
今年の西川ダウンはどうなんだ!? おしゃれ賢者3人による徹底試着レビュー2022
『ナノ・ユニバース』の人気銘柄として知られる『西川ダウン(R)』。その今季作を、ファッション業界の経験豊富な識者たちが試着しながら徹底検証。さて、結果やいかに!?
定番モデルも気になる新作も。おしゃれ賢者3人が今年の『西川ダウン』を試着してみた
写真左から、モデルのパトリシオさん、フリーPR兼プランナーの田中 遥さん、スタイリストの小松嘉章さん
『ナノ・ユニバース』きってのヒット作である『西川ダウン(R)』。アウトドア由来という点から機能面に重きを置かれがちなダウンジャケットが多いなか、『西川ダウン(R)』は洗練性を湛えたことにより街との距離をグッと縮め、我々の日常に寄り添うことで支持を獲得してきた。誕生から10周年を迎えた本シリーズは、アップデートを遂げた名盤から新型まで多士済々の豪華な顔ぶれだ。その仕上がりを検証すべく、ファッションシーンの最先端で活躍する3名の猛者が全モデルを試着! 時に辛口なコメントも辞さない厳しい目を持つ彼らに、新作はどのように映ったのだろうか?
まずはおさらい。『西川ダウン』は品質・デザイン・コスパに優れた人気ダウン
『西川ダウン(R)』は、セレクトショップ『ナノ・ユニバース』と1566年創業の老舗寝具メーカー『西川』との協業により誕生。以降10年間にわたって、バリエーションを増やしながら変わらぬ人気をキープし続ける名作である。飼育期間が通常よりも長い良質なフレンチダックの羽毛を贅沢に使用。フレッシュアップ加工(R)という独自の製法によって保温性・軽量性・耐久性を備える高品質なダウンに仕上げられている。さらに抗菌加工まで施すこだわりぶり。それでいて40,000~60,000円台というこのプライスはもはや驚き以外のなにものでもない。
今季『西川ダウン』のファーストインプレッションを、3人に聞いた
早速、今季のラインアップ全7型を吟味する猛者たち。多彩なアプローチや豊富なバラエティに興味津々。その第一印象はといえば、概ね良好だったようだ。
パトリシオさん「ダウンアウターは1着でコーデを完結できる強みがありますよね。冬に大活躍してくれるので毎シーズン注目しています。シンプルなアイテムを選びがちですが、『西川ダウン(R)』のデザインバリエーションは豊富なのでかなり迷いますね。これだけあるとさまざまなシーンで活用するアイテムが見つかりそう」
田中さん「これまでダウンとは距離を置いてきたんですけど、最近自分のライフスタイルの変化に伴って、冬に着るならダウンが凄くラクだってことに気付きました。ペットの散歩など、自宅周辺を歩き回る際の相棒が今欲しいんですけど、『西川ダウン(R)』はまさにぴったり。うーん……どれにしよう」
小松さん「実は、僕もこれまでダウンアウターをさほど着てはこなかったんですよ。出自が出自なだけに機能面が重視されたものが多く、どうしてもアウトドア感やスポーツっぽさが前面に出がちで手に取りづらかったんです。ただ『西川ダウン(R)』には、そんな僕の苦手意識を払拭してくれるモデルが揃っている印象。きちんと“洋服”として機能してくれる仕上がりですよね」
試着しまくった結果は? おしゃれ賢者3人がそれぞれの“推しモデル”を発表!
すべてのアイテムに袖を通し、各所にくまなく視線を向ける姿は真剣そのもの。ときおり見せる笑顔に、それぞれの注目すべきポイントが見てとれる。ここからは、3人の琴線に触れたモデルとその理由を語ってもらいながら、今季のラインアップをチェックしていこう。
▼モデル・パトリシオさんは、好みのミリタリーテイストに実用性を兼ね備えた1着をチョイス
ファッション誌・カタログ・広告を中心にモデルとして活躍する傍ら、ゴルフウェアのアドバイザーとしても存在感を発揮するパトリシオさん。冬は寒空の中での撮影も頻繁に行われるため保温力に特化したダウンアウターは必須なのだとか。選ぶうえでは武骨なアイテムが好みといい、ジーンズやリラックスボトムスと合わせることが多いよう。そんな彼が手に取った1着は……?
推しモデルはコレ!
