
ウチのこだわり見てよ! 人気4ショップのバイヤーが自慢のセイコー 5スポーツ別注時計を語り尽くす
人気のカジュアルウォッチ『セイコー 5スポーツ』より、アーカイブモデルを読み解いたショップコラボモデル4本が登場。それぞれの魅力を各バイヤーとともに掘り下げます。
見た目だけじゃなく、背景も重視したい。そんなカジュアルウォッチをお探しのあなたへ
正確な時刻を示す実用性に加え、普段のコーデをより楽しくする娯楽性を秘めている――。そんなカジュアルウォッチの魅力については今さら説明するまでもないでしょう。では、星の数ほどある中からどんな1本をセレクトすれば良いのか。好みのデザインとともに選びの指針として挙げたいのが、アイテムの裏側に潜む背景です。
一生寄り添ってくれる腕時計には、長く愛せるだけの要素がほしいもの。その点、老舗が作る一品はギアとしての信頼性が十分。加えて、知るほどに愛着が湧くバックストーリーを備えているモデルも多いため、十分“推し”の理由になります。今回ご紹介する『セイコー 5スポーツ』の別注モデルはその典型で、人気のアーカイブをオマージュしたスペシャルモデル。目利きが確かなセレクトショップの別注であることも、背中を押してくれる大きな要因になるでしょう。
ヴィンテージマニアにも人気。『セイコー 5スポーツ』の“SKX”をご存じ?
※画像は1996年に登場した当時の「SKX」
この度の新作時計群は、1990年代後半に欧米を中心にブームを巻き起こした「SKX」と呼ばれるデザインをベースとしています。それまで手が届きにくかった高価で高性能な腕時計を、"セイコークオリティ”は維持したままリーズナブルに提供。そんな画期的な姿勢が評価され、世界中で人気を博しました。
当時を知るファンの間で“ボーイデザイン”としても親しまれる「SKX」の特徴は、ケース側面の丸みを帯びた形状、4時位置のリューズといった個性的なディテールにあります。ちなみに「SKX」とは当時の品番の頭文字からとられたもので、1996年発表のモデル「SKX007」が人気の火付け役として知られています。
見逃し厳禁。“4thダイバーズ”デザインの復刻コラボはファンならずとも手に入れたい!
※画像は1988年に発売されたモデル。インデックスデザインの違いに注目
なかでも今回のコラボレーションの橋渡しとなったのが、通称「4thダイバーズ」と呼ばれるモデルです。1982年にリリースされたこのモデルは、「SKX」デザインにおける“機械式の元祖”たる名機といわれています。新作の別注モデルを見ても、台形と四角形で構成されたインデックスに往年の雰囲気を感じることができるでしょう。
4人のバイヤーが一堂に集結。ウチのコラボモデル、見逃せないポイントはココだ!
(左から順に)「ジャーナル スタンダード」メンズディレクター 松尾忠尚氏、「ナノ・ユニバース」アシスタントバイヤー 後藤 祐氏、「シップス」バイヤー 吉田卓弘氏、「オンタイム・ムーヴ」バイヤー 竹内脩太氏
確たる歴史と背景を持った『セイコー』の名作をアレンジするにあたり、各ショップはオリジナルとどう向き合い、いかに新しい答えを導き出したのか。別注のキモを探るべく、各モデルの代弁者4人による座談会を実施! バイヤーやディレクターとして日頃から多くの名品に触れる彼らは、他社が手掛けた腕時計を見る目も真剣です。「ナノ・ユニバース」「シップス」「ジャーナル スタンダード」「オンタイム・ムーヴ」。人気のセレクトショップそれぞれのセンスを纏って登場した4つのアイテムについて話を聞いていきましょう。
なお、各社とも自社のコラボレーションを進めるうえで他社モデルの大まかな情報は入ってきていたそう。しかし、実際に出来上がった四社四様のコラボモデルを見比べるのは全員にとって初めてのシチュエーション。「完成度が高い!」「この発想はなかったな……」など、おのおの新鮮な驚きがあったようです。ここからは、全4モデルの概要とともに、座談会の様子をご覧いただきましょう。
『セイコー 5スポーツ』×『ナノ・ユニバース』
ヴィンテージイメージのデザインに『ナノ・ユニバース』的なセンスが潜む
まずは、『ナノ・ユニバース』とのコラボレーションモデルから。
“ブラックボーイ”の名で知られるブラックダイヤルの「SKX」から着想を得て、シックなデザインに仕上げられたこちらの1本。とはいえ、単なる黒に終わらないのがセンスフルなショップ別注のキモです。実際の経年変化を思わせる美しいグラデーションカラーをダイヤルに落とし込み、脇を飾るインデックスのルミブライトも少し色褪せたような味のある表情へとアレンジ。「SKX」の足跡に敬意を表した、モダンなヴィンテージテイストを纏っています。
