
復刻ウォッチトレンドの旗手、ロンジン。3つのルーツから提案する銘品たち
今年で創業190周年を迎える『ロンジン』は、これまで数多くの傑作を手掛けてきました。それらにスポットを当てた復刻モデルこそ今季の狙い目。3つの銘品を掘り下げます。
名品を寵愛する大人たちは、なぜ“復刻モデル”に惹かれるのか
本質的であり、時流に左右されない。口で言うのは簡単ですが、実際に成し遂げるのは容易ではありません。それは人もしかり、道具もしかり。だからこそ限られた名品たちは時を超え、価値を知る大人の羨望の的となります。その傾向は時計界においても顕著で、各ブランドからは“復刻モデル”のリリースが目立つように。ただでさえ長く使うことが前提の腕時計ですから、クラシカルでエッセンシャルな1本は着用者の日常を傍で見守りつつ、将来への安心感も担保します。
とはいえ、復刻をするには当然ながら元ネタが欠かせません。また、それぞれのアイテムに説得力を持たせるには、確たる歴史と創業時から変わらないスタンスが大切です。そう、例えば『ロンジン』のように。今年で創業190周年を迎えたスイスの老舗は、これまで数多くの歴史的傑作を生み出してきました。そして2000年代には格式高いブランドのアイデンティティを宿した「ヘリテージコレクション」を発表。クラシック回帰の先鞭をつけた名門であり、現在も復刻ブームの旗手として知られています。
190周年を迎える『ロンジン』。歴史に裏打ちされた、趣味人を魅了するモノ作り
スイスのサンティエミで1832年に誕生した『ロンジン』は、1867年に「レ・ロンジン」と呼ばれる自社工場を設立することによりマニュファクチュールを確立。同年のパリ万国博覧会で銅メダルを受賞するなど、職人が丁寧に仕上げる自社製キャリバーの信頼性は特筆で、正確な計時は乗馬をはじめとするさまざまなスポーツシーンに欠かせない存在として成長していきます。一方、1919年に国際航空連盟の公式時計に認定されて以降はパイロットウォッチの開発にも注力。多くの飛行士や探検家のサポートを行い、ブランドとしての冒険心も覗かせたのです。
その長い歴史のなかで手掛けられた傑作は枚挙に暇がありません。とりわけアイコニックなのが、1931年にリリースされた「リンドバーグ アワーアングルウォッチ」でしょう。1927年に世界で初めて単独大西洋無着陸横断飛行を成功させた冒険家チャールズ・A・リンドバーグのアイデアを具現化。細かく数字が記載された回転ベゼルと中央が回転する文字盤を持つこの時計は、経緯度計算を容易にして安全な空の旅を支えました。
他にも、アメリカ海軍大佐から開発依頼を受けて1927年に発表された航空時計「ウィームス」など、時計史において同社が持つ存在感は格別。現在は世界最大のウォッチカンパニーであるスウォッチグループに籍を置きながら、持ち前の気品と高い技術力で独自性を保っています。
異なるルーツから紡がれる3種の『ロンジン』、2022年の傑作群を読み解く
翻って2022年。前述の通りブランド創設190周年を迎えたアニバーサリーイヤーのラインアップには、その栄光にふさわしい“復刻”モデルが顔を揃えています。冒険家の魂を宿したパイロットウォッチ、高精度ムーブメントとクッションケースを備えたタフなダイバーズ、伝統的クラフトマンシップが光るフラッグシップモデルなど。趣も出自も異なる銘品の中から、将来の相棒をぜひ見つけ出してください。
▼「ロンジン スピリット」にGMTの風。“空”への憧れを刺激するパイロットウォッチ
「リンドバーグ アワーアングルウォッチ」の開発をはじめ、空の先駆者として名高い『ロンジン』。その魂をのせた現行コレクションが「ロンジン スピリット」です。20世紀初頭、未開の地へ挑んだ冒険者たちのかたわらには、命を預けるに足る信頼性の高い時計がありました。実際に同社は、190年の歴史の中で冒険家たちとの濃密なストーリーをいくつも紡いでいます。