男を上げる「ミリタリースタンドネックダウン」
リップストップ生地に軍由来のディテールを配しつつ、しっかりタウンユースをイメージさせる凜としたアッパー。その絶妙なバランス感を生んでいるのは、ヨコ糸に採用した特殊加工糸だ。ほんのり放たれる光沢感は、パトリシオさんを惹きつけた。
「ダウンに限らず、ミリタリーは好きなジャンル。それに加えさてりげなく大人っぽさも出せるとあって、まさに願ったり叶ったりですね。糸を高密度に織ることで撥水性も加味されている点も頼もしい」
程良くボリューミーなシルエットは今っぽく、ジャケットや肉厚なニットなどゴワつきそうなインナーもすんなり受け止めてくれる度量を感じさせる。「男らしい佇まいに加え、細部への配慮もいいですね」とパトリシオさん。
「あまり荷物を持ち歩きたくない自分としては、このくらい大振りなポケットはとっても助かりますね。マチ付きだからモコモコしなさそうだし。何げにフードを襟に収納できるのも雰囲気を変えるのには良いディテール。わりと一般的かもしれないけど、これがあるとないとではやはり違いますからね」
今着るならこんな感じで
「シンプルで着ていて気持ちの良いアイテムを選ぶことが多い」とパトリシオさん。今回は、ハイネックのニットにウールスラックスと、大人が信頼を寄せる組み合わせでコーディネートした。
「いい大人であれば、普段の着こなしでそこまで冒険しなくていいかも。とはいえ、こじんまりと収まりたくはない……。そんなときには、小綺麗なスタイルにちょっとしたスパイスを加えてくれる武骨なミリタリー調ダウンがちょうどいい感じ」
コレも気になる!
ドレスライクな「3WAYステンカラーコート」
「こういうのはあまり持っていないほうだけれど……」と前置きしつつ手にしたのは、きれいめの「3WAYステンカラーコート」。天然素材のように見えて実は細番手のナイロン糸仕立てで、伸縮性があって撥水性も十分。さらに形状回復性も備わっているためシックな表情ながらラフに扱えるのもうれしい。着脱可能なダウンベストと併用すれば寒さも防げる、とパトリシオさんもご満悦だ。
「実は大人っぽいコートはセレモニー用の1着しか持っていないんです。最近では目上の人と会う機会も多いから、普段使いできる上品顔の1着があると便利だなと。コートって防寒性に不安があったけど、これならダウンベストがセットになっているから問題ないですね」
▼フリーPR兼プランナー・田中 遥さんは、「長丈・黒・機能」の自分流三原則に添ったアイテムを選出
田中さんは某大手セレクトショップのプレスとして活躍後、2021年に独立。現在はフリーPR兼プランナーとしてブランドのプロモーションや企画などにも携わっている。業界きっての洒落者として知られる一方、ダウンとなるとやや経験は浅めというが、ここ最近は徐々に関心を強めているという。山着らしからぬモダンなタイプをシックに着こなしたいという田中さんが手に取ったのは……。
推しモデルはコレ!
全体のバランスが取りやすい「アークティックダウン」
N-3Bを背景にした、『西川ダウン(R)』ではお馴染みのミリタリーな1着。2021年にも同型がリリースされているが、そこからポケットやボタンなどをアップデートしての登場だ。その落ち着いた佇まいに田中さんの食指が動いた。
「ペットの散歩などちょっと出かける際にサラッと羽織れるダウンが欲しいなと思っていて。短丈だとダウン特有のボリュームが余計に際立ってしまいますけど、この丈感だと問題なし。しかも、フロントポケットがフラップ付きとサイドスリットのW仕様。そのあたりの配慮も何げにうれしいですね」
ポリエステル糸との混紡素材で糸を高密度に織り込むことで撥水性をプラス。マットな質感が実にクールである。そのモダンな姿は不慣れな田中さんにとって好都合だという。
「黒なら誰でも何にでも合わせられますよね。しかも僕の場合、仕事で冬のロケ撮影に立ち会うことも多く、写真への写り込みなどで悪影響を与えない黒が好都合。これは撥水性がありますし、ツヤっぽさを抑えた大人っぽい表情も使用範囲を広げる要因になってくれますね」
今着るならこんな感じで
ダウンはもとより、中に着たタートルネックニットもレザージャケットもすべて黒。まとまりを生む半面、サラッとしすぎる危険もはらむ単色コーデを、田中さんはバラエティに富んだアイテムを重ねることで回避する。
「ナイロンにウール、レザーと、異なる素材がもたらす印象の違いにより着こなしに奥行きを持たせました。黒のシャープな印象に足並みを揃えるべく、下半身はスラックス&ローファーで引き締めたのもポイントです」
コレも気になる!