ナノ・ユニバース後藤 祐さん(以下、NU後藤)「もともと古い腕時計が好きで、“4thダイバーズ”はお気に入りでした。特に好きなのがブラックボーイで、弊社のチーム内で話し合ううちに、モチーフはすんなり決まりましたね」
シップス吉田卓弘さん(以下、SH吉田)「ダイヤルの中央に近づくにつれて黒がかすれていく感じが、とても美しいと思います。この表情を出すのに、相当試行錯誤があったのでは?」
NU後藤「それが意外とスムーズでしたね。『セイコー』さんが挙げてくれたサンプルがイメージ通りだったので、さほど苦労はしませんでした。さすがは『セイコー』(笑)」
ジャーナル スタンダード松尾忠尚さん(以下、JS松尾)「やはり、黒は印象が引き締まりますよね。使い勝手も良いし、SSブレスレットとの相性もバッチリ。そこにヴィンテージの要素をプラスするなんて、脱帽です(実際にキャップを脱ぎながら)」
オンタイム・ムーヴ竹内脩太さん(以下、OT竹内)「カラーのおかげかシャープでスタイリッシュな印象ですよね。ブラックカラーは『ナノ・ユニバース』さんのイメージとも重なりますし、コラボレーションとしてまさに満点の出来かと」
SH吉田「ダークトーンのセットアップなど、大人っぽい秋冬の装いにハマりそうだし、なんならオンビジネスのシーンでも使えそう」
JS松尾「確かに。黒でシャープなルックスになっているから、ケース径42mmでもそこまで大ぶりな感じもしません。シンプルに、良い腕時計ですね」
NU後藤「ありがとうございます。みなさん褒めてくださって凄くうれしいです。自分もちゃんと、みなさんの腕時計の良いところをアピールしないと(笑)」
『セイコー 5スポーツ』×『シップス』
『シップス』お馴染みの“色”を一点投入!
『シップス』が手掛けた1本は、オーソドックスな見た目の中にしっかりと“らしさ”が充満。コーポレートカラーであるネイビーをダイヤルに抜擢し、“ネイビーボーイ”と呼ばれる「SKX」の人気作ともイメージを重ねています。インデックスや針、ベゼルの刻みなどのディテールはホワイトで統一し、爽やかさもアピール。裏ぶたはシースルーバック仕様になっており、『シップス』のロゴが描かれています。
SH吉田「過去にも何度か『セイコー』さんとの取り組みは経験させてもらいましたが、今回は3~4年ぶり。久々のコラボということで、改めてうちのイメージカラーを採用しました」
NU後藤「一見弊社(ナノ・ユニバース)のブラックカラーと似て見えましたが、近くで見るとまるで違う。こちらはダイヤルの表面がサンレイ仕上げになっていて、上品に輝いているんですね」
OT竹内「ダイヤル、ベゼルともにきれいなネイビー。だからこそ要所のホワイトが利いているんだと思います。見返しリングに白を挟むところなんて、実にファッション的だなと」
JS松尾「僕もそこが良いなと思いました! 上下ワントーンのコーディネートの中で、白いTシャツをチラ見せする感じに近いかも」
SH吉田「イメージソースは“4thダイバーズ”のネイビーボーイですが、僕が実際に拝見したアーカイブは黒に近いネイビーで。サンプルを重ねていく中で、ネイビーを少しずつ黒に近づけていきました。なので、いわゆる“シップスのネイビー”に比べると、若干暗くなっています」
NU後藤「なるほど。そのこだわりや背景にも、無性に物欲がくすぐられますね」
JS松尾「もともとダイバーズ的な要素を含むスポーツウォッチだけに、ブルーのカラーリングは王道。そこにもオリジナルの「SKX」へのリスペクトが感じられます」
OT吉田「ありがとうございます。同時にネイビーは、フレッシュなビジネスパーソンを象徴する色でもあります。この腕時計のストーリーを知っているツウの方も、そうでない新社会人の方にも、それぞれ気に入っていただけるとありがたいですね」
『セイコー5スポーツ』×『ジャーナル スタンダード』
遊び心満点な『ジャーナル スタンダード』仕様の1本
『ジャーナル スタンダード』の別注モデルは、ダイヤルだけでなくストラップまで大胆にアレンジ。ブラックのレザーストラップを用い、黒主体のデザインに統一感とクラス感をプラスしています。レッドと色分けされたベゼルは、ファンの間で“コークカラー”として愛されるデザインを踏襲。アーカイブのコークカラーはシルバーカラーのケースでしたが、全体のバランスを考慮してケースも黒く仕上げています。
SH吉田「これにはヤラれましたね。まさかベルトから作り込んでくるとは。『ジャーナル スタンダード』さんらしい遊び心を感じます」