そんな誇り高いヘリテージを継承するシリーズに今季新たに加わったのが、「ロンジン スピリット Zulu Time」です。モチーフとなったのは、1925年発表のアーカイブ。ブランド初となった第2時間帯を示す腕時計から着想を得て、今作ではGMT機能を備えました。なお、“Zulu Time”とはグリニッジ標準時を表す航空や軍事シーンのオーセンティックなコードであり、そのことからも同社の製品が持つパイロットウォッチとしての正当性を感じられます。
ラグとケースが一体化したラウンドケース、視認性の高いスーパールミノバが塗られたアラビア数字のインデックスなど、「ロンジン スピリット」のデザインコードは今作でも踏襲。従来モデルからの違いとなるGMT針にはアクセントカラーが採用され、24時間目盛りがついた双方回転ベゼルはセラミック製のため優れた耐傷性を誇ります。またダイヤル下部の5つ星が示す通り、新たに搭載した「ロンジンキャリバーL844.4」もCOSC認定の高精度ムーブメント。SSケースの美しい磨き分け、レザーブレスレットの尾錠の作り込みを含め、細部まで隙がありません。
コーデ
トレンドのオーバーコートに負けない存在感で、着こなしを引き締める
ケース径は42mmとやや大ぶりで、視認性を生命線とする本来のパイロットウォッチらしさを継承するサイジング。そのため、重くなりがちなウインタースタイルにも埋もれない、しっかりと武骨な存在感があります。厚手のロングコートと合わせても、腕元で嫌味なく主張してくれます。また、秋冬らしいダークトーンのコーディネートとも相性抜群。落ち着いた色味の中でセラミック製のベゼルが程良い光沢感をたたえ、機能だけでなくビジュアルのアクセントとしても機能します。
▼現代に蘇る『ロンジン』機械式の頂点。高級感漂う、武骨なスポーツウォッチ
『ロンジン』の時計の精度を象徴するものとして、航空業界と同様に挙げられる蜜月関係。それがスポーツシーンとの親和性です。1914年に開発した10分の1秒まで計測できるストップウォッチを皮切りに、ロンジンの高振動ムーブメントはスポーツ計時における金字塔であり続けています。
その流れを汲んだダイバーズウォッチが1968年の「ロンジン ウルトラ-クロンダイバー」。その頃の主流だったクッションケース内部には、月差1分、日差2秒の高精度を保証する高振動周波数ムーブメントを搭載しました。当時においてこの数字の達成は、まさしく前代未聞。そのうえで優れた防水性まで備えたところに、『ロンジン』の図抜けた技術力が見て取れます。
1968年発売の「ロンジン ウルトラ-クロンダイバー」
そんな歴史的スポーツウォッチが、新作「ロンジン ウルトラ-クロン」として今季めでたく復刻。オリジナルモデル同様、高振動周波数を表すダイヤル6時位置の“ウルトラ-クロン”ロゴが示すように、まずはムーブメントが最大の特徴となります。その振動数は毎時間36,000回、毎秒10回。この数字が上がるにつれてキャリバーの精度と安定性は向上するもの。今作の優れた信頼性は語るに及ばないでしょう。さらにキャリバー本体は、ジュネーブのTIMELABによってクロノメーター認定を受けたエクスクルーシブ仕様。TIMELAB認証を取得するブランドは数少なく、『ロンジン』としても初めてのモデルです。
一方、表出するおおまかなデザインは往年のモデルから大きく変えず、本物のクラシカルテイストを備えています。クッション型のケースはサテンポリッシュで仕上げられ、サファイアグラス製ベゼルインサートの赤い目盛りが分針と巧みにマッチング。丁寧に磨かれた7連ストラップは力強い表情を持ち、全体のマッシブなイメージをさらに高めています。
コーデ
精緻な作りと力強いデザインが、冬のスポーツMIXスタイルに説得力をもたらす
新しい「ロンジン ウルトラ-クロン」は、いうなればクラシカルな面持ちとブレない芯を持ち合わせたモダンなキャラクター。となれば、こんなハイテク素材のアウターを軸にしたスポーティなコーディネートにうってつけです。随所に配されたレッドカラーがモノトーンに映え、艶やかなベゼルがクラス感もアピール。アクティブかつエレガントな男性のライフスタイルを腕元から表現します。
▼懐中時計をはじめとしたアーカイブの集大成。190周年を飾る、エレガンス薫る1本