格上げ必至の「ラムレザーダウン」
黒のレザーアイテムはワードローブの定番という田中さん。次点としてチョイスしたのは、そのお言葉通りのこちら。クロムなめしのラムレザーはしっとりとしたタッチで、ワックス仕上げによるツヤっぽさが品を醸し出す。しかも、革の風合いと軽さを同時に感じられる0.6mmという絶妙な厚みが出色だ。
「父の影響から昔からレザーものが好きで、ワードローブには常に複数あります。カジュアルな印象が強いダウンジャケットも、レザーに置き換わることでワンランク上の雰囲気になりますよね。フードが脱着仕様で、シーンに合わせてアレンジできるのもうれしい限り」
▼スタイリスト・小松嘉章さんは、新鮮なアプローチによるダウンらしからぬ1着で
スタイリストアシスタントを5年経て、2009年に独立。以後、数々のメンズファッション誌や広告でその腕前と新鮮な提案により信頼を集めてきた小松さん。仕事上ではダウンアウターを使ったキレの良いスタイリングを多数披露してきたが、ことプライベートでは特有のアウトドア感に二の足を踏んできたという。そんな小松さんが選んだアイテムとは……?
推しモデルはコレ!
“洋服”として機能する「リバーシブルダブルブレストダウン」
こちらは一見ピーコートのように見えるがれっきとしたダウンアウター。その上、同系色ながらトーンに違いをつけたラペルの切り替えデザインが実に痛快で、小松さんもそのあたりに惹かれたご様子。
「“THE”なダウンが昔から苦手で……、自分が着るとなると、そうは見えないけどちゃんとダウン、というギャップが手に取るポイントになりますね。こちらはラインアップの中でもっとも意表をつかれた1着。若いころに慣れ親しんだピーコート風のデザインというのもいいですね」
しかもこちらはリバーシブル仕立て。もちろん、内部には良質なフレンチダックの羽毛を内包し、保温性も抜かりはない。さらに小松さんは着用したときの佇まいにも言及する。
「パターンもしっかり考え抜かれていますよね。個人的にダウンは着膨れしたりラウンドフォルムになったりするのが玉に瑕なんですけど、このモデルにはそんな印象がほとんどない。特に前を開けて着たときの姿がきれいで、サイドシルエットもしっかりAラインに収まっています。このボリューム感でリバーシブルということは相当考えて作られたんだと思いますよ」
今着るならこんな感じで
上下をベージュで統一したセットアップ風のアプローチで、ダウン特有の粗野感を抑制。ワントーンで陥りがちな平坦な印象もレザージャケットのインナー使いや大胆にロールアップさせたボトムスの裾で回避させた。
「ダウンは元々厳しい寒さに身を置く男たちが着てきたアイテムですから、どうしても男くさい印象になりがち。それを極力ニュートラルに、女性でも袖を通せるような柔らかめのイメージでスタイリングしてみました」
コレも気になる!
ほんのり品ありな「スポーティーフードダウン」
ストレッチ性と端正さを後押しするハリ感を備えたこちらは、止水ファスナーやファスナーガレージ、巻き物を巻きやすいようにあしらわれたフード内のドットボタンと、利便性と快適さを担保する仕掛けがそこかしこに。
「ダウンは濃い色か派手な色が多いなか、こちらは真っ白でもライトグレーでもない絶妙な中間色。スポーティと謳うだけあり機能面は申し分ないですが、この色味によりさりげなく品格を匂わせることができるのがいいですね」
どれもプロ納得の出来栄え。この冬はぜひ一度『西川ダウン』に袖を通してみよう
数多のダウンアウターに目を通し、手に取ってきたファッションのプロたち。なかには、仕事で相対してきたものの、私的には積極的に手に取ってこなかったという人もいるが、そんな人でも一目置くのが『西川ダウン(R)』の今季作。まずは定番から新型まで、そのすべてにぜひ一度袖を通してみてほしい。きっと、プロたちのリアルな感想が、身をもって実感できるはずだから。
▼着用アイテム(モデル パトリシオさん/試着時)
モヘヤミックスプレーティングクルーネック13,200円、タスランカルゼイージーカーゴパンツ14,300円/ともにナノ・ユニバース
▼着用アイテム(モデル パトリシオさん/ミリタリースタンドネックダウン着用時)
ミリタリースタンドネックダウン55,000円/西川ダウン(R)、カシミヤミックススムースタートルニット11,000円、ウーリーツイルセットアップ「スリム」/22,000円(※パンツのみ使用)/ともにナノ・ユニバース、別注ノンスポーティ スニーカー59,400円/フット ザ コーチャー
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※掲載の金額はすべて税込価格です
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Photo_Katsunori Suzuki
Styling_Yoshiaki Komatsu ※パトリシオさん着用分
Hair & Make_Michinori Kikuchi ※パトリシオさん
Text_Ryo Kikuchi