NU後藤「これだけで、だいぶ印象が変わりますよね。カジュアルなコークカラーとのギャップも、すごく面白い!」
JS松尾「ありがとうございます。レザーストラップは違う色のものを夏に『セイコー』さんとの別注でやらせてもらっていて。かなり出来が良かったので、今回は色を変えて再登場させました。でも実は、当初はSSブレスレットにしてブラックダイヤル&ネイビーベゼルで……と構想を練っていたんです。ところがそれが諸事情によって変更に。ナノさんとシップスさんの完成版を拝見して、納得しました(笑)」
OT竹内「正直におっしゃいますね(笑)。でも、この腕時計は個性的だし、人気が出ると思いますよ。今季はうちのお店でも、ストラップタイプのモデルが特に好調なんです。時流にピッタリハマっている気がしますね」
SH吉田「ストラップがナイロンではなく、レザーというところがニクいですよね」
OT竹内「おっしゃる通り。カジュアルに振りすぎず、大人っぽさを担保していますよね。だからこそ、コークカラーの遊びがより生きてくる」
NU後藤「全身黒のコーディネートでもワンポイントとして使えるし、リラックス感のある大人の休日を想起させます。必然的にSSブレスレットより軽く仕上がっているから、自然体で身に着けられそうですよね」
JS松尾「みなさんのコメントのおかげで、だいぶ自信がついてきました。次回のコラボレーションでも、ぜひレザーストラップでお願いします!(笑)」
『セイコー 5スポーツ』×「オンタイム・ムーヴ」
腕時計好きをうならせる「オンタイム・ムーヴ」の視点
鮮やかなイエローダイヤルが特徴的な「オンタイム・ムーヴ」の別注モデル。主に北米で人気を集めた過去のカラーリングから着想を得て、古き良きポップデザインを蘇らせています。透明感のあるダイヤルカラーに合うよう、ミラー仕上げの針を採用。秒針の先に丸型のルミブライトを施して夜間の判読性をサポートするなど、腕時計のセレクトショップとのコラボレーションならではな細かな作り込みも必見です。
OT竹内「実は私、今回のコレクションの出発点となった「4thダイバーズ」と同じ1982年生まれでして。同い年として、今作は相当に思い入れがある1本です。アーカイブを研究している中で特に目に留まったイエローカラーを、できるだけ忠実に再現しました」
JS松尾「腕時計好きを納得させる色だと思いますし、カラーダイヤルはファッション的に見ても注目株のひとつ。今回の腕時計は価格も比較的リーズナブルですし、カラーウォッチビギナーが挑戦するにはもってこいですね」
NU後藤「単に奇をてらっているのではなく、しっかりと理由があるカラーダイヤルという点もポイントが高いです」
SH吉田「何本も持っているような腕時計好きの方も、きっと新鮮な気持ちで対峙できるはず。さすが、よく考えられていますね」
OT竹内「『セイコー 5スポーツ』は通常モデルの売り上げも好調でして。もともと実力が確かなブランドですから、リデザインするうえでの冒険しやすさはありました」
JS松尾「そういえば、今回のコラボレーションではベゼルの目盛りがすべて刻まれていますが、この変更は「オンタイム・ムーヴ」さんの発案ですよね」
OT竹内「最近の『セイコー 5スポーツ』のモデルは“20”の表示までしかドットが打たれていませんでしたが、過去の「SKX」にはベゼル1周すべてに打たれていました。今回、どうしてもアーカイブに忠実でありたかったため、わがままをいって叶えてもらったんです」
SH吉田「おかげさまで、他のモデルも同様にオリジナルにより近しいベゼルになりました。そんなディテールのひとつひとつも、ぜひ吟味していただきたいですね!」
今季注目の『セイコー 5スポーツ』コラボ。お気に入りのモデルで腕元に個性を宿そう
“過去の名作時計の復刻”という顔と、“人気ショップの別注”というもうひとつの顔。ふたつの背景を持った今回の新作ウォッチは、ビジュアルの良さだけでは満足できないファッション好き・腕時計好きの双方に鋭くアプローチすることでしょう。あとは、4つの中から特に共感できるお気に入りを選ぶだけ。すべて機械式でありながらアンダー4万円というリーズナブルさゆえ、まとめ買いも断然アリです!
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※掲載の金額はすべて税込価格です
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Photo_Kazuya Aoki
Text_Naoki Masuyama
Special Thanks_AWABEES、UTUWA