190年という壮大な歴史を持つ『ロンジン』。その集大成ともいうべきシリーズが、「ロンジン マスター コレクション」です。これまでさまざまなシーンで磨かれた技術力を生かし、上質でタイムレスなデザインと融合させた最高峰ライン。そこには、“エレガンス イズ アティチュード”という現在のブランドスローガンが色濃く反映されています。
なかでも注目すべきが、新作の「190周年記念モデル」。数多のシリーズが並ぶ『ロンジン』において今回唯一のアニバーサリーモデルとなった事実からも、同コレクションに懸ける並々ならぬ情熱を感じることでしょう。過去の懐中時計やヘリテージウォッチから着想を得たという点で復刻的要素を孕んだ記念モデルですが、それは単なるデザインの掛け合わせではありません。これまで歩んできたブランドの歴史を体現する、新しいエレガンスのメタファーなのです。
インデックスはブレゲ数字のグレービングで表現され、サンドブラスト仕上げのシルバーダイヤルを優雅に彩ります。レザーベルトは植物タンニンで鞣されたバローロ仕上げで、肌に吸い付くようなソフトタッチを実現しました。ケースバックには特別なシリアルナンバーが刻まれ、耐磁性に優れたシリコン製ヒゲゼンマイを備えたムーブメントは5年間の保証付き。美しい青焼き針の正確な調べは、普遍的な『ロンジン』の気品、信頼性を象徴するかのようです。
左「ロンジン マスターコレクション L2.673.4.92.0」462,000円、右「ロンジン マスターコレクション L2.909.4.92.6」338,800円(ともに税込)
ただし、190周年記念モデルは世界でたった190本限定のレアアイテム。すでに発売中のため、どうしても手に入らないケースが想定されます。ならば、通常の「ロンジン マスターコレクション」も視野に入れたいところ。写真の2つのモデルは、ブランドのイメージビジュアルで俳優の本木雅弘さん、モデルのUTAさんが着用したタイムピース。ともにムーンフェイズを搭載した、最高峰の名にふさわしい機械式時計となっています。
コーデ
細部にこそこだわった上品顔で、大人のカジュアルスタイルを腕元からさりげなくクラスアップ
エレガンスとリラックス。一見相反するかのようですが、どちらも大人には欠かせない要素であり、写真のコーディネートのような休日スタイルにおいては、両者が二大キーポイントとなります。奇をてらわない色味とシルエットの正統派シャツブルゾンに、カーゴパンツで程良い遊びをプラス。その仕上げとして上品な腕時計を合わせれば、大人の余裕と品格を一層引き出してくれます。
確固たる背景を持つ最新の腕時計。この冬の腕元に、歴史に根差したロマンを
異なるストーリーを持ちながらも、歴史ある『ロンジン』の魅力をそれぞれに代弁する3つの“復刻”モデル。過去に想いを馳せるロマンティックな側面でも、物欲を大いに刺激することでしょう。過去に敬意を払いながら今を大切にし、未来を見据える。そんな姿勢もまた、共感を覚えるに十分。『ロンジン』の復刻ウォッチには、他にはない特別な価値が宿っています。
機械式時計オーナーの嗜み。オリジナルウォッチワインダーをこの機会に
11月30日(水)までの期間限定で、「ロンジン マスターコレクション キャンペーン」を開催中。今回ご紹介した190周年記念モデルを含む「ロンジン マスターコレクション」の時計を購入した方の中から抽選で、オリジナルのロンジン ウォッチワインダーがプレゼントされます。そのほか、希望者には時計のケースバックにイニシャルや記念日の刻印サービスを実施。大切な時計をより特別なものにするチャンスを、ぜひお見逃しなく。
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※掲載の金額はすべて税込価格です
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Photo_Shoichi Muramoto
Styling_Yu Sugiura
Hair&Make_Ayako Higashikawa
Model_Shogo
Text_Naoki Masuyama