、予めその魅力を確認しておく
ここから先は、ハーフスリーブシャツとTシャツを見ていきましょう。いずれも、発売は2021年3月末を予定。シンプルなルックスながら上記アイテム群に負けないギミックが備わっており、これからの時期、大車輪の活躍が期待されます。
アイテム4
バッグを背負っても涼感キープ。ストレッチ性も抜群の「パッカーズハーフスリーブシャツ」
パッカーズハーフスリーブシャツ/17,000円(税抜)
比翼仕立てによるミニマルなスタイルが前面に押し出された半袖シャツは、夏のカジュアルなビジネスシーンでも出番アリ。ボックスシルエットでリラックス感は漂わせつつも、詰め襟になっているのできれいめに着こなしたいシーンにおいても最適なんです。そこへ多数採用しているのが、通気性を意識したディテール。
基本的な考え方はジャケットと同様に、バックパックを背負っている状態でも蒸れをいかに外へ逃がすかということが今アイテムの大きなテーマ。そのため、背中側のベンチレーションと脇下のメッシュがこの半袖シャツにも採用されています。また、生地は肌側にクールマックスメッシュを採用しているため、夏でも涼しく着られる1着に。ポリウレタンを24%混紡していることによる圧倒的なストレッチ性能も相まって、バッグを背負う動作もノンストレスです。
アイテム5
1枚でも心強い。汗蒸す時期でも爽快に着こなせる、2種類のTシャツ
春から夏にかけての蒸れを気にするTシャツ派には、以下に紹介する2着が最適解となるでしょう。こちらの「パッカーズハーフスリーブプルオーバー」も背面にベンチレーションを設け、Tシャツでは珍しいギミックの効いた仕様になっているほか、ボディ部分の裏地にクールマックスメッシュを採用。バッグと接する部分は特に汗をかきやすく不快になりやすいですが、接地面の汗を同素材が吸い上げて蒸散し、ドライな着心地をキープしてくれるんです。首の裏側に当たる天テープと呼ばれる部分には消臭機能を持たせるなど、細かい部分まで気配りが行き届いたTシャツとなっています。
見た目にはいたって普通なボックスシルエットのTシャツですが、肩線に滑り止めのテープを採用しているのが大きな特徴。トートバッグなどを肩掛けにした際、ストラップがずり落ちてしまうのを防止する実用的なディテールです。襟はトレーナーやブルゾンに用いられるスパンテレコ編みのリブニットになっており、バッグを背負ったときの襟ぐりのズレを軽減してくれるという気遣いも。そして、生地自体にも工夫があり、毛羽立ちにくく、毛玉もできにくいとされるMVS紡績のコットン糸を採用。厚手でバッグとの摩擦に強く透け感もないため、夏に安心して着られる1枚です。
全バッグユーザーの定番となる。『マスターピース』のウェアから、目が離せない
バッグを持つことによって生まれるさまざまな不便を解消し、バッグのあるライフスタイルを後押ししてくれる『マスターピース』のウェアコレクション。こうしてディテールをつぶさに見てみると、ファーストシーズンとは思えぬほどの完成度に驚かされます。春、そして夏と季節が移り変わるにつれ、より一層、魅力が増していくことは確実。その機能美の恩恵を、ぜひとも体感してください。
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※掲載の金額はすべて税抜価格です
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Text_Ryo Ishii